著者
上原 雄貴 水谷 正慶 武田 圭史 村井 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.461-473, 2012-02-15

近年,インターネットを介した各種サービスにおいて,ユーザごとの行動履歴や趣味趣向に応じた最適化されたサービスを適時に提供することで,新たな付加価値を生み出すための取組みが行われている.実際にこのようなサービスを利用するためには利用者が専用のアカウントを登録するといった特別な操作が必要である.また,従来ホストの識別にIPアドレスやMACアドレスが利用されているが,IPアドレスはネットワーク環境によって変化し,MACアドレスは詐称可能であるため,継続的にホストや所有者を特定できない.そこで本研究では,特定のユーザが利用するデバイスごとに,ユーザの利用形態によって特徴的なトラフィックパターンが現れるかを事前に調査した.そして,その結果を用いてネットワーク上に発信されているパケットのヘッダ情報を収集,解析することでホストおよびユーザを特定する手法を提案した.本提案手法において,ユーザが発信するパケットのペイロード情報はプライバシ侵害の懸念があるため,パケットヘッダ情報のみを収集することでホストおよびユーザを特定することを目的とする.そして,200人ほどが参加するカンファレンスや学術ネットワークにおいてユーザの許諾を得たうえで実験を行い,ホストやユーザを本手法によって特定可能であることを示した.これよって,サービス提供者はユーザに特別な操作や設定などを求めることやデバイスの制約などを受けることなく,ユーザごとに特化したサービスを提供できる可能性を示した.
著者
伊藤 隆 田中 哲朗 胡振江 武市 正人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3012-3020, 2002-10-15

``しりとり''を完全情報ゲームとして数学的に定義した``しりとりゲーム''を考えると,グラフ上のゲームとしてモデル化することができる.これは完全情報ゲームであるため理論上は解けることになるが,問題のサイズが大きくなるにつれ全探索は困難となる.本論文では,しりとりゲームに関する解析を行い,ゲームを効率的に探索する手法を提案する.この手法は数理的解析,探索の効率化の2つの部分から成っており,数理的解析としてグラフのより簡単な形への変形を行っている.加えて,しりとりゲームにおける先手の勝率に関して実験,考察を行う.The word-chain game (SHIRITORI in Japanese) in which two players are assumed to know all the words can be modeled as a game on graph.When given a set of words with a word to start,it is theoretically possible to decide whether the first player can win the game or not because it is a game with perfect information,but it is practically difficult to find the solution because of the huge searching space.In this paper,we propose a mathematical approach to finding a solution to the word-chain game.We show how to simplify the game by means of mathematical analysis,and give a more efficient searching algorithm.In addition, we examine the possibility for the first player to win the game.Our experimental results show that our approach is quite promising.
著者
森勢 将雅 藤本 健 小岩井 ことり
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1523-1531, 2022-09-15

本論文では,統計的歌声合成に向けた日本語の歌唱データベース(以下ではデータベースをDBと呼称する)を構築した結果について報告する.歌唱DBは歌声のジャンルを統一して構築することが望ましく,著作権上の問題を勘案し,従来は著作権の切れた童謡が用いられてきた.一方,2019年に改訂された著作権法第三十条の四に基づき,利用条件に制約があるものの,既存の楽曲を用いた歌唱DBを研究者向けに公開する動きもある.本研究は,さらに利用条件を緩めるため,従来の歌唱DBと同程度の規模ですべてオリジナルの楽曲で構成される新たな歌唱DBを構築する.構築する歌唱DBでは,音高,音高遷移,音符の長さや,日本語で出現するモーラを幅広くカバーすることで,様々な楽曲の合成に対応できることを目指す.既存の歌唱DBと比較してカバーするモーラの種類が多いことを確認し,エントロピーによる評価では,全項目で最高値ではないものの,良好な結果を達成した歌唱DBであることが示された.
著者
中西 英之 キャサリンイズビスタ 石田 亨 クリフォードナス
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1368-1376, 2001-06-15
参考文献数
15
被引用文献数
15

本論文では,仮想空間内での人間同士のコミュニケーションを補助する社会的エージェントについて述べる.このエージェントはパーティーにおけるホスト役を模擬しており,会話が停滞している2人のミーティング参加者に共通の話題を与えようとする.我々は,このエージェントを異文化間コミュニケーションの支援に適用する実験を行った.実験用に,ミーティング参加者との質疑応答を通して,文化的に共通の安全な話題を提供するエージェントと,危険な話題を提供するエージェントを設計した.実験は,専用線でつながれた京都大学とスタンフォード大学のPCの上で,我々が開発した仮想空間FreeWalkを動作させて行った.この実験において,安全なエージェントはアメリカ人の学生に肯定的な影響を与えた.一方,日本人の学生には否定的な影響を与えると同時に,会話相手との類似性を強調した.危険なエージェントのいる環境では,両国の学生とも会話をより面白いと感じ,日本人学生がよりアメリカ人のように振る舞った.実験の結果,危険な話題は有用であり,エージェントは各参加者に適応できた方が良く,エージェントの存在が参加者の振舞いに影響を及ぼすことが分かった.In this paper,we discuss a social agent that is designed to assist human-human communication in virtual spaces.This agent mimics a party host.It tries to find a common topic for two meeting participants whose conversation has lagged.We performed an experimental evaluation of the agent's ability to assist in cross-cultural communication.We designed two kinds of agents to introduce culturally common safe or unsafe topics to conversation pairs,through a series of questions and answers.We conducted this experiment on two PCs connected by the dedicated line between Kyoto University and Stanford University.FreeWalk was used as a virtual space,which was developed by us.In the experiment, the safe agent had positive effects for American students,however,the safe agent had negative effects for Japanese students,but simultaneously it made them think their partner was more similar to themselves.In the unsafe agent condition,both Japanese and American students thought their conversations were more interesting,and Japanese students acted more American.As a result, we found that unsafe topics are useful,an agent adaptive to each participant is good,and an agent's presence affects participants' style of behavior.
著者
井手 広康 奥田 隆史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2044-2053, 2018-11-15

全自動麻雀卓とは「すべての牌を裏向きにしてかき混ぜ,それらを牌山に積み上げる」という作業を,プレイヤの代わりに自動で行う麻雀卓のことを指す.しかし全自動麻雀卓における牌の撹拌手法(牌のかき混ぜ方)には一定の規則性があるため,牌に偏りが生じている可能性があると従来より指摘されている.そこで本研究では,マルチエージェントシミュレーションを用いて全自動麻雀卓をマルチエージェントモデルとして表現し,シミュレーション結果から牌の撹拌率(牌の撹拌の度合い)について分析した.さらに実機による実験結果との比較を行い,マルチエージェントモデルの妥当性について検証した.
著者
富沢 大介 池田 心 シモンビエノ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2560-2570, 2012-11-15

囲碁における定石や将棋における定跡は,主にゲーム序盤で用いられる決まった手順の互角の応酬であり,長い時間をかけて研究・洗練された人智の結晶である.テトリスやぷよぷよなどの落下型パズルゲームの多くでも,展開を有利にするための定石形が存在し利用されている.これらのゲームを囲碁や将棋と比較すると,自分と相手双方に盤が存在し邪魔は間接的にしか行われない一方で,操作対象の与えられ方(俗にツモと呼ばれる)にランダム性があり,状況に応じて用いる定石や配置順を変えていかなければならない難しさがある.本論文では,関連性行列という形で状態と定石を表現する定石形配置法を提案し,これをぷよぷよにおける連鎖の構成に適用することでその有効性を示す.
著者
小沢 一文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.100-107, 1980-03-15
被引用文献数
2

この論文では 仮数分布は逆数分布であるという仮定を用い 浮動小数点演算において生ずる相対丸め誤差の分布を求めている.また 適合度の検定を行うことによって その分布の妥当性を確認している.その分布を用いて 相対丸め誤差の平均 分散を与える公式も導いている.この公式は パラメータd(≡b^(-i) bは基底で tは仮数の語長のベキ級数展開の形をとっていて その第一項はTsao等によって得られた公式そのものである.実験結果は 有効桁が少ないとき(dが大きいとき)は本論文の公式の方が秀れていることを示している.
著者
竹内 章 飯田 弘之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2370-2376, 2014-11-15

柔軟な戦略に基づいた人間らしい思考をコンピュータで実現するため,ゲームにおけるクリティカルな局面の識別は重要である.本研究は,将棋における投了局面の識別に着目する.共謀数や証明数と類似の指標は,投了局面を識別するのに有効である.有利な局面に制限した探索におけるノード数が勝ちの反証数と類似であることから,この探索の有効分岐因子を用いた投了モデルを提案する.提案モデルの妥当性を確認するため,プロ棋士による投了に至る局面を分析する.提案モデルによって,有効分岐因子が減少することをとらえ,プロ特有の投了が説明できる.For implementing a human-like thinking based on flexible strategies, the critical positions identification in games is important. This study focuses on the resignation positions identification in shogi. Similar factor to conspiracy numbers or proof numbers is effective to identify the resignation positions. Since the number of nodes in the search restricted to advantageous positions is similar to disproof numbers for wins, we propose a resignation model using the effective branching factor of the search. In order to confirm the validity of the proposed model, we analyze many positions leading to resignation by professional shogi players. Recognizing that the effective branching factor is reduced, the proposed model can explain the characteristic resignation positions.
著者
中西 英之 吉田 力 西村 俊和 石田 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1356-1364, 1998-05-15
参考文献数
18
被引用文献数
19

FreeWalkは休憩時間の雑談のような非形式的なコミュニケーションを支援する電子会合システムである.FreeWalkはだれもが互いに出会い,実世界と同じように振る舞うことのできる3次元仮想空間を提供する.会合の参加者は自分のカメラ画像が張りつけられた3次元物体として表され,位置と向きを持つ.参加者は空間内を自由に動き回ることができる.参加者の音声は,その音量が互いの距離に反比例して聞こえる.話したい参加者同士が互いに近づいて会話グループを構成するので,混乱することなく多くの人々が会合に参加することができる.FreeWalkのシステムは位置関係のみを管理するコミュニティサーバと各参加者に対応するクライアントからなる.カメラ画像や音声はクライアント同士の間で必要に応じて送受信される.FreeWalkの使用実験を研究室内に加え,大学間や海外を含む多地点間で行い,動作性能の評価を行った.FreeWalk is a desktop meeting system to support informal communication just like chatting at a coffee break.FreeWalk provides a three dimentional virtual space where everybody can meet and can behave just as they do in real life.Each participant is represented as a three dimentional object on which his/her live video is mapped,and has a location and a view direction.He/she can move and turn freely in this space.Voice volume is inversely proportional to the distance between sender and receiver.A participant approaches others and form a meeting organization in order to talk to them and so that many participants can talk without confusion.The FreeWalk system consists of a community server and clients.A community server controls information about locations and view directions.Live video and voice data are transferred between clients on demand.We held meetings experimentally with using FreeWalk in various environments to evaluate operational performance.
著者
松山 隆司 竹村 岳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.2149-2158, 1998-07-15

本論文では,多重フォーカス画像(カメラのフォーカスを規則的に変化させながら撮影した複数枚の画像)を用いた実時間3次元距離計測のためのカメラシステムの開発,距離計測アルゴリズムの提案および,それらの性能評価について述べる.以前提案した距離計測法5)では多数枚の画像を用いる必要があったが,今回提案するアルゴリズムでは,3枚多重フォーカス画像から高精度に距離計測ができる.これは,多重フォーカス画像から生成したspatio?focal画像における明度分布の対称性を利用した高精度モデル当てはめ法によるものである.さらに,このアルゴリズムでは,最適モデル当てはめを反復計算なしに求める計算法をとっており高速計算が可能となっている.論文の後半では,3枚の多重フォーカス画像を同時に撮影することが可能なカメラシシステムの開発について述べ,カメラおよびアルゴリズムの性能を実験によって評価する.一般に距離計測精度は様々なカメラパラメータに影響されるが,今回開発したシステムでは,良い条件の下での計測誤差は0.3%となっている.
著者
白水 菜々重 松下 光範
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.2276-2287, 2013-09-15

本研究の目的は,イベントにおいてTwitterやUSTREAMといった即時性の高いソーシャルメディアを利用することが,そのイベントのコミュニティの形成・維持にもたらす影響について明らかにすることである.近年,共通の関心や興味に基づいて人々が自発的に開催する勉強会やカンファレンスなどで,TwitterやUSTREAMといったリアルタイム性の高いWebサービスを利用してオンラインコミュニケーションを行うケースが増加している.本稿では,このようなイベント開催時にTwitterを介して行われる参加者同士のインタラクションの調査,ならびにそれを補完するアンケート調査を行い,このようなソーシャルメディアを利用したイベントを取り巻くコミュニティの特徴について分析を行った.その結果,(1)従来のオフラインだけのコミュニティには見られない立場を超えたインタラクションが観察され柔軟なコミュニティが形成されていること,(2)会場だけでなく遠隔地から上記のサービスを利用して参加するユーザの中にも情報伝播のhubになる人物が存在すること,(3)参加者の流動性がイベントの継続において重要であること,という知見が得られた.
著者
齋藤彰一 泉 裕 上原 哲太郎 國枝 義敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.3478-3488, 2002-11-15
被引用文献数
3

VPN(Virtual Private Network)は,エクストラネットの構築のため,あるいはユーザがインターネットから安全にリモートシステムにアクセスするため広く用いられている.ある組織において,管理を部署ごとに分散させる必要からLAN内にファイアウォールが階層的に構成される場合がある.このような場合,あるユーザが組織外から自分の所属部署にアクセスするには,複数のVPNゲートウェイを経由する必要がある.しかし,一部のオペレーティングシステムに,同時に複数のVPN接続を構成できないものがある.そこで我々は,単一のVPN接続を用いて,複数のVPNゲートウェイを介して目的のVPNサーバに接続可能なVPN中継システムを提案する.本論文では,既存のVPNクライアントとVPNサーバにいっさいの変更を加えずに,PPTPを用いて中継システムを実現する方法について述べる.本システムの性能評価において,イーサネットによる4段中継の場合で,約10Mbpsの転送性能を示した.VPN (Virtual Private Network) is commonly used to build extranets and to allow users to access from the Internet toremote systems securely. There are some organizations of whichLAN is constructed with layered firewall systems to deploy thenetwork administration to each division. In such organizations,when a member wants to access to his division's network fromthe outside of the organization, he needs to connect the VPN server via multiple VPN gateways. Unfortunately, there are some major operating systems which cannot establish multipleVPN connections at the same time. Therefore, we propose a VPN relay system which can connect a VPNserver via multiple VPN gateways with single VPN connection.This paper describes an implementation of the VPN relay systemusing PPTP without any modifications to VPN client systems and VPN servers. According to the performance evaluation, when data were transferedvia 4 VPN gateways, the system achieved a throughput of about 10Mbps.
著者
川島 拓也 渡邊 恵太
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1483-1492, 2023-11-15

エンタテインメント性の評価は難しく,評価基準や実験手法が模索されている.エンタテインメントの本質を「心の動き」とすると,評価には体験中のリアルタイムな感情を観測する必要がある.そこで本研究では,リアルタイムな思考を観測する思考発話法を応用した,「あ」だけ発声する「あアラウド法」を提案する.あアラウド法は,実験参加者がタスク中に「あ」の大きさやトーンを変化させて感情を表現し,実験者が実験参加者の感情の強弱や種類を観測する手法である.「あ」は日常的に感動詞として使われているため,自然に感情を表現するのに適していると考察する.実験では「あ」が表現する感情の分析と,他の発声方法との比較を行い,リアルタイムな感情の観測手法としての有用性を調査する.実験結果からエンタテインメント性の評価への利用可能性を示す.
著者
宮下 剛輔 栗林 健太郎 松本 亮介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.677-686, 2020-03-15

システムの大規模・複雑化にともない,サーバの構築・運用を効率化するために,サーバの設定状態をコードで記述する手法が数多く提供されている.それらの手法を効率良く扱うプロセスとして,テスト駆動開発の手法をサーバ構築に応用したProvisioning Testingという手法が提案されている.この手法を支援するテストフレームワークもいくつか登場しているが,あるものは特定の構成管理ツールに依存,またあるものはOSごとの違いを自ら吸収しなければならないなど,汎用性に難がある.シェルコマンドを直接記述する必要があり,可読性に難があるものも存在する.そこで本論文では,生産性や保守性を向上するために,サーバの設定状態を汎用的かつ可読性の高い宣言的なコードでテスト可能なテストフレームワークを提案する.提案手法では,汎用性を高めるために,OSや構成管理ツール固有の振舞いを整理して一般化し,運用業務で発生するコマンド群を体系化・抽象化した汎用コマンド実行フレームワークを定義する.続いて,テストコード記述の抽象度を高め可読性を上げるために宣言的な記法で汎用コマンド実行フレームワークを操作できる制御テストフレームワークを定義する.これにより,管理者がOSや構成管理ツールの違いを気にすることなく,可読性の高いコードでサーバの設定状態を容易にテストできるようになり,サーバの運用・管理コストを低減できる.提案するテストフレームワークをServerspecと名付けた.提案手法の評価は,生産性,保守性に加え,拡張性,実装公開後の影響の4つの観点で行った.
著者
大附 辰夫 佐藤政生 橘 昌良 鳥居 司郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.647-653, 1983-09-15
被引用文献数
1

複合長方形領域を重複なく最小個の長方形に分割する問題を扱う.ここでは 複合長方形領域が中空部分(窓)を含んだり 複数個の連結成分から成っているような一般的な場合を考察する.分割手順は二つのアルゴリズムから成っている.1番目のアルゴリズムは 縮退していない複合長方形領域を最小個の長方形に分割するものである.同じXまたはY座標上の二つの凹点間が領域内であるとき 複合長方形領域は縮退しているといい そうでない場合には縮退していないという.2番目のアルゴリズムは 与えられた(縮退している)複合長方形領域を最適にいくつかの縮退していない複合長方形領域に分解するものである.複合長方形領域の頂点の数をnとすると 1番目のアルゴリズムの計算複雑度はO(n log n)となり 2番目のアルゴリズムはO(n^5/2)となることを報告する.ここで扱う問題は LSI のアートワーク処理 画像処理 図形データベースなどにおける基本的問題の一つである.
著者
池辺 正典 田中 成典 古田 均 中村 健二 小林 建太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1687-1695, 2006-06-15

近年のインターネットの複雑化にともない,Web の自動解析による情報取得に対する需要が高まっている.そのため,Web ページをカテゴリに分類する手法やWeb の関係情報を解析する手法が数多く提案されてきた.しかし,既存の研究では,Web の自動解析は,リンク関係を中心とした解析を行っており,リンク関係のないWeb ページを関連付けることが困難であった.このため,本論文では,リンク構造解析だけでなく,形態素解析によって任意の単語から関係情報の抽出を行うことで,リンク関係のないWeb ページを関連付ける.また,その結果と品質判定を行ったリンク構造解析結果を組み合わせることで,信頼性の高いWeb ページの関係図を作成する.さらに,アルゴリズムの評価として,Web から取得した情報を利用して,組織の関係図を作成する.そして,既存研究においての主要な方式であるリンク構造解析による結果との比較を行った.評価方式には,リンク構造解析で一般的に用いられている評価値とグラフ理論による可視化を採用し,その結果から本方式の有用性を確認した.
著者
上野山 勝也 大澤 昇平 松尾 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.2309-2317, 2014-10-15

経済の成熟にともないベンチャー企業への期待が高まっている.ベンチャー企業の上場または事業売却(以降Exit)を高い精度で予測できれば,資金や人材はより適正なベンチャー企業に移動するため価値は高い.一方で,ベンチャー企業のExitを予測するモデルは,データ取得の制約からベンチャー企業の「社内資源」特に資金調達に関する素性を元にしたものが多かった.一方で本稿は「社外資源」である創業メンバーや従業員が持つ過去の人間関係に関わる資産がExitに寄与しているという仮説に基づきExitを予測する手法を提案する.Web上に構築されているCruchbaseという人材データベースを活用することで,これまでデータ取得が困難であった転職履歴情報を活用することでExitを予測する手法を提案する.2万社に対し人材の転職履歴情報を用いてExitの予測を行うことで,用いない手法より10ポイント高い精度でExitを予測できることを確認した.
著者
角 康之 伊藤禎宣 松口 哲也 シドニーフェルス 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2628-2637, 2003-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
50

人と人のインタラクションにおける社会的プロトコルを分析・モデル化するために,開放的な空間における複数人のインタラクションを様々なセンサ群で記録し,蓄積された大量のデータに緩い構造を与えてインタラクションのコーパスを構築する手法を提案する.提案手法の特徴は,環境に遍在するカメラ/マイクなどのセンサ群に加えて,インタラクションの主体となるユーザが身につけるカメラ/マイク/生体センサを利用することで,同一イベントを複数のセンサ群が多角的に記録することである.また,赤外線IDタグシステムを利用して,各カメラの視野に入った人や物体のIDを自動認識することで,蓄積されるビデオデータに実時間でインデクスをつけることができる.本稿では,デモ展示会場における展示者と見学者のインタラクションを記録し,各人のビデオサマリを自動生成するシステムを紹介する.個人のビデオサマリを生成する際,本人のセンサデータだけでなく,インタラクションの相手のセンサデータも協調的に利用される.We are exploring a new medium in which our daily experiences arerecorded using various sensors and easily shared by the users, inorder to understand the verbal/non-verbal mechanism of humaninteractions. Our approach is to employ wearable sensors (camera,microphone, physiological sensors) as well as ubiquitous sensors(camera, microphone, etc.); and to capture events from multipleviewpoints simultaneously.This paper presents a prototype to capture and summarize interactionsamong exhibitors and visitors at an exhibition site.
著者
森 幹彦 池田 心 上原 哲太郎 喜多 一 竹尾 賢一 植木 徹 石橋 由子 石井 良和 小澤 義明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.1961-1973, 2010-10-15

平成15年度に必履修科目として導入された高等学校普通教科「情報」を履修した学生が平成18年度から大学に入学してきている.これに対して,大学における情報教育も種々の対応が求められているが,そのためには新入生の状況把握が必要となっている.本論文では,平成18年度から京都大学で継続的に実施している情報教育についての新入生アンケートから大学新入生の状況の変化を調査し分析する.その結果,高等学校における教科「情報」の履修状況が多様で,十分に実質化していない可能性も残っていること,アプリケーションソフトの利用に関するスキルの向上などが見られること,情報セキュリティに関するリテラシは改善傾向にあるが不十分であること,大学における学習への希望としてプログラミングをあげる学生が多いことなどが明らかになった."Information Studies" are the new subjects for information/computer literacy which were introduced into high school as compulsory subjects from 2003. Students who took these subjects have entered in universities since 2006, and education in university has to deal with the change of students. For that, it has been necessary to know what and how much these students have knowledge, skills and practice about information/computer literacy. Since 2006, the authors have conducted questionnaire surveys of the literacy to freshmen in Kyoto University. This paper reports the results of the surveys from the view point of information/computer education. The results show the learning experience about Information Studies in high school has wide variety, and suggests Information Studies may not well implemented in some high schools. Skills to use application software are improved gradually. Literacy about information security still remains insufficient while it is also improved. Many freshmen listed computer programming as a matter that they want to learn in university.
著者
荒木 哲郎 池原 悟 土橋 潤也 笹島 伸一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1116-1125, 1997-06-15
被引用文献数
4

べた書きかな文のかな漢字変換精度を向上させるためには,変換の過程で正解を漏らさないように,辞書から,かな文字列に含まれる単語候補をすべて抽出して組み合わせて評価することが必要であるが,文の長さが長くなるにつれて単語候補の組合せの数が増大し解析が困難となる問題がある.従来,べた書きの漢字かな混じり文の場合は,字種の変化点に着目して仮文節境界を決定する方法が提案されているが,この方法は字種が,かな文字に限定されるべた書きかな文には適用できない.かな文の場合も,何らかの方法で仮文節境界を見つけることができれば,解析の困難さの問題は解決できると期待される.本論文では,かな文字列の連鎖確率の変化点に着目した仮文節界の推定法を提案する.具体的には,マルコフ連鎖確率モデルによる仮文節境界の推定法を,(1)文節境界の学習の有無,(2)連鎖確率の変化点の再評価の有無,および(3)マルコフ連鎖確率の適用法の違いの3点に着目して,8通りに分けて評価した.その結果,文節境界を学習したデータを用いて連鎖確率の落ち込む点を抽出し,その点に文節境界の存在を仮定して再評価する方法が最も優れていること,また,その際,マルコフ連鎖確率は前方向,後方向を組み合わせて使用するのが良いことが分かった.この方法によって推定された仮文節境界の精度は,適合率94.0%,再現率76.8%で,従来,漢字かな混じり文の解析で使用されている仮文節境界推定法(字種の変化点に着目する方法)の精度よりも良ことから,提案したマルコフ連鎖確率モデルの方法はべた書きかな文の解析に有効と判断できる.In order to improve the precision to translate from the non-segmented "Kana" sentences into "Kanji-Kana" sentences,it is necessary to examine all of the word candidates extracted from the dictionary for the sentence.However,the amount of computer memories required for the translating processing explodes in many times,because the number of the combinations of candidated for "Kanji-Kana" words grows rapidly in propotion to the length of the sentence.The memory explosion can be prevented if a sentence is separated into "bunsetsu".Therefore,a method to correctly find the boundaries of bunsetsu are considered to be a key technique to improve the precision of "Kana"-"Kanji" translation.However,the useful method to find them are not known yet.This paper proposes a new method of finding provisional boundaries of "bunsetsu" for non-segmented "Kana" sentences using 2nd-order Markov model."Precision factor" and "Recall factor" for provisional boundaries of "bunsetsu" determined by this method,were experimentally evaluated using the statistical data for 70 issues of a daily Japanese newspaper.