著者
東山 雅一 平田 昌彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.104-113, 1995
参考文献数
35
被引用文献数
7

バヒアグラス放牧草地を利用した黒毛和種育成牛飼養システムにおいて,家畜生産に影響を及ぼすと考えられる様々な要因(気象,補助飼料,草地植生,家畜生体重,草地/家畜バランス,放牧行動,模擬採食草に関する要因)の変動を3年にわたり調査した。そして,各要因の変動範囲や年,季節および1つのパドックにおける放牧経過日数に対する反応などについて検討することにより,対象システムの特徴の一端を明らかにした。さらに,要因の変動の機作を理解し,システムの特徴を明らかにするうえでの要因間の関係の解析の重要性について指摘した。
著者
北村 征生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.20-28, 1986
被引用文献数
1

暖地型マメ科9草種,イネ科9草種について,土壌酸度に対する生育反応と根粒の形成反応を調査した。暖地型マメ科イネ科草種の生育にとって好適な土壌pH域は,一般に,寒地型草種より低いと考えられたが,草種間差があり次のような結果を得た。イネ科草種:バッフェルグラス≒ローズグラス≒モラセスグラス(pH4.5〜6.5)<パラグラス≒ギニアグラス≒パンゴラグラス(5.0〜7.0)<セタリアグラス≒スターグラス≒ダリスグラス(5.5〜7>).マメ科草種 : エンデイバー≒ベラノ(4.5〜6.5)<セントロ≒サイラトロ(4.8〜7)<ロトノニス≒シルバーリーフ≒グリーンリーフ≒クパー(5.0〜7.0)<ギンネム(6.2〜7>)。ただし,ロトノニスとサイラトロは好適pH域が広く,強酸性土壌に対する適応性はベラノやエンディバーに劣らないと考えられた。マメ科牧草の根粒形成に対する好適pH域は宿主植物の好適域よりも高いことが明らかになった。酸性土壌に対する適応は,イネ種草種では根による土壌養分の吸収効率の向上,マメ科草種では根系伸長量の増大に負うところが大きいと考えられた。以上より,暖地型牧草の栽培に必要な石灰施与量は寒地型牧草の場合より少量でよいと考えられた。
著者
福田 栄紀
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-11, 2015-04-15 (Released:2015-06-25)
参考文献数
41

寒地型牧草のための肥培樹,庇陰樹としてのマメ科先駆樹種ネムノキの特性を評価するため,ネムノキがオーチャードグラス(Og)の生育に及ぼす影響を調べた。ネムノキの孤立木とOgが同所的に生育する3か所において,ベルトトランセクト法によりOgの草丈,収量を測定し,樹冠内外で飼料成分含量を比較した。草丈,乾物収量はネムノキの樹幹に近づくにつれ漸次高くなった。樹冠内が高い成分は,2番草におけるCP,DE,OCC+Oaであり,これら蛋白質・可消化エネルギー関連成分は番草を問わず樹冠内が高い傾向にあった。樹冠外が高い成分は,2番草におけるObであり,また番草を問わず繊維性成分は樹冠外が高い傾向にあった。TDN収量,CP収量は,1番草において樹冠内の方が樹冠外より高かった。収量特性における樹冠内外差は1番草においてより顕著であり,一方栄養特性における内外差は2番草でより顕著であった。これらの結果はOgの生育に影響を及ぼす主要環境要因がネムノキ樹冠内において一様ではなく,樹幹に近づくにつれて漸次好適になること,およびネムノキは夏が暑い日本でOgのための肥培樹,庇陰樹として機能しうることを示唆する。
著者
北川 美弥
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.31-33, 2020-04

放牧草地は牧草が生産される畑であるが,野菜等が生産される一般の畑とは異なる点を持つ。例えば,(1)造成後は,長期間耕起されない,(2)家畜が放牧される,(3)地形が複雑,といった点である。このため雑草管理においても,一般の畑とは異なった視点で対応することが求められる。これまで,日本草地学会誌において草地の雑草管理についてさまざまな報告がなされている。しかし近年,専門とする研究者は減少し,報告数も減っている。2019年度日本草地学会広島大会の発表における関連発表は4課題である。一方で,雑草管理に苦慮している牧場・農家は依然として多い。加えて地球温暖化の影響などから各雑草の生育地域に変化が生じているのみならず,新たな雑草の侵入も報告されている。これまでの研究結果をもとに対応することが可能な問題もあるが,現状に即した対応のためには,継続的な研究は不可欠である。そこで,放牧草地における雑草管理について整理を行い,これを通じて今後必要な対応を検討するきっかけとしたい。
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 厚一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.266-271, 1998-10-31 (Released:2017-07-07)
参考文献数
11

南九州における水生シダ植物アゾラ(Azolla, 日本名アカウキクサ)の飼料化を確立するため, pH, 生育時期およびアイガモ放飼がアゾラの生育に及ぼす影響を検討するとともに, 化学成分, 家鴨による嗜好性およびその給与が家鴨の産肉性に及ぼす影響を検討した。 pH2.8〜9.2の各培養液による生育について, pH5.5〜8.5でのA. japonicaの生育には差がみられなかった。4月上旬および5月下旬にそれぞれ室外環境で接種した A. pinnata 103, A. filiculoides 1006, A. caroliniana 3004, A. microphylla 4018, A. japonicaの生育については, 接種後1〜2週月の生育はいずれの種においても5月(平均気温21.4℃)に比べ4月(平均気温14.6℃)で遅かった。接種後5週間の増殖量についてアゾラ種間で差がみられなかったものの(p>0.05), A. filicloides 1006と在来種のA. japonicaの生育がやや速い傾向を示した。田植え後の水田に接種したアゾラはアイガモ放飼区および無放飼区とも生育が遮光により低下し, 接種後40日間の新鮮物収量は約2.000kg/10aであったが, アイガモ放飼区では虫害, 赤変, 過繁茂あるいはカビなどが発生しなかった。 上述5種アソラ混合物の粗タンパク質舎量は乾物当たり25.1%であり, 家鴨による嗜好性については, ヨモギ(Arzemisia vulgaris L.), シロクローバー(Trifolium repens L.), カラスノエンドウ(Vicia angustifolia L.), エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.), イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)およびキャベツ(Brassica oleracea var.)に比べ, アゾラの新鮮物摂取量が有意に高かった(p<0.01)。アゾラと配合飼料を家鴨雛に給与した場合, 2〜8週齢の体重は対照区に比べ有意に大きかった(p<0.05)。飼料要求率は4適齢まで対照区よりも低かったが, その後, 増大する傾向が認められた。以上から, アソラ新鮮物は家鴨による嗜好性が高く, その給与が発育を促進するとともに, 産肉性にも良好な成績をもたらすことが示唆された。
著者
小池 正徳 嶋田 徹 雨宮 良幹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.101-107, 1993
被引用文献数
21

バーティシリウム萎ちょう病に対するアルファルファの細胞レベルにおける反応を明らかにするため,抵抗性3個体(V-16,E-18,K-1それぞれ品種バータス,ヨーロッパ,キタワカバ由来),感受性3個体(V-6,E-8,T-3それぞれ品種バータス,ヨーロッパ,ソア由来)より誘導したカルスからプロトプラストを調製し,Verticillium albo-atrum培養濾液および菌体細胞壁成分に対する反応を調べた。菌培養濾液を透析により4つの画分(A:分子量3500以下,B:3500以上12-14,000以下,C:12-14,000以上50,000以下,D:50,000以上)に分画し,それぞれのプロトプラストに20%の濃度で処理し,12時間後に生存率を調査した。各画分ともプロトプラストの生存率は減少したが,画分Aに対して感受性個体のプロトプラストの生存率の減少が顕著であり,画分C,Dに対しては抵抗性個体のプロトプラストの生存率の減少が顕著であった。次にプロトプラストに菌体細胞壁成分を処理し,生存率を経時的に観察した。その結果,抵抗性個体のプロトプラストの生存率減少が感受性個体のそれらに比べ顕著であった。以上の結果から,Verticillium albo-atrum培養濾液を用いて細胞選抜を行う場合は,培養濾液全画分を選抜因子として用いるよりは,低分子画分(画分A)を分画して用いた方が効果的であることが予想される。また,培養濾液高分子画分(画分C,D)および菌体細胞壁成分に対するプロトプラストの反応率は抵抗性の指標として利用できることが示唆された。
著者
飯田 克実
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.98-103, 1965-09-30 (Released:2017-07-07)

(1)那系4号の種子を8月下旬から翌年の9月下旬まで,ほぼ15日おきに播種して,発芽と生育および収量を調査した。(2)発芽や生育と気温との関係を,日平均気温で示すのは必ずしも最良のものではなく,最高および最低気温や有効および無効温度などの考え方も必要である。しかし,便宜的に日平均気温を指標として用いると,暦日で整理するよりも合理的である。(3)発芽は日平均気温6〜23℃がよく,12〜26℃が発芽期までが短かい。5〜20℃の発芽期は,播種後の積算日平均気温が約110〜130℃なる日であった。5℃以下の播種は著しくおくれ,24℃上以の播種は発芽が悪かった。(4)早春の節間伸長は,播種期の早いほど暦日では早かった。しかし,約1cmになるまでの発芽後日数は,早播きほど長かった。(5) 7月までの合計収量は早播きほど多く,8〜10月上旬播はa当たり1.8〜1.5トンの生草をえた。1カ年間の合計収量は8月播が最も多かった。1日当たりの収量は8〜10月播と2〜3月播が多く,11月中旬〜1月中旬播は少なかった。(6)日平均気温が約5℃以上のときに生育量の増加,10〜20℃で旺盛な生育,20〜25℃では高温ほど生育不良,25℃以上で著しい夏枯れをおこした。その結果,4〜6月は生育旺盛で生産効率が最も高く,ついで10〜11月の生育もよく生産効率も高かった。なお,1〜2月は生育が停滞し,7月中旬〜8月は生育不良であった。(7)粗蛋白質含有率は多肥栽培のため,何れの刈取期でも著しく高く,播種期の差は明らかでないが,6月の刈取では早播区はやや低かった。(8)イタリアンライグラスの上手な栽培は,春と秋の2回ある生育適温を有効に利用して生産効率の高い多収をあげることであり,初秋に日平均気温が25℃以下になれば,できるだけ早播きすることでるあ。
著者
高橋 繁男 栂村 恭子 中神 弘嗣 大槻 和夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.341-348, 2004-10-15 (Released:2017-07-07)
参考文献数
15

代謝エネルギー(ME)システムに基づく,日乳量と体重変化を予測するモデルを作成した。このモデルが必要とするデータは,分娩時体重,日当たり乾物採食量および飼料のTDN(あるいはME)濃度である。主要な仮定は,BRUCEらが提案した潜在的な乳生産量と増体量であるが,エネルギー供給が十分では無い場合,その不足分の乳と体への分配をある一定の比率によるとした。本モデルを,高泌乳牛で得られた成績に適用したところ,乳量と体重の変化傾向をほぼ再現した。しかし,ある場合には乳量が過大に,他の場合には体重が過大に計算された。補助飼料給与がある放牧条件では,モデルの計算結果は乳量で良く一致したが,体重の観測でみられた大きな変動を再現しなかった。モデルの結果と実測値の相違は,飼料構成にかかわらずTDNをMEに換算する変換値と飼料の総エネルギーを一定にしたこと,生体重に占める消化管内容物の大きな変動,乳と体蓄積へのエネルギー分配などが複合的に影響しているものと考えられた。
著者
広田 秀憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.299-309, 1972

草地造成における表面播種法の確立を目的として牧草の種子を用いて造粒しこれを播種するPellet Seeding法の導入を検討するための基礎として無加熱転動方式による造粒法の確認と造粒種子の発芽への影響などについて一連の実験を行ない次のような結果を得た。ア,造粒剤と接着剤被覆材料として炭酸カルシウム,珪藻土,ピートモス,ベントナイトなどを用い,メチルセルローズ3%水溶液を接着剤としてヘアリーベッチの種子について造粒し発芽試験を行なったところ,いずれも材料としてすぐれ,よい発芽率が得られた。接着剤としてメチルセルローズ3%,アラビアゴム13%,ポリビニルアルコール3%,ドハロン5%,ボンド30%,アルギン0.75%の6種類を珪藻土を造粒剤として造粒して比較したところ,メチルセルローズとアラビアゴムの組合せがよかった。しかし市販の工業用ボンドでも造粒性がよくあまり発芽低下がみられなかった。イ粒剤への各種肥料混入の可能性前の実験からピートモス30,炭カル50,ベントナイト9,水銀粉剤1の重量割合で混合した造粒剤とボンド30%液を接着剤として使用し,これに各種の肥料混入の多少がクリムソンクローバの発芽にいかなる影響をおよぼすかを検討した。a硫安硫安を造粒剤中に混入するには5%でもかなりつよい発芽障害がみられる。さらに低い割合については検討する必要がある。bリン酸肥料過石を造粒剤の中に混入すると5%以下ならば発芽を阻害しないようである。熔リンは20%まで混入できるがガラス質であるため造粒性は低い。c塩化カリ塩化カリを造粒中に混入すると5%でも著しく発芽を阻害する。d化成肥料化成肥料(15-15-15)を造粒剤中に混入するときは5%までならはあまり発芽を害しない。e乾燥鶏糞と堆肥乾燥鶏糞を造粒剤に混入するには5%が限度である。また堆肥は25%以下の混入までは発芽を阻害しない。堆肥の乾燥粉末は造粒性がすぐれている。ウ農薬の混入と発芽a殺虫剤ヘプタクロール,エスセブンともにクリムソンクローバの発芽を阻害せず100%で被覆造粒してもよい。b殺菌剤水銀粉剤を混入するには20%が限度であるが1%の混入で十分に殺菌効果がある。エ,造粒の草種適用性無肥料条件で造粒した場合と造粒剤中に5%の化成肥料を混入した場合について寒地型イネ科草10種,寒地型マメ科草10種,および暖地型イネ科草8種を用いて3週間発芽試験を行ない草種の適用性を検討した。a寒地型イネ科草造粒によって発芽によい影響をもたらすのはスムースブロームグラス,リードカナリーグラス,チモシーなどで,オーチャードグラス,トールフェスキュ,ケンタッキーブルーグラスなどには適していないようである。造粒中に化成肥料を混入しても発芽が低下しないのはスムースブロームグラス,チモシー,イタリアンライグラスなどであり,オーチャードグラス,トールフェスキュ,ペレニアルライグラス,ケンタッキーブルーグラスなどでは肥料の混入は適していないようであった。b寒地型マメ科草造粒はヘアリーベッチ,アルファルファ,ラジノクローバ,シロクローバに有効でルーピンには不向きであった。マメ科草の種子はイネ科草の種子に比べて造粒に適している。化成肥料の混入についても上にのべた草種は適していた。c暖地型イネ科草ハイブリッドソルゴー,ローズグラス,バーミュダグラスなどは造粒によって発芽がよくなり,パールミレットには造粒は不向きであった。造粒剤への肥料の混入はローズグラス,バーミュダグラスに有効である。
著者
庄子 一成 福山 喜一 北村 征生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-31, 1987 (Released:2017-07-07)

南西諸島北部における暖地型マメ科牧草の実用栽培の可能性を検討するために,低温側に生育適温があるグリーンリーフ及びシルバーリーフデスモデューム,クーパー及びチナルーグライシン,サファリクローバと,高温側に生育適温があるサイラトロ,セントロ,エンディバー及びスコフィールドスタイロの9草種それぞれの単播及びローズグラスとの混播栽培を4年間にわたって実施し,草地として定着した試験3・4年次に得られた乾物収量と気象条件との関係を解析した。また窒素収量については,ローズグラス単播に4段階の窒素を施肥した場合の収量と比較検討した。年間合計乾物収量はグリーンリーフ1141kg,シルバーリーフ638kg,クーパー807kg,チナルー844kg,サファリクローバ462kg,サイラトロ895kg及びセントロ649kg/10aであった。この乾物収量と混播におけるマメ科率の推移から判断して,南西諸島北部は低温暖地型マメ科牧草グリーンリーフ,クーパー,チナルー及び高温暖地型マメ科牧草サイラトロの栽培適地であると考えられた。サイラトロの乾物収量が高くなったのは,生育適温域が広く,低温期における生育が良好であったと同時に耐早性に優れており,高温期の生産量が高かったためであった。また,グリーンリーフ,クーパー及びチナルーの高収は適度の降雨がある低温期の乾物生産量が高いことに起因するものであった。サイラトロは常時高い窒素含有率と高い混播効果(窒素移譲量2.2kg/10a)を示し,混播区の年間合計窒素収量は33kg/10aとなった。グリーンリーフは単播区の乾物収量が混播区のマメ科収量よりも高かったため,年間合計窒素収量も単播区が高くなり,31kg/10aとなった。この結果上記2草種の窒素収量は,早魃時には乾物収量が低下するクーパーの混播区(29kg/10a)や窒素含有率の低いチナルーの単播・混播区(24kg/10a)よりも高くなった。
著者
福田 栄紀
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.74-80, 2017-07-15 (Released:2017-08-08)
参考文献数
54

ネムノキがその樹冠下の土壌と植物の化学特性に及ぼす影響を調べるため,ネムノキ孤立木の樹冠内外の表層土壌とイネ科草種地上部の成分含量を比較した。樹冠内が樹冠外より有意に高い土壌成分や特性値は硝酸態窒素,MgO,リン酸吸収係数であり,全窒素,CaO,CECも樹冠内が高い傾向にあった。同様に樹冠内が有意に高い植物体中成分はCP,Mg,NEm,OCC+Oa,粗脂肪であった。逆に,樹冠外が有意に高い成分は繊維性成分であり,乾物率,リンも樹冠外が高い傾向にあった。土壌中含量が樹冠内において高い窒素やMg等の成分は植物体中含量も樹冠内の方が高かった。これらの結果は,ネムノキは共生根粒菌による窒素固定,深根による土壌深層からのミネラル等の吸収とリターによる地表への還元等を通して土壌の肥沃化に寄与すること,およびそのことが樹冠下に生育する植物の飼料成分特性の向上に寄与することを示唆する。
著者
早川 康夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.57-62, 2002
参考文献数
8
被引用文献数
1

東北地方は公共草地の数が日本一である。第4紀脊梁火山脈に先立ち大規模火砕流を噴出東流,太平洋側4つの県に4つの舌状台地を形成した。青森・岩手県に分布のものを八甲田・玉川溶結凝灰岩と呼び,柱状節理内蔵溶岩上に火山灰を薄く乗せた透水良好低地力台地に突出して多数の公共草地が造成された。しかし宮城・福島県の北川凝灰岩・白河層は石英安山岩由来の灰白色石英質粗砂で懸垂水に富む。床締めなどの土地改良で田畑化が可能となり,俄に私有地化が進み公共用地が減った。北上・阿武隈山地のマサ土も石英質粗砂でこれに類す。
著者
名久井 忠 岩崎 薫 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.318-323, 1981-10-30 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

トウモロコシホールクロップサイレージの品種および刈取時期と乳牛の末消化子実排泄との関係を検討した。供試品種は「ヘイゲンワセ」,「ホクユウ」,「P3715」の3品種で,刈取時期は乳熟期から過熟期までの2〜4ステージについて行なった。フォレージハーベスタ収穫における子実の完全粒割合は登熟とともに増加した。末消化子実の排泄は,サイレージの子実割合が30%以下ではほとんど認められないが,40%以上になると7〜13%排泄された。でんぷん排泄率は子実割合が30%以下でも,約10%排泄され,40%以上では15〜20%に達した。乳牛による刈取時期別TDN含量は,「ヘイゲンワセ」が乳熟期70.9%,黄熟初期73.6%,黄熟後期70.8%,過熟期66.3%であり,また,「ホクユウ」ではそれぞれ,67.4%(黄熟期),63.6%(過熟期)であった。「P3715」は63.0%(乳熟期),56.0%(糊熟後期)あり,早生品種が中・晩生品種よりも高い値を示した。
著者
渡辺 也恭 西脇 亜也 菅原 和夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.135-139, 1999-07-31
被引用文献数
8

永年人工放牧草地に侵入・優占するミノボロスゲの種子発芽戦略の解明を目的として,その休眠解除条件の検討および草地に生育する他草種との休眠の深さの違いを比較した。ミノボロスゲ種子は,休眠を示し,6カ月間の長期冷湿保存以外の処理では休眠が解除されなかった。長期冷湿処理により後熟したミノボロスゲ種子の休眠解除には,光,変温およびその交互作用が影響し,特に光効果の影響が強かった。光,変温およびその交互作用の3つの影響は,ミヤマカンスゲ,ハルガヤおよびエゾノギシギシの3種でも見られた。しかし,これらの草種は,後熟のために冷湿処理を必要としないこと,変温効果の影響が強いこと,およびミヤマカンスゲを除いて,変温または光単独条件下で休眠解除される種子の多いことがミノボロスゲ種子と異なっていた。ミノポロスゲ種子の休眠解除機構は,他草種の種子と比較して厳しく,それは,草地で裸地検出機構として働き,家畜や作業機械により頻繁に裸地が出現する人工放牧草地での,ミノボロスゲの侵入・優占化の要因の1つになると推測される。