著者
伊東 登 岡田 洋之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.439-442, 1993-06-15

セキセイインコにおけるクロラムフェニコール(CP)の薬物動態および安全性を調べた. 100mg/kgまたは200mg/kgの筋注後15分で最高血中濃度35.3μg/mlまたは90.7μg/mlに達し, その後半減期2.5ないし2.7時間で減少した. この結果, 100mg/kgのCPを1日3回または200 mg/kgを1日2回投与することによりセキセイインコの感染症の治療に有効であると思われた. CPまたは生理食塩水を1日2回または3回, 5日間筋注後, 赤血球, PCV, ヘモグロビン, 血漿総蛋白, AST, ALT, LDHおよびCKを測定した. 実験前後の体重も測定し, さらに全身臓器を病理組織学的に検索した. 注射の影響として注射部位の筋肉障害が顕著であった. 200mg/kgのCPを1日2回5日間投与する方法は比較的安全であると思われた.
著者
播 英仁 輿水 馨 原澤 亮
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.203-205, 1987-02-15
被引用文献数
3

日本各地におけるニワトリ由来ウレアプラズマの分布を調べる目的で, 1都13県82鶏群の計456羽のニワトリの口腔を検査したところ, 1都8県, 31鶏群の110羽 (22.6%) がウレアプラズマ陽性であった。ウレアプラズマの分離率は農家, 個人宅, 幼稚園, 小学校で飼育されているニワトリの方が, 専業養鶏場のニワトリより高率であった。1都8県に散在している11鶏群から分離された11株は代謝阻止試験によりすべて血清学的に均一な性状を示し, ヒト由来Ureaplasma urealyticum T960株およびウシ由来U. diversum A417株とは区別された。
著者
甲斐 知恵子 落久保 文子 沖田 賢冶 飯沼 哲夫 見上 彪 小船 富美夫 山内 一世
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1067-1070, 1993-12-15
被引用文献数
16

臨床的にイヌジステンパーウイルス(CDV)感染症と診断された犬の脳, 脳脊髄液細胞, 脾臓, 末梢血細胞から, マーモセットBリンパ球由来のB95a細胞株を用いてウイルス分離を試みた. ウイルスは高率に分離され, また分離ウイルスのCPEの型や大きさに違いがあり, 野外流行株に異なる性状のウイルス群が存在することが示唆された. このようにB95a細胞株による分離は, 野外CDVの生態学的研究に有用と考えられた.
著者
一条 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.217-228,図4p, 1966-10

犬における腎,上皮小体および骨の病変の関連性(骨腎系症候群)を知るため,腎・上皮小体・骨検索例26例,腎・骨検索例4例,腎・上皮小体検索例8例および参考としての腎検索例375例を加えた合計413例について,病理組織学的研究を行ない,次の結果を得た.1.腎・上皮小体・骨検索例,腎・骨検索例および腎・上皮小体検索例の合計38例のうち,28例に骨腎症候群を肖定すべき所見が認められた.2.骨腎症候群の発現は,一般的には,腎病変に継発した上皮小体機能冗進および繊維性骨栄養障害症の組合わせによると解される.3.本症候群における骨病変は,従来,一義的に腎性上皮小体機能冗進の結果招来されるとされている。しかし著者は,上皮体の介在性変化を認め得ないで,むしろ腎および骨の両病変の直接的関連性を首肯される例にも遭遇したj4.以上の点から,骨腎症候群の病理発生については,今後さらに検討の必要がある所以を知り得た。5.犬の骨腎症候群における原発性腎病変としては,慢性間質性腎炎または慢性糸球体腎炎などの終末腎病変に限られるべきものではなく,亜急性間質性腎炎,さらにはネフローゼなどの早期病変の場合にまで,拡張されるべきものと解された.6.上皮小体変化として,主細胞の淡明化と肥大・増生およびwatcrcIearcc11の出現,ならびに腺胞構造の不規則化を示す実質細胞配列の異常などを含めた上皮小体機能冗進像が指摘された.7.骨病変は,発端病巣に始まって,管腔性ないし非管性の多中心性小孔形成におよぶOstcodystro一phiafibrosagcneraIisataの像を呈していた.8.石灰転移は,本症候群例較に比的頻発する所 見であって,28例中10例に腎を始めとして,胃粘?膜,肺胞壁,胸膜,牌柱,気管支軟骨,子宮粘膜,・骨格筋々間動脈壁,心内膜,大動脈壁などに,その.州現を認め得た.この変化は,腎障害に多くを帰丁べきものと思考される.9.非腎性の繊維性骨栄養障害症に,上皮小体の増生性変化を伴った4例を得た.犬におけるこの例′に類した報告は,従来皆無である。このような例の存在は,骨賢症候群の検索に当たり,批判的態度を保持する必要性を示唆するものと思われる.10.腎検索例375例のうち,病変が認められたものは175例の多数におよんだ.腎病変の主体をなすものは間質性腎炎で,101例の高頻度に達した.以上,著者は,犬における骨腎症候群の存在を病理組織学的に確認し,あわせて従来の報告にみられない本症候群に属する腎病変の種々相を系統的に解明し,進んで本症候群発病病理学説における一元的解釈に批判を加えた.また,腎病変とは無関係に,繊維性骨栄養障害症および上皮小体機能冗進像を呈する例を得て,犬の小皮十体機龍冗進像の発現の一元的でないことをも明らかにした.
著者
兼子 樹広 及川 正明 吉原 豊彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.181-183, 1993-02-15
被引用文献数
3

レース中に骨折した470頭の競走馬の骨折部位を病理学的に検索した. 骨折は四肢の骨に多発(98%)し, 関節内骨折が高率を占めた. 骨折の発症部位に概ね一致して, 過激な運動負荷および乏血性変化としてとらえられる限局性の関節軟骨下骨壊死および骨硬化病変が共通して指摘された. これら病変は剪断負荷および捻転負荷への抵抗力を弱め, 非骨折骨にも多発してみられることから, 競走馬の骨折に対する前駆要因と推測した.
著者
森 隆 永田 和哉 石田 卓夫 佐々木 富雄 濱田 香理 仁礼 久貴 大網 弘 桐野 高明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.581-586, 1993-08-15
被引用文献数
2

実験的クモ膜下出血(SAH)後に起こる脳血管攣縮(VS)の病理発生と, 免疫学的反応の関与を明らかにするために, 犬のSAHモデルを用いて, Streptomyces tsukubaensisから分離された, 細胞性免疫抑制剤, FK-506のVSに対する効果を調べた. 実験的SAH後の無処置対照群の脳底動脈では, 典型的なVSを認めた. しかし, そのVSは, FK-506投与群及びステロイド剤とFK-506を併用投与した群のいずれにおいても, 無処置群との間で攣縮血管の収縮率に有意差を認めなかった. 免疫組織化学的並びに病理形態学的検索では, 無処置群の脳底動脈周囲の軽微なリンパ球浸潤以外に, FK-506投与群と無処置対照群との間に, 病変の性質に差を認めなかった. 病理組織学的に, クモ膜下腔の攣縮血管周囲に, FK-506によって抑制されない好中球の明らかな炎症反応を認めた. さらに, 攣縮血管壁の様々な収縮性あるいは退行性変化も認めた. 免疫組織化学的に, 攣縮血管の内膜, 中膜側及び脳幹実質内の毛細血管にIgG, IgM及びC_3の沈着を認めた. これらの沈着はVSにおける血管透過性充進によるものと思われた. 以上の様に, 細胞性免疫抑制剤, FK-506投与により, 血管攣縮あるいはリンパ球浸潤以外の病理学的変化が抑制されなかったことより, SAH後のVSの発生に細胞性免疫の関与が乏しいものと考えられた.
著者
浅利 将男 和久井 信 深谷 幸作 鹿野 胖
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.803-806, 1985-10-15

牛の結腸ら^^.せ^^.ん^^.わ^^.な^^.の形成について, 頭尾長2.1〜25cmの胎仔を用いて観察した. 大腸では小腸に遅れ, 頭尾長3.5cm胎仔において近位結腸部に最初の折れ曲がりが観察された. その後, 頭尾長6.5cmに至るまでに, 近位結腸部は巻き込みはじめ, これらの巻き込みは頭尾長9.3cmに至るまでに円錐状にまとまりはじめた. これらの近位結腸の円錐状の巻き込みは, およそ頭尾長13〜23cmの間に, 成牛型の円盤状の結腸として完成した.
著者
桑原 博義 布谷 鉄夫 田島 正典 加藤 篤 鮫島 都郷
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.901-909, 1994-10-15
被引用文献数
20

離乳期の子豚に発生した新しい豚病を検索した. 本病は臨床的に元気消失, 発熱,削痩, 発咳などとともに高度な腹式呼吸を特徴とするため俗にヘコヘコ病と呼ばれている. 罹患子豚に共通した病変はび慢性のII型肺胞上皮細胞の増殖を伴った間質性肺炎, 髄膜脳炎, リンパ組織の萎縮などであった. 罹患子豚の諸器官から初代豚肺細胞培養(PLC)に原因ウイルスが分離され, 血清学的に豚生殖器・呼吸器症候群(Lelystad)ウイルスと同定された. 直径約49nmの多数のウイルス粒子が, 分離ウイルスを感染させたPLC培養の肺胞上皮細胞と肺マクロファージの細胞質に検出された. 本病は分離ウイルスをコンベンショナルの子豚に鼻腔内接種することにより再現された.
著者
筒井 敏彦 天野 正 清水 敏光 村尾 育子 Stabenfeldt George H.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.613-617, 1989-06-15
被引用文献数
3

猫胚の子宮内移送の発現状況を明らかにするため,妊娠子宮169個の黄体数,胎子数を観察し,次の結果を得た.1頭あたりの黄体数は2-11個,平均5.6±1.9(SD)個で,左右卵巣の黄体数の間には負の相関関係が認められた(P<0.05).また胎子数は1-8頭,平均4.5±1.4頭で,左右子宮角内の胎子数の間には相関関係は認められなかった.着床率は25-100%で平均83.9±19.5%であった.胚の子宮内移送は69頭(40.8%)に認められ,1頭あたり移送胚は1-3個であった.黄体数の多い側の子宮角から少ない側への移送が66頭(95.7%),少ない側から多い側への移送が1頭(1.4%),左右黄体数の等しい例での移送は2頭(2.9%)であった.移送の結果,左右黄体数の差よりも左右子宮角内の胎子数の差が小さくなったものが54頭(78.3%),変らなかったものが8頭(11.6%),逆に多くなったものが7頭(10.1%)であった.このことから猫においても胚の子宮内移送によって,左右子宮角内の胎子数が均等化することが認められた.
著者
深瀬 徹 尹 利根 茅根 士郎 秋浜 澄行 板垣 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.817-821, 1991-10-15

猫に寄生する猫回虫Toxocara catiおよび猫鉤虫Ancylostoma tu baeformeに対するミルベマイシンDの駆虫効果について検討した. 各々の線虫の自然感染を受けている猫12頭ずつを1群6頭の2群に分け, ミルベマイシンDを0.05mg/kgと0.1mg/kgの用量で経口投与した. その結果, 猫回虫感染猫においては2つの試験群の全例で虫卵が陰転し, 糞便中へ2〜35隻の虫体の排出が認められた. これらの猫を剖検したところ, いずれの群においても, 各4頭には虫体の残存はみられず, 他の2頭から1隻と2隻の幼若虫体が検出された. 一方, 猫鉤虫感染猫では, 投薬群2群の全例において, 虫卵の陰転と糞便中への2〜62隻の虫体の排出が認められ, 剖検時に虫体の残存がみられたものはなかった. 以上の成績から, ミルベマイシンDは猫回虫と猫鉤虫の駆除に有効に用いることができると結論された.
著者
奈良 間功 永谷 真理子 土谷 稔 稲垣 晴久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.549-555, 1985-08-15
被引用文献数
1

日本モンキーセンターにおいて飼育・維持されているゲルジーモンキー(アマゾン流域森林に棲息する希少な小型猿)の小コロニー由来成熟動物4例の肝臓にミエロリポーマが認められ, 病理組織学的には正常な骨髄組織から構成され異型性を伴わなかった. 同種猿の新生仔および胎仔諸臓器を検索して正常な髄外造血巣との形態学的比較を試みたところ, ミエロリポーマの組織像は胎仔あるいは新生仔の肝臓における髄外造血巣とは明らかに異なり, 本腫瘍を持つ成熟動物には慢性貧血の証拠は得られなかった. この腫瘍が比較的多発した原因として, 動物の遺伝的背景の近似性, 飼料・飼育環境等の環境因子の同一性が考えられた.
著者
坪田 敏男 金川 弘司 山本 聖子 間野 勉 山中 正実 喜多 功 千葉 敏郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-5, 1992-02-15
被引用文献数
1

飼育下8頭および野生7頭の雌エゾヒグマについて, プロジェステロン(P)測定用エンザイムイムノアッセイ(EIA)キット(「オブチェック」ケンブリッジ・ライフ・サイエンス社)を用いて血清中P値を測定し, その有効性を検討した. 本キットによる2検体の測定内および測定間変動係数は, それぞれ8.9%, 12.6%および16.6%, 22.7%と比較的良好な成績であった. ラジオイムノアッセイ法との相関関係については, 64サンプルで相関係数r=0.725と高い相関が認められた(p<0.01). 飼育エゾヒグマでは, 妊娠個体5頭, 非妊娠単独個体2頭および非妊娠子連れ個体1頭についてP値が調べられた. 妊娠個体のP値は, 交尾期(5〜6月)後の小さな上昇, 9〜10月にかけての2回目の上昇, さらに11〜12月にかけての大きな上昇として観察された. この最後の大きなP値上昇は, 着床に伴う変化と推測される. 非妊娠単独個体のP値変化は, 妊娠個体のP値変化と類似した. 非妊娠子連れ個体のP値は, 6〜12月まで5 ng/ml以下の値を持続した. 野生エゾヒグマ7頭中2頭は, 1 ng/ml以上の値を示し, そのうちの1頭では出産が確認された. 他の5頭はいずれも1 ng/ml以下の低値であり, 非妊娠個体と考えられた. エゾヒグマでのP-EIAキットによるP値の測定は有効であると結論づけられた.
著者
平賀 武夫 阿部 光雄
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.p1199-1206, 1986-12
被引用文献数
4

ホルスタイン種子ウシ, 雌雄各4例の頚部心臓逸所症例を剖検し, 胸骨を軟X線学的に観察した。異常子ウシの生存期間は出生後3分から312日であった。心臓は頚部腹側で筋肉と皮膚に被われ, 心膜腔内に位置し, その二重心尖は前背方を, 心底は後腹方を向いていた。全例で, 大動脈弓からの主要動脈の分岐はイヌ型を示し, 多くの例で重複前大静脈と重複奇静脈も認められた。胸骨柄の幅は極めて広く, 胸郭前口も広かった。胸骨は前後に短く, 幅は広く, 13〜26個の胸骨片で構成され, 胸骨柄と胸骨体の骨片は対の様相を呈していた。胸腺の胸部は欠如し, 頚部は心臓の前背方に集合していた。線維性心膜から伸びる靭帯が, 前方では下顎骨と耳下腺筋膜に, 側方では頚筋膜に, また後方では第一肋骨あるいは胸骨柄に付着し, 心臓を保定していた。
著者
寺田 厚 原 宏佳 加藤 慎二 木村 剛 藤森 勲 原 耕三 丸山 司 光岡 知足
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.291-295, 1993-04-15
被引用文献数
4

猫8頭(ヒマラヤン3頭とペルシャ5頭)に乳果オリゴ糖を50mg/kg/日を2週間投与し, 投与前, 投与7日目および14日目, 投与後7日目に糞便フローラ, 糞便内腐敗産物, 水分, pH, 尿内アンモニアおよび環境のアンモニアを測定した. 腸内フローラでは投与期間中Lactobacillusは有意(p<0.05)に増加し, Clostridium perfringensとEnterobacteriaceaeは有意(p<0.05)に減少した. FusobacteriumおよびStaphylococcusは乳果オリゴ糖投与7日目に投与前に比べて有意(p<0.01)に低下し, Bacteroidesは投与後14日目に有意(p<0.001)に増加した. 検出率については, 乳果オリゴ糖投与14日目においてBifidobacteriumは有意(p<0.001)に上昇し, 一方, Spirochaetaceaeおよびレシチナーゼ陰性Clostridiumは有意(p<0.05)に低下した. 腐敗産物については, 糞便内アンモニア, エチルフェノール, インドールおよびスカトール, 並びに尿内アンモニアはいずれも投与14日目に有意に(p<0.05)低下した. 糞便水分量および便量は乳果オリゴ糖投与中わずかに増加し, 逆に糞便pHはわずかに低下した. 飼育室のアンモニア濃度(p<0.01)は減少し, 糞便臭もかなり減少した.
著者
森田 幸雄 丸山 総一 勝部 泰次
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.475-479, 1994-06-15
被引用文献数
8

1988年から1990年の3年間に, 群馬県内のG食肉処理場で, 処理された豚1,776,294頭中4,919頭(0.28%)に非定型抗酸菌症が発見された. 結核様結節の多くは, 下顎リンパ節(64.4%)と腸間膜リンパ節(29.0%)にみられた. 上記の食肉処理場に出荷している1,200養豚場のうち4農場に集団発生が, 870農場に散発的な発生がみられた. 1988年9月から1989年12月の間に発見された2,076頭中231頭について病変部ならびに胃, 盲腸内容からの非定型抗酸菌の分離を試みた. 結核様病変がリンパ節のみにみられたもの219頭中141頭の病変部から, 肝臓または実質臓器とリンパ節の両者にみられたもの12頭中12頭の病変からMycobacterium avium-intracellulare complex(MAIC)が分離された. また, 細菌検査を実施した231頭のうち11頭の胃内容および6頭の盲腸内容からMAICが分離された. 分離株431株のうち336株は13の血清型に分類された. MAIC血清型6型(34.6%)が最も優勢で, 次いで8型(21.8%), 4型(8.6%), 10型(6.5%)であり, MAIC血清型3型も4株検出された. 16頭の豚で複数の血清型が分離された. 群馬県ではMAICによる豚の非定型抗酸菌症が蔓延していることが示唆された.
著者
松澤 利明 野村 護 海野 隆
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.351-362, 1993-06-15
被引用文献数
8

日本製薬工業協会加盟の67社より提供されたラット約7,000匹/性, イヌ約5,000匹/性, サル約700匹/性の臨床病理検査の背景データを解析し, 最も普及している測定方法で得られたデータの加重平均と標準偏差を求め, 正常値を変動させる要因と採材条件あるいは測定方法等との係わりを考察した. 赤血球数(RBC), ヘマトクリット(Ht), ヘモグロビン(Hb), 網状赤血球数(Rt), 血小板数, 白血球数(WBC), 白血球百分率(%WBC), 凝固時間(APTT, PT), GOT, GPT, ALP, LDH, グルコース, コレステロール, トリグリセライド(TG), 総蛋白質, アルブミン, 尿素窒素(UN), クレアチニン, ナトリウム(Na), カリウム(K), カルシウム(Ca), クロライド(Cl), 無機リン(Ip), CPKについて検討した. 種差はRBC, Ht, Rt, 血小板数, WBC, %WBC, ALP, LDH, グルコース, コレステロール, TG, 総蛋白質, UN, クレアチニン, Ca, Ip, CPKでみられた. ラットの系統差は血小板数, WBC, GOT, ALP, UN,クレアチニン, CPKでみられた. 性差はHb, Ht, WBC, ALP,グルコース, コレステロール, TG, 総蛋白質, A/G比, UN, Ipでみられた. 年齢差はRBC, Hb, Ht, Rt, %WBC, GOT, GPT, ALP, LDH, コレステロール, TG, 総蛋白質, Ip, TG, Ip, CPKでみられた. 絶食・給餌の影響はAPTT, PT, ALP, グルコース, TG, UNでみられた. ラットの採血部位ではHt, WBC, CPK, Kの値に差がみられた. 血漿と血清試料の差はLDH, CPKでみられ, 血清の測定値は血漿値に比べばらつきが大きかった.
著者
藤田 道郎 織間 博光 清水 幹子 本好 茂一 片山 正夫 宮坂 勝之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.749-751, 1991-08-15
被引用文献数
1

麻酔下の猫に対し, 10cmH_20時の容量から肺胸郭コンプライアンス(Crs)を求めた. その結果, Crsと体重および体長との間には正の相関を認め, また雌雄差も危険率1%未満で認められた.
著者
御領 政信 柴田 良久 諏訪 隆彦 梅村 孝司 板倉 智敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.867-873, 1987-10-15
被引用文献数
3

外国より導入された種鶏からふ化した幼雛において, 鶏貧血因子に起因した貧血症が認められ, 12日から25日齢までの死亡率は, 雌で約2.4%, 雄で20.9%であった。肉眼的には, 骨髄の黄色化, 胸腺及びファブリキウス嚢の萎縮, 肝臓の退色・腫大及び肺の硬化が認められた。組織学的には, 骨髄低形成及びリンパ性器官におけるリンパ球の消失がかなりの発症雛で見られた。17日齢の発症雛の肝臓から, MDCC-MSB1細胞により, chicken anemia agent (CAA) が分離され, 自然感染例と同一の種鶏群由来の1日齢雛は, CAAに対し低感受性であった。肺アスペルギルス症及び細菌感染症が多くの例に合併しており, これらも死因として重要と考えられた。
著者
重久 保 中上 辰芳 太治 司郎 阪口 玄二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.251-257, 1985-04

牛肉塊の表面と内部にサルモネラ, 大腸菌, ブドウ球菌を接種し, 肉塊中心部が52°, 54°, 57℃になるまで110゜, 120゜, 130℃に設定した対流型オーブンで加熱して, ローストビーフを調整した. 120℃以上のオーブン温度で中心温度が57℃になるまで加熱した場合は, サルモネラ, 大腸菌, ブドウ球菌のいづれも検出されず, 品質特性も良好であった. このような成績から, 表面加熱を特徴とするローストビーフ調製方法の有用性が示唆された.
著者
平野 孝一 足立 吉數 Bintvihok Anong 石橋 幸子 熊澤 教眞
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.567-569, 1992-06-15

肝臓からの効果的なアフラトキシンの抽出及びクリンアップの方法について検討した. 先ず, アフラトキシンを破砕した肝臓から遊離させるために, プロテイナーゼKで酵素処理を行った. その試料からの回収試験では, 鶏の肝臓の場合, 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で108.1±4.9%(平均値±標準誤差, n=3), 酵素免疫測定法(ELISA)で, 122.0±18.3%(n=3)であった. 豚の肝臓では, HPLCで111.8±5.2%(n=3)・ELISAで120.3±9.1%(n=3)であった. さらに, 幼雛へのアフラトキシンB_1(AFB_1)の投与試験を実施し, その肝臓からの回収試験を行ったところ, 投与後3時間目に高いAFB_1値が得られ, その値は時間とともに, すみやかに低下した. このことから, アフラトキシン汚染飼料を摂取した鶏においては, 少なくともアフラトキシン摂取後24時間以内ならば肝臓から検出可能との知見が得られた. この抽出及びクリンアップの方法を用いて, 血漿からアフラトキシンが検出された野外飼育採卵鶏の肝臓36検体と屠畜場から入手した豚の肝臓6検体及びそれらの豚が食べていた飼料6検体からアフラトキシンの検出を試みたが, いずれの試料からもHPLC及びELISAによってアフラトキシンは検出されなかった.