著者
真栄田 裕行 安慶名 信也 金城 秀俊 上里 迅 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.396-402, 2017

<p>甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患として知られており,治療の有無にかかわらず確定診断後1年以上の生存を見ることはまれである。近年新たな治療法としてレンバチニブやソラフィニブ等の分子標的薬が登場したが,現状では手術が根治治癒の期待できる第一選択であることに変わりはない。2012年甲状腺未分化癌コンソーシアムにおいて,未分化癌に関する予後規定因子およびそれに基づいた個別化治療指針が提唱された。今回当科で経験した未分化癌症例の治療と,コンソーシアムにおける治療指針がどの程度合致するか検証した。その結果,個別化治療指針の内容はかなりの程度で許容できるものであり,未分化癌治療方針決定の一助となり得ると思われた。ただし現状の予後不良因子該当数のみですべての治療方針を決定するのは困難であり,実際には患者ごとの検討が必要であることは言うまでもない。</p>
著者
北原 哲 斉藤 成司
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.293-296, 1973

Otolaryngologists have recently had a chance meeting with patients suffering from foreign body problems due to ingestion of plastic goods, for examples, plastic imitation lipsticks and doll bottle caps or the like which would normally be put in or near the mouth.<BR>Of current note here are light, slippery, plastic, imtation bullets which are physically easy to ingest.<BR>Three patients, aged 5, 7 and 8 with ingested plastic bullets were successfully treated with endoscopic procedure in our clinic during January of 1973.<BR>Diagnosis of ingesting those foreign bodies in the bronchus was easily obtained thanks not only to radiographic examination in conjunction with careful physical examination but also to very clear history of aspiration.<BR>Extraction of the plastic bullet, however, was not so easy because clear detection of the ingested bullet under ventilation bronchoscope was difficult due to its pinkish color, and because the bronchus was easily and completely obstructed by the bullet due to its funnel-like shape.<BR>In this paper, our successful cases were reported and discussed mainly from the viewpoint of some devices or ideas how to find endoscopically such a plastic, pinkish and funnel-like shaped bullet.
著者
加治 正行
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.417-423, 2005 (Released:2006-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

小児にとって, 妊娠中の母親の喫煙および家庭内での受動喫煙による健康被害は深刻な問題である。妊娠中の母親の喫煙・受動喫煙, 出生後の乳幼児の受動喫煙は, いずれも乳幼児突然死症候群の危険因子である。日常的に受動喫煙にさらされている小児は, 気管や気管支粘膜の繊毛運動が障害されて気道の炎症を生じやすく, 気道過敏性も亢進するため, 気管支喘息, 上下気道炎などの呼吸器疾患に罹患する危険性が高くなる。受動喫煙によって小児の呼吸機能が低下するとの報告が多数あり, 全身麻酔時のトラブル発生率も高くなる。受動喫煙は小児の耳管粘膜の腫脹や繊毛運動の低下を起こし, 中耳炎の罹患率を増大させる。小児期の受動喫煙は, 後年肺癌発症の原因となる。近年わが国では未成年者の喫煙率が上昇している。喫煙の害は, 呼吸器疾患も含め成人でも小児でも基本的に同質であるが, 喫煙によって身体が受けるダメージは, 成人に比べて小児では著しく大きい。常習的に喫煙している小児に対しては禁煙治療が必要である。

1 0 0 0 新興感染症

著者
大曲 貴夫
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.331-338, 2016

<p>2012年以降中東では中東呼吸器症候群 (MERS) が発生し,第2のSARSとなる可能性が懸念されている。2015年には韓国でもアウトブレイクが発生し,WHOも介入する世界的な問題となった。本疾患が拡散した一つの要因として,特にサウジアラビアを中心に医療関連感染として患者および医療従事者間で流行したことがあげられている。そればかりでなく,中東で曝露した者が飛行機を用いて欧州,北米などに移動し,同地で発症する等の事態も起こっている。加えてラクダがMERSコロナウイルスを保有していることが明らかになってきており,ラクダの国境を越えた売買による本ウイルスを有するラクダの移動なども感染の伝播の観点から注目されている。</p><p>H5N1鳥インフルエンザAは1998年に最初の感染例が香港で報告されたが,2003年から再び東南アジアを中心に発生している。H5N1インフルエンザの出現は,感染症に対する世界的な危機意識を高めた。なぜならば本疾患の流行は,将来くるであろうインフルエンザのパンデミックへの懸念を呼んだからである。また現在では中華人民共和国を中心にH7N9鳥インフルエンザがみられている。本疾患は2013年2月に発生し,同年夏に収まったかに思えたが,同年秋以降再度患者が発生し発生国も中国以外に広がっている。</p>
著者
伊藤 裕之
出版者
日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-9, 2005-02-10
著者
斎藤 望
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.110-115, 1983
被引用文献数
1

The song ontogeny of birds is classified into 2 types. One kind of bird must learn the species-specific pattern of its song, the other need not learn but inherit the proper pattern. The former type of bird, for instance the canary has complicated vocal organ, the syrinx and the latter has a primitive syrinx. The peripheral and brain innervation patterns are also different between the two types of syrinx.<BR>One cerebral vocalization center of the canary, either the n. robustus archistriatalis (RA) or the hyperstriatum ventrale, pars caudale (HVc), has a specific role in performance of the song and elicits a specific pattern of unit spike discharge. The neurons of the centers responsible for voluntary vocalization also respond to sound stimulation at the same time: the HVc responds to white noise, and the RA responds to clicks, pure tones and FM sounds. An interconnecting organization between the vocal and auditory, or motor and sensory systems, in the cerebrum is speculated to be a means of connecting the RA and thalamic organization of the auditory area.
著者
兵頭 政光 甲藤 洋一
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.84-90, 2006 (Released:2006-04-24)
参考文献数
19

喉頭は発声·呼吸·嚥下など多彩で複雑な機能を担っている。これらの機能の微細な調節には喉頭内の固有知覚受容器からのフィードバック機構が必要である。本稿では,喉頭の運動制御に強く関わっている筋紡錘と知覚神経終末についてわれわれがこれまでに行ってきた形態学的研究の成果を提示し,運動調節機構における役割について考察する。 ヒト喉頭について組織学的検索を行うと,外側輪状披裂筋を除くすべての内喉頭筋で筋紡錘の存在が観察できた。内喉頭筋の筋紡錘は他の骨格筋と比較して少なく,径や錘内筋線維の数などの点で小型であった。透過型電子顕微鏡による観察では,錘内筋線維の表面に瘤状の知覚神経終末が分布し,その一部は筋形質内に侵入していた。これにより,知覚受容器として効率的に機能することが推測された。内喉頭筋線維に分布する知覚神経終末は自由終末,葉状終末,らせん終末,終末球など多様な形態のものが観察され,多機能な知覚受容器として機能していると考えられた。
著者
佐藤 克郎 川名 正博 山本 裕 佐藤 雄一郎 花澤 秀行 高橋 姿
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.465-471, 2002
被引用文献数
2

当科で音声外来開設以来13年間に経験した輪状披裂関節脱臼の2例につき,その経過を報告するとともに,輪状披裂関節脱臼の診断,音声機能の評価,経過観察と治療の方針につき検討した。当科の2症例はおのおの頸部への鈍的外傷および気管内挿管により前方型輪状披裂関節脱臼が発生し,音声機能を評価しつつ脱臼の整復を計画していたところ,おのおの発生から1および4カ月後に自然整復された。音声機能検査では,両例とも声門閉鎖不全の所見に加え基本周波数の上昇が認められ,自然整復後はいずれも改善し正常化した。文献的にも本症の自然整復例はある程度みられ,前方脱臼に多い。そこで自然整復の機序を推察すると,披裂軟骨に後方への張力として働く筋は唯一の声門開大筋で,他の筋に比べ働く頻度が高い後輪状披裂筋であるため,前方脱臼は自然整復の可能性が高いと考えられた。気管内挿管や頸部の外傷後に喉頭の症状をきたした症例においては,本疾患をも念頭におき,病歴や局所所見のみにとらわれず画像診断,音声機能検査,筋電図検査などを用いて確実に診断し病態を評価したうえで,容易に反復し施行できる音声機能の経過を参考に治療を計画することが重要と考えられた。
著者
吉田 友英 長舩 宏隆 山本 昌彦 谷野 徹 小田 恂 蛭田 啓之
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.443-448, 1990-12-10 (Released:2010-10-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Almost the entire malignant tumors arising in the larynx are the laryngeal carcinoma. Laryngeal carcinosarcoma, in which carcinoma (epithelial malignant tumor) coexists with sarcoma (interstitial malignant tumor) in the same organ, is rarely found.In this report, we described a recent case of carcinosarcoma arising in the epiglottis of a 74-year-old man who visited our hospital with a complaint of nocturnal dyspnea. We discussed the its clinical feature, pathological findings, and the treatment as well as a review of the literature of this disease.The carcinosarcoma in this case was extremely rare and it was comprised of squamous cell carcinoma, adenocarcinoma and sarcoma component which could be confirmed immunohistochemically.This carcinosarcoma was considered to be a true carcinosarcoma.
著者
木村 美和子 萩澤 美帆 中嶋 正人 二藤 隆春 田山 二朗
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.484-488, 2005-12-10
被引用文献数
3 3 6

ガス壊疽はガス産生を伴う壊疽性の軟部組織感染症であり, クロストリジウム属に起因するものと非クロストリジウム属に起因するものとに大別される。従来, 頭頸部領域には稀とされてきたが, 最近報告例が増加し, 強い病原性を呈する可能性があり非常に注意を要する。今回われわれは齲歯が原因と予想される頸部から縦隔まで進展した非クロストリジウム属に起因する頸部ガス壊疽の症例を経験した。本症例は皮下に握雪感を伴い, ガス産生菌によって引き起こされた, 急速に進行する軟部組織の壊死性感染症であり, ガス壊疽と診断した。造影CTにて両側頸部, 縦隔に著明なガス像と膿瘍形成を認め, 術前の病変の進展範囲の判定に有用であった。受診同日に局所麻酔下に気管切開を施行し, 気道確保後, 全身麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術, デブリードメント, 縦隔ドレナージを施行し, 術後も呼吸器科と連携して約2週間十分に抗菌薬投与し, 救命しえた。ガス壊疽は症状の進行が非常に急速であり, 炎症の波及の範囲を適切に判断した迅速なドレナージと抗菌薬投与が重要であると考えた。
著者
宇野 敏行 丁 剛 馬場 均 正垣 一博 廣田 隆一 久 育男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.432-435, 2000-12-10 (Released:2009-01-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

We report a rare case of a foreign body, a large snail, in the esophagus. A 20-year-old male, a freshman in college, was invited to a party at a music club and was requested by senior students to do a comical performance. He decided to swallow a large snail in its shell. Severe throat pain was immediately noted. He tried to induce vomiting, but was unable to and came to our hospital for emergency case. No foreign body was found in the hypopharynx. Plain X-ray examination showed a circular shadow in the neck, 3 centimeters in diameter. We identified the foreign body in the esophagus in the neck. We tried to remove the object with an endoscope under general anesthesia. The shell was found at the inlet of the esophagus and was spherical and smooth, which made it impossible to grip with forceps. Therefore, we removed the foreign body via external incision of the neck.
著者
小澤 壮治 安藤 暢敏 大上 正裕 北川 雄光 北島 政樹
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.539-542, 1999-10-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
6

Thoracoscopic surgery for esophageal submucosal tumor is less invasive than open surgery. Surgical indications are limited to cases with a pathological finding benign, combined with certain symptoms. On the other hand, malignant submucosal tumors should be treated by esophagectomy and regional lymph node dissection using either the open or thoracoscopic procedures.
著者
中村 一博 一色 信彦 讃岐 徹治 三上 慎司
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.310-319, 2007-06-10
被引用文献数
10 15

Gender Identity Disorder (GID)は性同一性障害といわれ,生物学的性別と心理社会的性別が解離している病態である。<br>今回われわれはmale to femaleのGID (MTF/GID)症例に対し,話声位(SFF)の基本周波数を上昇させる目的でPitch Elevation Surgeryを施行した。その成績について報告する。<br>症例は1999~2006年に当院を受診し手術を施行したMTF/GIDの32例である。32例に対し甲状軟骨形成術4型(4型)を施行した。そのうち24例には喉頭隆起切除術を併せて施行した。<br>32例全例のSFFは上昇した。術前の平均SFFの基本周波数は133.8 Hz,術後は平均237.8 Hzであった。局所麻酔にて手術を施行しているため,全例ともに術中に患者の納得のいく基本周波数に調節することができ満足が得られた。<br>4型はMTF/GID症例におけるPitch Elevation Surgeryとして有用であると思われた。
著者
森下 淳夫
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.198-207, 1978-06-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
32

The blood serotonin level was measured in 144 subjects consisting of 23 normal subjects, 84 patients with bronchial asthma, 13 with nasal allergy, 16 with other pulmonary diseases and 8 with urticaria. In asthmatic patients, the data were specifically examined with reference to the other clinical and laboratory test results. The results were as follows;1. The blood serotonin level in 23 normal subjects was within the range of 0.081±0.02μg/ml and there was no sexual difference.2. The blood serotonin level was 0.108±0.027μg/ml in asthmatic patients, 0.120±0.013μg/ml in nasal allergy and 0.113±0.023μg/ml in urticaria. These values were signifantly higher than that in the normal subjects (p<0.01). The value in other pulmonary diseases tended to be higher than the normal but the difference was statistically insignificant.3. Among different types of asthma, atopic type showed significantly higher blood serotonin level than the others (p<0.01). When the measurement was made in the subjects during their asthmatic attack, the value was evidently higher than in those in attack-free interval. In particular, the difference was statistically significant if the comparison was made within the same subject (p<0.01).4. The blood serotonin level in the group showing positive skin reaction to allergen was higher than that in the negative group (p<0.001). However, there was no positive correlation between the blood serotonin level and serum IgE or the blood histamin level.5. The blood serotonin level in type I and type II groups of CMI test was higher than that in type III and type IV groups (p<0.02). On the other hand, the results of Yatabe-Gilford test showed no positive correlation with the blood serotonin level.6. There was a tendency toward decreasing blood serotonin level following the treatment with β-stimulator and corticosteroid. However, there was no change in the blood serotonin level by hyposensitization or gold therapy.
著者
山本 一博 松岡 明裕 稲木 勝英 古川 浩三
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.409-415, 1994
被引用文献数
1

A patient with multiple injuries in the pharynx and esophagus caused by a dog bite was discussed. Examination showed two perforations in the digestive organs: One was located at the left pyriform sinus and the other in the wall of the cervical esophagus. The sternocleidmastoid muscle, anterior cervical muscle, internal jugular vein and sympathetic nerve trunk were also invaded by the trauma.<br>If an injury to the esophagus is suspected it is usually necessary that diagnosis and treatment be done as quickly as possible. In this case, a esophagial injury was diagnosed at an early stage, because saburras were found in the avulsed wound to the cervical skin. There is usually a high possibility of multiple wounds and more serious subcutaneous damage compared to size of a lesion on the surface of the skin in dog bite injuries, and it is indispensable to understand all existinn wounds before beginning surgical treatment.
著者
中村 一博 吉田 知之 鈴木 伸弘 竹之内 剛 岡本 伊作 渡嘉敷 亮二 鈴木 衞
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.298-306, 2006-06-10
被引用文献数
5 2

咽頭食道異物は外来診療において遭遇することの比較的多い疾患である。通常は経口的,経内視鏡的に摘出可能であるが,異物の種類によっては頸部外切開が必要となることもある。今回われわれは外切開による摘出を必要とした下咽頭頸部食道異物の3例を経験したので報告する。<br> 症例1と2は義歯の紛失が主訴であった。CTと単純X線にて下咽頭頸部食道に義歯を認めた。同日,全身麻酔下頸部外切開にて摘出した。<br> 症例3は食事中の突然の顔面頸部腫脹を主訴に当院救命救急部を受診した。初診時のCTにて頸部皮下気腫,縦隔気腫,下咽頭頸部食道異物を認めていたが救命的処置を優先し,第11病日に当科を受診した。同日緊急切開排膿術,異物摘出術を施行した。多量の膿汁と頸部食道粘膜壊死を認め,食道外に蟹の殻が存在していた。第78病日に敗血症で死亡した。<br> 下咽頭頸部食道粘膜は薄く鋭利な物質で容易に穿孔する。誤飲した異物についての詳細な問診が重要である。有鉤義歯の鉤が陥入している場合,無理に抜こうとすると消化管穿孔の原因となる。症例3は皮下気腫から縦隔膿瘍,敗血症となり不幸な転帰をたどった。迅速な診断が重要である。<br> 下咽頭食道異物症例では診断の遅れが致命的になることもある。詳細な問診,迅速な診断,適切な処置が重要である。
著者
木村 百合香 加藤 智史 高橋 正時 岸本 誠司
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.551-555, 2008-12-10 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

今回われわれはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与と血管再生治療後に生じた喉頭浮腫治療後,nasogastric tube症候群による両側声帯麻痺を発症した1例を報告した。症例は76歳男性,主訴は吸気時呼吸困難であり,喉頭内視鏡検査にて著明な喉頭浮腫を認めたため同日緊急気管切開術を施行した。3カ月前より高血圧に対しARBであるカンデサルタンシレキセチル(ブロプレス®)を使用し,また閉塞性動脈硬化症に対し末梢血幹細胞移植による血管再生治療後7日目であった。喉頭浮腫の改善後,両側声帯正中固定が明らかとなった。多系統萎縮症等は否定的であり,経鼻胃管を挿入中であったことからnasogastric tube症候群による両側声帯麻痺と診断した。発症後10カ月現在も両声帯は正中位固定のままカニューレ抜去困難状態が続いている。アンギオテンシン変換酵素阻害剤とARBの重要な副作用に血管性浮腫があり,時に重篤な気道狭窄をきたすことがある一方,再生医療のさきがけとして血管再生治療が臨床導入されているが,移植された幹細胞から放出されるサイトカインにより血管性浮腫をきたす可能性も指摘されており,両者が本症例の喉頭浮腫に関与したものと考えた。また,経鼻胃管の留置による重篤な合併症であるnasogastric tube症候群にも留意が必要である。
著者
岩田 重信 三嶋 由充子 西村 忠郎 川勝 健司 石神 寛通 佐藤 達明 斉藤 路子 宮沢 亨司 馬場 駿吉 高木 一平 加藤 洋治 堀部 昌代 野々山 勉 木村 哲郎 松浦 由美子 浅井 美洋
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.510-525, 1996-12-10
被引用文献数
31 15

434 cases (216 males and 218 females) of esophagus and 182 cases (118 males and 64 females) of broncho-tracheal foreign bodies gathered from the ENT departments of 7 universities located in the Tokai area of Japan were statistically analyzed during past 10 years. As esophageal foreign bodies, PTP (35.1%) ranked first, followed by coins (24.0%), peaces of meat (10.9%), and fish bones (10.0%). In regard to broncho-tracheal foreign bodies, 75.1% of all cases were under 3-year-olds patients. Transluscent foreign bodies were found in 86.3% of all cases. The foreign bodies were beans in 68.1% of all cases, followed by artifical teeth in 11.5%. The foreign bodies were lodged in the right bronchas with the same frequency as in the left. In this study, PTP foreign bodies have occurred most often in the esophagus recently, and the discussed the prevention of PTP foreign bodies in this paper.