著者
定岡 由典
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.447-454, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
12

目的:救急隊員のキャリア・プラトー現象の様相を明らかにし,今後の救急隊員のキャリア発達支援に資することを目的とする。方法:近畿地方に位置する3消防本部の救急隊員に対し昇任可能性認知や職務挑戦性などのアンケートを実施した。結果:指導救命士と救急管理者の資格使用とキャリア目標を有する救急隊員がプラトー化を抑制していた。キャリア目標では指導救命士,救急隊長,管理職を目標とする救急隊員がプラトー化を抑制していた。結論:指導救命士制度の創設は,救急隊員のプラトー化の抑制に貢献していることが示唆された。また,消防庁の救急業務に携わる職員の生涯教育の指針による救急隊員教育は,救急隊員のプラトー化抑制策のひとつとして有用と考えられた。今後,プラトー化の抑制といった観点からも救急隊員教育に積極的に取り組む必要がある。
著者
瀧 健治 爲廣 一仁 古賀 仁士 石橋 和重 松尾 由美 平尾 朋仁 山田 晋仁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.607-613, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
19

目的:抵抗力が弱い重篤な患者や重症外傷患者を扱う医療施設で,衛生環境維持は重要な課題であり,抗菌加工剤のNRC(nano revolutionary carbon)の使用が衛生環境維持に有益か,実験的に検討する。方法:標準ブドウ球菌(以下,ブドウ球菌)・標準カンジダ菌(以下,カンジダ菌)・浮遊微生物菌を用いて,NRCの①細菌との接触時間,②抗菌活性の持続期間,③「抗菌加工」剤の二酸化塩素(クレベリン®,以下クレベリン)の抗菌活性持続期間,および④浮遊微生物菌へNRCの抗菌効果,を比較検討した。結果:NRCの抗菌効果/ 活性には細菌と30分以上の接触時間が必要で,抗菌活性の持続期間はブドウ球菌で約1年,カンジダ菌で2年6カ月とクレベリンの場合より長く,浮遊微生物菌にも有効な抗菌効果を確認した。結論:NRCの抗菌活性期間と浮遊微生物菌への効果から,抗菌加工剤のNRCは衛生環境維持に効果的であると実験的に評価した。
著者
升井 淳 橋本 純子 朴 將輝 柳 英雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.601-606, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
11

救急搬送において高齢者がその多くを占め,うち自己転倒の患者は多く,救急搬送数増加の一因となっている。今回高齢自己転倒患者に関して,患者背景,予後などを検討した。 対象は2022年1月1日〜6月30日の期間に当院に救急搬送された高齢自己転倒患者とし,65歳以上を高齢者,明らかな外力のない転倒を自己転倒とした。カルテ調査を行い,後方視的に検討した。対象は370例,年齢中央値80.0(74-86),男性158例で,骨折を伴わない止血処置を要する出血24例(6.5%),骨折141例(38.1%)に認めた。入院106例(28.6%)でうち37例(10.0%)は入院21日時点においても入院が必要であったが,死亡例はなかった。入院群では外来帰宅群と比較し,多剤内服(5剤以上)(62.3% vs 21.7%,p=0.029)である割合が有意に高かった。年齢や性別,飲酒などは入院に寄与しなかった。自己転倒により高齢者においては約3 割が入院しており,内服薬調整を含めた転倒予防が重要と考える。
著者
高山 好弘 安田 康晴 豊国 義樹 久保田 勝明 米川 力 山下 圭輔 鈴川 正之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.88-90, 2013-04-30 (Released:2022-11-18)
参考文献数
15

背景:バイスタンダーCPR(BCPR)の実施率は年々増加しているが,その質と生存率については評価されていない。目的:BCPR(胸骨圧迫)の質と生存率について検討すること。対象:栃木県小山・芳賀地域MC協議会管内で発生した救急隊員目撃を除く心肺停止症例440件。方法:救急隊が傷病者接触時にBCPRの胸骨圧迫について,姿勢・深さ・テンポが適切に行われていたことが確認できた症例を有効群,不適切症例を無効群とし,1か月生存率を比較した。結果:BCPRの実施率は227/440件(51.6%)で,有効群は85/227件(37.4%)であった。1か月生存率は有効群7/85件(8.2%),無効群2/127件(1.6%)と有効群が有意に高かった(p<0.05)。結論:質の高いBCPR(胸骨圧迫)の実施率は50%未満であった。質の高い胸骨圧迫を行うことにより生存率が向上する可能性があることから,BCPRの質について正しく評価し,教育することが必要である。
著者
中谷 亮介 満田 正樹 谷川 直人 早田 修平 松本 篤
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.132-138, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
5

今回,院内急変時における救急カート未配置・不足薬剤の対応および血液ガス分析の迅速化を目的に,急変時追加薬剤バッグの運用と臨床検査技師の介入を開始した。薬剤師による急変時追加薬剤バッグの運用により,院内急変の全症例に薬剤師は関与することができ,救急カート未配置・不足薬剤の対応も可能となった。医師,看護師は院内急変対応に臨床検査技師が必要であると考えており,臨床検査技師による介入開始後では院内急変発生から血液ガス分析開始までに要する時間が18.9±6.9分から12.7±5.2分に有意に短縮された。今後も多職種で連携しながら院内急変に対応していきたいと考える。
著者
前田 晃史 八田 圭司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.533-539, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

本研究は,二次救急医療機関の救急外来を受診した感染症を疑う成人患者に対し,救急看護師が緊急度の高い患者を精度よく迅速に拾い上げることを目的に,SIRSの診断基準2項目以上満たすSIRS群(n=340)とqSOFAスコア2点以上のqSOFA群(n=12)および両群を満たすSq群(n=48)の緊急度・重症度などを比較した。緊急度判定時のバイタルサインは,Sq群の呼吸回数,心拍数,収縮期血圧,GCS,体温においていずれかの群に差があり,緊急度が高かった。院内死亡はSIRS群よりSq群が多く,SOFAスコア≧2点はSIRS群,qSOFA群よりSq群が多く,早期警告スコア2(NEWS 2)≧5点は,SIRS群よりqSOFA群とSq群が多かった。以上からSq群は緊急度・重症度ともに高く,全身状態を評価したうえでSq群を最優先とし,NEWS 2などの重症度の結果からSIRS群よりqSOFA群を優先することを提案する。
著者
上野 恵子 寺本 千恵 西岡 大輔 近藤 尚己
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.455-467, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
20

目的:地域包括ケアでは個人のニーズに応じた支援が不可欠であり,医療現場でも患者の社会的ニーズが顕在化し対応を求められることがある。しかし,救急車を利用して医療機関を受診し入院せずに帰宅する患者にそのニーズを満たすような支援が提供されることはほとんどない。そこで,軽症の救急車利用者のなかでも支援の必要性が高い高齢者の社会生活状況を簡便に把握し多職種で共有するチェックシートを作成した。方法:質問紙調査3回の修正デルファイ法。救急救命士,医師,看護師,医療ソーシャルワーカー,地域包括支援センター職員,保健師が参加。結果:1回目調査は28人(回収率100%),2・3回目調査は25人(回収率89.3%)が回答した。住環境,世帯構成,キーパーソンや介護者の有無,経済状況などの28項目を共有するチェックシートを作成した。結論:実用化に向けて項目の信頼性・予測妥当性の検証や運用プロトコルの構築と効果検証を進めていく。
著者
末廣 吉男 森谷 裕司 山口 京子 夏目 恵美子 井上 保介 武山 直志 中川 隆 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.375-379, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
8

近年,臨床検査関連団体や学会が認定する専門臨床検査技師制度の普及により,専門分野に特化した臨床検査技師が増加している。しかし,救急医療に関連した専門臨床検査技師制度の整備は遅れている。当院では,緊急検査担当の臨床検査技師が救急蘇生外傷治療室にて検査関連業務を実施することで,医師による検査依頼から結果確認までの時間(TTAT:Therapeutic turn around time)を従来と比べ約22分間短縮した。救急蘇生外傷治療室における初療時検査は,病態把握や治療方針決定のために実施されるものであり,医師が最も必要としている検査結果を推測し,的確な検査項目について結果報告することが重要である。これらを実践するため,救急医療に携わる臨床検査技師にはさまざまな疾患に対応するための幅広い臨床検査知識や技術のほかに,救急医療の基礎知識および技術の習得が必須であると考える。救急医療における臨床検査技師の専門性とは,積極的に救急医療の現場へ介入して検査関連業務を実施し,検査依頼から結果確認までの時間を短縮するとともに,医師や看護師が本来業務に特化できるように業務支援することであると考える。
著者
森 恵里子 井上 歩 園山 和代 宮川 大樹 後藤 希 山田 雅 國嶋 憲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.497-504, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
5

京都市立病院では,2020年9月より臨床検査技師が救急室で業務を行っている。その主な業務は,検査業務,診療補助業務,その他業務があげられる。配置導入時には人員確保の問題などがあったが,短時間の滞在から開始し,現場の意見を取り入れながら徐々に業務や配置時間を拡大することができた。配置から約1年後に実施した医師・看護師対象のアンケートでは,臨床検査技師の救急室配置は必要だとする回答が90%以上を占めた。また臨床検査技師による救急室での静脈路確保についても必要だとする回答が85%以上を占めた。アンケートで肯定的な意見が多数であった要因としては,救急室で他職種と協働するなかで,臨床検査技師の有用性が認知されてきた点が大きい。今後も臨床検査技師として,検査に関する専門性を活かしながら,従来の枠にとらわれない幅広い業務を行い,多方面で患者に貢献できる存在を目指していきたい。
著者
河村 宜克 藤田 基 井上 智顕 山本 隆裕 古賀 靖卓 八木 雄史 中原 貴志 戸谷 昌樹 金田 浩太郎 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.552-556, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
9

トンネル内で急性一酸化炭素(carbon monoxide,以下COと略す)中毒患者が多数発生した事例において,隣県のドクターヘリコプター(以下ドクヘリと略す)とともに傷病者7例を高気圧酸素(hyperbaric oxygen,以下HBOと略す)治療装置のある4施設に分散搬送したので報告する。トンネル内で作業員が倒れているとの情報で,ドクヘリが覚知要請された。 現場到着時,傷病者はトンネル内で,発電機を複数台持ち込み作業していたとの情報から,急性CO中毒を疑った。傷病者は7例で19〜58歳,全員歩行不能であり,JCS 1桁であった。 経皮的カルボキシヘモグロビン濃度は,測定可能であった4例では30%前後であった。最終的に救急車で直近のHBO治療装置保持施設に3例,次に近い施設に1例搬送した。山口県ドクヘリで2例,広島県ドクヘリで1 例をさらに離れたHBO治療装置保持施設2施設へ分散搬送した。
著者
坪内 逸美 小濱 啓次 櫻井 瑛大 服部 未来 松田 幸恵 吉岡 美貴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.487-492, 2010-08-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
12

目的:大都市東京都と小さな地方都市鳥取県の救急医療体制の現状を比較検討し,両都県における救急医療体制の今後のあり方を考えようとした。方法:東京都と鳥取県の救急医療に関する資料(救急医療機関数,医師数,救急隊員数,救急車数,救急出場件数,転送率等)を集め,比較検討した。結果:東京都は救急医療機関数,救急隊員数等において鳥取県を大きく凌駕していたが,人口10万人あたりでその実態をみると,東京都は鳥取県より小さい数値を示し,傷病者が119番通報から医療機関に収容されるまでの時間も鳥取県の方が早かった。一方,都民の救急車の要請件数は鳥取県の1.5倍であった。結論:東京都においては,救急医療機関と救急隊の不足,救急車の過度の要請があり, これを改善するためには大学病院の救急診療への積極的な参加とドクターカーの運用,民間救急の導入,救急車の適切な利用を促すための普及啓発が必要であると思われた。また鳥取県においては,転送件数が多く,鳥取県中部地区における救命救急センターの整備と地域連携,医療機関の役割分担が重要であると考えられた。
著者
諌山 憲司 安田 康晴 小田 浩文
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.22-30, 2011-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

救急現場活動中において,階段搬送時に救急隊員が身体負担を感じていると報告されている。本研究は,階段搬送時における救急隊員の身体負担の現状を明らかにすることを目的とした。救急隊員760名を対象に,階段搬送時における身体負担に関するアンケート調査を行った。階段搬送時に身体負担を感じたことがあるのは694名(92%)で,最も負担を感じるのは腰部(481名:69.8%),狭く急な角度の階段(677名:97.6%),傷病者の頭側の搬送位置(342名:52.4%)であり,最も多く使用されている資器材は布担架であった。身長別に腰部負担の発生率について検討した結果,負担発生率は隊員の身長が高くなるほど高率の傾向がみられ,階段搬送時の身体負担は,救急隊員の身長が関与していることが示唆された。
著者
入江 康仁 新美 浩史
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.757-762, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
8

化膿性脊椎炎は一般的に臨床診断や画像診断が困難で,不明熱などとして見過ごされやすく再発率も高いことから,救急総合診療における重要な鑑別疾患の一つである。2015年度にMRI が診断に有用であった3例の化膿性脊椎炎を経験したため,早期診断におけるMRIの有用性について考察した。本疾患は血行性感染が多く,椎体内の動脈は軟骨終板直下で血管網を形成し,病原体が留まりやすく感染の好発部位である。そのため軟骨終板直下から感染が始まり,炎症は椎体から椎間板を経て隣接した椎体に波及し,やがて椎間板が狭小化する。そして前縦靭帯下,さらに靭帯を越えて進展し傍椎体膿瘍や蜂窩織炎を形成する。単純MRIは早期診断が可能であるが,症例2や3のような炎症初期では特異度は劣るため椎体や椎間板などに形状変化が現れる前の化膿性脊椎炎を診断することが困難である。しかし,造影MRIでは炎症初期でも感染巣に造影効果が得られるためより早期の診断に有用である。
著者
中川 凌平 安田 冬彦 廣江 貴則
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.665-670, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
8

病院に雇用され,院内で勤務する救急救命士には,他職種が行っている業務を分担し,医師,看護師の負担を軽減することなどが求められているが,法制上の制約もあり,担う業務が確立しているとはいい難い。しかし救急救命士は少なくとも3年間の専門教育を受けており,院内のさまざまな業務に柔軟に対応できる医療専門職であるといえる。そのため,長時間労働の是正の担い手になることができるとも考えられるが,全国的に雇用者数は増えているものの,その知識や技能を十分に活用できている事例はほとんど報告されていない。本稿では病院内救急救命士を取り巻く環境に関する一般的課題を整理し,当院に勤務する救急救命士の業務と教育に関する現状,他職種からのタスクシフトに関する取り組みについて報告するとともに,病院に勤務する救急救命士の職能拡大に向けて,施設間搬送に特化した小規模メディカルコントロール体制の構築と診療報酬の拡充について提言し,その課題についても議論する。
著者
高橋 順一 加藤 啓一 工藤 孝志 一瀬 悦史 竹澤 雄基 髙間 晶子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.597-601, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

背景:日本赤十字社は効率的にBLS教育を実施できる学校向けのプログラムとして,『救急蘇生法の指針2010(市民用・解説編)』 1) で設定された「入門講習」などに基づき,「児童・生徒のための救命手当短時間プログラム」を新設した。目的:本プログラムの受講者である小学生の受講前後の救助意欲とBLSに関する知識の変化について,比較評価を行うことである。方法:秋田県と大阪府の小学生に対して本プログラム(1単元:45分間)を開催し,受講児童に対し講習前後に同じアンケート調査を行った。結果:秋田県が286名,大阪府が405名の総計691名の小学生全員から調査票を回収し得た。救助意欲の変化は受講前の68%から97%となり,救助知識においても受講前に比べて,受講後は全体的に向上した。考察:小学生に対して45分間のBLS教育を行うことにより,BLSに関する基本的な知識を習得すること,救助意欲を向上させることは可能である。
著者
渡辺 徹 稲田 厚 三浦 克己 吉田 暁 田中 敏春
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.523-527, 2018-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
6

急性左心不全による心原性肺水腫に対して救急隊員が実施可能な処置は,酸素投与とバッグバルブマスク(BVM)による補助呼吸である。今回,病院前救護においてBVMを用いて1名が両手でマスクを顔面に保持密着させ,もう1名がバッグを圧迫し換気を行う二人法補助呼吸によりSpO2値の改善を認めた疾患例を経験した。心原性肺水腫では呼気終末の気道内圧を高めることで低酸素血症を改善させることができるため,近年医療機関ではNPPVが実施されるようになっている。BVMのマスクを顔面に確実に密着させることができる二人法補助呼吸は,適切に実施すればNPPVに近い効果が期待できる。また,起坐呼吸や不穏状態の傷病者にも有効な換気が可能になる。病院前救護で呼吸困難感を訴え急性左心不全が疑われる例において,高流量酸素投与でもSpO2値が改善しない場合,呼吸原性心停止への移行を予防するためにBVMを用いた二人法補助呼吸を考慮してよいと思われる。
著者
近藤 圭太 山北 喜久 玉井 宏明 岡崎 誉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.735-740, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
20

背景・目的:超高齢者が緊急入院すると,廃用症候群に陥りやすく,入院期間も長びき予後も悪くなることが問題となる。これに対し早期リハビリテーションの効果が期待されるなか,当院の現状を調査し検討した。方法:2017年度の1年間で,救急車搬送され入院となり理学療法を施行した超高齢者243人を対象とし,入院後48時間以内にリハビリテーション開始の早期リハ群と,以降の非早期リハ群に分け,早期リハの効果を,退院時転帰,在院日数などにつき検討した。結果:退院時転帰は,退院,転院,死亡で2群間に有意差はなく,平均在院日数が早期リハ群で縮減した(16.9±11.3日vs 21.8±12.6日,p=0.0195)。疾患別にみると,脳血管系と整形外科系で早期リハ群が多かった。結論:緊急入院した超高齢者に早期リハを行うことは,退院時転帰に有意差はなかったが,在院日数を有意に縮減した。在院日数縮減は廃用症候群の予防や病床回転率に寄与し,超高齢社会に向けての1つの対策となり得る。
著者
千田 いずみ 田中 秀治 高橋 宏幸 喜熨斗 智也 白川 透 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.575-584, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景:2011年10月に発表された救急蘇生法の指針に,心肺蘇生の学校へのさらなる普及の重要性が示された。目的:小学生の心肺蘇生法に対する理解力および実技能力を検討すること。対象方法:小学6年生96名を対象に心肺蘇生の知識の確認試験および1〜6年生214名を対象に実技試験を行った。結果:心肺蘇生法に関わる知識ではほとんどの問題で80%以上の正答率を得た。実技では高学年でも平均圧迫深さが30mmと十分な圧迫深度に達しなかった。人工呼吸では十分な吹き込みができたのが64%,AED操作は100%正しく操作することができた。考察:心肺蘇生に対する理解力は小学6年生で十分備わっていることが判明した。胸骨圧迫の確実な実施は難しいものの,人工呼吸やAED操作は正しく実施する可能性が見出せた。結論:中学生の体格では胸骨圧迫の実施が可能であると報告されていることから,小学生への心肺蘇生法教育の目的は今後の成長を見越した知識の習得および技術の獲得にあるといえる。
著者
種田 靖久 森 博美 吉村 知哲 山口 均 高須 昭彦 安田 忠司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.625-631, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2

デクスメデトミジン(以下DEX)は,呼吸抑制作用が軽微な鎮静薬であるが,循環器系への作用に徐脈の危険性や血圧低下などの問題がある。今回DEXの使用適正化に向けてICU専任薬剤師として鎮静プロトコルを作成し介入を行った。鎮静プロトコル導入前と比較し,導入後ではBolus投与率が減少する傾向を示し(13.2% vs. 3.5%,p=0.0569),副作用発現率が有意に減少した(42.1% vs. 23.3%,p=0.0472)。DEX平均投与量,併用鎮静薬剤の投与量,挿管日数については導入前後で差は認められなかった。また,Bolus投与群では,非Bolus投与群と比較し副作用発現までの時間が有意に早くなり(1.8hr vs. 3.6hr,p=0.0085),Bolus投与と副作用発現の関連性が示唆された。ICU専任薬剤師として,薬剤の適正使用に積極的に関わることにより副作用軽減につながると考えられる。
著者
根本 学 京谷 圭子 菅野 壮太郎 高木 正人 北山 勝博 水村 勝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.792-800, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
15

日本は高齢社会を迎え,救急現場においてもその影響は避けられない。今回,人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関して,日本臨床救急医学会の提言を参考に地域メディカルコントロール協議会のワーキンググループにより指針を策定し,運用を開始したので報告する。現場の救急隊員からの要望に応え,「救急救命処置についての説明と同意書」と「心肺蘇生に関する医師の指示書」を策定し,2017年12月1日より運用を開始した。運用開始から2018年11月30日の期間における内因性心肺停止525件中,心肺蘇生を望まなかったのは23件(4.4%)であった。救急隊員へのアンケート調査では,不安や精神的ストレスを感じている者がいることが判明した。人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関しては,地域メディカルコントロール協議会を中心とした活動指針の策定と事後検証が重要と考える。