著者
鈴木 大地
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.13, 2017

<p> 平成29年3月、文部科学省は、スポーツ庁創設後初めてとなる第2期「スポーツ基本計画」を策定しました。</p><p> この第2期計画に掲げられた施策は、「~スポーツが変える。未来を創る。Enjoy Sports、 Enjoy Life~」という理念のもと、国民やスポーツ団体の活動を通じて実現される「スポーツの価値」が最大限発揮されるためのものであることに留意して策定されています。</p><p> スポーツ行政を総合的・一体的に推進するために創設されたスポーツ庁の役割は、「スポーツ参画人口」を拡大することだけではなく、他分野との連携・ 協力により、新たな課題にも取り組む中でスポーツの新たな価値の創造を支援し、それらを高め、豊かな「一億総スポーツ社会」の実現を目指すことにあります。</p><p> 例えば、スポーツは積極的に社会を変える重要な媒体となり得るものであり、スポーツを通じて障害者、女性、子供、高齢者等の社会参画が促され、周囲の人々の意識改革が図られることで「共生社会」の実現につながっていきます。</p><p> また、第2期計画では、スポーツを通じた健康増進や地域活性化、国際交流及び協力の拡充、スポーツビジネスの拡大などにも取り組むこととしています。</p><p> 2020年東京大会等を好機としてスポーツの価値を飛躍的に高めるとともに、大会後のレガシーとして確実に引き継がれ、持続させるためには、スポーツに関わる全ての人々が一丸となって取り組むことが必要です。</p><p> この講演では、国民、スポーツ団体、民間事業者、地方公共団体、国等が一体となってスポーツ立国を実現できるよう、第2期計画に込められたスポーツ庁のビジョンと施策を解説しながら、日本体育学会を中心に、それぞれの団体に期待される役割についての意見を申し上げます。</p>
著者
大山 泰史 青柳 領 八板 昭仁 田方 慎哉 川面 剛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.271_1, 2018

<p> 教員が想定していない観点からの受講生の授業の評価を知ることは、授業の質の向上改善に繋がると考えられる。そこで、本研究は、バスケットボールの授業に対する感想文にテキストマイニングを用いて受講生が受けた授業に対する潜在化している評価の構造を明らかにする。大学および高等専門学校でバスケットボールの授業を受講した学生218名に対し、授業に対する評価を自由記述形式で回答する感想文の作成を依頼し、その文章中から名詞と動詞と形容詞を抽出した。まず、頻度分析の結果、「ショット」「練習」「試合」「ドリブル」「パス」等の名詞が多く、学生の評価の観点が攻撃の基本技能にあることが考えられた。さらに、コレスポンデンス分析およびクラスター分析を行い、品詞間の関連を分析した結果、「名詞×形容詞」では「楽しい」「上手い」など好意的な評価を示す形容詞に「バスケ部」「生徒」「戦術」などの名詞が、「きつい」「難しい」など否定的な評価を示す形容詞に「指導」「レイアップ」の名詞が近い位置を示し、授業中のバスケ部員への憧れや戦術を学習することが好意的に捉えられ、逆にレイアップシュートの練習につまずきがあったことが示唆された。</p>
著者
稲川 郁子 畑山 元政
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.272_1, 2019

<p> 柔道は、嘉納治五郎が殺傷の手段である柔術から危険な要素を取り除き、安全性の高い要素を抽出して教育的価値を付加し普及させたことは広く知られている。現在普及している競技としての柔道には、危険要素である当身技は含まれていない。嘉納は、柔道の持つ教育的側面を重視する一方で、武術としての柔道も重視していた。嘉納は、柔道の稽古法には乱取、形、講義、問答があるとしたが、このうち乱取と形について、乱取に偏重する傾向のある修行者に対し、どちらに偏ることなく稽古する必要性を繰り返し説いている。嘉納の主張は、現代においては「柔道修行者の教養としての形」を軽視することへの戒めの文脈で語られることが多いが、嘉納は、修行者が当身技を軽視することによる柔道の武術性の風化を恐れていた。急所を狙い殺傷能力の高い当身技を、嘉納は、柔道の創始から晩年に至るまで重視し続けた。本発表では、柔道の7種の形に定められた身体動作のうち、当身技による部分について考察する。</p>
著者
近藤 雄一郎 竹田 唯史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.219_2, 2018

<p> 本研究は、アルペンスキー競技回転種目を対象として、オリンピックテストイベントとオリンピックでのタイム分析を実施し、両者の比較からオリンピック本大会に向けたテストイベントにおけるレース分析の有効性について検討することを目的とした。分析対象レースは、2017年にオリンピックテストイベントとして開催されたFar East Cup男子回転競技1本目と、2018年に開催された平昌オリンピック男女回転競技1本目とした。タイム分析では、スタートからゴールまでを急斜面上部・急斜面下部・中斜面・緩斜面の4区間に分割して各区間におけるタイムを算出し、ピアソンの相関係数検定を用いて各区間タイム及びゴールタイムの相関関係について検討した。タイム分析の結果、テストイベントのレース及びオリンピックのレース共に、全ての区間タイムとゴールタイムの間に有意な相関関係が認められ、特にテストイベントのレースとオリンピック女子のレースで類似したレースパターンの傾向がみられた。したがって、オリンピック本大会に向けて競技力水準の異なるテストイベントのレース分析を行うことには意義があると考えられた。</p>
著者
須藤 明治 山田 健二 山村 俊樹 鴫原 孝亮 羽毛田 高聖
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.241_2, 2019

<p> 一般的に、握力の評価は、静的最大筋力であり、筋肉の力をみる代表値として用いられている。そして、近年、握力が強い人は、積極的に身体を動かす習慣を持っていることが予想され、より多く筋力を使い、脳への刺激も活発であり、それが心肺機能や循環器機能を高め、認知症や梗塞などの発症リスクを低くしているのだと言われている。また、手の運動が脳の活性化や健康に役立つことも知られている。そこで、本研究では、直径40mmの筒状の棒長さ35cm(A-bou) とし、ほぼmaxで握りしめてから、ひねる動作を繰り返した時の筋活動を測定した。その結果、握力52.1kgの時を100%MVCとして、A-bouを握ったときの筋活動は、腕橈骨筋104.7、尺側手根屈筋110.0、上腕二頭筋15.6、上腕三頭筋2.0、三角筋5.6、僧帽筋1.8、大胸筋19.4、脊柱起立筋33.9であった。そして、ひねり動作時は、腕橈骨筋71.1、尺側手根屈筋19.8、上腕二頭筋3.4、上腕三頭筋1.3、三角筋7.9、僧帽筋4.6、大胸筋20.9、脊柱起立筋32.1であった。また、血流値は2.4倍となった。このように、筋出力を調整することにより、血管への刺激が連続的に行われ、血管自体の柔軟性が高まるのではないかと推察された。</p>
著者
小谷 泰則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.133_2, 2016

<p> ウエイトリフティングにおいてはバーの軌跡を視覚的に捉えることができれば、フォーム改善に用いることができる。しかしこの様な映像システムは高価であり入手が困難である。本研究では、バーの軌跡を描けるようなアプリケーションを開発し、ウエイトリフティングの選手がこれらを容易に入手できるようにすることを目的とした。アプリケーションはiPhone用とMac用の2種類を開発した。アプリケーションでは、バーの軌跡・移動距離・速度等を表示できるようにした。作成したアプリケーションの一部は無料でダウンロードできるようにし、ウエイトリフティング選手が容易に用いることができるようにした(AppStore: WeightLifting Motion、WeightLifting Motion X)。これまでは高額であったバーの軌跡を描くシステムを安価に提案できるシステムを構築することが可能になった。</p>
著者
小島 匡治
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.294_1, 2017

<p> スポーツ基本法や2020年東京パラリンピック開催などを背景に、障害者スポーツへの理解促進と共生社会実現の取組が進められている。競技レベルの認知度が高まる一方で、レクリエーションや日常生活レベルに対する環境整備も課題となる。そのような中で我々は、高校卒業後成人移行期にある重度肢体不自由者対象の支援を試みている。この対象群は、卒後の生活環境変化から余暇が上手く過ごせず、身体的疲労やストレス蓄積などの問題を抱え、それが生活習慣病や二次障害を引き起こすことも予測される。また、外出には介助が必要なため、家族の負担が高まるなどの問題も抱える。そこで、平成26年度より、作業所帰りにスポーツセンターで同様な課題を抱える同世代の仲間と運動・スポーツに親しみながら、運動習慣のきっかけづくりを支援するプログラムに取組んできた。その結果、スポーツを通じた健康管理をより主体的に行なうようになるなどの変化が現れている。そこで、今回は、これまでの実践結果を考察し、今後に向けた支援のポイントを報告する。</p>
著者
野中 由紀 安藤 真太郎 鳥屋 智大 山田 幸雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.275_2, 2016

<p> 卓球競技においてカット主戦型は、攻撃型に比べて数が少ないが、女子では世界トップ50位以内(2016年5月国際卓球連盟発表)に12名がランクインするなど、近年徐々に増加傾向にある。国際大会上位進出には、カット主戦型攻略は必須の課題である。2016年世界卓球選手権大会(団体)では、ある世界ランク20位以内の攻撃型選手が、同ランク30位台、80位台のカット主戦型延べ3名と対戦し、1戦目勝利、2戦目敗北、3戦目勝利の結果であった。このように1大会において、幾度も、また同じ選手と対戦することが実際に発生するため、短期間での戦術変化が必要である。しかし、この点に着目した研究はあまり見られない。そこで本研究は、ある攻撃型選手が1大会中にカット主戦型と対戦した試合を抽出、野中ら(2016)の方法を用いて1試合ごとに分析・比較し、各試合の特徴、及び戦術変化を明らかにすることを目的とした。その結果、平均ラリー打球回数、使用技術、最終打となった技術で差は見られなかったが、使用するコースにおいて有意差が見られる結果となった。このことから、勝敗の要因や1大会中にすぐに実践できる戦術変化として、コースの選択が重要であることが明らかになった。</p>
著者
松崎 淳 服部 勉 長ヶ原 誠
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.80_2, 2017

<p> 東日本大震災発生以降、スポーツの分野で被災地の住民に向けたスポーツ教室などの被災者や地域の復興を目指した活動が行われている。震災発生後の市民マラソン大会に着目すると、大会名の中に復興を表すキーワードを含む、被災地をコースとする、参加費用を復興義援金にする大会が開催されて市民マラソン大会の参加者数、開催数、開催自治体数が増加していた。本研究の目的は、東北三県の自治体における震災発生前後の市民マラソン大会動向と復興への効果を明らかにすることである。研究の結果、震災後の市民マラソン大会の参加者数、開催数、開催自治体数が増加し、震災復興を目的とした大会が開催された。大会開催地の変化では、震災発生後に被災地で震災復興目的の大会が多く開催され、被災地でない自治体も自らの地域をPRする大会を開催するだけでなく、県全域の復興状況を県内外の参加者に発信するイベントを含んだ大会が実施されていた。テキストマイニングによる分析の結果、大会参加者の口コミからは、自らの競技、沿道の人々やボランティア、大会開催地へのアクセス、地域環境、震災に対する評価と5つに分類することができた。</p>
著者
中澤 翔 秋元 大和 山代 幸哉 佐藤 大輔 丸山 敦夫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.274_1, 2016

<p> 中長距離選手の走の経済性(RE)に及ぼすSSC(stretch-shorten cycle)の影響に関する研究では、プライオメトリックトレーニングと競技成績の関係に関する報告がいくつかある。しかし、SSC能力が走の経済性に及ぼす影響についてはあまり報告されていない。本研究は大学男子中長距離選手12名を対象に、VO<sub>2</sub>16km、% VO<sub>2</sub>max(VO<sub>2</sub>16km/ VO<sub>2</sub>max)、16km/h走行時の重心上下動(GH)、平均ストライド長(SL)およびリバウンドジャンプ(RJ)とドロップジャンプ(DJ)接地時間および跳躍高を測定し、それぞれの関係について検討した。その結果、(1)% VO<sub>2</sub>maxとRJ接地時間にr=0.641(P<0.05)の有意な相関関係が認められた。(2)重心上下動とストライド長および重心上下動とRJ跳躍高との間にそれぞれr=0.868(P<0.01)およびr=0.660(P<0.05)の有意な関係が認められた。(3)重心上下動とVO<sub>2</sub>16kmおよび% VO<sub>2</sub>maxとの間に有意な関係性は認められなかった。このことから、RJ接地時間の短い選手ほど走の経済性(% VO<sub>2</sub>max)が良いことが示唆された。</p>
著者
古瀬 由佳 塚本 博之 湯澤 芳貴
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.236_1, 2017

<p> バレーボールで勝利するためには、相手より多く得点を得ることであるが、それ以上に重要なのは、連続得点を与えないことである。そのためには、レセプションからのサイドアウト率を高めることが必要である。通常は守備の要であるリベロを中心に、2人~4人でレセプションすることが多い。小・中学生などのバレーボール初級者は、セッター以外の5名でレセプションすることが多く、経験やレベルが上がると、より少ない人数でフォーメーションを組む傾向が強い。トップレベルでは2人でコートの全面をカバーしている例もある。そこで本研究は、関東大学女子1部の試合を例にとり、それぞれのレセプションフォーメションシステムとリベロ以外のどのポジションの選手が何人でレセプションに参加したのか、その目的や内容を明らかにすることで今後の指導の一助とすることとした。対象は、平成29年春季関東大学バレーボールリーグ戦全45試合とした。データは公益財団法人日本バレーボール協会JVIMS及びDATA VOLLEY 2007から算出されたものを参考とし、さらに実際の試合映像から分析を試みた。詳細については当日発表する。</p>
著者
井出 孝介 今村 修
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.234_1, 2018

<p> 2015年に起きた電通社員の過労死自殺を発端として、労働問題が近年、注目されている。それは教育現場においても同様であり、部活動を含む教員の労働環境も深刻化している。一方で、高等学校学習指導要領では、科目保健において「労働と健康」を扱っている。すなわち、教員は自らの労働問題を抱えながらも、生徒に労働と健康に関する学習を提供する使命を有しているのである。以上の観点から、本研究では、教員を志望する大学生の職業観および労働意識の特徴について明らかにすることを目的とした。本研究においては、「職業観」を「労働の意味付け」と定義し、佐藤らが提案した労働動機尺度を参考として自記式質問紙を作成した。2017年12月に、T大学に在籍する学生を対象として1150部配布し、1088部を回収した。そのうち、有効回答部数は1010部(87.9%)であった。分析方法は、単純集計、クロス集計、カイ二乗検定を用いた。その結果、教員志望者は、一般企業志望者と比較すると「やりがい第一」の割合が高い傾向であることが認められた。このように教員志望者は、過重労働に陥りやすい労働意識を潜在的に抱えていると推測される。</p>