著者
沈 益新 石井 康之 伊藤 浩司 沼口 寛次
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.276-284, 1990-10-31
被引用文献数
2

青刈用ソルガムの生産性向上の一つの手段として,ジベレリン(GA),α-ナフチル酢酸(NAA)およびサイコセル(CCC)処理により乾物生産態勢を変更し,その処理が多回刈における乾物生産性と耐倒伏性に及ぼす影響を検討した。7月下旬と9月中旬に台風11号と22号が通過して,材料の多くが倒伏したので,その都度刈り取って1番草及び2番草とした。3番草は11月下旬に刈り取った。植物生長調節剤処理は,1,2番草に行い,3番草には行わなかった。従って,1,2番草では処理の直接的影響,3番草では2番草に対する処理の後作用を各々検討した。乾物増加は1,2番草ではGA処理により促進され,CCC処理により抑制される傾向であったのに対して,3番草のGA区では抑制され,CCC区では促進された。NAA処理では各番草とも乾物収量が増加した。葉面積指数(LAI)はいずれの処理区も対照区よりわずかに増加したうえ,吸光係数(K)が低下した。Kの低下は,GA区では草高の増大により,NAA区では茎の傾斜によると考えられた。このため,1,2番草ではGA及びNAA処理により純同化率(NAR)が増大し,乾物生長が促進された。3番草のCCC区では低温下でも茎数が増加して葉面積の拡大が促進されたことにより乾物生長が促進された。3番草のNAA区ではLAIの増加が促進されるとともに,頂芽優勢により少数の大きな分げつで個体群が構成され,低温下でのNARが比較的高く維持されたことによって,乾物生長が促進された。NAA処理によって,台風の際の耐倒伏性が強まった。これはNAA処理によって平均節間長が短く,冠根数が多くなることによると推察された。以上の結果,年間乾物収量はGA区及びNAA区が対照区より多くなり,特にNAA区では,22号台風による2番草の倒伏率が低かったので,このとき刈り取らなかった場合の年間収量は,対照区の1.9倍であった。CCC処理は年間収量を高める効果はほとんどなかった。
著者
山田 豊一 川口 俊春
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.8-15, 1972-04-25
被引用文献数
5

1.1966年10月3日,ホルスタイン種未経産牛にラジノクローバ,サブクローバ,イタリアンライグラス,オーチャードグラス,バヒアグラスの種子を給与し,約4日間パドック内で放牧し,経時的に排糞中の種子量(回収量),回収種子の活力,糞面からの出芽数などを調べた。またパドック内の排糞の一部をシバ草地に散置し,これからの出芽を長期にわたり調査した。2.種子の糞中回収は給与後12時間の時点ですでにみられ,36〜60時間で最高に達し,その後減少するものの84〜93時間においてもなお僅かながら続いた。3.種子の回収率を草種についてみると,バヒアグラスが最高で,イタリアンライグラスとサブクローバがこれに次ぎ,オーチャードグラスとラジノクローバが最も低かった。4.回収種子について発芽試験を行なった結果,発芽率そのものではイタリアンライグラスとラジノクローバが高く,以下バヒアグラス,オーチャードグラス,サブクローバの順となった。また発芽率と静止種子率の合計ではバヒアグラスとラジノクローバが高く,イタリアンライグラスが中聞で,オーチードグラスとサブクローバが低かった。5.シバ草地での糞面出芽調査成績から,各草種とも1頭あたり10,000粒が採食されたとして,1kg糞よりの出芽数を求めたが,給与後約1ヵ月においてイタリアンライグラス9.6,ラジノクローバ1.7,サブクローバ,オーチャードグラスとも0.4,バヒアグラス0.2となり,さらに越冬後の1967年5月にはそれぞれ,3.5,3.4,0.3,0.2,0となった。発芽適温を失したバヒアグラスを別として,排糞播種効果の高いのはイタリアンライグラスとラジノクローバであった。
著者
伊藤 浩司 池上 由美 石井 康之
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.55-63, 1991-04-30
被引用文献数
3

南九州低地における暖地型永年草地の中秋から初冬までの利用と翌春の再生との関係を明らかにする目的で本実験を行った。1987年度にはグリスグラス(以下,Dgと略称),バヒアグラス(Bg)及びローズグラス(Rg)を用いて,処理区として11月27日から2月12日にわたり,未展開葉の摘出部と展開生葉の1/2とを剪除した区及び生葉の全てを剪除した区とを設け,個体光合成能力(Pa)の変化を調べた(実験1)。1988年度にはDgを用いて,10月8日,11月1日及び12月20日からそれぞれ1月23日まで約10日間隔で生葉をすべて剪除した各処理区を設けて,Pa,地上部乾物量(Dw)及び茎数(Tn)などの変化を調べた(実験2)。Dg及びBgでは,剪葉程度が弱いほど(実験1),また,この剪葉期間が短いほど(実験2),12月下旬までのPaが大きく,それに伴って翌春の再生時のPaが大きいという関係があった。越冬性の低いRgではこのような関係はなかった。他方Dgでは,12月下旬までのPaが大きいほど12月下旬の稈の乾物重が大きいため再生時におけるDw,Tn及びPaの増大速度が大きかった。しかし12月20日から剪葉を始めた区の再生状況は無処理区と大差なかった(実験2)。従ってDgやBgのように越冬性の高い草種では12月下旬までの光合成は翌春の再生に重要であり,これらの草地を利用する場合には,中秋から初冬の利用を避けて最終刈り取りを12月下旬とすることが生産性を高める一つの手段と考えられる。
著者
吉田 宣夫 武政 安一 高橋 哲二 増山 忠良
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.359-363, 1993-12-20
被引用文献数
5

茨城県在来のしめ縄用品種「実とらず」と飼料用稲品種「はまさり」を栽培し,登熟途上の生育特性と主に茎葉部の酵素分析結果から,CW画分動態と両品種の利用型について比較検討した。出穂期は「はまさり」が9月13日で,埼玉県で極晩性に属し,「実とらず」は11日早かった。耐倒伏性は,「はまさり」が優れていたが,「実とらず」は糊熟から黄熟期にかけてほぼ全面的に倒伏した。草丈は,「実とらず」が乳熟〜黄熟期の平均値で146.9cmとなり「はまさり」に比較して28.5cmの差(P<0.01)があり,しかも,細茎で乾草としての調製適性が示唆された。乾物収量では,「はまさり」が多収性(P<0.05)を示したものの,両品種とも100〜130kg/aの生産量が認められた。茎葉部割合は,「実とらず」>「はまさり」の関係が登熟過程で常に認められた。茎葉部の栄養価は,両品種いずれも登熟に伴い細胞内物質(OCC)は減少,相対的にOCW(細胞壁物質)は増加したが,OCCの減少に有意(P<0.05)な品種間差が認められた。「実とらず」は急激な減少を示したのに対して,「はまさり」は比較的緩慢な減少を示し,茎葉中に光合成産物の蓄積が大きいことがうかがわれた。OCW中の高消化性繊維(Oa)画分は,いずれの熟期でもほぼ安定し,品種間差は小さくなったが,登熟に伴う低消化性繊維(Ob)画分の増加傾向は「実とらず」で顕著であった。以上の結果から,飼料用水稲の育種においては茎葉比率の高い品種の場合,登熟に伴う茎葉部の飼料価値の減少は水稲ホールクロップに及ぼす影響も大きくなるために,その動態を考慮すべきであることが示唆された。
著者
鈴木 慎二郎 三上 昇
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.372-380, 1982-02-28

2番草の刈取時期(晩秋草の備蓄開始時期)とその前後における窒素施肥との組合せが,晩秋草の草量と草質に与える影響について検討した。ポット植えしたオーチャードグラスの2番草を,8月10日,8月20日,8月30日および9月9日に刈取り,それぞれの刈取10日前あるいは10日後に,12kgN/10a相当の硫安を施した。各ポットはガラス室(高温区)あるいは網室(常温区)で生育させ,10月28日に刈取調査した。1.刈取10日前の施肥では,晩秋草の草量は平均的には少なかったが,刈取時期が遅くなることによる低下がみられなかった。一方,刈取後の施肥では,刈取時期が早いものの草量は多いが,刈取時期が遅くなることによる低下が著しかった。そのため,8月30日や9月9日からの備蓄では,刈取前施肥の方が草量が多くなるのがみられた。なお,草量は高温区において多かった。2.DCPとTDNの含量,およびin vitroの乾物と細胞壁構成物質の消化率は,刈取時期の遅いものほど高かった。しかし,栄養比は刈取時期の遅いものほど狭くなった。栄養価や消化率は高温区においてわずかに低かった。2番草の刈取前に施肥された牧草では,DCP含量が低いにもかかわらず,TDN含量や消化率は高く維持されるという特異な現象がみられた。すなわち,刈取前の窒素追肥によって,栄養比の巾の広い,低蛋白・高エネルギー型の晩秋草が得られることが分かった。晩秋草の草量と草質は,備蓄開始時期そのものよりも,それとの組合せによる施肥時期の影響を強く受けており,気温が低下してからの備蓄には,2番草の利用前追肥が有効な手段となる可能性のあることが示唆された。
著者
嶋田 徹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.247-252, 1982-10-28
被引用文献数
4

オーチャードグラスの耐冬性選抜に用いる耐寒性検定法として,MARSHALLがエンバクに用いた冠部凍結法を採りあげ,その有効性ならびに最適な手順を検討した。その結果,本法がオーチャードグラスにも適用できる精度の高い検定法であることを認めた。また検定に際しては次のような手順が最適と考えられた。(1)圃場でハードニングを行う場合,毎年播種期を統一して幼苗の生育程度を整える。本実験では9月1日とした。発芽後間引いて個体を養成し,11月中旬から12月上旬に掘りとり検定する。(2)秋期以外に検定を行う場合,ハードニング装置を用いる。60〜70日苗を3℃,8時間日長で3週間ハードニングするとほぼ圃場並の耐寒性の増大が期待できる。(3)根を冠部の下から約0.5cm,地上部を3〜4cm残して切除し,水洗後アルミホイルに包み,脱気密封する。(4)これを冷凍器(精度±0.5℃)に入れ凍結処理する。凍結時間は16時間とし,材料のハードニング程度を推定して,平均で50%程度の個体生存率が得られるよう凍結温度を決定する。材料の耐寒性程度に大きな変異があるときは,2℃ずつ異なる2〜3水準の凍結温度で処理し,その平均値で評価を行う。処理に際しては,まず2〜4時間材料を0℃に置き,熱平衡に達してから,1時間に20℃の割合で温度を低下させ,所定の温度に16時間置いたのち2℃で解凍する。(5)凍結前に材料を-30℃の冷凍器に2〜3週間保存することができる。その際材料の耐寒性は増大するので留意する。(6)材料を温室のバーミキュライト床に移植,3週間後の発根程度により評価を行う。
著者
名久井 忠 岩崎 薫 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.412-417, 0000
被引用文献数
3

早生品種「ヘイゲンワセ」「ワセホマレ」を供試して,飼料成分,発酵品質,乳牛の採食性,栄養収量の面から,ホールクロッブサイレージとしての刈取適期を検討した。(1)子実重歩合は登熟とともに増加し,黄熟後期にはヘイゲンワセが48.3%,ワセホマレが46.2%に達した。(2)サイレージの飼料成分のうち,水分はワセホマレが糊熟後期が79.4%,黄熟後期が66.6%,過熟期が62.5%と登熟とともに低下した。ヘイゲンワセも同様の傾向を示した。でんぷんは登熟とともに増加し,黄熟後期にはワセホマレが29.6%,ヘイゲンワセが28.4%であった。粗蛋白質はヘイゲンワセが10.2%から7.2%へ,ワセホマレが9.9%から7.2%へ登熟とともに低下した。(3)pHは登熟とともに上昇し,黄熟後期はワセホマレ,ヘイゲンワセとも3.8であった。サイレージの評点は黄熟後期が最もすぐれていた。(4)乾物あたりTDN含量はヘイゲンワセが乳熟期70.4%,黄熟初期および黄熟後期73.6%,過熟期70.8%であった。また,ワセホマレは糊熟後期70.8%,黄熟中期68.1%,黄熟後期69.1%,過熟期65.4%であった。DCP含量はヘイゲンワセが登熟とともに低下したが,ワセホマレは過熟期に至って低下した。(5)乳牛の乾物摂取量は乳熟期8.39kg,黄熟初期10.87kg,黄熟後期12.3kg,過熟期11.3kgであり,黄熟後期が最も多かった。(6)10アールあたり栄養収量は黄熟後期が最もすぐれていた。(7)以上の知見をもとに総合的に判断した結果,ホールクロップサイレージの収穫適期は黄熟後期であることが確認された。
著者
北原 徳久
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.384-388, 1985-02-25

わが国の主要な寒地型牧草であるオーチャードグラスとトールフェスクの自然下種に対する適応性の差異を明らかにし,自然下種効果を高めるための利用開始時期を決定する基礎資料を得るため,両草種の落下種子量の経時的変化とその発芽特性を比較,検討した。試験は,中国農試畜産部(島根県大田市)で実施したもので,結果の概要は以下のとおりである。1)m^2当たり種子生産量は,トールフェスク96.69>オーチャードグラス69.0gであったが,m^2当たり生産種子粒数は,逆にオーチャードグラス129×10^3粒>トールフェスク63×10^3粒であった。稔実率については,両草種とも約45%で,差がみられなかった。2)オーチャードグラスの自然下種粒数の経時的パターンは,6月下旬〜7月上旬に大きなピークを示し,以後低下するが,8月上旬に再び小さなピークを示す2山型であった。トールフェスクのパターンも類似していたが,オーチャードグラスに比べて最大のピーク時期が少し早く,8月のピークも小さいものであった。3)両草種の6月下旬〜7月中旬(梅雨明け前)までの落下種子の発芽率は,オーチャードグラス18〜29%,トールフェスク81〜90%であったが,発芽・定着に好適な9月上旬には両草種とも約90%以上の発芽率を示した。4)以上,中国地域の気象条件では,自然下種後の利用開始時期は,自然下種粒数の推移からみて,オーチャードグラスでは7月中旬以降,トールフェスクでは7月上旬以降であると思われる。また,オーチャードグラスは,トールフェスクに比べて種子粒数が多く,梅雨明け前の発芽率が低いため,定着に好適環境となる秋期の発芽・定着が期待できると考えられる。
著者
佐藤 庚 西村 格 伊東 睦泰
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-15, 1969-04-20

オーチャードグラスの品種Frodeの中から選んだ4クローンを用いて2段階の密度に混植した草地を作り,窒素施用量,1番草刈取りの早晩が構成クローンの役割などに及ぼす影響をしらべた。刈取り処理は1番草を穂孕期(5月17日),出穂期(5月24日),開花盛期(6月6日)および結実期(6月20日)の4回に行ない,2番草はそれぞれの1番刈り6週間後に刈った。1.競争の少ない粗植区の生育からみたクローンの特性は次のようである。クローン1:草丈高く茎数は少ない。クローン2:草丈はクローン1より低いが茎数は多い,クローン3:草丈はクローン2よりさらに低いが茎数は多く,葉身の窒素濃度は他のクローンに比べかなり低い,クローン4:草丈は最も低く分けつ性も弱い。2.光,養水分などに対する競争の少ない生育初期に1番草を刈る場合には,草丈はある程度低いが分けつ性の強いクローン2,3の生育量が多く,草地の収量および密度に対する貢献度が高かったが,1番草の刈取り時期がおそくなるにつれ草丈の高いクローンが次第に優勢となり,収量に対する貢献度は最高となった。クローン1は遺伝的な分けつ性が低いと思われたのに茎数密度に対する貢献度も増加した。次いでやや草丈の低いクローン2が収量貢献度高く,クローン3,4の順に低下した。3.1番刈り後の再生においても1番草とほぼ同様なクローン間の序列を示したから,1,2番刈り合計収量における各クローンの寄与の程度は,早刈りの場合にはクローン2,3が,晩刈りの場合にはクローン1がそれぞれ最も高かった。草丈の高い直立性のクローンは乾草ステージの刈取りで,草丈の低い多けつ性のクローンは放牧ステージの刈取りでそれぞれ草地の密度においても収量においても優勢となった(Fig.s.5,7)。4.環境や栽培管理法によって粗植条件で示されたクローンの特性が大きく変動することは注目を要するところで,粗植のときの特性から直ちに草地における得失は論ぜられない。
著者
橋本 勉 竹内 徳猪
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.182-187, 1968-10-20

積雪地帯においては,越冬作物を秋に刈取ると雪害を助長するので,イタリアンライグラスについて,秋の刈取り後の貯蔵養分の消長と雪害ならびに春の生育収量について試験を行なった。鳥取在来を9月2日に播種し,10月25日に全区刈取った。そして1区は根雪までそのままとし,II区は11月10日,III区は11月26日,IV区は12月10日に,それぞれ第2回刈取りを行ない,根雪始めまでの日数を変えるようにした。根雪日数は84日であった。結果の概要は次のとおりである。1.雪害程度は試験区間に明らかな差がみられ,I区は被害がほとんどなかったが,II,IV区は40〜60%,III区は最も甚しく80%以上であった。2.雪害程度がそのまま収量に現われ,生草,風乾収量ともI>II≒IV>III区の順であった。3.株(地際より3cm)におけるTACは刈取り後減少するが,I,II,III区とも5〜10日で最低に達し,以後増加に向かい,I,II区は2〜3週間で刈取り時と同程度まで回復した。しかし,気温が低くなってから刈取ったIII区は,刈取り後約1カ月を経てもTACの回復は十分でなかった。根雪直前における株のTACはI>IV>II>III区の順で,収量の順位と同じであった。4.全窒素は株より葉に多い。株における全窒素は刈取り後全般的に減少の傾向を示すが,根雪直前にはI<IV<II<IIIの順で,TACとは対称的であった。5. TACと全窒素との関係は,特に株において高い負の相関関係を示し,雪害が少ないI区ではTACが多くて全窒素が少なく,雪害の甚だしいIII区ではTACが少なくて全窒素が多かった。II,IV区はその中間であった。6.以上により秋の刈取りは,根雪始めより約1カ月半早く刈取るか,根雪直前に刈取るのがよいが,後者は危険を伴い易いので,実用には難点があろう。7.株においては,乾物率とTACが高い正の相関関係を示すので,耐雪性の指標とすることができると思われる。
著者
佐々木 章晴
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.251-261, 2009-10-15

北海道東部に位置する根釧地方は、おおよそ北緯43°から44°の間に位置し、北が知床火山列に、東が根室海峡に、南が太平洋に、西が白糠丘陵に囲まれている広大な丘陵地帯である。根釧地方南の太平洋は、日本海流と千島海流がぶつかる海域であり、夏季は海霧の発生が多い。さらに、根釧地方は北から西にかけて山地に囲まれており、発生した海霧が南よりの風に乗って流入すると、滞留しやすい。そのため、年間海霧日数108日であり、6月から8月の1/2-2/3は霧日となり、日照時間の少ない冷涼な気候となっている。地質としては第四紀層である阿寒・屈斜路カルデラ由来の火砕流堆積物と火山灰に広く覆われており、河川周辺や沿岸低地には湿原が発達している。地形は一般に平坦または段丘状、波状であり、沿岸部には内湾や海跡湖が見られる。冷涼な気候であることから、日本でも貴重な北方圏の自然と野生生物が残存している土地である。現在、根釧原野には、340種以上の鳥類が確認され、400種以上の草花が確認されている。これらの野生生物は、根釧原野独特の景観を創り出す担い手となっている。一方、根釧地方は明治以来、開拓の歴史を持ち、現在では日本有数の草地酪農地帯となっている。この報告では、特に戦後の酪農開発が根釧地方の植生、河川、水産業、野生生物(鳥類)にどのような影響を与えているか実態を把握する。その実態を踏まえ、問題点を整理し、酪農と自然環境・水産業との共存の道筋を明らかにする。
著者
Ezenwa Ikechukwu 北原 徳久
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.245-250, 2001-08-15
被引用文献数
3

7月6日, 8月25日および10月23日に採取した桑葉11品種の牛第1胃内乾物分解性とその季節変化をナイロンバッグ法により検討した。分解率は2頭のフィステルを装着したホルスタイン牛の第1胃内で試料を4, 8, 12, 24, 36, 48および96時間培養し, 測定された。可溶性画分aの分解率は7月には6.9-34.4%, 8月には27.2-49.6%, 10月には33.6-44.5%, 緩慢分解性画分bのそれはそれぞれ61.5-87.0%, 44.7-67.6%, 53.5-63.2%の範囲にあった。最大可能分解率PD(a+b)と時間当たりbの分解速度cは, それぞれ1.1-97.2%と8-16%であり, 桑葉の採取時期および桑の品種間に有意な差が認められなかった。有効分解率は, 7月79.2, 8月81.9, 10月84.8%であり, 品種間では75.0-89.5%の範囲にあった。以上の結果から, 乾物分解特性には桑葉の品種間に差異がみられたが, 桑の葉は概して高い分解率を示し, 低質基礎牧草の補完飼料として適するものと考えられる。
著者
櫛引 英男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-13, 1980-04-30

単純積算温度によって,北海道の地帯区分を行い,またそれぞれの区分における品種配合を試みた。得られた結果は次の通りである。単純積算温度150℃を1区の幅とし,北海道をAからFの6区に区分した。次に各区に早晩性品種群の配合を試みたところ,道東道北地帯の主要部を占めるC,DおよびE区では早生品種群を中心とした中生品種群との配合,また道央以南を占めるAおよびB区では中生および晩生品種を中心とする配合が適当であると推定された。DおよびE区においては,平年で乾物率30%の原料をうる品種配合のためには,現在の早生品種より早熟な2つの極早生品種群育成の必要性が認められた。これらの極早生品種の絹糸抽出期は十勝農試においては「ワセホマレ」の8月4日に対し,7月28日および7月21日と推定された。
著者
井出 保行 林 治雄 下田 勝久 坂上 清一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.157-162, 1999-07-31
被引用文献数
8

牛糞による種子散布がケンタッキーブルーグラスの繁殖に及ぼす影響を明らかにするため,牛に経口給与されたケンタッキーブルーグラス種子の回収率およびその発芽率を他のイネ料牧草との比較で検討した。さらに,ケンタッキーブルーグラスが優占する放牧草地(草地試験場山地支場)において,糞中種子の種類およびその粒数の季節的な変化を調査した。ケンタッキーブルーグラス,オーチャードグラス,ベレニアルライグラスの種子を体重260-273kgの黒毛和種育成牛に経口給与すると,草種に関係なく,種子は給与後24-48時間に最も多く排出され,72時間までに総排出量の80-90%が排出された。給与種子の回収率は,ケンタッキーブルーグラス>べレニアルライグラス>オーチャードグラスの順に高く,回収された種子の発芽率はケンタッキーブルーグラスが最も高かった。草地試験場山地支場内にあるケンタッキーブルーグラス便占放牧草地では,確認された19草種の内,7草種の種子が翼中から検出され,ケンタッキーブルーグラスの種子が最も多く含まれていた。ケンタッキーブルーグラスの翼中種子は7月上旬から8月中旬にかけて観察され,7月中旬に含有量が最も多かった。
著者
平吉 功 岩田 悦行 松村 正幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.155-162, 1969-11-29
被引用文献数
3

前2報に引続き,和牛放牧が混牧林地内のササに及ぼす影響を調査した。調査地は岐阜県益田郡小坂町滝上牧場の第4牧区で,ここはもと,ミズナラ,ヒノキなどを主とする自然林であったが,その後皆伐され,現在ではカラマツおよびヒノキ苗が植栽されているが,クマイザサの密生はなはだしく,これらの樹苗をおおう程である。この地に1968年5月中旬から10月中旬までの間,和牛76頭が約50haの地積に放牧された。調査は閉放直後に行なわれたものであり,これによって5ヶ月間の夏放牧がこの地の植生に及ぼした直接的影響を知ることができた。調査の結果は次のように要約される。1.放牧によってササは緑葉を失い,その地上部は変形して,ササ型草地としての群落相観は著しく変化したが,未だ新規植物の侵入はみられず,群落組成上の変化の兆は認められなかった。2.放牧地内のヒノキ幼樹(1.5〜2m高)は約15%が食いちぎりによる枝条の折損をみ,カラマツ(1〜1.5m高)では約40%がふみつけによる樹幹基部擦傷の被害を受けた。3.放牧によりササは矮小化の傾向をたどり,その草丈は禁牧区のそれに対して平均約10cm低くなった。特に丈の高いササは稈頂部が折損しやすく,結局放牧区のササでは大体100cm内外の草丈にそろい,草丈の個体間のばらっきは少なくなった。4.放牧区のササは地上40cm以上の高さにある節からの分岐が目立ち,多数の細小枝を生じて,ササの外形は「ほうき状」を呈するようになった。但し地際近い節および地下茎の節からの分岐は未だ認められなかった。5.放牧によってササの成葉はいったん全部採食され,その後新葉の再生と採食が繰返される結果,放牧区では葉数は多くなったが,葉形は極めて小さかった。なお放牧区のササの葉が細長くなる現象は未だ確認されなかった。6.禁牧区のササの現存量(乾重)を測定し,放牧区のそれと比較した。葉量比は前者で約30%に及んだが,放牧区では僅かに1.3%内外で葉量は極めて少なかった。但し後者では稈重が増大しているため,地上部全重は禁牧区で1587.3g/m^2,放牧区で1521.0g/m^2となり,両区かなり近似した値を示した。7.放牧期間内におけるササの再生量が不明のため,現存量測定値から直ちに当ササ型草地での採食量(飼料提供量)を推定することはできなかった。ササの再生量究明は今後の重要課題である。
著者
県 和一 鎌田 悦男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.103-109, 1979-07-31
被引用文献数
6

ミャコザサ群落の永続的な放牧利用と効率的な抑圧除去の適期を明らかにするための研究の一環として,浅間山南麓のミヤコザサ群落を対象に,年間の生育経過を器官別乾物重,稈数,葉面積,生産構造,冬芽などの月別変化から調査し,次の結果を得た。(1)地上部現存量は春から夏に急増し,8月未に最大となったのち翌春まで漸減する傾向を示した。一方,地下部現存量はこれとは対照的に春から夏にかけて急減し,夏から初冬にかけて回復する推移を示した。その結果,T/R比は夏に最大値を示し,冬に最小値を示した。また全現存量は年間を通じてほぼ一定値を維持した。(2)LAIも地上部現存量とほぼ同様の季節変化を示し,当年生稈に着生する葉数と密接な相関々係を示した。(3)地上稈の寿命は地上に稈が発生してから平均18〜20ヶ月であることが示された。(4)生産構造は季節的に異なる変化を示したが,群落吸光係数には大きな差異はなく0.742〜0.778の範囲であった。また群落地表面における相対光度は冬から春までの期間は10〜20%であり,生育シーズン中は1〜5%であった。(5)地下茎各節の冬芽の数は4月未から5月未までの間に大部分が地上に発生するので,夏の期間は極度に少なくなるが,9月から10月に再び急増し,その後はほぼ一定数を維持した。これに対して,新地下茎数は6月から8月に急増する傾向を示した。以上から,ミヤコザサ群落の永続的な放牧利用を図るための適期は晩秋から翌春までの期間であり,群落抑圧のための効率的な適期は夏であると推定される。
著者
丹比 邦保
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.133-145, 1966-11-30

10月下旬以降に播種したエンバクとイタリアンライグラスとの青刈法における合理的な利用法を確立するため,それらの収量推移と収量曲線について考察した。2種とも播種期が遅れると全般的に収量は低下したが,イタリアンライグラスの方がその度合いが大であった。青刈法における有効な刈取期は4月下旬から5月中旬であった。刈取りにあたっては刈取期間を原則として20〜40日とし,収量曲線の推定は最小自乗法によった。なお,yは3.3m^2当りの生草収量,xは各区の刈取開始日からのずれの日数とした。その結果,収量曲線の概要は次のようであった。エンバク10月下旬播種2回刈取り: 1番草は3月10日から3月30日の刈取りで収量曲線はy=0.73x+3.65(0≦x≦4,1x=5日),2番草は5月2日から5月26日の刈取りでy=-0.336x^2+2.234x+11.828(0≦x≦4,1x=6日)である。1回刈取り: 4月19日から5月19日の刈取りで収量曲線はy=-0.8x^2+4.14x+18.99(0≦x≦3,1x=10日)である。11月上旬播種2回刈取り: 1番草は3月31日から4月15日の刈取りで収量曲線はy=3.32x+4.92(0≦x≦3,1x=5日),2番草は5月3日から6月11日の刈取りでy=0.6x^2-3.72x+7.63(0≦x≦3,1x=13日)である。1回刈取り: 4月30日から5月20日の刈取りで収量曲線はy=1.25x+16.62(0≦x≦4,1x=5日)である。11月下旬播種刈取りは4月20日から5月20日の間であり,収量曲線はy=3.7x+10.75(0≦x≦3,1x=10日)である。2月播種刈取りは5月20日から6月9日の問であり,収量曲線はy=1.7x+7.9(0≦x≦2,1x=10日)である。イタリアンライグラス10月下旬播種3回刈取り: 1番草は3月25日から4月12日の刈取りで収量曲線はy=2.34x+6.14(0≦x≦3,1x=6日)である。2番草は5月18日から5月27日の刈取りでy=-1.25x^2+2.55x+9.7(0≦x≦3,1x=3日)である。3番草は6月15日から6月21日の刈取りでy=-0.45x+1.5(0≦x≦3,1x=2日)である。2回刈取り: 1番草は4月12日から5月18日の刈取りで収量曲線はy=-1.05x^2+5.93x+12.73(0≦x≦3,1x=12日)である。2番草は5月27日から6月14日の刈取りでy=-1.1x+6.1(0≦x≦3,1x=6日)である。11月上旬播種2回刈取り: 1番草は4月2日から4月22日の刈取りで収量曲線はy=-0.421x^2+3.534x+5.4(0≦x≦4,1x=5日)である。2番草は5月14日から6月7日の刈取りでy=-0.85x+8.52(0≦x≦4,1x=6日)である。1回刈取り: 刈取りは5月2日から5月22日の間であり,収量曲線はy=0.38x+17.32(0≦x≦4,1x=5日)である。11月下旬播種2回刈取り: 1番草は4月25日から5月15日の刈取りで収量曲線はy=2.05x+8.38(0≦x≦2,1x=10日)である。2番草は6月4日から6月24日の刈取りでy=-1.05x+4.75(0≦x≦2,1x=10日)である。1回刈取り: 刈取りは5月10日から5月30日の間であり,収量曲線はy=-0.293x^2+1.602x+11.154(0≦x≦4,1x=5・)である。2月播種2回刈取り: 1番草は5月20日から6月9日の刈取りで収量曲線はy=0.55x+6.05(0≦x≦2,1x=10日)である。2番草は6月15日から7月5日の刈取りでy=-0.65x+2.32(0≦x≦2,1x=10日)である。
著者
小林 聖 藤浪 寿夫 広田 秀憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.206-211, 1989
被引用文献数
1

牧草地の強害雑草であるエゾノギシギシの防除法の基礎資料を得る目的で,本雑草の生活史を1年間にわたり調査,検討した。1. 地上部の生育において,草丈および葉数は,生殖生長への移行とともに急激に増加し,開花期から未成熟期にかけて最高値を示した。また,刈取り後は越冬前まで漸増する傾向を示した。茎数および萌芽数は,刈取り前・後とも一定して増加した。地上部乾物重(葉重,茎重,蕾・種子重)も生殖生長への移行とともに急増し,未成熟期に最高重量を示した。なお,成熟期の種子粒数は約15,000粒であった。1個体あたりの葉面積は,最も葉数の多くなる開花期まで急増した。しかし,越冬前には葉数が少ないにもかかわらず,開花期とほぼ同じくらいの値を示した。葉位別の葉面積は第3葉から第6葉まで急激に増加し,第6葉から第13葉までの根生葉では,一枚あたり,100cm^2以上の高い値を示した。また,第13葉以降激減した。2. 地下部の生育において,根径は,再生初期に若干減少したものの,ほぼ一定して増加し,越冬前には直径24mmになった。地下部乾物重(直根重,側根重)は,直根重では根径とほぼ同様な傾向を示したものの,側根重では再生初期まで増加し,それ以降一旦減少したものの再び増加した。
著者
友田 裕代 大桃 定洋 田中 治 北本 宏子 浜谷 徹 河野 敏明 丹野 裕
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.155-158, 1996-07-30
参考文献数
19
被引用文献数
13

アクレモニウム属菌(Acremonium cellulolyticus Y-94)に由来するセルラーゼ(アクレモニウムセルラーゼ,以下ACS 2と略)またはトリコデルマ属菌(Trichoderma viride)に由来するセルラーゼ(トリコデルマセルラーゼ,以下CEPと略)を添加してアルファルファサイレージを調製し,両者の発酵品質改善効果を比較して以下の結果を得た。1. ACS 2を添加して調製したサイレージは,無添加区,1%グルコース添加区及びCEP添加区と比較して明らかに乳酸含量が多く,L/T値も高かった。また,これらの品質改善効果は乳酸菌製剤との併用によってさらに確実なものとされた。2. ACS 2の添加量は0.01%で十分な発酵品質改善効果を示し,それ以上添加しても発酵品質が大きく変化することはなかった。3. ACS 2を乳酸菌製剤と併用添加したアルファルファの番草別発酵品質は,2番草でやや乳酸含量及びL/T値が低かったものの概ね良好で,収穫時期を考慮せずに良質発酵品の調製を可能とした。以上の結果,ACS 2の0.01%添加はアルファルファサイレージの発酵品質を改善し,乳酸菌製剤との併用によって,その効果をより確実にできることが明らかとなった。
著者
伊藤浩司 高木 喜代文 三角 守 沼口 寛次
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.257-263, 1989-03
被引用文献数
2

ネピアグラス(Pennisetum purpureum Schumach)の品種メルケロンを供試し,1987年5月9日に第7〜10葉期の分げつを植付け,10月22日までの期間にわたり,Nの総施用量を50kg/10aとする多肥条件下で栽培した。栽植密度4.0株/m^2(標準区)と8.2株/m^2(密植区)の2区を設け,いずれも無刈りとして,生長パラメーター及びその他の乾物生産関連要因の変化を比較した。単位土地面積当りの茎数,葉面積,植物体各部の乾物重はいずれも密植区の方が高い値で経過した。両区とも,葉面積指数(LAI)は9月下旬に,標準区で12.5,密植区で15.3の最大値を示したが,植物体全乾物重は最終調査時まで増加を続け,標準区で42.8ton/ha,密植区で55.0ton/haに達した。LAIと吸光係数(K)との関係は両区ほぼ一致し,LAIの増大に伴いKは低下した。9月以後の気温及び日射量の低下により,純同化率(NAR)及び個体群生長速度(CGR)は両区とも減少したが,それ以前におけるLAIとNAR及びCGRとの関係は両区に大差なく,LAIの増大に伴うNARの減少が小さいため,CGRはLAIにほぼ比例して増大した。CGRは両区とも8月中旬の頃に最大となり,その時のLAI及びCGRは,標準区で7.5,53,5g/m^2/日,密植区で10.6,62.3g/m^2/日であった。しかし,CGRの最大値は気温及び日射量の低下によって生じており,上記のLAIは最適LAIを示すものではなかった。以上のように,LAIとCGRとの関係は両区に大差なく,乾物収量の区間差は主としてLAIの拡大速度の差による。従って,南九州のようにC_4-型牧草の生産期間が短い地域ではとくに,密植などによるLAIの拡大促進は生産量の増大に有効である。