著者
松野 年美 針口 二三男 岡本 勉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.p13-17, 1991-02
被引用文献数
1

古典的な抗マラリア剤パマキンおよびプリマキンなどの8-aminoquinolineの抗コクシジウム活性については, 未だに報告されていない. それら2薬剤につきバタリー試験により, 5種のニワトリコクシジウム : Eimeria tenella, E. necatrix, E. acervulina, E. maxima, およびE. brunetti (いずれも実験室標準株) に対する活性を調べた. 両薬剤は共にE. tenella, E. necatrixに対してのみ有効で, その他のコクシジウムに対しては, 全く無効であった. 前2者に対する有効性については, E. tenellaに対してパマキンは, 飼料中125-250ppmの投与により顕著に症状を抑制する効果を示し, プリマキンは31.2ppm以上の投与で一層優れた抑制効果を発揮したほか, E. necatrixに対しては, パマキンは250ppmで, プリマキンは125ppm以上の濃度で症状の抑制効果を発揮した. これらの試験でパマキンは125-250ppmの濃度で明らかにヒナの増体重を抑制する傾向を示したが, プリマキンは, 500ppm投与の例を除き250ppmまでの濃度ではそのような傾向を示さなかった. また, パマキンのbenzophenone, nitropyrazole, dinitrobenzoie acid, quinoline類との分子化合物ならびに硫酸塩, 亜鉛塩などにつき同様のバタリー試験を行ったところ, それらの化合物はパマキン自身が示した抗コクシジウム活性を失うことなく, 体重増を低下させる影響を著しく軽度なものとし, 広い安全域を示した. 本来強い抗マラリア・抗ピロプラズマ作用のある8-aminoquinoline類に対して感受性を示したE. tenellaやE. necatrixは, 生活環に上皮細胞寄生のほか特に中はい葉由来細胞に寄生する時期を持つという意味でマラリアやピロプラズマのような住血原虫の生活態度に似ており, 他の3種の感受性を示さなかったEimeriaとは異なっている. 本試験結果はこれら8-aminoquimoline感受性の胞子虫の間には生理機構の中に互いに類似した要素のあることを示唆しているのかもしれない.
著者
桑原 正貴 広瀬 昶 土井 邦雄 菅野 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.p637-642, 1992-08
被引用文献数
1

高脂質血症と高血圧は, 動脈硬化発症における重要な危険因子として知られている. そして, 心臓血管系機能は自律神経系によって調節されているが, 過度の交感神経系の刺激は血圧の上昇を誘発すると考えられている. 高脂質血症と心臓血管系機能の変化は密接に関わっていると考えられるが, アドレナリン作働薬の心臓血管系反応に及ぼす高脂質血症の影響についてはあまり知られていない. そこで, 本研究では高脂質血症を誘発したブタを使用し, ノルエピネフリンとイソプロテレノールに対する心臓血管系の反応に関して, 対照群と高脂質血症群とを比較した. 対照群と高脂質血症群の薬物投与前における心血行動態パラメーターのコントロール値に, 有意な差は認められなかった. しかしながら, 高脂質血症群は対照群に比べて, ノルエピネフリンの血圧上昇作用は有意に高く, ノルエピネフリンとイソプロテレノールに対する心臓の収縮力は有意に高かった. そして, 血圧上昇に対する反射性徐脈は起こらなかった. これらの結果から, 高脂質血症が, 心臓血管系に対するアドレナリン作働薬の反応を増強していること, 心臓血管系の反射性調節に何等かの影響を及ぼしていることが明らかとなり, 動脈硬化発症の機序において高脂質血症と高血圧の連関が重要な一因を担っているものと考えられた.
著者
Madewell B. Lund J. Munn R. Pino M.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1079-1084, 1988-10-15
被引用文献数
2

11才の雌ドーベルマンの喉頭に発生した腫瘍を摘出し, 検索した. 腫瘍は種々の大きさで多形の細胞のシート状配列で構成されていた. 腫瘍細胞はデスミン, ミオグロビン, アクチンに強陽性, ビメンチンに弱陽性, 高分子ならびに低分子のサイトケラチン, 上皮細胞膜抗原ならびにミオシンに陰性であった. 電顕的には, 一部の腫瘍細胞の細胞質に, クリステに富むミトコンドリが多数存在し, 不整形で電子密度が高くZ帯に類似した領域が認められた. 以上の所見から, 本腫瘍は横紋筋肉腫と診断された.
著者
高木 昌美 高橋 敏雄 平山 紀夫 Istiyananingsi Mariana Siti Zarkasie Kamaluddin Sumadi 緒方 宗雄 太田 修一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.637-642, 1991-08-15

1987年から1988年にかけて, インドネシア共和国西部ジャワのワクチン未接種の在来鶏(12農場, 196羽)および採卵鶏(8農場, 197羽)を用いて, Haemophilus paragallinarumに対する赤血球凝集抑制抗体の測定を行うと共に, 野外病鶏からの本菌の分離を試み, これらの地域における鶏伝染性コリーザの調査を行った. 本菌に対する抗体は, 地域に関係なく, 在来鶏および産卵鶏から検出された. 供試した農場の70%(14/20), 供試鶏の19%(73/393)に抗体が検出された. A型抗体は, 計11農場(55%)で検出され, 11%(45/393羽)の鶏が陽性を示した. C型抗体は, 計5農場(25%)で検出され, 8%(30/393羽)の鶏が陽性を示した. また, コリーザ様症状を呈する鶏からA型菌2株, C型菌1株の計3株が分離された. これらの成績から, インドネシア国西部ジャワでの, 両血清型による本病の発生が明らかとなった.
著者
清水 俊夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.p807-811, 1993-10
被引用文献数
6

徳島保健所管内の砂場のToxocara属虫卵による汚染状況を把握するために46力所を調査したところ, 29力所(63.3%)から虫卵が検出された. 公園や住宅団地内の遊び場の砂場(87.5%)が, 幼稚園や学校, 児童館等の施設に付属する砂場(36.4%)より明らかに汚染率が高かった. また, その内5力所の砂場について, 1990年5月から1991年4月の間に汚染状況の季節的変化を調査したところ, 3〜6月の春から初夏にかけてと, 9〜11月の秋季に陽性率が高く, 7・8月の夏季及び12〜2月の冬季に低下し, 7・8月には検出される虫卵数も明らかに減少した. 砂場の一つから回収した虫卵を走査電子顕微鏡で観察したところ, 犬蛔虫卵と猫蛔虫卵の比は2:3であった. また, 5-6力月未満の144頭の子犬の直腸便を調査したところ, 98頭(68.0%)が犬蛔虫卵陽性であった. この調査から当保健所管内の砂場が幼虫移行症を引き起こす可能性のあるToxocara属虫卵により著しく汚染されていることがわかった. 今後, このような汚染を防止するための対応が必要である.
著者
遠藤 秀紀 九郎丸 正道 西田 隆雄 服部 正策 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.119-123, 1992-02-15
被引用文献数
2

心筋組織の肺静脈壁への分布が, 多くの哺乳類で報告されている. 同組織の哺乳類における系統発生学的起源を明らかにする目的で, 食虫類ジャコウネズミ(スンクス)の肺内肺静脈を, 光顕及び電顕を用いて観察した. 心筋組織は肺門部より肺内肺静脈小枝にまで広く分布し, 同構造の系統発生学的起源は, 最も原始的な哺乳類のグループにまで, さかのぼることができると考えられた. 微細形態学的には, 肺静脈の心筋細胞は, 左心房の心筋細胞と類似し, 大型の脂肪滴の分布が特徴的であった. また, これらの結果から, 同構造が肺循環血流の制御に寄与していることが示唆された.
著者
松元 光春 西中川 駿 九郎丸 正道 林 良博 大塚 閏一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.937-943, 1992-10-15
被引用文献数
6

妊娠および泌乳期のマウス乳腺における毛細血管の微細構築の変化を血管鋳型で走査電顕により, また微細構造の変化を透過電顕および形態計測を用いて検索した. 血管鋳型の走査電顕観察では, 妊娠に伴って導管周囲の毛細血管叢から盛んに血管が新生され, 分岐と吻合を繰り返しながら, 導管や腺胞を密に取り囲み, 籠状の構築を形成していた. 泌乳期でもこの血管構築は維持され, しかも毛細血管は蛇行していた. 透過電顕観察と形態計測学的検索から, 内皮細胞内の飲小胞の密度は妊娠18日目から泌乳5日目に処女期の約2倍に, さらに泌乳10〜20日目には3倍に増加し, 離乳期に漸減した. 辺縁ヒダや微絨毛様突起の長さは妊娠に伴って漸増し, 泌乳5〜15日目に最大となり, その後漸減した. また, 毛細血管は妊娠末期から泌乳期にかけて壁が薄く, しかも腺胞に極めて接近していた. さらに腺胞の上皮細胞では, 泌乳期に基底陥入がよく発達していた. これらの所見から, 乳腺の毛細血管ほ乳汁産生に必要な物質の輸送に重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
安田 宣紘 江崎 健二郎 阿久沢 正夫 伊沢 雅子 土肥 昭夫 阪口 法明 鑪 雅哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1069-1073, 1994-12-15
被引用文献数
4

事故死したそれぞれ2頭のイリオモテヤマネコ(Felis iriomotensis)とツシマヤマネコ(Felis bengalensis euptilura)に寄生する蠕虫について検査した. イリオモテヤマネコからは Spirometra erinacei, Toxocara cati, Molineus springsmithi, Uncinaria maya, Capillaria aerophila, C. felis-cati, 肺に寄生する所属不明の線虫子虫, Acanthocephala 1種の計8種が検出された. ツシマヤマネコからは Pharyngostomum cordatum,Spirometra erinacei, Toxocara cati, Molineus springsmithi, Arthrostoma hunanensis, Uncinaria felidis, Capil-laria felis-cati, 肺に寄生している所属不明の線虫子虫, Acanthocephala 2種の計10種が検出された.
著者
板庇 外茂雄 山本 理恵子 佐藤 真澄
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.p585-592, 1987-08

Fusobacterium necrophorum培養菌液を8〜14ヶ月令のHolstein牛8頭の肝内門脈に, 超音波映像下穿刺法によって, 経皮・経肝的に接種した。3頭は菌接種後2〜14日で死亡し, 肝に壊死巣が密発していた。他の5頭では, 接種後12〜126日の剖検時に1〜20個の肝膿瘍がみられた。急性期死亡牛では, 接種後2〜6日で肝壊死巣に対応する高エコー斑塊が認められた。肝膿瘍形成牛では, 接種後5〜10日に肝画像に膿瘍所見がみられ, 壊死塊に対応する高エコー塊を囲んで肉芽組織に対応する低エコー量 (ハロー) が認められた。このハローパターンは直径約1cmの小さい膿瘍でも確認でき, 一部の例では, 中心の高エコー塊はしだいに消失し, 肉芽組織と被膜 (等または低エコー) のみの残存に対応する単純な低エコー球となり, 接種後50〜70日では瘢痕 (等または低エコー) 形成に対応して画像中に指摘できなくなった。ハローパターンのまま側方陰影を伴って長く残存する例もあり, 低エコーパターンを示す膿汁は無エコーパターンとはならなかった。
著者
津曲 茂久 東野 利忠 高木 香 大場 茂夫 佐藤 昌介 武石 昌敬
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.797-801, 1991-10-15
被引用文献数
1

妊娠馬10頭を用いて妊娠1から11ヶ月まで, 血漿中estrogen, gestagen, cortisol (F), 13, 14-dihydro, 15-keto-PGF_2α(PGFM)および妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)を測定した. estron (E_1)とestradiol-17β(E_2)は妊娠8ヶ月前後にピークを示し, progesterone (P)は妊娠3と11ヶ月で増加し, 17α-OH-progesterone (17α-OHP)は妊娠3ヶ月に明瞭なピークを形成した. 20α-OH-progesterone (20α-OHP)は妊娠6ヶ月より急激に上昇した. PGFMは妊娠2と11ヶ月にピークを示し, FとPMSGは妊娠2と3ヶ月にそれぞれピークを示した. 因子分析において, 妊娠月齢, E_1, E_2, 20α-OHPは妊娠進行に伴い増加する変数として第一因子に含まれた. PMSG, 17α-OHP, Pは副黄体に関係する変数として第二因子に, PGFMとFは妊娠2ヶ月における変化により, 第三因子に区分された. Pは第二因子に含まれたが, 第一と第三因子にも影響を受け, PGFMとは対立的な関係性を示した. 結論的には, 第一因子に含まれたE_1, E_2および20α-OHPは妊娠6ヶ月以降の胎盤機能の指標として有用であることが示唆された.
著者
秋庭 正人 佐伯 英治 石井 俊雄 山本 茂貴 上田 雄幹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.371-377, 1991-06-15
被引用文献数
2

マウスの Babesia rodhaini 感染の免疫学的変化を追求できるモデル系を, まず, 薬腺 Diminazene diaceturate (DD)を使い確立した. R. rodhainiの腹腔内(i. p.)接種で有胸腺(nu/+)および無胸腺(nu/nu) BALB/cマウスは急死した. 感染早期にDD処置すると両マウスともに急性死から免れた. 耐過マウスの一部は虫血症を再発したが, 致死的再発は nu/nuマウスのみにみられた. 回復マウスを28日目に10^5感染赤血球(PE)でi. p.に再攻撃すると, nu/+マウスは抵抗したが, nu/nuマウスは防御しなかった. 以上から防御機序に胸腺が関与することが示唆された. 次にnu/+, nu/nuマウスに10^4PEをi. p.接種しDD治療を行い, 28日目に10^5PEをi. p.再攻撃して免疫学的変化を調べた. nu/+マウスは, B. rodhaini可溶性抗原足蹠注射による即時型反応および, 同抗原とプロテインAを用いたELISAによる血清抗体でみた抗体応答が, 10日以降から出現し, 再攻撃後は強い応答がみられた. 一方, nu/nuマウスの血清から抗体は検出されなかった. 遅延型足蹠反応はnu/+マウスに14日目以降に見られたが, 再攻撃後は抑制された. DD注射-再攻撃のnu/+マウスの脾細胞(再攻撃後8日)を, nu/nuマウスに移入し10^4PEでi. p.に攻撃すると, 5匹中3匹のnu/nuマウスは一時的な低い虫血症を示し耐過したが, 残り2匹は重篤な虫血症を伴い早期に死亡した. このモデル系はバベシア免疫に有効な細胞の解析を可能にするものと思われる.
著者
村上 洋介 加藤 あずさ 津田 知幸 両角 徹雄 三浦 康男 杉村 崇明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.891-894, 1994-10-15
被引用文献数
37

わが国で発生した肥育豚の慢性肺炎と繁殖豚の異常産の各症例から, 豚の肺胞マクロファージ細胞を用いて合計3株の豚生殖器・呼吸器症候群(PRRS)ウイルスを分離した. これらの国内分離株は, 間接蛍光抗体法(IIF)とIndirect immunoperoxidase mono-layer assayのいずれにおいてもアメリカで分離されたPRRSウイルスの46448株(米国株)とは強い交差反応を示すが, オランダで分離されたLelystad virus (欧州株)とは弱い交差反応しか示さなかった. さらに, 自然感染豚の血清を用いて, 上記の米国株, 欧州株および国内分離株に対するIIF抗体の検出率と抗体価の変動を比較したところ, 国内分離株と米国株を抗原とした場合にはそれらの抗体検出率と抗体価の変動がほほ一致するのに対して, 欧州株を抗原とした場合には抗体検出率が低く, また抗体変動もほとんど認められなかった. 以上のことから, わが国でPRRSウイルスを分離し国内にPRRSの発生があることを明らかにするとともに, 国内流行株が米国株に近縁であることが示唆された.
著者
筒井 敏彦 江島 博康
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.581-583, 1988-04-15
被引用文献数
1

雌犬21頭に異なる雄大と2回交配させ,子犬の雄親を判定することによって同期複妊娠の成立状況を検討した. 開腹手術によって観察した卵胞の成熟状態から排卵時期を推定して,排卵36時間前から排卵84時間の間に24〜96時間の間隔で2回交配させ,娩出された子犬の血液型および体型で雄親を判定したところ,2回目の交配を排卵後60時間までに行った場合に同期複妊娠が成立することがわかった.
著者
山下 和人 藤永 徹 奥村 正裕 滝口 満喜 角田 修男 水野 信哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.p1019-1024, 1991-12
被引用文献数
2

抗ウマCRPウサギ血清を用いた単純放射免疫拡散(SRID)法により, 臨床的に正常なウマの加齢および周産期におけるCRPの血中動態および実験的に炎症を作出したウマにおけるCRPの血中動態を検討した. 初乳未摂取の新生子の血清CRP濃度は雌雄ともに測定限界以下であったが, 幼齢期に上昇し, 青壮年期に低値を示し, 以降やや増加して安定するという加齢性の変化を示した. 周産期には, 分娩時および分娩後2か月目から4か月目の血清CRP濃度上昇および分娩2か月前の低下を認めた. 炎症刺激後24時間目より血清CRP濃度は上昇し, 3〜5日目で処置前の3〜6倍に達し最高値を示した. その後低下し14日目には処置前値に回復した. 以上の成績から, ウマにおいでもCRPは急性相蛋白であることが判明した.
著者
窪田 宜之 梁川 良
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.p663-672, 1987-08

Corynebacterium renale No.115株の有線毛 (P^+) 及び無線毛 (P^-) クローンのマウス腹腔マクロファージ食菌作用に対する感受性を比較した。オプソニン不在の場合には, P^+菌はP^-菌にくらべて食菌され難かった (P<0.001)。20%の濃度に補体を加えると, P^+菌, P^-菌ともに取り込み菌数が増加 (各々, P<0.001, P<0.005) し, P^-菌はP^+菌よりも多く食菌された (P<0.025)。抗線毛血清の存在下では, 補体の存否にかかわらずP^+菌はP^-菌よりも有意に多く食菌された (P<0.01)。抗線毛単クローン性抗体によっても, 補体の存否にかかわらず, P^+菌はオプソナイズされたが, その効果は多クローン性抗体のそれよりも低かった。抗P^+菌血清と補体の存在下では, P^+菌はP^-菌よりも有意に多く食菌された (P<0.05)。抗P^-菌血清の存在下では, 補体の存否にかかわらず, P^+菌の食菌はP^-菌の場合と同程度まで増強された。
著者
小倉 知子 昆 泰寛 小沼 操 近藤 高志 橋本 善春 杉村 誠
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.59-66, 1993-02-15
被引用文献数
2

ニワトリのリンパ組織におけるT Cell Subsetsの分布をCD4, CD8に相当するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検討した. 胸腺においてCD8^+細胞は皮質にのみ認められ, 一方CD4^+細胞は皮質のみならず髄質にも認められた. 被膜直下の皮質細胞は両抗体に反応しなかった. 盲腸扁桃においてCD8^+細胞は固有層浅層に限局し, 固有層中層ないし深層では多数のCD4^+細胞が胚中心を囲むように存在していた. 脾臓においてCD8^+細胞は赤脾髄にのみ存在し, CD4^+細胞は動脈周囲リンパ組織ならびに静脈周囲リンパ組織に認められた. 胚中心内にこれら抗体に反応するリンパ球は認められなかった. 骨髄ならびにファブリキウス嚢に反応は認められなかった. 夕ンパク抗原(みょうばん沈澱ウシ血清アルブミン)投与実験によって, CD4^+細胞が胚中心内に認められ, 一方CD8陽性を示す細胞は赤脾髄領域から減少した. これらの結果はニワトリのリンパ組織におけるT Cell Subsetsが明らかな住み分けをしていることを示すものと思われる.
著者
二宮 博義 中村 経紀
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1065-1073, 1988-10-15

SD系ラットにN-Methyl Nitrosoureaを投与して乳頭状腺腫を誘発させ, 線腫の血管系を立体的に観察した. 方法はアクリル系樹脂を左心室より注入して樹脂鋳型標本を作成し走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した. さらに別のラットには墨汁を注入し透明標本を作成しSEM所見と対照した. 組織学的には, 腫瘍は立方あるいは円柱形の上皮細胞群からなる胞巣と, その周囲の豊富な結合組織で構成されていた. 胞巣には腺管構造や小嚢胞腔の形成が認められ, 増殖の著しいものでは上皮細胞は乳頭状に増殖していた. 腫瘍に向かう血管は直線的で, 正常な血管に認められ血流調節機能を有するintra-arterial cushionは認められなかった. 腫瘍に進入した血管は分校を繰り返し胞巣の外周にカプセル状に密な血管網を形成していた. 胞巣内の毛細血管は太く多数のヘアピン状のループを形成していた. このループを形成する毛細血管には盲端に終っていたりコブ状に突出したものも観察された. こうした所見は腫瘍に特有な血管の新生像であると考えられた. また, 一部の血管には鋳型の表面が粗造で血管壁の脆弱性あるいは透過性の亢進を思わせる所見も観察された.
著者
奥田 優 梅田 昭子 松本 安喜 桃井 康行 亘 敏広 後飯塚 僚 O'Brien Stephen J. 辻本 元 長谷川 篤彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.801-805, 1993-10-15

癌抑制遺伝子p53はヒトやマウスの様々な腫瘍において不活化されていることが知られている. ネコの腫瘍におけるp53遺伝子の役割を研究するため, 種間で保存されている領域のプライマーを用いPCR法によってネコp53遺伝子cDNAのクローニングを行った. その結果, ヒトの腫瘍における変異の多発発部を含みp53遺伝子の翻訳領域の約90%に相当する1,007bpの塩基配列を決定することができた. ネコp53遺伝子はヒ卜およびマウスのp53遺伝子と同様の構造からなっており, アミノ酸レベルでそれぞれ82.9%および75.6%のホモロジーを示した. さらに, ネコ×マウスおよびネコ×ハムスターの雑種細胞においてネコp53遺伝子特異的プライマーを用いたPCR法を行ったところ, p53遺伝子はネコのE1染色体に存在することがわかった. これらの結果は, ネコの腫瘍におけるp53遺伝子の役割を明らかにするためにきわめて有用と思われる.
著者
大槻 公一 狩屋 英明 松尾 公平 杉山 貞雄 保科 和夫 吉兼 崇彦 松本 明久 坪倉 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.721-723, 1987-08-15
被引用文献数
4

1984年11月〜1985年3月の間に山陰地方4カ所および鹿児島県1カ所に飛来した数種の渡り鳥の新鮮な糞便からインフルエンザウイルスの分離を行った。コハクチョウでは377検体から2株 (亜型はH9N2とH3N6), ウミネコでは30検体から2株 (H13N6), オナガガモでは284検体から1株 (H11N3), 計5株のウイルスが分離された。鹿児島のナベヅル材料は, 陰性であった。
著者
仲嶺 マチ子 大城 守 天久 勇市 大城 喜光 慶留間 智厚 沢田 拓士 江崎 孝行
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1225-1227, 1992-12-15
被引用文献数
3

1990年11月に沖縄県で飼育されていたフランス鴨の1群200羽に元気食欲の廃絶, 起立不能, 下痢を主徴とする疾病が発生し50羽が死亡した. 死亡例の全臓器からPasteurella multocida subsp. multocidaが純粋に分離され, 芙膜抗原がCarterのA型, 菌体抗原がHeddlestonの3・4・12型, Namiokaの5 : A型と同定された. 病理学的検査では家禽コレラに特徴的な病変が認められた. 分離菌10^8個を90日齢ニワトリの静脈内に接種した結果21時間以内に全羽が死亡した. 以上の成績から, 本例はフランス鴨の家禽コレラの初発例と診断された.