著者
岡本 芳晴 南 三郎 松橋 晧 指輪 仁之 斎本 博之 重政 好弘 谷川 孝彦 田中 吉紀 戸倉 清一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.739-742, 1993-10-15
被引用文献数
17

イカ甲キチンより精製したポリN-アセチル-D-グルコサミン(キチン)の犬における組織反応を観察するために, 1群にはポリエステル製不織布(NWF)にキチンを含浸させたもの(キチン群)を, 他群にはNWFのみ(対照群)を, 1頭あたり背部皮下4ヶ所に移植した. 移植後2, 4, 8, 18日目に移植片を採材し, 肉眼的ならびに組織学的検索を実施した. キチン群において移植したNWFは漸次器質化され, 18日目には完全に器質化された. またこの時, NWFへの明瞭な血管新生を認めた. 一方, 対照群においては器質化は不完全であり, NWFへの血管新生も認められなかった. 組織学的にはキチン群において移植後2日目に対照群に比較してNWF周囲に単核球および多形核白血球の集簇が顕著であった. またキチン群において移植後4日目にNWF周囲に血管に富んだ結合組織が観察された. しかしながら対照群では, このような所見はこの時期においてはみられなかった. 以上の成績より, キチンはNWFへの単核球および多形核白血球の遊走を高め, 血管新生を伴うNWFの器質化を促進させることがわかった.
著者
山添 和明 日比野 千里 工藤 忠明 柳井 徳磨
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.739-745, 1994-08-15
被引用文献数
2

ハトに実験的上腕骨骨幹骨折を作製し, 骨セメント注入法とプレート固定法の併用が骨折の治癒機転に及ほす影響を検討するとともに, 飛翔能力の回復についての観察も行った. その結果, 骨セメント注入法あるいはプレート固定法単独では術後2週目以内に単純X線所見で全例再骨折を認めたが, 併用法では全例に再骨折を認めず, 術後6週目以降ほぼ正常な飛翔が可能であった. マイクロアンギオグラムおよび組織学的検査から骨セメントによる内仮骨形成の阻害が観察されたが, 血液供給は術後2週目ですでに回復しており皮質壊死像も認められなかった. また骨セメントが皮質骨折端間に高度に残存した場合皮質がつながらず, 海綿骨様化が認められた. しかし飛翔能力が早期に回復したことからプレートと骨セメントが骨折部の変位を防止する良好な支持体になると考えられた.
著者
Sakpuaram Thavajchai 福安 嗣昭 芦田 淨美
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1279-1281, 1989-12-15
被引用文献数
4

1987年6月〜7月において, 屠場搬入の肺炎病巣保有豚120頭のうち25頭から A. pleuropneumoniae(104株)を分離した. 病変別の菌分離率は, 膿瘍では34.0%(16/47), 出血性肺炎では11.6%(5/43), 膿瘍と出血性肺炎を保有する肺炎では26.7%(4/15)であった. 分離菌株の血清型別を行ったところ, 1型2頭(10株), 2型21頭(85株) 8型2頭(8株), 9型1頭(1株)であり, 8型及び9型菌株は我が国で初めて分離された.
著者
平野 稔泰 小川 美敬 後藤 仁 清水 亀平次 野呂 新一 桜田 教夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.633-638, 1985-08-15

1980〜83年に, 北海道帯広市の十勝総合食肉流通センターで収集したブタ血清3,701例について, 香港型(H3N2)インフルエンザウイルスに対する抗体調査を行った. 1980〜82年では抗体陽性率は0.7〜7.4%で, 1980年には7〜8月に集中して陽性血清が認められた. これらのブタは屠殺時に7か月齢であり, 同年1〜3月に帯広地区学童間に確認されたH3N2ヒトインフルエンザウイルス流行時に若齢豚への感染がおこったものと考えられた. 一方, 1983年には3月に抗体陽性例が出現し, 3〜7月を通じて高率(4.8〜53.4%)に陽性例が認められ, 同年1〜3月におこったH3N2ウイルスのヒトにおける流行時に成豚も含めてブタが感染したことが示唆された.
著者
鈴木 正嗣 梶 光一 和 秀雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.551-556, 1992-06-15
被引用文献数
9

北海道洞爺湖中島のエゾシか個体群について, 精巣ならびに血漿テストステロン濃度の年間変動を調べた. 他の温帯性のシカ類と同様に, エゾシカにおいても, 精巣のサイズや精細管直径, 精細胞の構成や配列, 血漿テストステロン濃度に顕著な季節的変化が認められた. 精子形成は7〜8月頃に開始されると考えられ, 8月末の時点では完成した精子が少数みられた. 洞爺湖中島における交尾期開始時期の10月末になると, 精巣サイズや精細管直径の平均値は最大となり, 精上皮には盛んな精子形成像が認められた. 精巣の退縮はl2月末には始まっており, 2〜3月になると精子形成は終了していた. 以後6月頃まで, 精巣は休止状態にあるものと思われた. 交尾期にあたる10月末と11月初めの血漿テストステロン濃度は, 2月や3月, 6月, 12月に比べると極めて高く, 個体差が大きかった. この個体差は, テストステロンのpulsatile secretionによるものと考えられた.
著者
原澤 亮
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.961-964, 1994-10-15
被引用文献数
3

豚の日本脳炎, 伝染性胃腸炎, パルボウイルス病, およびヒトの麻疹, 風疹, 流行性耳下腺炎に対する生ワクチンから検出された pestivirus RNA の5'非コード領域を比較検討し, 以下の成績を得た. (1)検出された pestivirus RNA は, 牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)のものと思われた. (2)これら pestivirus は既知のBVDV株も含めて, 少なくとも3型(I, II, III)に分けられた. (3)塩基置換は二次構造へ寄与するように共変的(covariant)であった. (4)想定された二次構造は原核生物のρ非依存性ターミネーターに類似していた. (5)5'非コード領域内に短いORFが比較的よく保存されていた.
著者
熊埜御堂 毅 福永 昌夫 鎌田 正信 今川 浩 安藤 泰正 和田 隆一 新田 仁彦 秋山 綽
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.1191-1197, 1986-12-15

西日本地域の馬飼養地2箇所において, 1980年5月11日〜11月18日の期間, 隔週に採集した雌成虫蚊33,604匹から, Vero及びHmLu-1細胞培養によって計13株のウイルスが分離された。これら13株中4株はゲタウイルス, 9株は日本脳炎ウイルスと同定された。ゲタウイルス4株中3株は宮崎競馬場から採集されたコガタアカイエカ200プール19,465匹から分離され, 感染率は1:6,488であった。残りの1株は栗東トレーニング・センターで採集された5,897匹のコガタアカイカから分離された。宮崎競馬場及び栗東トレーニング・センターにおけるコガタアカイエカは全採取蚊種のそれぞれ85.1%及び54.5%を占め, 両調査地において捕獲されたキンイロヤブカは2%以下であった。以上の成績から西日本地域の散発的ゲタウイルス感染症においては, コガタアカイエカが主要ベクターであることが示唆された。
著者
高瀬 公三 西川 比呂志 野中 富土男 山田 進二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.567-574, 1985-08-15
被引用文献数
3

肉用鶏の腱鞘炎由来トリレオウイルス58-132株の病原性を検索した. 1日齢SPFひ^^.な^^.に58-132株を皮下接種すると, 10^<2.7>PFU/羽以上でひ^^.な^^.は全例死亡し, LD_<50>は10^<0.8>PFUであった. 10^<5.7>PFU/羽の経口接種では14羽中10羽が死亡した. 58-132株を7日齢以下のひ^^.な^^.に経口接種すると生残ひ^^.な^^.の全例に腱鞘炎が認められたが, 14日齢接種では5羽中3羽のみが発病し, 21日齢以上のひ^^.な^^.への接種では発病例はなった. また, 感染ひ^^.な^^.と同居させたひ^^.な^^.の全例に腱鞘炎が発生し, ウイルスが回収され抗体も陽性を示した.
著者
清水 晃 尾崎 潤一郎 河野 潤一 斉藤 吉広 木村 重
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.355-357, 1992-04-15
被引用文献数
5

検索した8種類の動物およびヒトの皮膚からブドウ球菌が高率に分離された. 動物で分離頻度の高かった菌種はノボビオシン(NB)抵抗性のもので, なかでもStaphylococcus xylosusがブタ, ウシ, ウズラ, ニワトリ, マウス, ラットの皮膚に広く分布していることがわかった. また, ニワトリからはNB感受性のS. aureusとS. hyicusも比較的多く分離された. ヒトから分離されたブドウ球菌はすべてNB感受性の菌種であった.
著者
大石 勇 片江 宏巳 中垣 和英 中井 正博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.125-130, 1988-02-15
被引用文献数
1

Ivermectinの1か月間隔投与による犬糸状虫の寄生予防効果を,自然感染下で実験した. 実験犬35頭をA(15頭), B(10頭), C(5頭)の3群とし,7月1日から9月30日の3か月間蚊に曝して自然感染させた. さらに,A,B両群には7,8月に3回に分けてL_3を1頭当り30匹実験感染した. A群には8,9,10,11月の各月1日にivermectin 6μg/kgを経口投与し,B群にはA群と同一日にplaceboを投与し,C群は無投薬群とした. B群全例からは平均49.1匹の虫が回収(実験感染L_3数に対して平均163.7%の回収率)され,C群全例からは平均33.6匹の虫が回収されたことから,この実験では高度の自然感染があったことが示された. Ivermectin投与のA群からは虫は回収されず,右心への寄生予防効果は確実であり,副作用は認められなかった. 以上の成績から,自然感染開始後1か月から終了後1か月の期間を通して,1か月間隔でivermectin 6μg/kgを投与すれば,犬糸状虫寄生を確実に予防できることが証明された.
著者
佐々木 信宏 高橋 清志 川本 哲 黒沢 隆 井田 三夫 川合 覚
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.495-501, 1990-06-15

単為生殖系フタトゲチマダニの幼ダニをT. sergentiの自然感染牛に耳袋法で付着, 飽血させた. 飽血ダニは24℃で飼育後, 37℃, 相対湿度約100%で温度感作を加え, 若ダニ唾液腺内のT. sergentiの発育をメチルグリーン・ピロニン染色で観察した. 温度感作を加えたダニの唾液腺腺胞内に成熟原虫塊が認められ, このダニの乳剤を接種した牛では18日目から原虫血症がみられ, IFAによって特異抗体も検出された. 以上のようにT. sergentiは37℃の温度感作を与えたフタトゲチマダニの唾液腺内で感染力を持つまでに成熟することが確認された.
著者
串田 寿昭
出版者
日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.p77-81, 1979-02

Trichophyton rubrumによる犬のringwormについては, さきに, 飼主の"みずむし"から感染したと考えられる症例を, わが国における最初の記載として報告したが, 今回, それと同様にやはり飼主から感染したと思われるプードルの症例を経験したので, 第2例目として追加報告する. 犬の病巣はトリミングされた腰背部に限局し, 紅斑, 落屑, 脱毛がみられた. 飼主は同菌による多年にわたる"みずむし"をもっており, 夜間犬と一緒に寝る習慣があった.
著者
相内 聖峰 小林 賢一 黒崎 映子 佐久間 貞重
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.177-181, 1986-02-15

74週齢の雄 Sprague-Dawley ラット1例の胸部脊髄に星状膠細胞腫が観察された。組織学的には, 密に増生した腫瘍細胞は明瞭な神経膠線維を随伴した多面形を示し, ヘマトキシリンに濃染する卵円形核と比較的乏しい細胞質を有していた。神経膠線維酸性蛋白(GFAP)に対する免疫組織化学法ではいくつかの腫瘍細胞が陽性を示した。電顕的には, 腫瘍細胞は細胞質内の種々の小胞と乏しい微細線維により特徴づけられた。
著者
永野 博明 林 和彦 久保 正法 三浦 康男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.307-314, 1990-04-15
被引用文献数
1

長崎県, および宮崎県を除く九州地方で牛流行熱が発生した. 長崎県では17年ぶりの発生であった. 10月17日に平戸市で初発し, 長崎県では24戸24頭の発生であった. 臨床症状は突然の発熱, 食欲不振および起立不能であった. 発症牛全例において牛流行熱ウイルスに対する抗体価の上昇が見られた. 17例の発症牛のヘパリン加血液から初代HmLu-1細胞で, 12株のウイルスが分離された. これらの分離株は牛流行熱ウイルス山口株の免疫血清ですべて中和された. 電子顕微鏡では, 代表株平戸-9感染HmLu-1細胞の材料中に150nmの円錐型ウイルス粒子が観察された. 平戸-9株と山口株は交差中和試験で, 互いに良く交差した. 牛流行熱ウイルスの分離は, 発症牛の血球材料(洗浄血球)を用いることにより, HmLu-1細胞で容易に分離されることが明らかになった.
著者
石原 勝也 北川 均 佐々木 栄英
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.739-745, 1988-06-15

犬糸状虫性血色素尿症(caval syndrome)例の外頸静脈から, フレキシブル・アリゲーター鉗子を用いて, 右心房と三尖弁口部の犬糸状虫を摘出後, さらに肺動脈内の犬糸状虫を摘出した. 23例の外来患畜では, 右心房及び三尖弁口部の犬糸状虫はすべて摘出され, このうち16例(69.6%)では肺動脈から1〜36隻が摘出された. 実験例9例では, 右心房から2〜34隻の犬糸状虫が, また, 6例の肺動脈からは3〜21隻の犬糸状虫が摘出された. 残留糸状虫数は0〜11隻で, 平均摘出率は83.2%であった. 24時間後, 実験例の右心系循環動熊は, 摘出後回復した5例では, 摘出前に比べ右心拍出量, 心指数及び一回拍出量が増加傾向を示したが, 予後不良では4例中3例で減少した. 肺動脈圧と右心室圧は, 摘出前はほぼ正常値から著しい高値まで様々であったが, 摘出後は予後の良否にかかわりなく増減不定に変化し, 関与因子が複雑であることが示唆された.
著者
長野 秀樹 宝達 勉 土本 まゆみ 井出 誠弥 山上 正 山岸 郭郎 藤崎 優次郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.491-497, 1987-06-15
被引用文献数
1

精製ウイルスをトライトンX-100で可溶化したものを抗原とするELISA法により中和試験でほとんど交差性がみられなかったB42株 (マサチューセッツ型), グレイ株 (デラウェア型) およびA5968株 (コネチカット型) の3株間に強い交差反応がみられた。ELISA法ではB42株は血清学的に相互に異なると思われている上記3株以外の8株と強く反応し, 鶏血清のB42株に対するELISA抗体価は中和抗体価と平行して推移した。
著者
廉澤 剛 野崎 一敏 佐々木 伸雄 竹内 啓
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1167-1169, 1994-12-15
被引用文献数
11

1.5歳の雌雑種犬に自然発生した骨肉腫から直接細胞培養し, 骨肉腫細胞株POS細胞を樹立した. この細胞は, 33時間で倍加し, 形態的にはいくつかのタイプの細胞が観察された. 透過型電子顕微鏡で, 多数の拡張した粗面小胞体が認められ, また高いALP活性を持つことから, 骨芽細胞由来の細胞と考えられた. さらに, この細胞のヌードマウス移植腫瘍を病理組織学的に調べたところ, 原発腫瘍と同様の骨肉腫組織像を示すことが明らかになった.
著者
平棟 孝志 工藤 竜大 菊地 直哉 梁川 良
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.111-114, 1988-02-15

C. renale, C. pilosum およびC. cystitidis はホスホマイシン(FOM)に抵抗性で,その最小発育阻止濃度(MIC)は25,000-75,000μg/mlであったが,S. aureus, S.agalactiae, E. coli,およびB.subtilisのそれは12.5-25.0μg/mlであった. トリプチケースソイ寒天培地にFOMを200μg/ml,抗真菌剤として,アムホテリシンBを2μg/ml,馬脱線血を5%に加えた選択培地を用いて,江別市近郊で飼育されている210頭の健康牛から尿路コリネバクテリアの検出を行ったところ,12頭(5.7%)の外陰部および14頭(6.6%)の膣前庭からC. renaleが,また,34頭(16.2%)の外陰部および膣前庭からC.pilosumが分離され,外陰部からの尿路コリネバクテリア菌数が,膣前庭からのそれよりも多かった. 上記選択培地を用いることにより,糞尿で汚染されている牛の外陰部にC.renale, C. pilosumが多数存在することが明らかにされ,この選択培地は牛舎の床,放牧場の土などにおける尿路コリネバクテリアの分布を調べるために有用と思われた.
著者
Limcumpao Joselito A. 掘本 泰介 高橋 英司 見上 彪
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.351-359, 1990-04-15
被引用文献数
1

ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)糖蛋白質(gp)の感染細胞内における局在部位と輸送を調べるために, 単クローン性抗体による間接蛍光抗体法(IFA)を経時的に行った. 抗gp143/108抗体による蛍光はウイルス感染4時間後に細胞膜と核膜部位において初めて認められ, 8時間目以後は核周囲および細胞質内にも明瞭な蛍光が見られた. gp113に対しても同様の部位において反応が見られたが, 8時間目までは蛍光が認められなかった. 一方, 抗gp60抗体による蛍光は感染12時間後に核の近傍および周囲に初めて認められ, 16時間後には核内に, また20時間後には細胞質内にも蛍光が認められた. さらに, これら3種類の糖蛋白質は感染細胞膜表面にも発現されていることが, 未固定感染細胞を用いたIFAにより明らかになった. 次に, ELISA additivity試験により各糖蛋白質上のエピトープマッピングを行ったところ, gp113は2ドメインにより構成されており, そのうち一つは, 部分的に重複する3エピトープを持つウイルス中和反応に関与するドメインであると考えられた. 一方, gp143/108には重複領域を持つ5エピトープで構成される一つの抗原領域が存在し, そのうち1エピトープはこの糖蛋白質を認識する全ての単クローン性抗体と反応するものと考えられた.
著者
山本 孝史 輿水 馨 尾形 学
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-5, 1986-02-15
被引用文献数
5

わが国において, 1970〜1981年の間に豚流行性肺炎病巣部から分離されたMycoplasma hyopneumoniae 54株および新基準株Jの各種抗生物質に対する感受性につき検討を加え, 以下の成績を得た。1)最も高い活性を示したのはチアムリンであり, 供試した55株の全てに対し, 0:02〜0.04μg/mlの最小発育阻止濃度(MIC)を示した。2)タイロシン, ジョサマイシン, スピラマイシン, キタサマイシンのマクロライド系薬剤もこの順に高い活性を示したが(0.02〜1.25μg/ml), エリンロマイシンのMICは2.5〜20μg/mlであった。3)リンコマイシンはタイロシンとジョサマイシンの中間的なMIC (0.04〜0.16μg/ml)を示したが, アミノグリコシッド系薬剤のネオマイシン, カナマイシンは比較的高いMICを示した(0.16〜10μg/ml)。4)テトラサイクリン系薬剤のうちクロールテトラサイクリン(CTC)のMICは, 2.5〜40μg/mlに分布していたが, テトラサイクリン, オキシテトラサイクリン, ドキシサイクリンのそれは, 0.04〜2.5μg/mlであった。5)1970年度分離株では大部分の株がCTCに対し5μg/ml以下で, また他のテトラサイクリン系薬剤に対しては0.16μg/ml以下で感受性を示したが, 1979〜1981年度の分離株では, これらの濃度で感受性を示したのは半数以下であった。6)CTCのMIC値と他のテトラサイクリン系薬剤のそれとの間には相関が認められた。