著者
太刀川 宏志 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.687-692, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1

災害後には瓦礫が発生し、まず復旧復興に先駆け、瓦礫処理を行う必要がある。第二次世界大戦では全国215都市が被害を受け、戦災復興においても、広範囲で一度に一気に行う必要がある瓦礫処理は大きな課題であり、戦災地応急対策として最初に清掃事業(瓦礫処理)が実施された。東日本大震災の被害は非常に広範囲に及んでおり、広範囲で一度に一気に発生した災害における瓦礫の処理方策を学ぶ上で、戦災復興の瓦礫処理を解明して今後に活かす必要がある。あわせて、災害時における瓦礫処理についての備えを考えていく上でも、過去の災害復興を振り返り今後に生かしていくことは意義があると考える。そこで本研究は、戦災復興誌より戦災復興における瓦礫処理の方針を把握した上で、実際の戦災瓦礫処理を都市別に抽出し、処理内容毎にまとめる。さらに、特徴的な戦災瓦礫の処理方策を見出す。戦災瓦礫処理は、制度として戦災復興土地区画整理事業区域を対象としたことが本研究を通じて確認できたことから、見直しにより土地区画整理区域外となった地区を多く抱えた東京の戦災瓦礫処理について具体事例として述べることとする。
著者
大谷 直輝 姥浦 道生 苅谷 智大 小地沢 将之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.449-456, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の目的はCFにおけるハード整備に関する事業の実態を明らかにすることである。結果として、ハード整備CF事業は、2つの典型的事業類型によってその位置づけが異なるといえる。一つは営利団体が取り組む傾向のある、飲食店やシェアハウス・コワーキング整備を中心としたサービス収益事業であり、目標達成割合が比較的高く、基本的には民有地で行われているものの、社会的貢献性のあるフリースペースを有している事業が目標達成しやすく、情報発信も目的としており、金融機関からの融資と組み合わせて資金調達を行う傾向があった。もう一つは非営利団体が取り組む傾向のある、景観形成や歴史保全を中心とした都市環境整備・保全事業であり、目標達成割合が比較的低く、不足する事業資金を獲得するための手段としてCFを活用している傾向があった。CFは、既存の助成制度でも対象となる公益的事業に対する上乗せ的資金調達制度として一定の役割を果たしつつも、その中心は対象とならなかった収益性ある事業に対する横出し的資金調達制度としての機能であるといえる。このような性質を考慮しつつ、まちづくり活動に対する資金調達制度全体を設計することが重要である。
著者
田島 靖崇 後藤 春彦 山村 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.960-965, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

初期に開発された日本のニュータウンは現在、人口減少や施設の老朽化などの問題を抱えている。とりわけ、これらのニュータウンの商業施設として計画された「近隣センター」は苦境に立たされている。そこで、周辺エリアを含めて、商業環境の変化を丁寧に読み解き、生活拠点としての近隣センターの役割を再定位することは重要であると考えられる。 本研究では、以下の3点を明らかにした。1)ニュータウン内部に加えて、隣接地域を含めた商業施設立地から、当初近隣センターが担っていた商業機能の一部が外部に移っていること。2)近隣センターの機能変化として、小売店舗数が減少し、新たにNPOや福祉が新規参入している傾向があり、近隣センターによって、機能変化の程度に差があること。3)住民は距離的近接性を重視して近隣センターやコンビニを選んでおり、こうした実態は近距離施設の重要性を指摘していること。
著者
原田 敬美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.571-576, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
14

本研究の目的は、東京都港区内のJR品川駅と田町駅の東西自由通路を対象に、協議会方式による官民協働事業の整備手法について、特徴、問題点、課題を明らかにし、今後官民協働の手法の可能性を検討することである。品川駅自由通路は駅東口の複合都市開発と新幹線品川駅開業に対応するため1998年完成、幅20m長さ250m、工事費160億円である。田町駅自由通路は西口再開発事業計画に公共施設として位置づけ、周辺の再開発や大型開発へ対応するために2003年完成、幅16m長さ80m工事費25億円である。駅周辺の大企業や商店会に協議会参加を呼びかけ、開発者負担、受益者負担の原則で、協議会が建設費を負担し、区は一般財源の支出無しで公共施設整備をした。一方区は開発事業者にボーナス容積のインセンティブを与えた。協議会方式は様々な主体が参加することでコミュニケーションが進み、問題解決が図れ、単独主体で整備するより効率的に事業が進んだ。協議会方式による官民協働の事業の整備手法は今後様々な公共施設整備に活用の可能性がある。
著者
仲野 光洋 苦瀬 博仁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.79-84, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
31

In the 17th century of Japan, the inter-city freight transport system using coastal ship was already developed for supplying commodities to the capital city of Edo (Old Tokyo). This study tries to clarify the necessity and procedure for coastal ship route development from the viewpoint of the logistics system. It also tires to confirm that coastal ship route development was introduced not only for creating traffic route but also for establishing the trading system. Thus, inter-city transport was popularized in Japan after the development of the coastal ship route. As a result of this development, the commercial trade area expanded and the institution of feudal (Busi-dominated) society started to change.
著者
三寺 潤 本多 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.43-48, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
9

近年、鉄道利用は減少の一途をたどっている。一方、社会環境の変化とともに、地方鉄道に求められている役割は多様化してきている。本研究では、地方鉄道の再生のために効果的な駅周辺地区の整備方策を導き出すことを目的とする。本研究で得られた成果を以下に示す。1)鉄道の利用特性に加え、現況の駅周辺地区の土地利用状況などを用いてクラスター分析等を用い現況分析を行った。類型化の結果、研究対象とした 79の駅周辺地区を5つのグループに分類し、それぞれの特性を明らかにした。2)インターネット調査を用い、駅と周辺施設の連携がなされているかどうかの評価を行った。連携に対する評価は相対的に低い結果となった。3)3つのプロトタイプの設定を行い、それぞれのタイプに効果的に働く交通と土地利用の関連施策を導き出した。
著者
安達 友広 久保 勝裕 木曾 悠峻
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1296-1303, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
24

明治20年代から本格化した北海道の市街地建設では、多くがグリッド市街地と鉄道施設が同時期に建設された。そして、鉄道駅に直交する駅前通りの設置、それに間口を向けた街区計画など、合理的な計画が実践された。しかし、開拓の経緯や、近世遺構や微地形などが市街地設計に影響を与えており、北海道における市街地空間の固有性の検証においても、こうした視点を改めて見直すことが必要であろう。本研究では、かつての舟運に注目し、建設時から現在までの船着場を中心とした市街地構造を把握し、現在まで継承されてきた都市軸の実態を明らかにした。例えば、名寄市街地では、駅から離れた船着場付近に当時の中心街が形成された。現在では、その後に拠点化した駅前地区との間に「L字骨格」を継承している。千歳市街地では、自衛隊基地等の立地も影響し、船着場があった川沿いに飲食店街等が発達した。現在でもそのゾーニングは継承され、千歳川を都市軸として都市機能が集積している。以上、開拓期の船着場は物流基地として高い拠点性を持った。これが一因となり、市街地固有の都市軸の形成を促し、駅中心の市街地構造に移行しながらもそれを現在に伝えている。
著者
嘉名 光市
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.637-642, 2005
被引用文献数
1

本研究では、我が国における駅前景観形成の草創期である戦前期大阪における大阪駅付近都市計画事業およびそれに関連する都市計画の立案の変遷から、駅前の整備にあたって目指した都市美観形成の方向性を明らかにすることを目的とする。戦前期大阪駅前周辺の美観形成の方向性は、当初は関係者の協議・調整によって大阪駅前整理計画協議会成案が検討され、大阪駅前や御堂筋などの大阪の玄関口をなす場所の美観形成には、街路整備に加え周辺の建築敷地造成が重要であるとの考え方が示された。さらに、大阪駅前整理工事に関する建議案などのように、美観形成の観点から大規模かつ整形の建築敷地造成が重要で、その実現手法として超過収用が期待されていた。一方、大阪市のシビックセンター計畫理想案懸賞により、欧米都市の美観形成に倣った一団街区の形成やビスタ、アイストップなどの街並美観が提案された。その後、大阪駅前付近都市計画事業変更、大阪駅前第2土地区画整理追加により、それまでの大阪駅頭、御堂筋沿道の美観形成と一団の街区の美観形成という考え方がみられ、美観地区追加指定では、詳細に区分した地区として位置づけ発展していった。
著者
斎藤 正俊 谷下 雅義 鹿島 茂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.85, 2004

本研究は,著者が開発した鉄道駅における利用者の行動モデルの変数にエネルギー消費量を明示的に組み込む方法を提案し,モデルの説明力が大幅に向上することをケーススタディにおいて検証している.行動モデルは,移動円滑化の影響を評価する観点から,乗車駅の改札口から降車駅の改札口に至る行動を対象としており,この一連の行動を乗車駅における移動施設の選択行動,車両の選択行動,降車駅における移動施設の選択行動に階層化するとともに,効用関数(選択基準)を移動時間に加え,エネルギー消費量と移動形態の線形関数として仮定し,確率効用理論に基づく階層型の非集計行動モデルを用いて個人属性単位で定式化し,都営三田線の利用者を対象にケーススタディを行っている.
著者
木下 広章 柴田 久 石橋 知也 雨宮 護 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.350-356, 2016

本研究では福岡県警察が全国に先駆けて設立した「犯罪予防研究アドバイザー制度」を事例に,(1)本制度を通じて入手した平成24~26年の福岡県内で発生したコンビニ強盗の犯行内容に関する事案概要データ(全79案件)4)ならびに被害店舗全74店舗(79件のうち5店舗は強盗被害に2回遭っている)の立地を整理,分析した.さらに(2)上記,強盗被害店舗全74店舗と徒歩圏(500m)を越えて最も近隣に立地している非被害店舗(74店舗)の合計148店舗の実地調査を実施し,強盗被害が誘発される立地・空間環境の要点とコンビニの防犯向上に向けた施策について考察した.その結果,コンビニ強盗に対する防犯施策の検討として(1)従業員に対する勤務姿勢を重視した防犯指導,(2)駐車場を中心とした視認性の向上,(3)陳列棚の高さが伴う監視性低下への認識啓発について,その重要性を示唆した.
著者
内田 奈芳美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.451-457, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

本論文では、ジェントリフィケーションのこれまでの論説に基づき、方法としての再投資と、結果としての地区への目的地文化の付加(「目的地化」)の両側面から地域変化を読み取ることで、日本型のジェントリフィケーションの実態を明らかにすることを目的とする。対象は石川県金沢市であり、ケーススタディ地区として二地区を選定した。研究方法として、まず仮説としての定義を示した後、評価軸として「再投資」と「目的地化」を挙げ、評価軸に従ってケーススタディ地区の分析を行い、仮説としての定義を検証した。ケーススタディ地区の分析から、日本型の地方都市におけるジェントリフィケーションとして、「既存の建物に再投資が起こり、地価のレベルと連動した動きを持つ再投資の規模の大小が『目的地化』の質を規定すること」であると最終的に定義した。
著者
阪井 暖子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1035-1040, 2014
被引用文献数
6

人口減少が進む中、全国的に空地等の増加が危惧されている。なかでも郊外戸建住宅団地の空洞化が危惧されている。そこで、本稿では人口減少している大都市圏郊外の戸建住宅地を事例にとり、空地の発生消滅の経年変化の実態について把握するとともに、その要因の分析を行った。その結果、郊外戸建住宅団地において、人口や世帯数は必ずしも継続して減少しているのではなく、また、空地の増加はみられずむしろ減少していることがわかった。空地等が減少している要因は、資産としての魅力の低下、相続の発生などにより空地等が市場にアフォーダブルな価格で提供され始めていることがあげられる。郊外戸建住宅団地において空地化はしていないが、しかし世帯当たり人員の減少や、空家化により空洞化は進んでいる。また、新規転入者に中高年齢層が多いことから、今後も高齢者比率は急速に高まり「限界団地化」が危惧される。
著者
塚本 悠生 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1123-1130, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
70

本研究は、江戸時代以前に命名された江戸墨引内の186の坂を対象とし、(1)江戸時代の切絵図等において名称が記載されている坂にはどのようなものがあり、また周辺の状況はいかなるものであったのか、(2)前述の坂の名称は、近代以降現代まで継承され続けているのか、を明らかにした上で、(3)現代まで名称が継承されている坂にはどのような空間的特徴や経緯があるのかを考察している。その結果、(1)幕末江戸では少なくとも186の坂が地図に表記されていること、(2)近代の旧東京15区内には174の坂で名称が継承されていたが、近代後期にはその数は少なくなっていったこと、(3)都区部では1972年以降、行政によって坂の名称や歴史を地域住民に伝える目的で標柱設置事業が行われ、それ以降、多くの名称が地図に表記されていること、(4)現在も坂の名称は消失しているが、明治から戦前、現代かけて消失する数は少なくなったこと、(5)武家を由来とした坂の名称は継承されやすく、一方で地名から名づけられた坂の名称は継承され難いと言えること、(6)坂の交通路としての格は、坂の名称の継承に対して強い影響を与えないこと、が分かった。
著者
出村 嘉史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.297-304, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
52
被引用文献数
1

本研究は、日本で初めて全面的な分流式下水道を実現した市である岐阜市を対象に、建設されるまでの過程を追い複雑に絡み合う諸般の事情を整理して、都市計画下水道事業の計画の実態を明らかにし、その計画のパースペクティブを把握し、それがどのような立場と体制によって形成されてきたものであるのかを明らかにすることを目的とする。全国で下水道事業が発展段階にあった昭和初期に、岐阜市長松尾國松と技師安部源三郎は下流を含めた広い地域的な水収支を視野にいれた技術的な解を、既存の排水計画の徹底した研究と現状の測量を実施しながら見出していった。鍵は市内を通過して下流の広大な耕地を灌漑する忠節用水の改良事業であり、県と国によって進められたこの計画内容を共有しながらこれを含めて初めて実現する分流式下水道計画を同時に進め、全国においても最先端のシステムを実現させた。この下水道建設事業は、都市計画事業の枠を用いているものの、実態は高い技術の導入に導かれた基盤整備事業であった。しかし、その事業が持ち得た視野は、極めて地方計画的なものであったことが指摘できる。
著者
川崎 泰之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.273-278, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は日本において鉄道会社が主体的に行ってきた沿線開発事業の内、郊外の開発拠点として注力してきた遊園地に着目し、大手私鉄が経営していた郊外遊園地のうち閉園したものを対象として、その跡地利用について計画および実際の空間を調査し、都市計画公園・緑地の指定状況との関係性、鉄道や駅、周辺市街地との関係性、遊園地の景観資源との関係性について分析を行った。その結果、閉園前から都市計画公園に指定されていた事例は、高い割合で公園整備または公園的土地利用となっているが、閉園前も閉園後も都市計画公園に指定されていない事例は、公園整備面積が比較的小さく、そのことから都市計画公園・緑地制度が民間事業用地における公共的土地利用の担保性を持っていることがわかった。また鉄道や駅、周辺市街地との一体的整備により拠点性を高めている開発や、駅や鉄道との関係を重視した動線やゾーニングによる開発が多く見られた。景観資源については、自然環境に恵まれた立地特性を活かした事例が多く見られたが、歴史・文化資源については遊園地そのものを想起させる資源が残されている事例が少なく、郊外文化としての遊園地の記憶の継承が課題である。
著者
藤垣 洋平 高見 淳史 トロンコソ パラディ ジアンカルロス 原田 昇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.833-840, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

本論文では、大都市圏向け統合モビリティサービスMetro-MaaSを提案し、利用意向調査によりMetro-MaaSの需要の特性を評価した。Mobility as a Service(略称MaaS)は、利用者が適材適所で交通サービスを組み合わせて使いやすくすることで、自家用車を保有し運転することの代替となりうるサービスを目指す概念であり、世界の各都市で導入に向けた検討が進んでいる。本研究ではMaaSの大都市圏への導入方法として、対象事業者数を抑制しつつ利用者の日常生活をカバーできる設計手法Metro-MaaSを提案し、その需要の特徴を評価した。Metro-MaaSは自動運転とは独立した概念だが、自動運転車を使用したオンデマンドバス等のサービスと既存公共交通を一体的に提供する方法としても活用可能である。調査結果の分析から、利用意向に影響がある個人属性や居住地、移動等の特徴を抽出し、その影響を評価した。その結果、「運転に対して少し不安がある人」「駅から自宅までの徒歩の所要時間が20分以上の人」「自家用車を2台保有している人」などが、サービスを利用したいと考える傾向が示された。
著者
大平 悠季 桑野 将司 福山 敬
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.319-325, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
10

我が国の地方都市では,人口減少やモータリゼーションに伴う郊外化の進行によって,中心市街地の空き店舗が増加し,商店街が空洞化している.本研究は,中心市街地の魅力を向上させるための施策を検討する第一段階として,鳥取市をケーススタディとし,空間構造の観点からみて利便性の高い場所の土地利用状況の有効性を診断することを目的とする.分析に際して,中心市街地を訪問する人々の行動を直接観察するのではなく,ネットワーク理論や地理空間情報システム(GIS)を援用し,中心市街地の骨格を形成する街路や都市施設の空間構造の特性を表す客観的な指標に基づいた分析を通じて,潜在的ににぎわいが形成されやすい場所を明らかにし,中心市街地整備方策に対する示唆を導き出す点に新規性がある.分析結果より,対象地域では,歩行者・自転車による利用が多い施設の周辺では,施設のにぎわいが波及することによって空き店舗が少ない状況を維持できているのに対し,自動車利用が中心の施設である施設の周辺ではそのような波及効果が得られていないことがわかった.
著者
惣司 めぐみ 澤木 昌典 鳴海 邦碩
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.427-432, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
14

本論文で取り上げる富山県南砺市城端(旧城端町)の中心地は無形文化財「曳山祭り」の舞台として有名である。その中心地において、平成9年度から国道304号の拡幅工事が行なわれ、工事の進行とともに、通りの両側の建築物が建替えられ、新しい町並みが出現した。その際、沿道の1商店会および2町会において、各自、紳士協定である外観ルールを作成し、地域の町並み景観と環境の管理を目指した取り組みが行なった。本論文では、外観ルールの内容をいかに建築物の外観のデザインにとりいれるかが、建築協定よりも建築主個人の判断に任されることになる紳士協定としての外観ルールを作成し、その実施にあたった西町商店会、出丸町、新町の3つの地区を対象とし、文字で表された外観ルールが表現する外観のデザインの方向性と、建築主の外観ルールの読み取り方を検証し、外観のデザインの読み取り方の違いと建築主の事業への関心度の違いの関係性を明らかにすることを目的とする。
著者
阿部 正隆 西村 幸夫 窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.727-732, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1910年代にイギリスで誕生し、アメリカへと普及したRegional Planningは、1920年代前半に内務事務官飯沼一省により日本へ「地方計画」として紹介された。地方計画はその後日本において海外事例の影響を受けながら展開し、内務省及び企画院において検討された。本論文は戦前における内務省地方計画構想のひとつの終着点として、内務省に1940~41年にかけて設置され、地方計画法案を策定した都市計画及地方計画に関する調査委員会、1941~42年にかけて設置され、関東地方計画要綱案を策定した都市計画連絡協議会に着目した。前述の委員会、協議会の一次資料を解析し、地方計画法案、関東地方計画要綱案の策定過程を明らかにし、戦前における内務省地方計画構想の一終着点を明らかにした。
著者
小野 芳朗 前田 健太郎 石田 潤一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.289-294, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2

大阪市の御堂筋は北は阪急前(大阪駅前)から南の難波駅まで1920年代の都市計画の中で設計された。その並木は汚染された大阪の大気を浄化する目的があった。近年、御堂筋のイチョウは大阪のシンボリックな景観として認識されている。しかし当初の御堂筋並木は、北方はプラタナスであり、南方がイチョウであった。本論文では、この御堂筋並木の設計案、工事の実態、その建設と設計に関わった関係者について大阪市の都市計画公文書により実証した。