著者
岡田 智 飯利 知恵子 安住 ゆう子 大谷 和大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.254-267, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
43
被引用文献数
3

本研究ではASDのある子ども116名のWISC-IVのデータを収集し,従来のWISC-IVの4因子モデルとCHC理論に準拠した5因子モデルを想定した確認的因子分析を行い,その適合度及び下位検査構成を検証した。どのモデルも高い適合度を示したが,「結晶性能力」「視覚空間」「流動性推理」「短期記憶」「処理速度」で構成されるCHCモデルが最も当てはまりがよかった。下位検査構成では「行列推理」が「視覚空間」に負荷する結果となり,海外における因子分析の結果とは異なるものであったが,日本における先行研究と一致した。また,5つのCHCモデルによる合成得点を用いて,クラスター分析を行い5つのクラスターを抽出した。言語能力-視覚空間能力の優位性と処理速度の低さに特徴がある自閉性障害及びアスペルガー障害で従来から報告されてきたプロフィールが確認されたものの,「短期記憶」や「処理速度」に強みがあるクラスターも同定された。また,「視覚空間」と「流動性推理」の得点に乖離があるクラスターもあり,WISCモデルよりもCHCモデルでASDのある子どもの個人内差をより詳細に把握できることを示した。
著者
高橋 登 杉岡 津岐子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.135-143, 1988-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate how children understood the plot of animated cartoons. Elementary school children from 1st grade through 6th grade and college students were to watch a T.V. cartoon. And then, they were asked about the story. The content of the interview consisted of two points: One was about the recall of the story, i.e., how much they would remember the content of the story, and the other was about the understanding of the characters, i.e., what attitudes they have toward them. The main results were as follows: 1) All groups of Ss remembered the story in structurally organized manner, but 2) the lower graders' recall was more episodic ; 3) Elementary school children were seen to have more extreme attitudes toward the characters than college students. It was concluded that story understanding was at first based on fragmentary information gradually becoming based on more integrated information.
著者
浦上 涼子 小島 弥生 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.146-157, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
48
被引用文献数
12 4

「痩身理想の内在化」とは, 社会的に魅力がある, 価値があるとされる痩身を, 自己の価値観や理想として取り込んでしまう概念である。本研究の目的は, この痩身理想の内在化と痩身願望との関係について検討することであった。具体的には, 雑誌からの影響の受けやすさ, 他者からの承認欲求, 自尊感情といった個人特性が, 痩身理想の内在化を媒介した場合に痩身願望へどのように結びつくかについて, 男女大学生を対象に多母集団同時分析を行い, その相違点について検討を行った。男女大学生585名を対象に質問紙調査を実施し, 現在の体重(体型)を下回る体重が魅力的だとする336名について分析を行った結果, 男女ともに, 個人特性は痩身理想の内在化を媒介することで, 痩身願望とより強い関連が認められた。また, 男女によって個人特性が直接的に痩身願望に結びつくパターンと痩身理想の内在化と媒介するパターンに違いがみられた。本研究の結果から, 痩身理想の内在化は摂食障害の危険因子である痩身願望に大きな影響を及ぼす要因であることが明らかになった。今後は, この痩身理想の内在化に焦点を当てて実証的な研究を行う必要性が示唆された。
著者
新井 雅
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.313-327, 2022-09-30 (Released:2022-10-20)
参考文献数
56
被引用文献数
1

本研究では,スクールカウンセラー(SC)活用調査研究委託事業が開始された1995年から近年までの日本のSC研究の動向を検討することを目的とした。全国の公立中学校へのSC配置が正式に進められた2001年を1つの基準として,表題・副題にSC等の記載がある1995―2019年のSC研究論文数(学術誌・紀要)の推移を把握すると共に,学術誌の研究内容について計量テキスト分析を行った。その結果,学術誌・紀要全体では,2000年以前より2001年以降の論文数が増加していた一方,2001年以降の推移に着目すると,SC配置が年々増加しているにもかかわらず,学術誌・紀要の増加傾向はみられなかった。学術誌の内容分析では,2000年以前は,学校現場でのSCの役割・機能を模索し評価する研究が行われ,2001年以降は,主に不登校支援や相談室の特徴・機能を探る研究等が行われた時期を経た後,近年,教師等との効果的な連携・協働を進めるための研究が盛んに行われている傾向が示された。1995年以降,研究論文の量的な蓄積と共に,学校教育が抱える多様な諸問題・ニーズに呼応するかたちで,扱われる研究内容も変化している。これらの動向を踏まえて,今後のSC研究の発展的課題について考察した。
著者
伊藤 美奈子 中村 健
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-130, 1998-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
4

本研究では, 教師312名とカウンセラー121名を対象に, 次に挙げる (1)~(4) の項目に基づき制度に対する両者の意識や意見を尋ねた。(1) 双方が教師・スクールカウンセラーに期待する役割,(2) スクールカウンセラーに必要と考える条件,(3) 制度への関心,(4) 制度導入に伴う変化の予測である。また, カウンセラーについては, 学校経験 (教職歴) の有無により二分し (経験あり群・経験なし群), 教師群を含む3群間で比較検討を行った。その結果, 教師群では双方の専門性をいくぶん折衷した役割を期待するのに対し, 経験なし群は両者の専門性を強調した関わりを良しとし, 経験あり群は教師・スクールカウンセラーどちらにも積極的な関わりを期待していた。またスクールカウンセラーに求める条件としては, 双方ともに専門性を最優先していたが, 3群間の比較より, 教師群は「教職経験」についても相対的に重視していることがわかった。また制度への関心や期待度は, 経験あり群が最も高く, ついで経験なし群で, 教師群は制度に対する関心も低く情報量も少ないことが示唆された。今後の見通しについては, 積極的に評価した経験あり群に対し, 教師群では生徒指導上の不安を, 経験なし群は教師集団との関係において少々の不安を感じていることが示唆された。
著者
五十嵐 哲也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.64-76, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
43
被引用文献数
9 4

本研究は, 中学進学に伴って変化した不登校傾向に対し, どのような学校生活スキルが関与しているのかという点を検討した。383名に対し, 小学6年と中学1年の時点で調査が実施され, 以下の結果が得られた。1)小学校段階では, 学習に関連するスキル不足があらゆる不登校傾向の増大と関連していた。また, 「休養を望む不登校傾向」はコミュニケーションスキル, 「遊びを望む不登校傾向」は集団活動や健康関連のスキルが関与していた。2)中学校段階では, 学習, 健康維持, コミュニケーションのスキルがほぼ全ての不登校傾向と関連していた。3)中学進学に伴う変化については, 中学校での学習や健康維持のスキルが全般的に関与していた。また, 「別室登校を希望する不登校傾向」増加には, 集団活動スキルの関与が特徴的であった。「遊び・非行に関連する不登校傾向」が増加した者は中学校での進路決定スキル, 「精神・身体症状を伴う不登校傾向」が増加した者は中学校でのコミュニケーションスキルの低さが特徴的であった。「在宅を希望する不登校傾向」が増加した者は, 中学校段階でのあらゆる学校生活スキルの低さが認められた。
著者
茂垣 まどか
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.344-355, 2005-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本論の目的は, 現代青年の自我理想型・超自我型人格の精神的健康の違いについて量的・質的に検討することである。研究1: 大学生 (554名, 平均19.68歳) を対象に質問紙調査を行い, 自我理想型・超自我型人格尺度 (EI-SES; 第1因子「志向性」, 第2因子「べきの専制」[以下「べき」]) と違和感尺度 (現在の自分自身に対する違和感) を作成し, 両尺度の信頼性を確認した。精神的健康の指標 (違和感: 逆転自尊心, 充実感) との相関分析では,「志向性」は正の相関を示し,「べき」はおおむね負の相関を示した。またEI型 (「志向性」高かっ「べき」低) とSE型 (「志向性」高かっ「べき」高) とを比較すると, 精神的健康の指標はEI型がSE型より高かった。研究2: EI-SESの下位尺度得点の高低を基準に面接調査を依頼したところ, 16名の協力を得た。「志向性」および「べき」の日常場面における様相と, 理想がかなわない葛藤場面での反応について面接した。その結果, 尺度の妥当性が確認された。また, 同じく「志向性」が高いEI型とSE型人格の間には, 精神的健康という側面で違い (EI型>SE型) が見られることが示された。
著者
名取 洋典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.244-254, 2007-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
8 3

本研究では, 指導者のことばがけが少年サッカー競技者の「やる気」におよぼす影響について, ことばがけに対する「理由認知」と「感情」という認知的側面との関連から検討した。特に, 技術指導のための, 目標と合致した基準に沿ったことばがけが, 高い競技水準にある競技者の動機づけを高めるためにも有効であることを明らかにすることを目的とした。14の強豪チームに所属する267名の小学5, 6年生を対象に, 成功場面・失敗場面×肯定的な言語的フィードバック・否定的な言語的フィードバックの4つの練習状況を描いた図版とシナリオ文を提示し,「やる気」の変化量および認知的側面の測定を行った。分散分析の結果, 否定的なフィードバックに比べ肯定的なフィードバックにより「やる気」が高まることが示された。認知的側面との関連では, ことばがけに対して「教授的理由」と捉えることで「安堵感情」が高まり,「やる気」が高まることが示された一方で, 失敗した際の肯定的なフィードバックについてはこの関連がみられなかった。以上の結果から, 競技者の動機づけを高めるのに, 指導者が目標に合致した基準に従ったフィードバックを行うことの有効性が示唆された。
著者
木村 優
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.464-479, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
28
被引用文献数
12 2

本研究の目的は, 授業における教師の感情経験と, 教職の専門性として説明されてきた認知や行動, さらに動機づけとの関連を検討することであった。高校教師10名に面接調査を実施し, グラウンデッド・セオリー・アプローチによるデータ分析を行った。その結果, 《感情の生起》という現象の中心概念が抽出され, (1) 教師は生徒の行為と自らが用いる授業方略に対して感情を経験し, (2) 状況により教師は異なる感情を混在して経験することが示された。そして, (3)教師が経験する感情の種類, 強さ, 対象によって, 《感情の生起》現象には, 心的報酬の即時的獲得, 認知の柔軟化・創造性の高まり, 悪循環, 反省と改善, 省察と軌道修正, という5つの過程が見出された。喜びや楽しさなどの快感情は教師の活力・動機づけを高めることで実践の改善に寄与し, さらに授業中では教師の集中を高めることで瞬間的な意識決定と創造的思考の展開を促進していた。一方, いらだちなどの不快感情は教師の身体的消耗や認知能力の低下を導くが, 苦しみや悔しさなどの自己意識感情は授業後の反省と授業中の省察に結びつき, 教師が実践を改善し, 即興的に授業を展開するのを可能にしていた。
著者
清水 由紀 内田 伸子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.314-325, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
5 2

本研究では, 小学校に入学した児童が, 一対多のコミュニケーションにおける言語形態 (二次的ことば) やきまりの習得を含む教室ディスコースへとどのように適応していくのかについて検討した。1年生の4月と7月の朝の会において観察された相互作用を, カテゴリー分析と事例分析により比較した。その結果, 入学直後の教師による発話の指導は, 発話形態によって異なっていた。入学直後, 言い方や発話形式が完全に決まっている発話は, 教師が丁寧に説明や指示を行い, 児童がそれをそのまま繰り返していた。一方, 考えを伝える発話は, 教師が発話形式のモデルを示し, 児童がそれを積極的に取り込むという習得過程が見られた。そして7月になると, きまりに沿いながらも内容豊かで活発な児童主導の活動が行われるようになっていた。また仲間関係調査, 親に対するアンケート, 教師に対するインタビューより, このような適応過程は, 児童を取り巻く教師, 仲間との対人関係の成立と共に, 朝の会への関心の増加や, 教師による児童の状態の適切な認知により支えられていることが示唆された。
著者
田島 充士 茂呂 雄二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.12-24, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
6 1

本研究は日常経験知と矛盾する科学的概念を学習した中学生を対象に, 両者の矛盾関係の解消を目指した説明を求める半構造化面接を実施し, この中で対立する日常経験知をどのように関連づけるのかという視点から, 概念理解の実態を検討したものである。予備調査の質問紙で科学的概念を支持した被験者 (科学群) に対しては日常経験知に基づいた情報を, また素朴概念を選択した被験者 (素朴群) に対しては, 科学的概念に基づいた情報を提示して, それぞれの矛盾を解消するよう求める対話に参加してもらった。その結果, 矛盾を解消できた者 (解消群) とできなかった者 (不解消群) に分かれた。科学解消群では論理的な解釈によって両者の矛盾情報を統合するような説明を, 科学不解消群では日常経験知を無視するような説明を, また素朴不解消群においては科学的概念と日常経験知を適用する文脈を分離させるような説明を行う傾向にあった。本研究ではこれらの傾向を, 日常経験知の「調整」「圧殺」「すみわけ」と名づけ, パフチン理論の立場から「調整」を, 学校教育において目指されるべき概念理解活動として位置づけた。
著者
植阪 友理 内田 奈緒 佐宗 駿 柴 里実 太田 絵梨子 劉 夢思 水野 木綿 坂口 卓也 冨田 真永
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.404-418, 2022-12-30 (Released:2022-12-30)
参考文献数
44
被引用文献数
1

自立的に深く学ぶ力の育成は,新教育課程において強調されている重要な教育目標である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により,家庭で自ら学習する時間が増加したことから,以前にもましてこの力の重要性か゛高まっている。一方で,学習者はこうした力を十分に身につけていないという実態か゛ある。本研究て゛は,大学関係者と高校教員か゛連携し,新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけて休校中であった公立高校において,公立高校1年生33名を対象に,自学自習を支援する「オンライン学習法講座(全6回)」を実践した。本実践を開発するにあたり,オンラインならではの指導上の工夫を導入するとともに,オンラインを前提としない従来の指導法上の工夫をどのように統合すべきかについても検討した。講座を実施した結果,オンラインて゛の実施ではあったが,生徒に講座の趣旨か゛十分に伝わっている様子が確認されるとともに,高い満足度が得られた。また,一部の生徒ではあるものの複数の講座を統合的に利用する様子や,学校現場の指導法の変化も確認された。
著者
新井 雅 余川 茉祐
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.389-403, 2022-12-30 (Released:2022-12-30)
参考文献数
47

本研究では,小学生を対象に,自殺予防の保護因子としての援助要請に焦点をあて,それらに関わる態度やスキルの向上をねらいとする心理教育プログラム(SOS の出し方・受け止め方に関する教育)の効果を検討し,今後の自殺予防教育への示唆を得ることを目的とした。計2回の授業から構成されるプログラムを学級単位で実施し,友人・教師に対する被援助志向性,援助要請スキル,友人に対する援助スキルを測定する尺度を用いた自記式質問紙により効果検討を行った。対象となった小学5, 6年生111名のデータを用いて解析を行った結果,援助要請スキルや友人に対する援助スキルなどにおいてプログラムの肯定的な効果が示された一方,友人に対する被援助志向性の一部の下位尺度では男子児童と女子児童で効果の及び方に違いが生じていた。また,プログラムの実施前後における援助・被援助のスキル(援助要請スキルと友人に対する援助スキル)と友人・教師に対する被援助志向性の変化の関連について,部分的に有意な結果が示され,これらの関連は特に女子児童において特徴的であった可能性が推察された。以上の結果を踏まえて,今後の小学生を対象とした自殺予防教育に関する実践および研究の発展可能性について考察した。
著者
榊原 彩子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.92-101, 1996-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
4 3

According to previous theories, effects of repeated exposure of music on pleasingness depend on uncertainty of the music. In this study,“redundancy of rhythm pattern” and “prototypicality of harmony” were manipulated as the factors of uncertainty. The purpose of the following study is to examine effects of repeated exposure on pleasingness determined by the two above mentioned factors. Subjects heard tone sequences that represented four levels of redundancy and four levels of prototypicality, nd rated them on 7-point scales of “complexity” and “pleasingness”. Pleasingness was shown to be an inverted U-function of redundancy and prototypicality. And then, each tone sequence was repeated and rated pleasingness after each repetition. In a case of sequence whose redundancy caused most pleasingness before repetition, pleasingness of that sequence was decreased by repetition. But, in a case of sequence whose redundancy was too low to cause pleasingness before repetition, pleasingness was seen increased by repetition. On the other hand, pleasingness determined by prototypicality was not affected by repetition, and kept initial pleasingness during repetition.
著者
内田 奈緒
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.366-381, 2021-12-30 (Released:2021-12-28)
参考文献数
45
被引用文献数
7

本研究の目的は,英語語彙学習において効果的な方略は学年により違いがあるのではないか,また,実態としてはどのような方略がとられているのか,その既定要因は何かを検討することであった。中学1―3年生233名,高校生1―3年生304名を対象に,学習目標,学習観,方略使用に関する質問紙調査および語彙サイズテストを実施した。分析の結果,方略使用については,反復方略は一貫して多く使われる一方,より深い処理を伴う関連づけ方略および表現・活用方略の使用は停滞するか減少する傾向が示された。しかし,語彙サイズと関連づけ方略の間には中3以降で正の相関が見られ,ある程度学習が進んだ段階で関連づけながら学習することの有効性が示唆された。さらに,多母集団同時分析を行った結果,高校生では,学習方略と学習目標から語彙サイズへの影響が見られたのに対し,中学生では語彙サイズへの有意なパスは確認されなかった。特に関連づけ方略が有効となる高校においてその使用が増えていかない実態が明らかになり,そのことを考慮した上で指導する必要性が示唆された。
著者
清河 幸子 伊澤 太郎 植田 一博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.255-265, 2007-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
10 3

本研究では, 他者との協同の中で頻繁に生じると考えられる, 自分自身での課題への取り組み (試行) と他者の取り組みの観察 (他者観察) の交替が, 洞察問題解決に及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には, Tパズルを使用し,(1) 1人で課題に取り組む条件 (個人条件),(2) 20秒ごとに試行と他者観察の交替を行いながら2人で課題に取り組む条件 (試行・他者観察ペア条件),(3) 1人で課題に取り組むが, 20秒ごとに試行と自らの直前の試行の観察を交互に行う条件 (試行・自己観察条件) の3条件を設定し, 遂行成績を比較した。また, 制約の動的緩和理論 (開・鈴木1998) に基づいて, 解決プロセスへの影響も検討した。その結果, 試行と他者の取り組みの観察を交互に行うことによって, 言語的なやりとりがなくても, 解決を阻害する不適切な制約の緩和が促進され, 結果として, 洞察問題解決が促進されることが示された。その一方で, 試行と観察の交替という手続きは同一であっても, 観察対象が自分の直前の試行である場合には, 制約の緩和を促進せず, ひいては洞察問題解決を促進することにはならないことが明らかとなった。
著者
稲垣 佳世子 波多野 誼余夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.191-202,251, 1968-12-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
13 11

The present study aimed at investigating motivational influences on epistemic observation of a physical phenomenon. Two experiments, which followed Pre-test-Instruction-Post-test paradigm, were undertaken. Ss of 2 experimental groups were motivated for observation by receiving information discrepant with their prior beliefs.One hundred and twenty-five 3rd-graders served as Ss of the 1st experiment. In the Instruction session, they observed and confirmed by a scale conservation of weight under deformations of a clay ball, and under changes of man's posture. Immediately before the observation, pupils of a group termed “Discrepant Information Group” (DI) were shown a table of response frequencies about conservation by an experimenter. Distribution of responses, which were pretended to be opinions of pupils of another, was markedly differnt from theirs, Ss of a “Discussion Group” (D) were required to anticipate conservation or non-conservation and to debate on the question. Control Group (C) Ss were given neither of these experimental manipulations.The results were as follows:1) Ss who observed the event after incongruity was aroused (as in DI) could recognize the event more accurately and could more readily generalize the principles of conservation.2) If Ss were strongly committed to a certain belief (as in D), they often conceptualized ambiguous results in a biased manner, making them consistent with the belief.As to generality of learning, however, performance of D Ss did not differ significantly from that of C Ss. This result was an unexpected one. Its interpretation was that there was low incongruity in D, because proponents of conservation were highly predominant at the discussion.In order to verify the interpretation mentioned above, the 2nd experiment was undertaken. Eighty-seven 4th-graders observed and confirmed by a scale conservation of weight under dissolution of sugar into water. One school class was assigned to C. Two groups of 22 pupils, of whom 2/3 were non-conservers, were selected from 2 other classes and served as D. They were expected to experience high incongruity during the discussion.The results showed that, compared with C, improvement of performance was greater among D. They could state adequate explanations of conservation of weight, generalize more readily the principles of conservation, and resist extinction (the observation of an apparently non-conserving event). Furthermore, Ss of D reported high epistemic curiosity.
著者
芳賀 道匡 高野 慶輔 羽生 和紀 坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.77-90, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
31
被引用文献数
5 6

本研究の目的は, 2つの研究を通して, 33項目から構成される大学生活における主観的ソーシャル・キャピタル尺度(SSCS-U)の開発と, 信頼性および妥当性を検討することにあった。本研究では2つの調査を通じて, SSCS-Uを構成する項目を選定し, 開発されたSSCS-Uの因子構造の再現可能性, 内的一貫性と再検査信頼性の検討, そして他の心理社会的要因との関連を検討した。その結果, SSCS-Uは, 仲間, クラス, 教員に関する主観的ソーシャル・キャピタルという3因子によって構成され, 因子構造の再現可能性があることが示された。また, 内的一貫性と再検査信頼性があること, ソーシャル・スキルおよび主観的ウェルビーイング, ソーシャル・キャピタル関連行動と関連があることが分かった。本尺度は, 学生が主観的に認知しているソーシャル・キャピタルを包括的に測定する尺度として, 大学生活のソーシャル・キャピタルに関する研究の更なる発展に寄与すると考えられる。
著者
秋山 隆 豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.250-265, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

テストデータを対象として,受験者の潜在的な特性と項目特性を分離して分析するためのテスト理論に項目反応理論(IRT)がある。通常,IRTでは受験者が所属する下位集団に拘らず,同じ特性に関する値を有していれば,同一項目に正答する確率も同じである仮定される。もし,性別や人種といった属性別で,同一項目に対する正答確率が変化する場合,当該項目は特異項目機能(DIF)を有するといわれる。測定の公平性の観点からDIFは望ましくないため,DIFの分析は大きな関心を寄せられてきた。IRTに基づいたDIFの検討において,広く用いられてきたDIF検出法は統計的仮説検定に基づいている。本研究では,ラッシュモデルにおける均一DIFを対象として,ベイズモデリングに基づいたDIF検討方法を提案する。提案手法を用いることで,下位集団ごとに項目母数を別々に推定し,更に等化係数を推定するという手順を一括して扱うことができる。また,DIFの大きさとそれに対する確信度を考慮可能な指標の提案も行う。
著者
藤井 恭子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.146-155, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
11 6

本研究では, 青年期の重要な友人との関係における心理的距離をめぐる葛藤について検討する。具体的には, 青年が友人との心理的距離をめぐり,「近づきたいけれども近づきすぎたくない」,「離れたいけれども離れすぎたくない」というように,「適度さ」を模索して生じる葛藤である。本研究ではこの葛藤を,「山アラシ・ジレンマ」として捉え,(1) 青年期の友人関係における「山アラシ・ジレンマ」を抽出する,(2)「山アラシ・ジレンマ」に対する心理的反応の仕方を明らかにする,(3)「山アラシ・ジレンマ」とそれに対する心理的反応の仕方の関係について, 心理的距離の程度から明らかにする, ことを目的として研究を行った。その結果, 近づくことに対するジレンマ, 離れることに対するジレンマにおいて, 心理的要因がそれぞれ2つずつ抽出された。それらは, 対自的要因によるジレンマと, 対他的要因によるジレンマであると整理された。また, 生じた「山アラシ・ジレンマ」に対して,「萎縮」,「しがみつき」,「見切り」という3つの心理的反応があることが明らかとなった。さらに, 対自的要因による「山アラシ・ジレンマ」ほど, 心理的反応に結びつきやすく, その傾向は相手との心理的距離を遠く認知しているほど強まることが明らかとなった。