著者
岩名 紘基 重宗 宏毅 澤田 秀之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.2, pp.79-85, 2023-02-01

形状記憶合金(Shape-Memory Alloy: SMA)は,温度変化により相変態を起こすことで,記憶した形状に回復する合金である.この合金は,人工筋肉やばねのように様々な形で応用されている.従来のSMAアクチュエータは時間に対して緩やかに変形するものに応用されてきた.我々はこれまでに,SMAワイヤにパルス電圧を流すことによる数百Hzまでの振動現象を発見し,これを応用した微小振動アクチュエータを提案してきた.しかし,この現象の特性や原理については,未だ解明されていない点が多い.本研究ではSMAワイヤの振動現象の解明及び特性の理解のために,有限要素法を用いたシミュレーションと実際の振動現象の測定を行った.振動現象において,その振幅は幾つかの物理パラメータが寄与しており,これらを変化させると振幅のピークが変化することがわかった.この特性を応用することにより,SMAアクチュエータの効果的な利用が可能となる.
著者
本多 亮也 阿部 晋士 大平 孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.1, pp.20-29, 2023-01-01

入力電力が異なる二つの高周波整流回路の合成動作において片方の高周波整流回路が動作しなくなるカットオフ現象について定量的に考察する.合成動作を解析する準備として,単体動作において高周波整流回路がカットオフする条件を導出する.カットオフ条件となる特定の出力電圧と流通角の値を導出する.この二つの特定の値を用いて,合成動作におけるカットオフ現象の理論解析を行う.結果,入力電力が小さい方の高周波整流回路がカットオフする入力電力比を発見し,定式化した.カットオフが起きる入力電力比は,入力電力が小さい方の高周波整流回路に関係なく,入力電力が大きい方の流通角のみで決まることを発見した.導出した理論を数値解析(ハーモニックバランスシミュレーション)と実機実験(6.78 MHz, 100 W)の両方で検証し,理論とよく一致していることを示した.
著者
早田 和弥 小柴 正則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.J73-C1, no.12, pp.771-779, 1990-12-25

非線形シュレディンガー方程式(NLSE)は,数学,物理学,工学,生物学をはじめとする多くの学問分野において出現する偏微分方程式の一つであり,応用範囲が非常に広い.本論文では,変形あるいは摂動を伴うNLSE(一般化されたNLSE)の解法として,径路積分法(PIM)に着目し,その基本となる概念,定式化,ならびに実際の数値計算手順について述べている.PIMは,R. P. Feynmanにより導入されたLagrange形式による非相対論的量子力学の定式化の方法である.本論文で最終的に得られる式は標準的なフーリエ変換の形をしているため,高速フーリエ変換(FFT)の適用が可能となり,計算効率の飛躍的向上が達成されている.ここで注目すべきことは,本手法では単位伝搬区間当り1回のフーリエ演算を実行すればよいということである.ここでは,一般化されたNLSEとして,摂動を受けた結合形非線形シュレディンガー方程式を考え,具体的な適用例として光ソリトンに対する数値計算結果を示している.
著者
阪本 卓也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J103-C, no.7, pp.321-330, 2020-07-01

本論文では,超広帯域レーダを用いて人体の歩行及び着座運動を測定し,時間周波数解析により得られたスペクトログラム画像及び機械学習を用いて個人識別をおこなう.被験者6人の歩行及び着座運動を超広帯域レーダにより測定する.レーダ受信信号を時間周波数解析し,四肢の運動に伴うマイクロドップラー成分の含まれるスペクトログラムに変換し,画像を生成する.個人ラベルを付与されたスペクトログラム画像を2層畳み込みニューラルネットワークに入力して学習を行い,レーダによる個人識別を実現する.
著者
寳迫 巌 石津 健太郎 東 充宏 加藤 明人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.12, pp.342-350, 2022-12-01

2030年以降の未来社会は,高齢化や労働人口の他,感染症などの突発的な社会課題にも対応していくことが求められる.情報通信ネットワークは,その社会課題を解決するための基盤として高度化が期待されている.特にBeyond 5Gは,超高速・超低遅延・超多数接続などの特徴をもつほか,上空や海洋への通信エリア拡張,現実世界と仮想世界の融合など,もはや単なる移動通信のためのシステムではなく,移動通信分野以外のシステムとの積極的な連携を図ることにより,これまで困難と考えられてきた社会課題の解決や社会全体の最適化を期待されている.そのため,Beyond 5Gは異分野のシステムが連携できる柔軟な構成となる必要があり,オープンプラットホームとしてのBeyond 5Gを実現する観点からアーキテクチャ技術を確立する必要がある.一方で,テラヘルツ波通信は超高速通信や稠密なエリア展開などBeyond 5Gに最も特徴を与える技術の一つであり,周波数帯の特定など国際標準化における議論も進んでいる.そこで本論文では,多様な機能をオープンに取り込み,サービスに合わせて適材適所に組み合わせたシステム構成を可能にするBeyond 5Gアーキテクチャを提案し,Beyond 5Gにおけるテラヘルツ波通信の利用ケースに着目してケーススタディを行うことにより,アーキテクチャ技術の検証を行う.
著者
久保田 悟 雨車 和憲 田中 勇帆 古川 利博 八嶋 弘幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.12, pp.376-383, 2022-12-01

核磁気共鳴分光法(Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy:NMRS)は有機化合物の分析をはじめとする化学的及び生理学的な基礎研究において非常に有用である.しかし,観測信号の信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が低いという問題をもつことから,効果的なデノイジング手法によって,測定の高効率化や経時変化の大きな試料への幅広い対応が可能となることが期待される.本論文では,NMRSによる観測信号は周波数域上においてスパース性をもっており,更にこれのN階差分をとった場合でもスパース性が失われないことに着目したデノイジング手法を提案する.シミュレーションによる数値実験から,スペクトル形状やノイズ強度に依らない安定したデノイジング性能を示したためこれを報告する.
著者
金澤 慈 進藤 隆彦 陳 明晨 中西 泰彦 中村 浩崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.11, pp.308-314, 2022-11-01

近年の急激な高速化の流れに対応すべく,1波長あたりの速度が100 Gbit/sを越える動作が可能な光送信器が求められてきた.100 Gbit/sを越える動作を実現するためには従来のワイヤ実装ではワイヤのもつ寄生インダクタンスによる帯域劣化が課題であった.そこで,ワイヤ不要となるフリップチップ接続技術と光デバイスと実装部材を一体で設計する技術を組み合わせた実装技術(Hi-FIT)を開発し,本技術を電界吸収型光変調器集積DFBレーザ(EADFBレーザ)モジュールに適用することで,214 Gbit/s動作を実現した.また,高速化に伴って10km超級伝送を実現するためには光出力パワーの向上も併せて求められてきたが,高速動作が可能な光アクティブデバイスとして従来用いられてきたEADFBレーザでは光出力の不足が課題であった.そこで我々は半導体光増幅器(SOA)をEADFBレーザチップに集積したデバイス(AXEL)を開発し,受信器としてアバランシェフォトダイオード(APD)を用いることで,106 Gbit/s信号の60km伝送を実現した.Hi-FITとAXELは100 Gbit/s超級動作高出力光送信器のキー技術として期待される.
著者
中沢 正隆 葛西 恵介 吉田 真人 廣岡 俊彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.11, pp.315-328, 2022-11-01

本論文では次世代RAN (Radio Access Network)の実現に向けて我々が提案してきているフルコヒーレントアクセスシステムについて述べる.最初に2010年代の4Gから2020年代の5G更に2030年代の6Gに向けての大きな変革としてD-RAN (Distributed RAN)からC-RAN (Centralized RAN)への進化について述べた後,それとともに今まで開発されてきた各種モバイルフロントホール(MFH: Mobile Fronthaul)について説明する.その中で将来に向けてのフルコヒーレント伝送の重要性を浮かび上がらせ,我々が実験を行ってきている無線・光融合型フルコヒーレント伝送方式について述べている.この方式は光信号と無線信号をIF (Intermediate Frequency)が異なる一つの電磁波伝送として捉えるものであり,構成が簡単でありかつ高性能を実現できる興味深い手法である.光と無線を一体として捉えることにより,光伝送部分で発生する誤りを無線のFEC (Forward Error Correction)で補正できるなど今まで考えられなかった特徴がある.更に,その実現のために重要な技術として,注入同期による信号光とLO (Local Oscillator)光との高精度位相同期技術について詳細に述べる.この高精度な位相同期はLD (Laser Diode)が1台という簡単な構成で実現できるため,256 QAMのような高い多値度の光伝送にも応用可能であることを示した.最後に,フルコヒーレントアクセスシステムの高度化のために重要な光・電子デバイス更にはその集積化技術について述べている.
著者
三島 拓馬 上村 凌平 岸本 誠也 大貫 進一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.10, pp.270-277, 2022-10-01

円柱状微小共振器の円周上を周回するWhispering Gallery Mode(WGM)を利用したレーザの放射指向性は特有の回転対称となる.本文では,共振器の形状変化を伴わない放射指向性の可変制御を検討し,ビームステアリングデバイスやスイッチング素子等への応用に向けた基本原理を確立する.WGMレーザの放射指向性は,電磁界解析に広く用いられるADE-FDTD法によりシミュレーション検証し,共振器に励起するWGM,複数レーザ間の位相差,レーザに与えるポンピング等の観点から,指向性の制御を明らかにする.
著者
濵口 浩規 結城 直彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.10, pp.302-307, 2022-10-01

高精度なFM変調器の構成として,ΔΣ変調器を組み込んだFM変調器(以後,ΔΣFM変調器と呼ぶ)を提案する.本回路の構成は周波数変調器としてのVCOとノイズシェーピング特性を示すΔΣ変調器の組み合わせからなるFM変調器である.本回路における復調後の信号の雑音は一般的なFM信号を復調したとき生じる三角雑音より,急しゅんな傾きを得ることができ,高精度なSNRを得ることが可能になる.本論文は提案するΔΣFM変復調器について回路構成を示す.示した回路構成において,急しゅんなノイズシェーピング特性が得られることをS関数を用いた理論式より示した.また,MATLAB & Simlinkを用いた解析により理論式の結果が正しいことを確認した.
著者
小山 雅紀 篠原 誠 金 貞我 池 受玲 崔 大徹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.9, pp.263-269, 2022-09-01

実装基板配線の多層化と微細化が進む中で,その不良解析技術は非破壊・高精度・高速解析が求められている.配線不良の位置特定技術には,電気-光サンプリング技術を用いた高分解能TDR(Time Domain Reflectometry)法がある.この手法は,立ち上がり時間の短い電気パルス波を不良配線に伝搬させ,不良箇所からの反射波形を高精度で測定する非破壊解析技術である.本実験では,この手法を用いて更に精度の高い位置特定解析を実現させるため,不良配線を構成するビアと複数の異なる層配線の波形伝搬速度を個別に導出した.導出した各部位ごとの伝搬速度と,不良箇所からの反射波の時間を解析することで,数十μmレンジでの非破壊不良箇所特定が可能となった.
著者
松枝 洋二郎 森 茂
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.8, pp.235-243, 2022-08-01

プラスチック基板上にTFT (Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレーを形成したFLX-OLED (Flexible Organic LED:フレキシブル有機EL)ディスプレイは,3D曲面を駆使した質感の高いデザインを採用し,各種センサーを内蔵したモバイル市場の頂点に立つ最先端の電子デバイスである.積極的な製造ラインへの投資が続く中国のFLX-OLED市場では,世界初の新技術も次々に登場し,韓国と熾烈な技術開発競争を繰り広げている.FLX-OLEDのバックプレーンには,従来のLTPS (Low Temperature Polycrystalline Silicon:低温多結晶シリコン) TFTだけでなく,低消費電力を特徴とするLTPO (Low Temperature Polycrystalline Oxide) TFTも登場し,酸化物TFTも含めた次世代バックプレーンの三つ巴の戦いの様相を呈している.本論文ではモバイル用有機ELディスプレイの最新技術開発動向をレビューするとともに,最大の課題であるコスト削減のためのTFTの要求性能について議論する.
著者
雨宮 智宏 各務 響 岡田 祥 西山 伸彦 胡 暁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.9, pp.244-262, 2022-09-01

トポロジカルフォトニクスとは,光工学(フォトニクス)の分野に数学の位相幾何学(トポロジー)の概念を持ち込んだものであり,これにより,円偏光(光のスピン)や光渦(光の軌道角運動量)などの光のトポロジーに起因した情報を体系的に扱うことができるようになる.本論文では,トポロジカルフォトニクスの理論的枠組みに触れつつ,その実証に向けた分析技術・作製技術,及び光回路への応用について言及する.
著者
川崎 健吾 桑田 英悟 石橋 秀則 矢尾 知博 前田 和弘 柴田 博信 石田 清 津留 正臣 中溝 英之 森 一富 下沢 充弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.10, pp.308-318, 2021-10-01

マイクロ波の送信モジュールには小型化と低コスト化が求められる.提案する送信モジュールは,高集積に適するSiデバイス上に制御回路を構成し,最終段の1W級の増幅器にSi-GaNスタック型増幅器を採用したことで,送信モジュールで使用するデバイスプロセスの数を減らし電源電圧の数を最少化することで電源回路を簡易化することが可能である.試作では,GaNチップを基板に内蔵し,Siチップと電源回路素子のチップインダクタを基板上に表面実装した3次元実装構造とすることで,モジュール面積7 mm x 7 mmの小型な実装構造を実現した.試作した送信モジュールは,L~C帯において広帯域な動作が可能であり,出力電力はL帯で34.8 dBm,S帯で32.0 dBm,C帯で25.8 dBmが得られ,0.6 dB-rms以下の振幅誤差と1.8 deg.-rms以下の移相量誤差の特性が得られた.
著者
矢崎 晴子 関川 純哉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.7, pp.218-226, 2022-07-01

直流電源電圧48V,接点接触時の回路電流I0=50A-300Aの抵抗性負荷回路において,2種類の異なる開離装置を用いて開離時アークを発生させた.開離装置としては,実際の電磁リレー等と同様の開離機構であるばね式開離装置と,開離速度ごとの開離時アークの特性を把握しやすい等速開離装置を用いた.はじめに,ばね式開離装置による実験結果について,消弧直前のアーク長さLの電流I0依存性を解析した結果を示す.次に,等速開離装置を用いた実験結果について,LのI0依存性を示す.その後に両者の結果を比較する.開離装置によらない結果としては,I0の増大に伴いLが長くなる傾向があること,及びI0が200A以上の場合にはI0に対するLの増大は飽和傾向にあることが明らかとなった.各実験条件において,アーク形状の特徴についても説明し,アーク形状の電流依存性に関して考察する.
著者
井口 亜希人 辻 寧英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.6, pp.193-199, 2022-06-01

光通信システムの基本要素である光回路デバイスの極限までの高性能化を達成する手段として,形状・トポロジーまで含めた自由度の高い設計手法の活用が盛んに検討されている.本論文では,数値計算手法として,近似的手法であるが計算効率の飛躍して高いビーム伝搬法を活用した,特性感度に基づく形状・トポロジー最適設計技術とその適用例を示す.本設計アプローチでは,離散セルごとに割り当てられた正規化密度を媒介(設計)変数として導波路の材料分布を表現し,設計変数に対する特性感度計算を行う.ビーム伝搬法による特性解析,感度計算,及び勾配法による材料分布の更新を繰り返し,所望の特性の最大化を行う.パワー分岐素子や交差導波路のような基本的な回路要素の設計を行い,本設計手法の有効性を確認する.
著者
桑村 有司 日端 恭佑
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.6, pp.207-217, 2022-06-01

本論文では,電気光学ポリマーを利用したプラズモニック位相変調器をアレー状に並べた新型のプラズモニック光フェーズドアレーを提案する.提案素子では,波長1.55 μmにおいて,素子からの光出力ピークは1本のみでかつ,電圧制御で出力光が100度以上の範囲で偏向走査可能な素子を設計できることを2次元FDTD法による数値計算で確認したので報告する.ポッケルス係数r33=200 pm/Vの電気光学ポリマーを利用すれば,各位相変調素子へ印加する電圧は|9.5|V以下であり,長さL=20 μm程度の位相変調器アレー列を用いて70×26 μm2以下のサイズで小型で,高速かつ低消費電力の光フェーズドアレーが構成できる.
著者
毛塚 敦 齊藤 真二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.5, pp.139-148, 2022-05-01

航空機のナビゲーションにはGNSSが主に利用されているが,GNSS信号は微弱であり,脆弱性を有する.GNSSに障害が発生した際にも航空機の安全と効率を維持できるように代替測位システム(APNT)を構築することがICAO(国際民間航空機関)での課題となっている.そこで,現在配置・運用されている航空用距離測定装置(DME)を2局用いたDME/DME測位の機能・性能を向上させて短期的なAPNTとすることが検討されており,欧州で標準化が開始された.GNSSのみ航法装置として認められる経路にDME/DME測位を適用するためには新たにインテグリティの保証が必要となるが,山岳地形が多い日本国内では特にマルチパスによる誤差がインテグリティの脅威となる.現在運用中のDME/DMEのインテグリティ保証のためには,飛行検査において発生するマルチパス誤差を抽出し,その原因を特定するとともにインテグリティへのインパクトを評価することが有効である.そこで本論文では,シミュレーションによりマルチパス発生位置を推定する手法を提案し,更にその誤差量のインテグリティへのインパクトを定量的に評価する一連の手法を示す.
著者
日高 卓海 坂本 高秀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.4, pp.115-116, 2022-04-01

光コムの光周波数成分の光強度を精密かつ簡易的に計測する技術の確立が求められるが,従来の分光技術では精度に限界があり難しい.本研究では従来のエタロンに逆行列を用いたデータ処理を加えることで高精度かつ簡易的に分光する技術の可能性を検討する.
著者
井之上 瑞紀 齊藤 一幸 高橋 応明 伊藤 公一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J97-C, no.5, pp.218-224, 2014-05-01

近年の手術に広く用いられている止血方法の一つに,組織凝固デバイスを用いた手法がある.現在臨床で多く用いられている組織凝固デバイスには,MF帯からHF帯の比較的低い周波数帯の電流を用いた電気メスと,超音波を用いた超音波凝固切開装置がある.これらのデバイスは迅速かつ簡便に止血を行うことができるといった利点があるものの,幾つかの問題点も抱えている.そこで筆者らは,2.45 GHzのマイクロ波を用いた新しい組織凝固デバイスの開発を行った.本論文では,提案するマイクロ波アンテナが組織凝固デバイスとして有用であることを示すため,FDTD法を用いた数値解析による加温特性の評価を行った.更に,実際の使用状況に近い条件下での検討を行うため,ブタを用いた動物実験を行い,提案アンテナが組織凝固及び止血に有効であるかを検討した.その結果,提案するマイクロ波アンテナは組織凝固デバイスとしての機能を十分に果たすことを確認した.