著者
竹内 智子 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.199-204, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
36
被引用文献数
4

急速に市街化が進んだ1950~60年代、東京周辺区部において、緑地地域、近郊地帯、都市計画公園の3つの施策の相関関係、影響について考察し以下の知見を得た。1)首都圏整備法による近郊地帯は、区域設定に至らなかったが、首都圏整備計画により周辺区部の大公園に国費を入れ重点的整備が行われた。2)都市計画公園が再検討され、事業化を要しない河川緑地・社寺境内地等を都市計画緑地とし、地域制制度として活用した。3)緑地地域は計画的市街地整備に方向転換し、一団地の住宅経営事業、区画整理事業等を行い、すべき区域が継続されている区域を含め、旧緑地地域の51.7%が計画的市街地整備の誘導に寄与している。
著者
李 薈
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1273-1279, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
28

本研究では満鉄の鉄道付属地獲得した20世紀初頭から「奉天工業土地株式会社」の創設した1935年まで鉄西工業区成立の経緯を明らかにした。満州事変前、鉄西工業区は満鉄付属地拡張計画の一部であり、土地取得困難のため、満蒙毛織会社工場のみが設立され、鉄西工業区の起点と言える。満州事変後、満鉄による鉄西工業区の土地買収は失敗した。関東軍と満鉄は三つの方案を順次に作成し、鉄西工業区に関する土地買収方法、経営管理方式を決定した。満鉄は満鉄既買収地以外の土地買収を奉天市政公署に依頼した。法律上の便宜、満鉄主導権と奉天市協力の実現を図るため、満鉄と奉天市政公署共同出資の「奉天工業土地株式会社」が成立した。奉天工業土地株式会社の成立は、鉄西工業区設立時の土地買収問題を解決でき、将来工業区運営にあたる満鉄主導の行政、さらに治外法権撤廃後の満州国奉天市政公署による一元的行政を実現するために条件を作った。
著者
長谷川 大輔 嚴 先鏞 西堀 泰英
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1281-1287, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

CCOVID-19の世界的流行による移動需要の減少は,公共交通機関の財政悪化をもたらした.それによって,運行頻度や路線の縮小などのサービスレベルの低下が生じている.本研究では,住民の生活サービスを支える商業地区における,コロナ禍前後における公共交通のアクセシビリティの変化を明らかにし,流動人口の変化との関係を分析した.その結果,1.アクセシビリティの変化を到達圏面積と移動時間の変化によって定量的に把握し,大都市よりも地方都市の低下が顕著であること.2.時刻表の編成によって,運行頻度が減少してもアクセス性が低下しない地域があること.3.アクセシビリティの低下が顕著なのは,大都市では近隣商業集積地のみであるのに対し,地方都市では中心市街地と近隣商業地域の両方であることを示した.
著者
小畑 純一 室町 泰徳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.493-498, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17

本研究では、地下鉄道における震災時の避難計画に資することを目的とし、通勤ラッシュ時における地下鉄道の運行状況、及び地下鉄道利用者の震災時における意識や行動意向を検討した。地下鉄道利用者の震災時における意識、及び行動意向を把握する目的から行ったアンケート調査結果からは、地下鉄道利用者の多くは、震災時の地下鉄道の安全性に対し否定的な評価を持っており、地下鉄道は大規模地震に対して比較的安全な空間である点を十分に認識していない点、利用者の多くは震災時に「駅員の指示に従う」といった落ち着いた行動を取るという意向を持っているものの、いざ自分の周囲が地上へ避難し始めると、利用者はその行動に同調することになり、およそ70%以上の人が地上へ避難することになる点が示された。しかし、地下鉄道に対する安全評価の高い人は、地上へ避難することへの同調率が低下することがわかった。また、平日朝の通勤ラッシュ時のように混雑率が非常に高い列車に乗車している場合、震災後、待機可能な時間は20分程度である。この時間を過ぎると、一部の利用者が列車外へ脱出し始め、最終的に半数以上の乗客が車外へ出てしまう可能性が示された。
著者
三輪 律江 仙田 満 矢田 努
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.487-492, 1992-10-25 (Released:2019-12-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

THIS STUDY ATTEMPTS TO DEVELOP POLICY AND PLANNING TOOLS FOR IMPROVING CHILDREN'S PLAY ENVIRONMENTS AND ANIMATING PLAY THROUGH CASE STUDIES IN SIX CITIES, AS PART OF A SERIES OF INTERNATIONAL CASE STUDIES. THREE SCHOOL DISTRICTS WERE CHOSEN FOR INTERVIEWS EMPLOYING A QUESTIONNAIRE AND A MAP. PARALLEL OBSERVATIONS HAVE PROVIDED DATA AS TO WHERE AND HOW CHILDREN ACTUALLY PLAY.
著者
平原 幸輝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-6, 2021-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
14

現代の日本社会においては空き家問題が深刻化しており、多くの自治体がその状況を把握しようと試みている。 しかし、空き家問題の状況を把握する際に用いられる「住宅・土地統計調査」には、全市区町村のデータが含まれているわけではない。 本研究では、全国の市区町村の空き家率を網羅することで、空き家問題の状況を把握することを試みた。 その結果、地域の人口構成や世帯構成は空き家率の高さに関連しており、老年人口比率や単身世帯比率は空き家率に影響していることがわかった。 また、空き家率を社会地図化した結果、山間部において空き家問題が深刻化していることがわかった。
著者
鈴木 雄 日野 智
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.673-679, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
7

本研究では、秋田市のタクシー利用に対する価格感度やタクシー利用の満足度について分析を行った。分析の結果、タクシー利用者は現在のタクシー運賃について満足していないことが明らかとなった。また、タクシー運賃はタクシー利用の総合満足度に与える影響も大きいことが明らかとなった。つまり、タクシーの運賃は改善することが求められる。価格感度に関する分析では、タクシーの初乗り運賃について「安い」と「高い」のバランスが取れている「基準価格」が647円となった。これは現行の710円よりも低い値である。つまり、タクシー利用者は現行の初乗り運賃である710円に割高感を持っていることが示された。しかし、免許返納割引や障害者割引により運賃が1割引になった場合には、割高感は解消されることが明らかとなった。また、タクシー利用の満足度が高い人ほど運賃に対して割高感を持たないことも明らかとなった。今後は、タクシー運賃の値下げを検討するとともに、接客態度や社内の清潔性・快適性の確保などによる満足度の向上も重要であることが示された。
著者
生方 翔也 樋口 秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.808-815, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
9

新潟県湯沢町では、バブル経済をピークに58棟ものリゾートマンションが建設されたが、バブル経済の崩壊後は管理の優先度の低さからの管理費や修繕積立金の滞納が問題となった。しかし、近年ではリゾートマンションに定住するというケースが増えてきている。本研究では、定住化に伴う課題を抽出し、リゾートマンションの利活用を進めるうえで必要となる施策を考察する。 結果として、①定住者は町外からの高齢者の単独もしくは夫婦世帯が多いこと②リゾートマンション居住に対する満足度が高いこと③オーナーも定住者の増加を肯定的に受け止めていることが明らかになった。一方で、定住化に伴う課題として、高齢者問題、駐車場不足、定住に適さない物件が存在することが明らかになった。今後、行政によるマンション内の状況把握、リゾートマンションの類型化が必要である。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.991-998, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
79

本論文では戦後復興期の「都市計画の民主化」に関する理解を深めるために、敗戦を19歳で迎え、28歳で都市計画から離れていった建築学徒・米永代一郎の都市計画を巡る思考と活動の遍歴を跡付けた。鹿屋で軍国教育を受け、軍隊経験を経た後、鹿児島高専、東京大学第二工学部、千葉県庁で都市計画を探求し、最終的には鹿屋で新聞社を創設する米永の歩みは、戦後復興期の「都市計画の民主化」が、戦後の急進的な社会改革思想だけでなく、戦前から継承した愛国的心情を基盤として始まったこと、行政機構や制度改革の背景に、市民の主体性確立や科学的都市計画を探究した実践運動が存在したこと、しかし、目標設定は当時の都市計画の実務や市民との関係の現実とはかけ離れていたことを教示している。ここに戦後復興期の「都市計画の民主化」の限界、減退の理由が見定められる。
著者
加納 亮介 真野 洋介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.667-672, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

本研究では、東京23区で開催されている手づくり市の中で「あかぎマルシェ」「品川てづくり市」を対象に、出店している作り手と周辺地域の活動に着目し、地域において手づくり市を開催することの価値を明らかにする。結論として、個人主催の手づくり市に出店している作り手が周辺地域に広がる活動は、主に文化芸術施設での活動が多く、これらは主催者と文化芸術施設オーナー間の情報共有などのコミュニケーションや、オーナー側の自発的な行為など、その背景は多様であることが二つの対象市からわかった。これらの活動は、既存のまちづくり関連団体や行政では出来ないようなミクロレベルのものであった。以上から個人主催の手づくり市は周辺地域の既存のまちづくり活動を補完し新たなまちを形成する上で価値があると考えられる。
著者
黒川 洸 谷口 守 橋本 大和 石田 東生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.121-126, 1995-10-25 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2

SPRAWL AREA HAS FORMED BY RAPID URBANIZATION IN METROPOLITAN SUBURBAN AREA. INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT, SUCH AS PROVIDING ROAD, PARK AND SEWERAGE BECOME VERY DIFFICULT AND INEFFICIENT, IF SPRAWL AREA HAS ONCE FORMED. THIS RESEARCH AIMS TO CALCULATE THE EFFECT OF COST REDUCTION BY EXECUTING PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT BEFORE OUTBREAKING URBAN SPRAWL. INCREASE OF PROPERTY TAX BY PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT IS ALSO CALCULATED. IT IS CLARIFY THE COMPENSATION COST ACCOUNT FOR LARGEST PART OF ALL COST REDUCTION.
著者
石丸 紀興
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.187-192, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本稿は計画思想という領域に注目して考察したものである。今回は被爆後広島において形成された平和記念都市の計画思想である。被爆後の戦災復興計画の中で多くの構想が提案されるが、その中から平和記念という考え方、特に平和記念施設の構想、あるいは平和記念都市全建設の構想が提案されたが、財政難や資材難の中で実現性は担保されなかった。かくして広島平和記念都市建設法の制定に結びつき、大きな役割を果たす強固な制度的な基盤が築かれることに結果した。同時に、この計画思想が深まるというよりは形骸化していった。こういった計画思想の形成過程を明らかにした。
著者
石黒 雅之 後藤 春彦 佐藤 宏亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.1027-1032, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
6

この研究は、外国人居住地域における大家の役割を明らかにすることを目的とする。外国人居住地域における大家の役割は1)外国人居住者への生活マナーの指導2)アパート内、近隣の居住環境維持3)外国人居住問題に対するノウハウの蓄積4)外国人居住者の問題解決支援、地域情報の提供支援、コミュニケーションによる支援が、本調査を通して結論づけられた。
著者
古山 周太郎 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.31-36, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

This study makes the actual management and conditions of local communication in the Group homes of mental disturbed persons clear. I surveyed these 57 Group homes in Tokyo by hearings and analyzed the surround area of these Group homes with maps. In conclusion, first, we can see they have various operating organizations and principals such as the law for Group homes hopes. And Group homes are the house where mental disturbed persons can live in the local community. Secondly, more than half of all Group homes did the local communication in their own local areas. And the surround area of group homes or the principals of their operating organizations influences the local communications.
著者
木村 優輝 嘉名 光市 蕭 閎偉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.975-982, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
14
被引用文献数
4

観光地化が進む都市では、来訪者の増加によって、近隣の人々による利用が低下している地域がある。本研究では、大阪市道頓堀・戎橋筋周辺の街路において追跡調査を行い、街路上の歩行者の行動を把握した。それにより得られた結果を用いてクラスター分析を行うことで、対象地の街路を歩行者の行動の観点から9タイプ、歩行者の属性の観点から6タイプに類型化することができた。これらの街路類型を街路の空間特性と比較することによって、歩行者行動に影響を与える要素を把握することができた。結論として、観光地化が進む都市において、近隣の人々と旅行者が快適に共存し、調和のとれた歩行環境を実現するためには、地区内における歩行者を、地区全体で上手く分担することが求められると考えられる。
著者
小池 博 太田 壮哉 長谷川 直樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1138-1144, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

既往研究において、中心市街地活性化を目的とし、商店街の利用度の低い住民等に対して商店街と関わる機会を提供するイベントのことを「非日常的行事」と定義し、福岡県飯塚市にキャンパスを有する3大学の学生へ飯塚市中心市街地商店街に対する意識(愛着,イメージ,満足度等)に関するアンケート調査を実施している。その結果を分析した結果、商店街への「関わり(大切だと思う/なにかしたいと思う)」を商店街側から促すような施策(「非日常的行事」)は商店街の満足度を下げることに繋がる可能性があることが判明した。本論文では、既往研究1)において課題として上げられていたその他の要因、特に、愛着の醸成に対して影響を持つと考えられる商店街からの居住地の距離が商店街に対する満足度に与える影響について分析を行った。その結果、(1)商店街への「選好」因子の満足度への正の影響度は、遠くに住む学生ほど大きくなる傾向、(2)商店街への「自分の居場所」因子の満足度への正の影響度は、近くに住む学生ほど大きくなる傾向、(3)商店街への「関わり」因子の満足度への負の影響度は、近くに住む学生ほど大きくなる傾向の3つの傾向が看取できた。
著者
持齋 康弘 堀 繁 仲間 浩一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.7-12, 1995-10-25 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

AFTER THE WORLD WAR II, NATIONAL PARKWAY IN THE U.S.A. HAD BEEN A MODEL OF ROADS LOCATED IN SCENIC AREAS IN JAPAN. HOWEVER, IT COULD NOT WORK OUT WELL. THIS STUDY AIMS TO CLARIFY TRANSITION OF CONCEPT ON PLANNING AND DESIGNING OF ROADS IN SCENIC AREAS IN JAPAN. IN LATE 1950'S, SOME ROADS WERE CONSTRUCTED WITH CONCEPT OF NATIONAL PARKWAY IN JAPAN. HOWEVER, THEY WERE LACK OF CONCEPT OF INTRODUCING REGIONAL HISTORY AND CULTURE WITH "STOP", LANDSCAPING ALONG ROADS, OR LAND-USE CONTROL. INSTEAD WE ATTEMPTED TO DEVELOP ATTRACTION OF ROADS IN SCENIC AREAS MAINLY IN ENJOYING PROMINENT NATURAL ENVIRONMENT AND GRAND SPECTACLE. THAT ESSENTIALLY CAUSED DESTRUCTION OF NATURAL ENVIRONMENT, AND SOCIAL DENIAL OF FURTHER CONSTRUCTION.
著者
飯田 晶子 野口 翠 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.1, pp.45-50, 2010-04-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究は、パラオ共和国バベルダオブ島を対象として、「構造」、「機能」、「変化」の三つの視点から、流域内を基盤とした集落の持続的土地利用について分析と考察を行った。その結果、第一に、「変化」の視点では、1920年代と2006年の集落分布の比較から、現存集落は37、消失集落は28、新規集落は8つあり、少なくとも約一世紀に渡り存続する集落を抽出することができた。第二に、「構造」の視点では、集落の立地環境は、谷型で川とマングローブ林の双方に近接し、海域と陸域双方への近接性が高いものが最も多く、かつ、このタイプでは、小流域の空間単位が、集落の領域の形成や分布に影響を及ぼしていることがわかった。第三に、「機能」の視点からは、集落周辺での細かな環境の変化を反映したモザイク状の土地利用の水平的分布、およびアグロフォレスト内の階層的で安定した土地利用形態が見られ、それらが、土地利用の持続性を支える重要な要因であると考察できた。
著者
伊藤 香織
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1268-1275, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
29
被引用文献数
12 2

質の高い都市環境はシビックプライドを高めると言われているが,その仕組みは明らかになっていない.また,日本の都市に対するシビックプライドのありようは,イギリスをはじめとしてシビックプライドが重視されてきた地域とは異なる部分があると考えられる.そこで,本研究では,シビックプライドの多面性,特に日本の都市・市民のシビックプライドの構成を明らかにすることを第一の目的とし,都市環境の評価とシビックプライドとの関係を明らかにすることを第二の目的とする.まず,シビックプライドの概念を整理してシビックプライド尺度を作成し,事例として今治市の都市環境に関する市民アンケート調査を行い,シビックプライドの構成及び,都市環境の評価がシビックプライドに及ぼす影響構造を明らかにする.分析の結果,今治市の事例では,シビックプライドには「アイデンティティ」「参画」「愛着」「持続願望」の因子があることがわかった.また,中心市街地の評価が参画と持続願望に影響し,高評価有名地の評価が愛着に影響する他,回答者属性では居住年数がアイデンティティと愛着に影響していることなどがわかった.
著者
鈴木 茜 矢吹 剣一 後藤 智香子 新 雄太 吉村 有司 小泉 秀樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.926-932, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
20

今日、人々の「居場所」は、フィジカル空間のみならずサイバー空間にも存在すると言えるが、サイバー空間を含め人々がどのような「居場所」を持っているのかは、明らかになっていない。本研究では、サイバー空間およびフィジカル空間に形成される人々の「居場所」の様相を、「居場所」の特性と心理的側面に着目して明らかにすることを目的とする。本研究では、サイバー空間/フィジカル空間、個人的/社会的で4つに分類した「居場所」のタイプおよび空間・場の種類によって、「居場所」の心理的機能が異なることがわかった。さらに、調査結果に基づき、サイバー空間とフィジカル空間で「居場所」における違いをもたらす8つの視点を提案している。