著者
辻 誠一郎 小杉 正人
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.419-426, 1991-12-25 (Released:2009-08-21)
参考文献数
21
被引用文献数
5 4

In this paper we discuss the effects of Aira-Tn Ash (AT) eruption on ecosystem, based on fossil pollen and diatom assemblages obtained from central and northern Honshu in Japan. This eruption occurred during the Last Glacial Maximum (21, 000-22, 000 or 24, 000 years ago) in the Aira Caldera in southern Kyushu. The fossil pollen accumulation rate and pollen assemblages from AT deposits show that the ash fall occurred in the spring. We conclude that the AT fall occurred during, and accelerated, the last stage of climate change to a colder phase, and of attendant vegetation change to coniferous forests, that began about 30, 000 years ago. The AT fall also caused a rise in level and a change in pH from acid to alkaline of the sedimentary environment water. Some of these phenomena changed in proportion to volume or thickness of ash. It seems that the AT eruption caused widespread dry climatic conditions that were felt, at least to some degree, over long distances.
著者
早川 裕弌 安芸 早穂子 辻 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.236-250, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
41

現象を空間的に拡張して想像する「地理的想像」を喚起し,地理的思考を促すことは,地理学のアウトリーチにおいて必要なアプローチのひとつである.本研究では,特に3次元地理空間情報を用いた空間的現象の可視化の手法を,縄文時代の集落生態系を対象とした古景観の復原に適用し,その効果的な活用について検討する.まず,小型無人航空機を用いた現景観の3次元空間情報を取得し,古景観の復原のためのデータ解析を行う.次に,オンラインシステムを用いた古景観の3次元的な表示と,博物館における展示としての提供を行い,その効果を検証する.ここで,地理学,考古学,第四紀学的な研究成果の統合だけでなく,芸術分野における表現手法との融合的表現を試みることにより,さまざまな閲覧者の時空間的な地理的想像を補うかたちで,復原された古景観の直感的理解を促す効果が示された.これは,地理的思考の普及にも発展的に貢献できることが期待される.
著者
安齋 正人 福田 正宏 國木田 大 辻 誠一郎 髙橋 龍三郎 佐藤 宏之 佐藤 由紀男 北野 博司 熊木 俊朗 蛯原 一平 菅野 智則
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

数度にわたる完新世の気候寒冷化とその後の急激な回復(ボンド・イベント:約8200年前、約5800年前、約4300年前、約2800年前のピーク)と、縄紋土器の放射性炭素(14C)年代測定値の暦年較正年代とを対比させた結果、それぞれの気候変動が、草創期の終末/早期の初頭、早期後葉/前期初頭、前期後葉/中期初頭、中期後葉/後期初頭、晩期後葉/弥生初頭に対応することがわかった。とくに約8200年前のピークである8.2kaイベントの影響は、定住・集住集落の解体と遊動化、そして再定住化という居住パターンの変化として、列島各地の考古資料に明瞭に記録されている。
著者
前川 要 天野 哲也 酒井 英男 千田 嘉博 斉藤 利男 玉井 哲雄 深澤 百合子 辻 誠一郎 MORRIS Martin
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、ロシア連邦サハリン州を中心として、北東日本海域における古代から中世の交流の実態を考古学的に明らかにすることを目的とした。そのために中世陶器の流通の問題、北東アジアにおける在地土器生産の問題、北海道の中世チャシや東北北部の防御性集落、ロシア沿海州の土城について考古学的な調査を進めた。また関連分野では、建築史学、植生史、言語学、文献史学、炭素同位体年代測定法の各研究者をそろえ、学際的な研究組織を構成した。そして年2回の研究会議を開催し、研究成果の発表と検討を行った。2001年度より3年間にわたって、サハリン白主土城の測量調査および発掘調査を行った。初年度は測量調査を中心に行い、2・3年目に本格的な発掘調査を行った。その結果、土塁と堀に関して、版築を行っていること、金後半から元にかけて使われた1尺=31.6cmの基準尺度が使用されていたことが判明した。これは、在地勢力によって構築されたとは考え難く、大陸からの土木・設計技術である可能性が高いことが明らかとなった。また土城内部から出土したパクロフカ陶器片から成立時期を9〜11世紀頃の年代が想定できるが、版築技術などからは、土城内部の利用時期と土塁・堀の構築時期には、時間差があると考えられた。調査研究の成果を公表するために、最終年度に2月26・27日に北海道大学学術交流会館において北東アジア国際シンポジウムを開催した。シンポジウムは、1・白主土城の諸問題、2・北東アジアの古代から中世の土器様相、3・北東アジアの流通の諸様相の三部構成で、北東アジアにおける古代から中世にかけての交流の実態について発表が行われた。考古学だけではなく、文献史学・建築史学・自然科学など関連諸分野の研究報告が行われ、また国外からも7名の研究者を招聘した。白主土城の歴史的な位置づけのほか、北東アジアにおける土器様相、交易の様相について検討された。
著者
斉藤 修 星野 義延 辻 誠治 菅野 昭
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-96, 2004
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.関東地方のコナラ二次林を対象として,20-26年前に植物社会学的方法で植生調査を行った113プロットの追跡調査を行い,その残存状況,種多様性及び種組成の変化の実態把握と要因解析を行った.<BR>&nbsp;&nbsp;2.追跡調査で残存していたのは113プロット中75プロット(残存率66.4%)であり,コナラ-クヌギ群集39プロット(同60.0%),コナラ-クリ群集36プロット(同75.0%)であった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.時間経過に伴う出現種数の変化は両群集とも認められなかったが,管理プロットでは平均出現種数が増加し,非管理プロットでは逆に減少する傾向がみられた.出現種数の変化の要因としては,人為管理の有無及びそれに関連するササ類や常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;4.種組成変化の度合いを示す共通係数は,コナラ-クリ群集の方がコナラ-クヌギ群集よりも有意に高かった.また,管理プロットの方が非管理プロットよりも共通係数が高かった.種組成変化に影響する要因としては,コナラ-クヌギ群集ではプロットが位置する市町村の林野率の変化が,コナラ-クリ群集ではプロットの斜面傾斜角,リター被覆率,常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;5.減少が顕著であった種群には風散布植物が,増加が顕著であった種群には動物散布植物がそれぞれ多く含まれていた.また,主に鳥散布によって周辺から新規加入してきたと考えられる緑化・園芸種が両群集とも有意に増加していた.これらはプロット周辺地域の人口密度の増加が著しいほど,その増加が顕著であった.<BR>&nbsp;&nbsp;6.コナラ二次林の管理にあたっては,地域スケールでの林の立地特性を考慮しつつ,種多様性と種組成変化の長期的なモニタリングを行なっていくことが重要である.
著者
辻 誠
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.20, pp.45-56, 1969-10-15 (Released:2010-01-22)
参考文献数
44

Man can by vital self-denial, control his instincts and sublimate them into cultural activity. But the spirit by itself has no power. In order to obtain at least a minimum measure of strength the instinct suppression must be added. However, the spirit does not first come into existence by instinct suppression. The spirit has autonomy and roots of its own.The spirit while dealing with the organism can evoke various forms of instinctive drives in order to accomplish things which the spirit desires. Instinct and spirit complement one another, and the end of human life is that, by vital self-denial, life may become spiritualized and spirit become vitalized.This goal can be accomplished only by practicing vital self-denial through occupation with ideals and value contents. Hence straight living and healthy development of life can be realized only when instincts are not forcibly, but naturally, controled. This must be done not by struggling directly against antivalue instinctive behaviour but by directing one's efforts towards a value-orientated goal. Hence the anthropological meaning of educational content consists among others in presenting to the child and the pupil value-orientated goals. If the will is applied to directly denying the instincts, the will is always going to accomplish the opposite of what it desires.
著者
米倉 伸之 辻 誠一郎 岡村 道雄
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.283-286, 1997-12-01
参考文献数
4
被引用文献数
1

The aims of the symposium &ldquo;Termination of Last Glaciation and the Formation and Development of Jomon culture in Japan&rdquo; are to clarify (1) what changes have occurred in natural environments in and around the Japanese Islands from the Last Glacial Maximum to the Postglacial periods, (2) what changes have occurred from Late Paleolithic culture to Jomon culture in terms of the relationship between natural and cultural environments, in paticular changes in coastal and land ecosystems and ways of human life, and (3) how and when the Jomon culture was established in terms of natural environmental changes.<br>The symposium consisted of three different parts: (1) Last Glacial Maximum (the age of upper Paleolithic culture, 20-15ka), (2) a transition period from Late Glacial to Postglacial (the age of formation of Jomon culture, 15-10ka), and (3) Postglacial period (the age of the development of Jomon culture, after 10ka). The topics were presented by three speakers for each part from the viewpoints of geology, paleoecology, pedology, and archeology.<br>The topics of presentations in the symposium are the following: Upper Paleolithic culture in Japan and East Asia (Masao Ambiru); Spatial distribution of the vegetation around the Last Glacial Maximum in Japan (Mutsuhiko Minaki); Paleoenvironmental changes of the Japan Sea since the Last Glacial period (Ryuji Tada); A land ecosystem in the transition to the Jomon age (Sei-ichiro Tsuji); The formation of Jomon culture in the Southern and Northern parts of Japanese Islands (Michio Okamura); Soil formation and the environmental change (Kan-ichi Sakagami); Development of Jomon villages (Yasuhiro Okada); Forest vegetation and utilization of wood during the Jomon period in Japan (Mitsuo Suzuki and Shuichi Noshiro), and Jomon agriculture: retrieval of evidence (Masakazu Yoshizaki). The discussions in the symposium have focused on the relationship between the changes in natural environments and ways of human life, in particular the change of land ecosystems and the utilization of natural resources.<br>The state of the art in studies of the natural environmental changes from the termination of the Last Glacial to the Postglacial and their relations to the regional development from the upper paleolithic culture to the Jomon culture in Japan are reviewed from various viewpoints, and future tasks of research are presented.
著者
辻 誠 上本 康喜 河﨑 哲也 石塚 泰雄 井澤 武史
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.523-528, 2017-08-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
18

5歳齢,避妊雌のアビシニアンが間欠的な嘔吐を示して来院した.上部消化管内視鏡検査を実施したところ,幽門洞に表面の滑沢な隆起病変が認められた.内視鏡生検を行い,リンパ球クローン性解析は陰性であったが,細胞診と病理組織検査の結果,胃のヘリコバクター感染と胃小細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.抗がん剤は用いず,ヘリコバクター除菌療法によって30日間の治療を行った結果,症状は消失しリンパ腫は完全寛解に至った.1年後の病理学的検査において,ヘリコバクターの軽度の持続感染がみられたものの,胃粘膜のリンパ腫の再発は認められなかった.
著者
川手 憲俊 吉川 裕亮 辻 誠 稲葉 俊夫 喜田 加世子 玉田 尋通 澤田 勉
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.99, pp.102, 2006

【目的】黄体形成ホルモン(LH)のレセプターは精巣や卵巣の細胞膜上に存在し、LHによるステロイドホルモン分泌の刺激を伝達する。同レセプターの遺伝子は、多くの動物種でクローニングされているが、イヌの性腺組織から完全長cDNAをクローニングした報告は見当たらない。そこで本研究では、イヌ精巣組織からLHレセプターcDNAのクローニングを行い、塩基配列を解析した。【方法】健常な成犬(グレートデンおよびポメラニアン種)の精巣からtotal RNAを抽出した。全長cDNAを5つの断片に分けて、クローニングを行った。5'側の断片1を除く4つの断片については、それぞれに上流と下流プライマーを作成して、RT-PCR法により各cDNAを増幅した。断片1については、5'RACE法を用いてクローニングを試みた。得られたPCR産物は塩基配列決定用ベクターに組み込み、塩基配列を解析した。【結果】イヌの精巣由来RNAから、LHレセプターcDNAの5'側の断片1を除く2123bpをクローニングした。今回クローニングした2123bpのLHレセプターcDNAについて、グレートデンとポメラニアンとの間に、塩基配列で99.9%、アミノ酸配列で100%の相同性がみられた。また、イヌの同レセプターcDNAの終止コドンまでの塩基配列は、ブタ、ウシおよびヒトとの間にそれぞれ91.9%、91.7%および90.3%の相同性がみられた。イヌの同レセプターのアミノ酸配列は、ブタ、ウシおよびヒトとの間にそれぞれ92.4%、92.3%および89.1%の相同性がみられた。今回増幅した断片2(レセプターの細胞外領域に相当する)において75塩基(アミノ酸にして25個)の欠失したスプライスバリアントを見い出した。【結論】イヌの精巣由来RNAから、5'側の一部を除くLHレセプターcDNA(2123bp)をクローニングできた。イヌ精巣のLHレセプターmRNAにおいて、他の動物種では報告されていない新しい種類のスプライスバリアントの存在が明らかとなった。
著者
辻 誠一郎
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.119-145, 2003-10

長野盆地南部に位置する更埴条里遺跡・屋代遺跡群の古代の植物遺体群のうち,日本では最大の資料数であるヒョウタン遺体,およびアサ,ササゲ,モモ遺体の産出と利用を再検討した。その結果,古代の植物利用と農業経営に関して新しい知見を得た。古代のヒョウタン遺体の資料数は90点におよび,古代から中世まで連続的に時代を追うことができ,また,果実・種子の形態が多様性をもつものであった。果実の形態からは,タイプA~タイプGの7つのタイプが設定され,種子の形態も複数の系統の存在を支持した。このことから,ヒョウタンの多様性とこの地域におけるヒョウタン利用の多様性が確かめられた。多様なヒョウタンの果実は加工して利用されたが,球形に近い果実は杓に利用され,祭祀具として利用されたと考えられた。他のヒョウタンの果実も形に応じた加工が施され,容器として利用されたと考えられた。食用となる大型のユウガオ型の果実が中世以前では初めて遺体で確認された。他の三つの注目すべき植物遺体とその産出状況を記載した。第1は,搾りかす状態のアサの果実についてである。『延喜式』に記載された信濃国の貢納品である麻子を裏付ける事実である。第2は,ササゲに同定されるマメ科の炭化種子についてである。家屋の焼失時に炭化したと考えられるもので,当時の豆の保存の仕方を示す状況証拠である。第3は,加工されたモモの核についてで,刃物によって加工した笛であると考えられた。古代の更埴は,たくさんの畑作物としての栽培植物を育成しており,多産するヒョウタンやモモは多様で,生産母体が大きいことを示唆した。それらが水田稲作を主体とすると考えられてきた農業経営とどのようにかかわっていたのかの検討を促した。This study examines the occurrence and morphology of ancient plant remains, specifically, seeds and fruits of gourds (Lagenaria siceraria), fruits of hemp (Cannabis sativa), seeds of Fabaceae, and endocarp of peach (Amygdalus persica), from the Koshoku-Jori and Yashiro Sites in Koshoku in the southern Nagano valley. Results offered new insights into plant use and agricultural management in antiquity.Gourd specimens were ninety in number and made it possible to plot a trajectory from antiquity into the medieval period. Furthermore, there was a diverse range of fruit and seed. Gourd fruits were divided into seven types (A through G), while seeds were divided into a number of strands. The study confirms the diversity both of uses of gourds in this region and of the kinds of gourd used. Many were processed for use. It is believed that rounder gourds were used as ladles and ceremonial instruments, while other kinds of gourd were processed depending on their shape to be used as containers. A pre-medieval specimen of the large-sized bottle gourd, used for food, was also identified for the first time.The study also records specimens and yield conditions for the other three vegetables mentioned above. 1) Remains of hemp in pulp form substantiate the fact that mashi was a tributary item of Shinano province as recorded in Engishiki. 2) Carbonized fabaceous seeds identified with Vigna unguiculata are believed to have been carbonized when a house burnt down and therefore provide contextual evidence of how beans were stored at the time. 3) A processed endocarp of peach is believed to be a flute that was crafted with a blade.Ancient Koshoku cultivated numerous domesticated plants as dry-field crops, the variety of its peaches and gourds indicative of its large matrix of production. This fact invites further study of the ways that production of these crops relates to agricultural management which is generally believed to have centered on wet paddy farming.
著者
紀藤 典夫 大槻 隼也 辻 誠一郎 辻 圭子
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-26, 2017

青森県八甲田山の田代湿原(標高560 ~ 575 m)から採取されたコアの花粉分析の結果に基づき,十和田中掫テフラ(厚さ7 cm;To-Cu;約6000 cal yr BP)降下が植生に与える影響について考察した。分析の結果,テフラ降下以前はブナ属・コナラ属コナラ亜属を主とし,ハンノキ属等の落葉広葉樹からなる花粉組成で,安定した森林が復元された。テフラ直上では,コナラ属コナラ亜属は割合が著しく増加し80%以上に達する一方,その他の樹種は一様に割合が減少し,特にブナ属は30%から2.6%に減少した。テフラの上位1.7 cm でコナラ属コナラ亜属は割合・含有量ともに急激に減少し,他の樹種の割合が増加して,上位8.9 cm の層準(150 ~ 250 年後)でテフラ降下前の組成に近い安定した状態となった。ブナ属とコナラ属コナラ亜属のテフラ降下後の変化の著しい違いは,テフラ降下に対しブナは著しく耐性が低かった一方,ミズナラが強い耐性を持っているためと考えられる。非樹木花粉組成の変化に基づき,テフラ降下後,湿原植生は著しく組成が変化し,分析層準の最上位でもテフラ降下前に戻ることはなく,湿原の生育環境が大きく変化したものと推定した。
著者
辻 誠一郎 Tsuji Sei-ichiro
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター 天然放射性元素測定小委員会
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.10, pp.56-59, 1999-03 (Released:2010-05-25)

第11回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成10 (1998)年度)報告 名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計第1号機の研究実績と1号機,2号磯の利用計画
著者
辻 誠一郎 南木 睦彦 大沢 進
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.279-296, 1984
被引用文献数
5 13

相模地域の後期更新世の大型植物化石・花粉化石群集を記載し, 植物群と植生, および古環境を論じた.<br>植物分類・地理学上注目すべきイワヒバ・カラマツ・トウヒ各属の大型植物化石の形態を記載した. このうちトウヒ属は, トウヒ, ヒメバラモミの2種とトウヒ属A・B・Cの3型に分けられた.<br>主に, スギおよびヒメバラモミからなる冷温帯針葉樹林が約9万-6万年前に優勢であった. これは上部冷温帯の年降水量の多い湿潤な気候を示す. 約6万-5.5万年前の三崎海進を通じての植生は, 冷温帯のナラ類林の拡大によって区別される. これは年降水量の少ない比較的温暖な気候を示す. 約5.5万-5万年前の主にヒメバラモミとカラマツ属からなる亜寒帯ないし冷温帯針葉樹林は, 関東地方で従来知るかぎり後期更新世における最初の寒冷気候を示す. この時代は立山で確認された室堂氷期にあたる. 亜寒帯針葉樹林と冷温帯落葉広葉樹林の間の移行的な混交林が約1.6万-1.3万年前に優勢であった. このような森林は更新世末期の南関東に分布拡大していたと思われる. この時代の富士山東麓における亜寒帯針葉樹林の下降は1,000m以上であった.<br>(地名)<br>Eda 荏田<br>Ekoda, Egota 江古田<br>Iseyamabe 伊勢山辺<br>Kyuden 給田<br>Nippa 新羽<br>Rengeji 蓮花寺<br>Shijuhasse River 四十八瀬川<br>(地層名)<br>Kissawa L. 吉沢ローム層<br>Younger L. 新期ローム層<br>Anjin Pumice 安針軽石
著者
田口 洋美 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 三浦 慎悟 高橋 満彦 原田 信男 白水 智 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 原田 信男 白水 智 三浦 慎悟 神崎 伸夫 前中 ひろみ 高橋 満彦 岸本 誠司 中川 重年 梶 光一
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究が開始された翌年平成18年度においてクマ類の多発出没が発生し、捕殺数は約5000頭、人身事故も多発した。本研究はこのような大型野生動物の大量出没に対する対策を地域住民の歴史社会的コンテクスト上に構築することを主眼とし、東日本豪雪山岳地域のツキノワグマ生息地域における狩猟システムと動物資源利用を「食べて保全」という市民運動へと展開しているドイツ連邦の実情を調査し、持続的資源利用を含む地域個体群保全管理狩猟システムの社会的位置づけとその可能性を追求した。
著者
辻 誠一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.8, pp.30-33, 1997-03

名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成8年(1996年度)報告 「第2世代タンデトロン加速器質量分析計(加速器年代測定システム)による高精度・高分解能14C年代測定の利用分野・方法の開拓」 Proceedings of Symposium on Researches with a Tandetron Accelerator Mass Spectrometer at Nagoya University in 1996"Studies on New Fields and New Methods of Applications of High-Precision and High-Accuracy Radiocarbon Dating with a Second-Generation Tandetron Accelerator Mass Spectrometer at Nagoya University"日時:1997 (平成9)年3月10日 場所:名古屋大学年代測定資料研究センター古川総合研究資料館講義室