著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。
著者
諸熊 奎治
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1)不斉カウンターアニオン指向触媒(ACDC)の反応機構と制御ACDCを用いた立体選択的細見桜井反応は多成分反応であり、反応機構の全容を知るためには、どのような順番で反応が起こるのかを解析する必要がある。AFIR法を活用して複数の反応経路をもとめ、立体選択性の起源を調べた。立体選択性の起源はプレ触媒とシリルケテンアセタールの錯形成にあることがわかった。2)分岐アルデヒドのC-H結合の無金属活性化の反応機構超原子価ヨウ素化合物を用いたアルデヒドのCH結合活性化の機構を検討した。まず、光照射によりカルボキシラジカルが生成し、このカルボキシラジカルがアルデヒドのCH結合を切断することがわかった。生成したラジカルによる連鎖反応によりアシル化反応が進行する。
著者
岡部 繁男 橋本 浩一 渡辺 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

学習や経験依存的な脳機能は、生後の臨界期に獲得され、この時期に脳回路はシナプスリモデリング・刈り込みを受ける。イメージングと電気生理学により、臨界期の回路改変へのグリアの影響を解析した。大脳皮質ではミクログリアが組織体積を複数の領域に区切り、それによって錐体細胞樹状突起をシナプス動態の異なる領域に分節することが明らかになった。一方で小脳の登上線維の刈り込みにおいてミクログリアが重要な役割を果たすことがミクログリア特異的なCsf1r-cKOマウスの関与により明らかとなった。ミクログリアによる制御は貪食以外の機序による可能性が高く、抑制性シナプスの機能を介して影響を与える可能性を示唆した。
著者
糸川 昌成 瀧澤 俊也 新井 誠
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

GLO1のrare variantから同定された統合失調症のカルボニルストレスは、一般症例の40%でも検出された。カルボニルストレス陽性症例の臨床特徴については、カルボニルストレスを反映する二つの有力なバイオマーカー候補分子であるペントシジンとビタミンB6を用いて163名の統合失調症患者を4群に分類し、統合失調症の精神症状評価尺度である PANSS を実施して臨床特徴を比較検討した。その結果、カルボニルストレスを呈する患者群では、カルボニルストレスの無い患者群と比較して、入院患者の割合が高く、入院期間が4.2倍と長期に及び、投与されている抗精神病薬の量が多いという特徴が明らかになった。
著者
齋藤 理一郎 長田 俊人 依光 英樹 町田 友樹 楠 美智子 長汐 晃輔 上野 啓司 塚越 一仁 若林 克法 越野 幹人
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本新学術領域研究は、「人類史上最も薄い物質」である、一原子層の厚さしかない物質(以下原子層物質)を合成してきました。また合成した非常に薄い物質を使って、消費電力が非常に小さい電子デバイスや、光デバイスの作成と検証を行い、その社会における有用性を実証しました。さらに、異なる原子層物質を積み重ねることによって、今までにない物質(複合原子層物質)を人工的に合成し、超伝導や量子的な性質を持つ、新しい機能材料を開発することに成功いたしました。これらは、国際共同研究基金を用いて国際共同研究を推進することによって、新しい物質の開発を加速いたしました。
著者
鈴木 石根
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

藻類は、効率的にバイオマスを生産でき、かつ食糧生産と競合しないバイオマス源として近年注目を集めている。しかしながら、藻類は細胞内にオイル成分を蓄積するため、培地から希薄な細胞を濃縮・回収し、抽出を行う必要がある。また、細胞の培養には窒素・リン酸・金属イオンなどの培養液成分が必要である。本研究は、藻類による有用物質の大量生産の問題点を解決するため、ラン藻細胞に導入した複数の代謝系をファージに倣って時系列的に誘導制御することにより、有用バイオマスであるアルカン/アルケンの高生産系を構築、藻類ファージのように細胞内の高分子を分解し、最終的に可溶化させることで、培地中に生産したオイル類やアミノ酸・ヌクレオチド類を放出させることで、オイル成分の回収を容易にするとともに、培地を再利用する方策を開発することを目的とする。ラン藻細胞の代謝改変のシグナルとして、植物ホルモンのエチレンとエチレンのセンサーをラン藻の内在性のヒスチジンキナーゼと連結して、エチレンセンサーとして働くキメラセンサーの作製を試みた。ラン藻細胞内でのキメラセンサーのア構築はこれまでに複数の成功例があり、機能未同定のHik2の機能解析については今年度公表した1)。シロイヌナズナの5種のエチレンセンサーから、キメラ型のヒスチジンキナーゼを作製し、ラン藻内で発現させた結果、3種は常に活性型で2種は常に不活性型であったが、いずれもエチレンの刺激に応答しなかった。植物のエチレンセンサーは、3回の膜貫通ヘリックスとGAFドメインをシグナルインプットドメインに持ち、膜貫通ドメインにエチレンの結合部位が存在する。5つのセンサーは互いに相同性が高く、アミノ酸配列の比較だけからは、活性の有無を評価できなかったため、様々なドメイン交換体を作製した。その結果、活性型の膜貫通ドメインを有することが、活性の発現に必須であることがわかった。
著者
井上 治久 櫻井 隆 日置 寛之 江川 斉宏 北岡 志保
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

iPS細胞から分化した神経細胞のイメージングを行う技術、遺伝子ノックインヒトiPS細胞作製技術、神経細胞迅速分化技術を開発。これらの技術でALS患者運動神経細胞を作製・解析し、の新たな病態を明らかにした(Sci Transl Med 2012)。アルツハイマー病患者神経細胞・アストロサイトを作製・解析し、新たな医療の方向性を示した(Cell Stem Cell 2013)。ヒトiPS細胞から分化したグリア系神経前駆細胞を用いて、ALS治療にiPS細胞が細胞源として有用である可能性を示した(Stem Cell Reports 2014)。開発してきた新技術を班員間の共同研究に用いた。
著者
跡部 真人
出版者
横浜国立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

微小な流路内で化学反応を行うマイクロリアクターは、様々な分野で応用が期待されている反応デバイスであり、これを利用した研究は1990年代初頭から分析化学の分野で、また、最近は有機合成化学の分野でも大きな成果を挙げている。とくに大きな比界面積を有し迅速な溶液混合が可能といった特徴は、均一系反応よりもむしろ固-液不均一系界面での反応のほうが効率化できるなど利点が多く、典型的な固-液界面での反応である電気化学反応においても大変魅力的なものと言える。さらに、電気化学測定・分析の領域のみならず、電解合成の分野においては、マイクロリアクターの利点はこれだけではない。電極間距離がマイクロオーダーであり、「電解液の流れがリアクター内で厳密に制御されている」といった特徴を最大限に活用すれば、従来のバッチ式反応容器(フラスコやビーカー)では決して実現できなかった全く新しい電解合成反応や電解合成システムが構築できることも予想される。このような着想に基づき、平成25年度はマイクロリアクターを利用した「連続的レドックス反応システムの開発」に着手した。具体的には連続的レドックス反応によるハロゲン化フェノール誘導体からのジアリールエーテル合成をモデルに選定し、従来のバッチ式反応容器(フラスコやビーカー)では決して実現できなかった全く新しい電解合成システムが、マイクロリアクターの活用により構築できることを検証した。
著者
熊崎 博一
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

社交不安障害(以下SADと略す)患者の数は人口の約10%という高い有病率であり、大きな社会的問題となっている。SAD患者はヒトから見られているという意識が強く、人前での会話といった社会的場面において強い不安を呈し、職業面・社会生活面で大きな障害をきたす。SADはもっとも生活の質(QOL)を下げる精神疾患の一つとの報告もある。現在まで薬物療法や認知行動療法など効果的な治療もあったが、一方で難治なケースも数多く存在した。人の外観に酷似したヒト型ロボットであるActroid-Fは声の抑揚を調整することで感情的要素を軽減でき、状況・場面・体調・感情によって対応がぶれることもなく、不安が強く変化に敏感なSAD患者にとっても安心して関わることができ、向社会的態度を誘発することが期待できる。“暴露療法”は不安に慣れるための練習法で、敢えて自分が苦手とする状況をクリアしていく事によって少しずつ恐怖を取り除き、病気を克服していくという治療法である。多くのSAD患者にとって心地よく自然にかつ相互にインタラクションするように視線呈示やジェスチャといったActroid-Fの動きを改良し、ノンバーバルな表出を調整する。動きを改良し、Actroid-Fを用いた暴露療法を確立することが目的となった。平成29年度は精神科医の応募者が実験中の経時的変化を詳細に検討し、Actroid-Fに対するSAD患者の反応の分析に取り組んだ。SAD患者の長期的にインタラクションするうえで、Actroid-Fから受ける人間らしさの印象、心理的安心感を指標とした、SAD患者のインタラクションの質を上げる要因を評価し、Actroid-F の動きを改良することでSAD患者と自然にかつ相互にインタラクションするActroid-Fの実現を目指した。多くのSAD患者が適合するActroid-Fが設定することに成功した。
著者
酒井 啓子 松永 泰行 石戸 光 五十嵐 誠一 末近 浩太 山尾 大 高垣 美智子 落合 雄彦 鈴木 絢女 帯谷 知可
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

総括班はグローバル関係学を新学術領域として確立することを目的とし、分担者や公募研究者、領域外の若手研究者にグローバル関係学の視座を理解しその分析枠組みをもとに研究を展開するよう推進することに力点をおいて活動を行っている。H29年度には、領域代表の酒井、計画研究A01代表の松永、計画研究B02分担者の久保が全体研究会や国内の研究シンポジウムなどでそれぞれがグローバル関係学の試論を報告、各界からコメントを受けて学理のブラッシュアップに努めた。そこでは1)グローバル関係学が、関係/関係性に焦点を絞り、その関係/関係性の静態的・固定的特徴を見るのではなく、なんらかの出来事や変化、表出する現象をとりあげ、そこで交錯するさまざまな関係性を分析すること、2)グローバル関係学がとらえる関係が単なる主体と主体の間の単線的/一方方向的関係ではなく、さまざまな側面で複合的・複層的な関係性を分析すること、を共通合意とすることが確認された。それを踏まえて9月以降、領域内の分担者に対して、いかなる出来事を観察対象とするか、主体間の単線的ではない関係性をいかに解明するか、そしていかなる分析手法を用いてそれを行うかを課題として、個別の研究を進めるよう促した。多様な関係性が交錯する出来事にはさまざまな事例が考えられるが、その一つに難民問題がある。計画研究ごとに閉じられた研究ではなく領域として横断的研究を推進するため、計画研究横断プロジェクトとして移民難民研究プロジェクトを立ち上げた。また、総括班主導で確立したグローバル関係学の学理を国際的にも発信していくため、国際活動支援班と協働しながら、海外での国際会議を積極的に実施している。H29年度はシンガポール国立大学中東研究所と共催で同大学にて国際シンポGlobal Refugee Crisesを実施、グローバル関係学の骨子を提示して海外の研究者への発信とした。
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。