著者
佐藤 さくら 田知本 寛 小俣 貴嗣 緒方 美佳 今井 孝成 富川 盛光 宿谷 明紀 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.187-195, 2007-06-01 (Released:2007-12-26)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

アナフィラキシー補助治療薬のエピペン®が我が国で発売され,2004年5月から2005年10月まで当科で同薬を処方した食物アレルギー患者は50名(男33名,女17名,0.3mg:15名,0.15mg:35名)に上る.対象の平均年齢は6.8歳でアトピー性皮膚炎合併が78%,気管支喘息合併が52%であった.原因食品摂取時に呼吸器症状を96%,皮膚症状を92%に認めた.アナフィラキシー症例は48例で,食物アレルギー発症時の臨床型は36例が“食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”,即時型症状8例,食物依存性運動誘発アナフィラキシー4例であった.アナフィラキシーを起こした理由は,初回,2回目以降も誤食によるものが最多であった.アナフィラキシー反復例は31例で,複数抗原に対してアナフィラキシーを起こした例や原因不明例も存在した.今回の処方50例中実際に使用された例は1例あり,17歳のナッツアレルギー患者において使用され著効していた.医師,コメディカルにおいてまだ認識が不十分なエピペンであるが,アナフィラキシーを起こす可能性のある食物アレルギー児に対して保護者と相談の上で処方していくべきである.
著者
林 優佳 西本 創 谷田部 良美 森茂 亮一 桃井 貴裕 谷口 留美 高見澤 勝
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.117-122, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
10

ヨモギやシラカンバ花粉症は欧州で多くみられ, 交差反応性からスパイスアレルギー (Celery-birch-mugwort-spice症候群) を発症することが知られているが, わが国からの報告は少ない. 症例は14歳女児. セロリ入りミートソースやカレーの摂取で口腔内違和感, 咳嗽, 呼吸困難がみられた. 皮膚プリックテストではコリアンダー等セリ科のスパイスのみが陽性で, 食物経口負荷試験にてセロリとコリアンダーにより症状が誘発された. 吸入抗原の特異的IgE抗体はシラカンバ・ハンノキで陽性, ヨモギは陰性で, カバノキ科花粉の飛散時期に一致して新たに花粉症の症状が出現したため, カバノキ科花粉症により花粉-食物アレルギー症候群としてセリ科のスパイスアレルギーを発症したと考えた. セロリ, ヨモギのプロフィリンと, シラカンバのBet v 2は相同性が高く交差反応するとされているが, 本症例ではBet v 2が陰性であり他の部位に対する感作と推測された. 近年, カバノキ科花粉症が増加しており, 同様の症例に注意が必要である.
著者
宮下 弘 藤巻 有希 正田 八州穂 早乙女 壮彦 小峰 由美子 渡邊 美砂
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.109-116, 2021

<p>母の摂取していた葉酸サプリメントが原因で,新生児期から血便を生じた消化管アレルギー症例を経験した.</p><p>症例は日齢38の女児.日齢5より持続する血便を主訴に受診した.10回/日の下痢と,末梢血好酸球増多(16%),便中ヒトヘモグロビン陽性も認められ,乳児消化管アレルギーを疑った.母乳中心の混合栄養であったため,人工乳を中止し,母に乳製品の除去食を指導したが血便は改善しなかった.しかし母が妊娠前から摂取していた市販の葉酸サプリメントを偶発的に中止したところ,速やかに血便が消失した.そのためサプリメントの経母乳負荷試験を行ったところ,児の便中ヒトヘモグロビンは再上昇し,再現性を確認した.サプリメント成分のプリックテスト,リンパ球刺激試験の結果と合わせて,葉酸サプリメントによる消化管アレルギーと診断し,含有される酵母が原因と推測した.</p><p>本症例より,母体が摂取しているサプリメントが児の消化管アレルギーの原因になり得ることを念頭に置き,サプリメントで葉酸を摂取する場合は,添加物の少ないものが望ましい.</p>
著者
松井 照明 杉浦 至郎 中川 朋子 武藤 太一朗 楳村 春江 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-71, 2017
被引用文献数
1

<p> 【背景】卵黄の経口負荷試験 (oral food challenge : OFC) は, 微量の卵白負荷試験という位置づけで実施されることが多いが, 卵黄に残留する卵白量に関する情報は限られている.</p><p> 【目的】卵黄に残留する卵白量を推定したうえで, 症状誘発閾値の低い卵アレルギー患者に対する加熱卵黄摂取の可否について検討した.</p><p> 【方法】鶏卵から卵黄を分離したうえで加熱し, 卵黄表面の卵白と卵黄膜を用手的に剝離し, 重量を測定した. 2014年6月から2015年2月に施行した加熱卵白OFC陽性者から, 加熱卵白1.0gが摂取可能と判定された11人を対象として, 加熱卵黄OFCを施行した.</p><p> 【結果】卵黄に残留した卵白と卵黄膜の合計量は0.7g (0.6~1.0g, <i>n</i>=6) であった. 加熱卵黄OFCを施行した11例中9例は陰性, 1例は局所の紅斑, 1例は複数範囲の紅斑を認めた.</p><p> 【結語】加熱卵白1.0gの摂取が可能な卵アレルギー患者は, 生の状態で取り分けた加熱卵黄負荷試験で8割以上が陰性であった.</p>
著者
川本 美奈子 大西 秀典 川本 典生 森田 秀行 松井 永子 金子 英雄 深尾 敏幸 寺本 貴英 笠原 貴美子 白木 誠 岩砂 眞一 近藤 直実
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.49-55, 2009-03-01 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14

乳児栄養法とアレルギー疾患発症との関連を明らかにするために,母乳栄養に焦点をしぼり,アレルギー疾患発症頻度や発症機序について検討した.生後6ヶ月時の保護者アンケートによる疫学調査の結果,完全母乳栄養であってもアレルギー疾患を発症している症例を認めた.母乳中のサイトカインや食物抗原について検討した.母乳中には TGF-β1,2 が高濃度に存在していた.母乳中に,卵白アルブミン,カゼイン,グリアジンなどの食物抗原が検出された.母乳中のサイトカインや食物抗原が児の抗原感作や免疫寛容誘導に関わっている可能性が示唆された.また,完全母乳栄養であるにも関わらず乳児期にアレルギー疾患を発症する症例では,母乳中の一部の蛋白が内因性にアレルゲンとして作用している可能性が示唆された.
著者
伊藤 節子
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.649-656, 2007-12-10 (Released:2008-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は食物アレルギー関与する乳幼児のアレルギー性疾患の中で最も多い疾患であり,成因・経過の面からみるとアトピー性皮膚炎の中でも独立した疾患カテゴリーを形成している.適切なスキンケアと合わせて行う正しい抗原診断に基づいた必要最小限度の食品除去は最も効果的かつ合理的な治療である.この疾患のもう一つの重要な側面は,アトピー素因の強い児に発症し,多くの児にとり生涯で最初に経験するアレルギー性疾患であるということである.そのため,食事療法のみならず住環境整備(効率のよいダニ対策,室内ペットの回避,室内禁煙)がアレルギーマーチ進展予防のための早期治療介入として重要である.
著者
星野 顕宏 阿部 祥英 冨家 俊弥 校條 愛子 中村 俊紀 齋藤 多賀子 酒井 菜穂 伊藤 良子 神谷 太郎 北林 耐 板橋 家頭夫
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.217-224, 2010 (Released:2010-10-07)
参考文献数
24

気管支喘息呼吸不全の児に対して硫酸マグネシウム(MgSO4)を点滴静注し,気管挿管を回避しえた女児例を経験した.本症例は2歳11ヵ月時に喘鳴と呼吸困難を認め,気管支喘息呼吸不全の診断で入院した.ステロイド薬静注,アミノフィリン持続点滴,イソプロテレノール持続吸入による治療を行ったが,呼吸状態は改善せず,不穏と高二酸化炭素血症認めた.気管挿管を考慮したが侵襲性が高いため,50mg/kgのMgSO4を20分かけて点滴静注した.速やかに不穏の軽快と呼吸状態の改善が得られ,投与開始1時間後に二酸化炭素分圧,心拍数,呼吸数はそれぞれ54.9mmHgから46.5 mmHg,157回/分から126回/分,48回/分から40回/分に低下した.MgSO4の有害事象は認めなかった.MgSO4は気管支平滑筋細胞からのカルシウムの駆出を増加させ,平滑筋の収縮を抑制させると考えられている.MgSO4は即効性のある薬剤として有効である可能性があり,特に治療抵抗性で気管挿管を考慮する症例にそれを回避する目的で投与する価値があると考える.
著者
岩崎 栄作 馬場 実 上野川 修一 榎本 淳 戸塚 護 小西 奈緒 木本 実
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-31, 1995
被引用文献数
1

食物アレルギー患児10例を対象に, 大豆蛋白を酵素分解して得られた大豆ペプチド (ハイニュートD3; 不二製油) を利用した飲料を投与し, 栄養管理の面から有用性を検討した. 大豆ペプチドの平均ペプチド鎖長は5.2, 遊離アミノ酸は1.0%であった. 大豆ペプチドの特異的IgE抗体の結合能は大豆蛋白に比較して有意の低下 (p<0.001) が認められた. 対象患児10例のうち, 試験飲料によって2例に発疹, 〓痒などの反応を認めたが, 8例は長期投与が可能であった. 1日1缶 (200g, 蛋白含量6g) を3カ月間以上, 継続投与した結果, 栄養学的指標の血液ヘモグロビン, 血清総蛋白, アルブミンは有意に改善し, 身長と体重の標準偏差値は全般的に順調な体重増加が認められた. 投与期間を通して, 大豆ペプチド飲料によるアレルギー症状の悪化は認められず, 長期間飲用による副作用を認めなかった. また, 一般血液検査, 生化学検査, 尿検査に異常を認めず, 患児ならびに保護者の評価は風味面 (おいしさ) を含めて良好であった.
著者
坪谷 尚季 長尾 みづほ 亀田 桂子 鈴木 尚史 桑原 優 貝沼 圭吾 藤澤 隆夫
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.683-691, 2017 (Released:2017-12-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

【背景】小麦アレルギー患者において, 大麦は交差抗原性をもつことが知られているが, 麦ご飯などの形で提供されることが多く, 日常生活上, 除去の判断が必要となることが多い. しかし, 大麦アレルギー合併の予測因子はよく知られていない. 【方法】大麦の摂取歴がなく, 小麦摂取後のアナフィラキシー既往または経口負荷試験 (OFC) にて小麦アレルギーと診断された児に対して行った大麦OFCの結果とOFC誘発症状, 特異的IgE抗体価の関連について後方視的に解析した. 【結果】27例 (3~15歳, 男児19例, 女児8例) で大麦OFCを行い, 13例 (48%) が陽性であった. そのうち小麦の摂取閾値と検査値の判明している23例で解析をした. ω-5グリアジン, 小麦特異的IgE抗体価および小麦OFCのTS/Pro (アナフィラキシースコアリングあいちスコア/累積負荷蛋白量) が, 陽性群で有意に高値であった. 【結語】小麦アレルギーが重症 (=TS/Pro高値) であると大麦摂取で症状が誘発される可能性が高い. ω-5グリアジン, 小麦特異的IgE抗体価も予測因子となりうる.
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
西日本小児アレルギー研究会・有症率調査研究班 西間 三馨
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.255-268, 2003-08-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
13
被引用文献数
30 27

西日本地方11県の同一小学校児童を対象に1992年 (n=46,718) と2002年 (n=36,228) にアレルギー疾患有症率を調査し, 次の結果を得た.1. 1992年と2002年のそれぞれの有症率は, アレルギー性鼻炎 (AR): 15.9→20.5%, アトピー性皮膚炎 (AD): 17.3→13.8%, アレルギー性結膜炎 (AC): 6.7→9.8%, 気管支喘息 (BA): 4.6→6.5%, スギ花粉症 (P): 3.6→5.7%, 喘鳴 (W): 5.2→5.3%であった.AD, AR, AC, BA, Pのいずれか1つ以上を有するものは31.3→34.1%で, その累積有症率は45.5→56.3%であった. AD以外の疾患はすべて増加していた.2. 都市部, 中間部, 非都市部別の有症率では2002年には大きな差はなくなり, 性別ではADを除き男子に多かった.3. AR, AC, Pは年長児に多く, Wは年少児に多く, AD, BAは変わらなかった.4. 乳児期栄養, 室内喫煙, 暖房, 冷房別では大きな差は出なかった.5. 家族歴 (父母, 同胞) でアレルギー疾患を有する者, 既往歴に下気道感染症を有する者に有症率が著明に高かった.
著者
井上 寿茂 高松 勇 村山 史秀 亀田 誠 土居 悟 豊島 協一郎
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.102-108, 1994

気管支喘息の急性増悪に対するイプラトロピウム吸入液の効果を検討するため2~5歳の年少児23例と8~14歳の年長児18例を対象とし無作為にサルブタモール+イプラトロピウム群とサルブタモール単独群に分けてネブライザー吸入を行い, 光井のスコア (スコア), パルスオキシメーターによる酸素飽和度 (SpO<sub>2</sub>), 1秒量の予測値に対する百分率 (%FEV<sub>1</sub>) の変動を吸入前, 吸入後15分, 60分に経時的に検討した.<br>年少児, 年長児ともスコアは15分後から著明に改善し, イプラトロピウム併用による効果の差は認めなかった. SpO<sub>2</sub>は年少児ではサルブタモール単独群に比ベイプラトロピウム併用群で有意な改善を示したのに対し, 年長児ではイプラトロピウム併用による差は認められなかった. %FEV<sub>1</sub>は年長児のみ検討しスコアと同様15分後から著明に改善したが, イプラトロピウム併用による差はみられなかった. 以上より, 気管支喘息の急性増悪時, イプラトロピウム吸入液をサルブタモール吸入液と併用することにより年少児では効果の増強を期待できるが, 年長児では効果の増強を期待できないことが示された.
著者
一戸 美佳 市川 邦男 今井 博則 松井 陽
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.530-535, 2003-12-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
19

テオフィリン徐放製剤 (テオドールドライシロップ®) の至適投与量の検討を行った. 6か月~12歳 (中央値4.5歳) の気管支喘息児150名を対象に, 1週間以上の内服を確認した後, 内服3~5時間後のテオフィリン血中濃度を測定した. その結果, 6か月~1歳未満では投与量8mg/kg/日以下でも血中濃度10μg/ml以上となった症例がみられることから, 初期投与量はより少量とする配慮が必要である. 1歳児では投与量が11mg/kg/日以下であれば目標血中濃度域5~10μg/mlを越える症例は認められず, ガイドライン通り8~10mg/kg/日での開始は妥当である. 2歳以上の喘息児では10mg/kg/日から投与を開始し, 血中濃度を測定しながら適宜増量する必要がある. またC/D比 (血中濃度/投与量) は1歳未満の乳児では他の年齢群よりも高く, そのばらつきも大きかった. 以上からテオフィリン徐放製剤は, 年齢を考慮したきめ細かい投与が必要と考えた.
著者
佐藤 好範 関根 邦夫 渡辺 博子 大橋 裕美子 青柳 正彦 三之宮 愛雄 西牟田 敏之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.276-281, 1997-12-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

テオフィリン (TP) は, 気管支喘息治療薬として主要な薬剤の一つである. しかし, TPの代謝, クリアランスは種々の条件により影響を受け中毒症状を来しやすいことが知られている.今回我々は, 診断が明らかなインフルエンザウィルス (Inf) 感染時の, TPクリアランスの変化を経時的に検討した. その結果, 発熱に伴いTP血中濃度は約2倍に上昇し, クリアランスは2分の1に低下した. この変化は解熱後3日目に平常に戻った. またTP代謝産物の検討から発熱時にTPの代謝が抑制されている可能性が示唆された. Inf感染時には, 発熱と同時にTPの投与量を1/2に減量し, 解熱後3日目より, もとの投与量に戻すことによって, TP中毒を予防できうるものと考えられた.
著者
森川 みき 市川 邦男 岩崎 栄作 伊藤 わか 在津 正文 渡邊 美砂 増田 敬 宮林 容子 山口 公一 遠山 歓 向山 徳子 馬場 實
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.46-53, 1995-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

アミノフィリン持続点滴療法を施行した2歳未満 (2カ月~23カ月) の乳幼児気管支喘息96例 (気管支喘息疑い, 細気管支炎を含む) を対象に, テオフィリンクリアランスに影響を与える諸因子について検討した. テオフィリンクリアランスは加齢とともに上昇し, 6カ月以下の児では7カ月以上の児に比較して有意に低値であった. テオフィリンクリアランスの単変量解析の結果, 下痢を合併する群に有意に低値であった. 発熱群, 嘔吐群ではクリアランスの低下が認められたが統計学的には有意でなかった. アイテムに性別, 月齢, 体重, 発熱, 下痢, 嘔吐の6項目を選択した多変量解析の結果, テオフィリンクリアランスに影響を与える重要な因子は, 月齢, 下痢, 発熱の有無であると考えられ, 低月齢, 下痢, 発熱を有する症例ではテオフィリンクリアランスが低値を示す傾向が認められた.2歳未満の児にアミノフィリン持続点滴療法を施行する際は, 血中濃度のモニタリングを十分に行い, 患児の月齢, さらに下痢, 発熱の有無について考慮する必要があると考えられた.
著者
松本 健治
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.574-579, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
24

食物抗原特異的なIgE抗体の産生を阻止する一次予防のためには, 主要な感作経路である乳幼児期の湿疹 (アトピー性皮膚炎) の発症予防, 発症した場合には適切な治療を行うことが重要である. また, 経口免疫寛容の誘導のためには, 乳児期早期に離乳食での摂取を始めることが推奨される. 今後は, 具体的な離乳食の進め方 (どのような児に, いつから, どのような食材で, どれくらいの量で) や, すでに湿疹がある児 (感作が成立している可能性がある) に対する離乳食の安全な開始方法の開発が望まれる. また, 湿疹以外の経路による感作 (経胎盤感作, 経腸感作など) の機序の解明も重要な課題となろう.
著者
足立 雄一 五十嵐 隆夫 吉住 昭 萱原 昌子 足立 陽子 松野 正知 村上 巧啓 岡田 敏夫
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.40-45, 1991
被引用文献数
2

4例の食物依存性運動誘発性アナフィラキシーを経験した. それぞれの臨床症状について検討し, さらに全員に運動負荷を行い, その前後でCom48/80を用いた皮膚テストを実施した. 症例は男児1名, 女児3名. 13-16歳に発症し, 誘因はエビなどの甲殼類が2名, 小麦およびポテトが1名, 小麦が1名であった. いずれもRASTにて特異的IgE抗体を証明し得た. 運動はランニング, バレーボール, 早足歩行であり, 食後10分から2時間に運動することで発症している. 全員に蕁麻疹を認め, それ以外に意識消失や呼吸困難を認めた. 運動負荷のみでは全員無症状であったが, Com48/80に対する皮膚反応は3例において運動前に比して運動後に増大傾向を認めた. 以上より, 本疾患の発生機序としてアレルギー反応の関与が示唆されたが, 運動による皮膚肥満細胞の活性化の可能性については今後の課題である.
著者
柴田 瑠美子 古賀 泰裕
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.99-104, 2012 (Released:2012-05-31)
参考文献数
11

背景:アレルギー疾患の増加には乳児の消化管免疫に関わる微生物の働きの減弱が関連している可能性が指摘されている.そのため,これまでアトピー性皮膚炎における乳酸菌などによるプロバイオティクス効果について多くの検討がなされている.最近,アトピーリスク児におけるオリゴ糖によるプレバイオティクス効果として皮疹発症頻度の低下と腸内ビフィズス菌の増加が報告された.オリゴ糖は難消化性で消化管のビフィズス菌増殖作用がある.目的:オリゴ糖ケストースによる乳幼児アトピー性皮膚炎へのプレバイオティクス効果をRCTにて検討した.方法:食物アレルギーを有する乳幼児アトピー性皮膚炎の便中ビフィズス菌を検査し,12例のビフィズス菌低下児にケストースを12週間投与し,皮疹とビフィズス菌の変化を検討した.29例ではRCTによる効果を同様に検討した.結果:ビフィズス菌は皮疹重症例で低下し,皮疹重症度と逆相関していた.ビフィズス菌低下児へのケストース投与で6週より12週にビフィズス菌増加と皮疹改善効果がみられた.RCTでは,プラセボに比して有意に皮疹重症度の改善がみられ,ビフィズス菌低下群で有意のビフィズス菌増加がみられた.結論:オリゴ糖によるプレバイオティクス効果の機序は明らかでないが,ケストースは腸内細菌叢の健全化と消化管の透過性改善に直接関与する可能性がある.