著者
船津 敬弘 近藤 信太郎 井上 美津子 若月 英三 佐々 竜二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.700-707, 1999 (Released:2013-01-18)
参考文献数
22
被引用文献数
1

日本人乳歯の大きさにおける性差を分析するために,乳歯列正常咬合を有する小児100名(男児50名,女児50名)から得られた石膏模型の歯冠近遠心幅径,唇(頬)舌径を杉山・黒須の計測基準に従い,デジタルノギス(0.01mm)を用いて計測した。歯冠サイズの性差は性差百分率によって検討した。歯冠形態の比較は幅厚指数によって行った。結果は以下の通りである。1.計測者内誤差は第一乳臼歯でやや大きいものの0.1mm未満であり,分析に影響を与えない範囲内であった。2.歯冠近遠心幅径,唇(頬)舌径ともに全ての歯種で,1-3%程度,男児が女児より大きかった。3.上顎では歯冠唇(頬)舌径の,下顎では歯冠近遠心幅径の性差が大きい傾向を示した。4.男・女児ともに変動係数は,歯冠唇(頬)舌径の方が近遠心幅径より大きく,サイズの変異が大きい傾向を示した。5.幅厚指数では歯冠サイズと比較して大きな性差はみられなかったが,下顎乳犬歯では有意差がみられ,女児が相対的に歯冠唇舌径が大きかった。
著者
吉原 俊博
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.31-35, 2012-03-25 (Released:2015-03-15)
参考文献数
3

本稿では,エビデンスに基づく診療ガイドライン作成の背景とその作成手順について説明する。本稿の要旨を以下に示す。1 .Medical information network distribution service(Minds)には2011 年10 月現在,8 つの歯科に関係するガイドラインが公開されている。2 .Cochrane Review には2011 年10 月現在,93 の歯科に関するレビューが公開されている。3 .診療ガイドラインの作成において,文献検索とその選択が重要になるが,エビデンスレベルの高い文献を得ることは非常に難しく,その結果,推奨グレードを強くすることが困難になる。4 .「症状はないが,齲蝕を完全に除去すると露髄する可能性のある深部齲蝕を有する歯に対する有効な治療法は?」というクリニカル・クエスチョンを設定した場合,米国小児歯科学会診療ガイドラインでは「Guideline on pulp therapy for primary and young permanent teeth」というガイドラインが得られる。Cochrane Review では「Complete or ultraconservative removal of decayed tissue in unfilled teeth」というガイドラインが得られる。
著者
大竹 千鶴 高木 正道 田口 洋 野田 忠
出版者
日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.37-44, 2003-03-25
参考文献数
32
被引用文献数
6

時代の移り変わりの中で,少しずつ変化している日本人の食事について,時代の変遷により,食生態が変化し,噛む回数や時間が変わることを,どこまで正確に検証できるのか,時代を反映する食事として学校給食をとりあげ,その復元食による咀嚼実験を試行し,咀嚼との関連について検討した.<BR>今回の実験では,現代の給食の方が昭和30年代および50年代より咀嚼回数も咀嚼時間も減少するという結果が出たが,これは時代の変化というより,選択した献立の差と考えられた.<BR>時代の変遷による食生態の変化を,代表的献立で実験する場合,日常の食をいくつかの献立で代表させるのは難しく,測定した咀嚼回数や咀嚼時間の比較で時代の変遷を論じることはさらに難しいと思われた.<BR>献立,素材,調理方法により,咀嚼回数も咀嚼時間も大きく変わるものと考えられ,学校給食だけでなく,普段の食生活においても,噛みこたえのある食品を使ったり,素材を大きく切って調理したりなど,さまざまな工夫をすることによって,食事がよりよいものとなると思われた.
著者
新居 智恵 田中 庄二 鈴木 昭 村上 幸生 小林 聡子 秋田 紗世子 利根川 茜 渡部 茂 町野 守
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.628-633, 2009-09-25 (Released:2015-03-11)
参考文献数
30

切歯結節は,切歯の基底結節が隆起した比較的稀な歯科的な異常である。われわれは,永久前歯における切歯結節の6 例を経験した。3 例は,上顎側切歯に,1 例は両側の上顎中切歯にみられた。1 例は,稀な下顎に,さらに,1 例は下顎側切歯と下顎犬歯の癒合歯にみられた。 結節の形態は,凸様突起物はたはT 字状突起物であった。処置は,レジン充塡にて結節の補強を行い経過観察とした。咬合に関係していない症例では経過観察とした。 永久前歯における切歯結節について,文献的考察を加えて報告した。
著者
大野 裕美 下岡 正八 田中 聖至 本間 裕章 馬場 宏俊
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.33-41, 2008-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25
被引用文献数
2

今回著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるかどうかを知るために,小児の性格を心理検査の一つであるTS式幼児・児童性格診断検査を用いて,依存群,標準群,自立群に分類し,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を測定した。移動角速度秒速5度未満を停留点,5度以上をサッケードとして分析し,以下の結論を得た。1.小児の顔の見方には性格が影響していることが示唆された。2.停留回数,停留時間とも依存群,標準群,自立群の順に増加した。部位別では諸部分を中心とした顔への停留が最も多く,特に自立群において増加した。3.停留点,サッケードの分布は各群とも諸部分を中心とした顔への分布が多く認められた。4.視線の走査方向には4つのタイプが認められ,自立群では繰り返し,「みる」Lookなどの規則性のある走査が増加する傾向にあった。5.依存群の顔の見方は従来の小児の顔の見方に類似し,自立群の顔の見方は成人の顔の見方に類似していることが認められた。しかし,依存群と従来の小児の見方は間違っているわけではなく,発達の一過程であることが示唆された。従って小児が何故そのような見方をしたのかを知ることは,小児一人ひとりの発達のプロセスを理解する上で重要と考える。
著者
今村 基尊 山本 妙子 小野 俊朗 今村 節子 会田 栄一 黒須 一夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.607-613, 1991-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15
被引用文献数
2

乳歯隣接面齲蝕の診査に咬翼法X線写真を用いることで,齲蝕検出率が高まることはよく知られているが,患者の被爆線量から,頻回撮影することも好ましくない.咬翼法X線写真の撮影回数を減らすために,補助手段としてデンタルフロスによる診査の併用を考え,咬翼法X線写真による診査の結果とデンタルフロスによる診査の結果との関係について検討し,次の結論を得た.1)咬翼法X線診査の結果とデンタルフロスによる診査の結果との一致率は,67.1%~94.3%であった.2)上下顎第一乳臼歯遠心面・第二乳臼歯近心面において,フロスにより異常を感じたならばまず齲蝕があったが,フロスによりsmoothと感じても齲蝕がないとは診断しがたい.3)フロスによる乳歯側方歯群の隣接面齲蝕の診査は,咬翼法X線写真の補助的診査として用いることができると考えられた.
著者
香西 克之 山木戸 隆子 鈴木 淳司 長坂 信夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.751-755, 1994

歯口清掃の重要性は,近年ますます大きくなっているが歯口清掃器具の管理については,十分な指導がなされていないように思われる.今回我々は,歯口清掃器具の使用後の汚染を細菌学的に調査する目的で,本学小児歯科に来院した3-12歳までの45名の小児に対して,歯口清掃後の歯ブラシを任意に洗浄してもらい,その歯ブラシに残存している付着細菌数を測定し,以下の結果を得た.<BR>1.洗浄後の付着細菌数は歯ブラシ1本当たり,最少で3.5×103コロニー,最多で3.7×106コロニー,平均4.8×105コロニーと非常に多くの付着細菌が検出された.<BR>2.歯ブラシの洗浄方法によって付着細菌数は大きな差を生じたが,流水中での歯ブラシ洗浄が有意に少なかった.<BR>3.さらに聞き取り調査も行った結果,家庭における歯口清掃器具の洗浄や管理には不十分な点が多く,これらについての指導の必要性が指摘された.
著者
大野 秀夫 大野 和夫 小椋 正 木村 光孝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.653-660, 1986-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

乳歯生活歯髄切断処置後,乳歯の生理的歯根吸収が健全乳歯の場合と同様に進行しているか否かを検討するため,生後3カ月前後の幼犬の乳歯に,覆髄剤として,水酸化カルシウムを主成分とするCalvitalを使用し,生活歯髄切断処置を施し,病理組織学的に検索した。乳歯生活歯髄切断処置後の生理的歯根吸収は,健全な対照歯と比較し,組織学的にはほぼ同調した吸収状態を示した。このことは,乳歯生活歯髄切断処置が生理的歯根吸収に対して,何ら影響を与えているとは考え難く,乳歯の歯髄処置として,非常に意義あるものと考えられた。
著者
井手 有三 立川 義博 西 めぐみ 緒方 哲朗 福本 敏 野中 和明
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.605-612, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
32

授乳状況と齲蝕罹患との関連を検討することを目的とし,平成12年から15年までの4年間に1歳6か月児歯科健康診査を受けた811人を健診当時の授乳状況により卒乳群,母乳継続群,哺乳瓶継続群の3群に分類,調査した.各群について齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,および上顎乳前歯部に3本以上の齲蝕歯が認められた者を授乳齲蝕者とし,授乳齲蝕者率を分析した.さらに口腔衛生状態についても検討したところ,以下の結論を得た.1.母乳継続群の齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,授乳齲蝕者率はいずれも卒乳群,哺乳瓶継続群と比較し有意に高い値を示した.2.母乳継続群の口腔衛生状態良好率は卒乳群,哺乳瓶継続群と比較し有意に低い値を示した.またどの群においても,口腔衛生状態良好児の齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,授乳齲蝕者率は口腔衛生状態不良児のそれと比較し低い値を示した.3.卒乳群と母乳継続群における授乳齲蝕者率は母乳栄養の継続を確認できた最終月齢が1歳3か月以前の場合は極めて低かったが,1歳4か月以降になると急激に上昇した.以上より,母乳栄養を長期に継続した場合,齲蝕罹患率は高くなる傾向があるが,口腔衛生状態を良好に保つことによってその率は多いに下げ得ることが示唆された.また現行の歯科健診の実施時期である1歳6か月よりも以前に齲蝕罹患率の上昇時期があることから,歯科健診はより早期の1歳からの実施が必要と考えられた.
著者
福田 理 田中 泰司 柳瀬 博 小野 俊朗 河合 利方 黒須 一夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-35, 1995-03-25
被引用文献数
7

本学小児歯科外来を訪れた心身障害児のうち,通常のトレーニング実施後も歯科治療に対する協力性が充分得られなかった54名を対象とし,笑気吸入のためのトレーニングに加え,笑気吸入鎮静下で歯科治療に対する適応性を高めるためのトレーニングを実施後,笑気吸入鎮静法下で歯科治療を行い,その臨床効果と発達年齢との関連について検討し,以下の結果を得た.<BR>発達年齢が3歳以上の患児では,本法応用によりその約72%が笑気吸入下で協力的に歯科治療を受け入れることが可能となったのに対し,3歳未満の患児では本法応用によっても約29%が笑気吸入下の歯科治療に適応できるのみで,両者間に統計的な有意差が認められた.<BR>以上の結果より,通常の対応法で歯科治療が困難であった心身障害児のうち,発達年齢が3歳以上に達している患児では,本法を応用することにより,歯科治療を協力的に受け入れるよう行動変容できる可能性の高いことが明らかとなった.
著者
内藤 真理子 川原 玲子 井手口 博 上田 和茂 鶴田 靖 吉永 久秋 内藤 徹 木村 光孝
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.625-630, 1997

児童の食習慣を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年生から6年生までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を実施した。<BR>「朝ごはんを食べない」と回答した児童は5%前後であり,平成4年度の調査結果と比較して著しい変化はなかった。「やわらかいものを食べる」あるいは「かたいものをあまり食べない」と回答した率は50%前後であり,全般に女児に高く認められる傾向にあった。「食べる速さがはやい」と回答した率は20%前後であり,男児の率が有意に高く認められた。「食べるときにあまりかまない」と回答した率は10%前後であり,男児に対して有意に高く認められた。「インスタント食品をよく食べる」と回答した率は15%前後であり,全般に男児に高く認められる傾向にあった。学年の上昇にともない,主食の中でごはんを「一番好き」と回答した率が上昇する傾向にあった。それぞれの設問における男女児間の回答の違いは,全般に6年生でその差が減少する傾向にあった。<BR>児童を取り巻く環境や状況の変化が食習慣に影響を及ぼすことが示唆されたことから,早期からの段階を追った「食育」の過程において,この時期に好ましい食習慣の確立をはかることが重要であると思われた。