著者
松井 陽吉
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.189-196, 2003-08

最近お茶類に人気が出てきているのは茶系飲料が生活の中に定着したことや、様々な生理機能が解明されてきたことにある。水分補給や香味を味わうことで生活の潤いとして利用され、三次機能と呼ばれる生理機能を期待して消費されている。お茶が今日のように世界中で普及したのは大規模茶園と機械化が貢献してきたが、そのため香味を画一化して大量の生産ができるような体系にしてきた。ウーロン茶は発展途上にあり将来は緑茶や紅茶のような道を歩むかもしれないが、少量生産で茶農家独自の製法で生産されており、香味の多様性と魅力から見ると一律の香味である緑茶や紅茶に比べておいしさにかかわる点が異なって感じられる。お茶のおいしさを極めていくと、緻密な感性で生産されているため香味が多様でレベルが高いウーロン茶に行き着く。さらによりおいしいものを目指してゆっくり楽しむというお茶本来の姿もウーロン茶の飲み方の中に見ることができる。
著者
黒田 素央 山中 智彦 宮村 直宏
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.175-180, 2004-08
被引用文献数
2

多くの食品は、加熱処理により調製され、提供される。この加熱工程において、食品タンパク質の変性、食品素材からの成分溶出、メイラード反応をはじめとする化学反応など、多くの反応が起こり、食品の呈味が形成されると考えられている。このような食品の中で、スープやソースなど、食材を煮込むことによって調製する食品においては、長時間の加熱によって、特有の香り、風味が発現・増加することが知られている。これらの中で加熱により「コク味」と呼ばれる風味質が増加することが観察されている。本稿では、食品の「コク味」を表現するための用語の整理とコク味表現モデルについて概説を行った後、加熱によって「コク味」が向上する例として、牛肉スープストックあるいは牛肉エキスを取り上げ、最近の研究例について紹介する。具体的には、牛肉スープストックの加熱中に生成し、牛肉スープ特有の「あつみのある酸味」を付与しうる低分子「コク味」成分の研究例および牛肉エキス中の「コク味」(持続性、濃厚感、広がり)に寄与する高分子成分の解析例と加熱に伴う構造変化について、いかに詳述する。
著者
黒田 素央 山中 智彦 宮村 直宏
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.175-180, 2004
参考文献数
9
被引用文献数
2

多くの食品は、加熱処理により調製され、提供される。この加熱工程において、食品タンパク質の変性、食品素材からの成分溶出、メイラード反応をはじめとする化学反応など、多くの反応が起こり、食品の呈味が形成されると考えられている。このような食品の中で、スープやソースなど、食材を煮込むことによって調製する食品においては、長時間の加熱によって、特有の香り、風味が発現・増加することが知られている。これらの中で加熱により「コク味」と呼ばれる風味質が増加することが観察されている。本稿では、食品の「コク味」を表現するための用語の整理とコク味表現モデルについて概説を行った後、加熱によって「コク味」が向上する例として、牛肉スープストックあるいは牛肉エキスを取り上げ、最近の研究例について紹介する。具体的には、牛肉スープストックの加熱中に生成し、牛肉スープ特有の「あつみのある酸味」を付与しうる低分子「コク味」成分の研究例および牛肉エキス中の「コク味」(持続性、濃厚感、広がり)に寄与する高分子成分の解析例と加熱に伴う構造変化について、いかに詳述する。
著者
宮奥 美行
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.157-164, 2004-08
参考文献数
18
被引用文献数
1

カレーのおいしさを構成する要素は、だし、油脂、スパイス・カレーパウダー等の香辛料である。カレーパウダーは、複数のスパイスから構成される。混合後熟成することで、単品スパイスを混合しただけのものとは異なり、カレー製品の香味を増強する役目を持つ。油脂は、その存在状態が変化することで、香味の感じ方を複雑にする。日本における一般的なカレーでは、具在に肉、じゃがいも、人参、玉葱を使用するが、家庭での煮込み及び調理後の時間経過により、具材が、カレー・ソースの成分や状態変化を引き起こし、おいしさに変化をもたらす。
著者
服部 幸應
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.129-134, 2002-08
被引用文献数
1

「"こく"と料理」ということについて突き詰めると、「塩梅」と「だし」に行きつく。西洋も日本も中華もだしが重要である。ほどほどに、しかし、ある部分は濃厚なものが料理の組み合わせの中では必要となる。この濃厚さというものは、我々に満足を与えてほっとさせるという要素であり、これに、塩気が加わり、ある場合には脂肪分の多いものを、私は「こく」と呼んでいる。
著者
高橋 伸彰
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.131-138, 2005-08
被引用文献数
1

チョコレートのおいしさについての官能評価による検討結果を紹介した。記述的評価法による分析では、風味や食品テクスチャーに関する約20種類の評価用語が抽出され、これに基きチョコレートの風味の分類を行なうとともに、嗜好との関係についても考察を行った。また、時間-強度曲線法を導入し、摂食中のチョコレートの風味の経時的変化を評価した。チョコレートのおいしさを考慮するに際しては、付着や残留といったような咀嚼物のレオロジーや物理化学的性質も考えあわせなくてはならない。
著者
柏柳 誠
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.88-89, 2005-04

新雪が白く積もった冬道のために、少し自宅を早めに出て旭川空港に到着したのは9時20分だった。東京行きの飛行機の出発は10時25分、本著の書評を書くために、読み始めることにした。予定では、一泊の東京出張の間に一読して書評を書き始めることができたらいいかと思っていたが、東京行きの飛行機の中でシートベルト着用のサインが消えた後にはすぐに本稿を書き始めていた。評者は、今の子供たちと比べて本好きである。おもしろい本ほど早く読み終える。そのような指標から考えると、本著は間違いなくおもしろい、評者の"感性"にあった本だったといえる。日本味と匂学会は、著者のようなセンサー開発に関わる工学者、生理, 生物系の基礎研究者、味覚, 嗅覚に関する臨床医から企業で食品の商品開発に携わる研究者まで、非常に幅広い会員から構成されている。味と匂いをどのように語るかは、筆者の専門がどこにあるかで切り口、視点が大きく変わるので様々である。
著者
上野 吉一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.11-19, 1996-08
被引用文献数
1

最近、日本において"フェロモン"という言葉が非常に一般的になり、広く使用されるようになってきている。しかし、そうした場合の多くで、"フェロモン"を「性に関連した匂い」ひいては「性的魅力」を意味する言葉として用いている。フェロモンを性と強く結び付けて捉えるというこの傾向は、通俗的な使用のみならず学術的な使用においても少なくない。そのため、その意味するところが非常に偏って認識され、かつ"匂い"との区別が曖昧になっているように思われた。そこで本研究では、従来フェロモンの概念がどのように規定されてきたのかを検討し、その基準の再確認を試みた。この結果、ある匂いをフェロモンとするための基準として、次の5つを挙げることができた。1)同種ないし近縁種のみで作用。2)送り手・受け手にとり互恵的な特異的反応(リリーサー効果もしくはプライマー効果)の解発。3)生得的要因への高い依存。4)特定の匂い刺激のみに起因する反応。5)1つないし少数の物質の情報伝達への寄与。これをもとに哺乳類での"フェロモン"の使用を鑑みると、これまでにも指摘されてきたように、フェロモンと表現することが必ずしも妥当ではない場合が多いと考えられた。また、中にはフェロモンの概念の基準を考え合わせることなく使用している場合すらあった。このような"フェロモン"の使用は、匂いに対する過剰ないし誤った評価・認識を引き起こし、哺乳類における嗅覚コミュニケーションの適切な理解を妨げる。そこで本論文では、哺乳類の匂い情報を考えていく上で、上記の基準を満足することが明らかな場合を除き、学術用語として"フェロモン"の使用を避けるようにすべきだと考える。
著者
鹿取 みゆき
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.197-206, 2009-08
被引用文献数
1

日本ではワインを取り扱う仕事は多様化しており、多くの人がワインを対象に比較的専門性の高い仕事に従事している。基本的には仕事の名称も技能も公的に認定されておらず、その仕事に従事する者自身が、自分が思うままに名乗っているにすぎない。とはいえ、いずれの仕事においても、目的は違うが、ワインを味わい、その特徴を表現したり、質を評価したりする機会は多い。ワインテイスティングの必要性は非常に高いる。本稿では、はじめに、欧米のワイン消費国に比べると、非常に特殊な日本のワイン業界の実態に触れ、そのあとテイスティングの実態、テイスティングにおける匂いと味の関係についての事例を紹介する。また、ワインと料理のマリアージュの事例もいくつか示していきたい。
著者
上田 要一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.197-200, 1997-08
被引用文献数
5

昆布だしの呈する特有の"あつみ"成分をオミッションテストにより検索した結果、グルタミン酸、カリウム、マンニットの3成分が有効成分であった。また、ニンニク、タマネギを食品に使用した時発現する"あつみ"、"ひろがり"、"持続性"は、アリイン、S-プロペニルシステインスルホキシド等の含硫化合物による発現する事が分かった。最近、牛肉だし中の"こく"、"あつみ"成分として新規のアミノ酸誘導体及び筋肉タンパク由来の高分子成分が検出されている。
著者
根来 篤 任 智美 梅本 匡則 阪上 雅史
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.35-40, 2006-04
被引用文献数
1

味覚障害の診断において、亜鉛欠乏が原因となっているものは少なくない。今回、亜鉛欠乏性味覚障害例と健常例の舌乳頭を観察・比較し、亜鉛と舌乳頭形態の相関を検討した。舌乳頭観察にはUSBマクロスコープとコンタクトエンドスコープを用いた。茸状乳頭の形態、末梢血管流入の様子を分類、検討した結果、健常例では舌乳頭形態が卵円形で粘膜も薄く、末梢血管流入も良好であったのに対し、亜鉛欠乏性味覚障害例では、舌乳頭形態の扁平化、末梢血管流入の途絶などを認めた。今回の検討のみで、亜鉛と舌乳頭形態の相関を結論付けることはできないが、動物実験の結果と同様に何らかの相関があると考えられた。