著者
熊崎 祐介 多木 俊裕 小谷 淳二 尾崎 史朗 新井田 佳孝 美濃浦 優一 西森 理人 岡本 直哉 佐藤 優 中村 哲一 渡部 慶二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.12, pp.352-359, 2021-12-01

本論文では,高効率なGaN基板上GaN HEMTのデバイス開発と動作実証を行った.GaN基板の利用により結晶欠陥を大幅に低減し,電流コラプス現象が抑制できることを確認した.また,結晶成長前にウェットケミカル処理を施すことで,基板表面のコンタミを除去し,結晶成長後の基板/エピ界面のSi不純物を低減することに成功した.Si不純物の低減により寄生損失を抑制し,2.45 GHzにおいて効率82.8%と極めて高い値を達成した.これは,同周波数帯にて報告されている異種基板上GaN HEMTの効率と比較して高い値であり,GaN基板上GaN HEMTの優れたポテンシャルを示す結果であるといえる.
著者
太田 泰友 岩本 敏 荒川 泰彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.12, pp.326-334, 2021-12-01

ハイブリッド光集積は光回路の性能や機能の大幅な向上を目指す上で重要な技術である.一方,シリコンフォトニクスなどの高度に完成された光集積技術においてハイブリッド集積のために新たなプロセス技術を導入することは,プロセス開発及びコストの観点から非常に難しい.とりわけ,量子光回路のような多種多様な材料を混載集積することが必要となる系においては,その難しさは格段に増す.そこで,進展を続ける既存の光集積回路技術をそのまま活用しつつ,多種多様な光素子を光回路上へ自在にハイブリッド集積することが可能な集積技術の開発が望まれる.そのような技術の一つとして粘弾性材料を用いたピックアンドプレース動作に基づく転写プリント法が注目されている.本論文では,転写プリント法を用いた光源集積について我々の研究成果を中心に報告する.
著者
後藤 隼人 辰村 光介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.4, pp.110-117, 2021-04-01

組合せ最適化は社会や産業の様々な場面で頻繁に現れる重要課題である.組合せ最適化問題に特化した量子コンピュータである量子アニーラが商用化されて以来,量子コンピュータに限らず,組合せ最適化問題に特化した計算機ハードウェアの研究開発が活発化している.本論文では,著者らが考案した量子インスパイアドの組合せ最適化アルゴリズムであるシミュレーテッド分岐アルゴリズムと,それを並列計算機で高速実装した組合せ最適化マシンについて解説し,シミュレーテッド分岐アルゴリズムを用いた大規模組合せ最適化の将来を展望する.
著者
田中 和樹 キム ビョンゴン 小林 嵩 ベッカリ アブデルモウラ 難波 忍 西村 公佐 キム フーン チャン ユン 鈴木 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.2, pp.107-118, 2018-02-01

現在の1000倍以上のトラヒックが見込まれる5G以降の無線通信システムでは,ミリ波等の高い周波数帯の小セル局を多数設置して大容量トラヒックを収容する必要がある.小セル一局あたりの通信速度は数十Gbpsと想定され,光アクセス回線の大容量化は喫緊の課題である.更に,既に商用展開が進んでいるC-RAN構成は5G以降も有望なアーキテクチャーと考えられるものの,従来の光アクセス回線の伝送方式は通信速度の十数倍の伝送容量を必要とするため,代替技術が望まれる.光を搬送波として無線信号をアナログ波形のまま伝送するアナログRoF (A-RoF)伝送方式は,伝送帯域を大幅に低減可能で,有望な技術の一つである.本論文では,最初にA-RoF技術の既存適用例として,CATV伝送システムに用いられているIF-over-Fiber (IFoF)伝送方式を紹介する.更に,IFoF・A-RoF方式を無線基地局収容光回線へ適用した場合のシステム構成例を示す.続いて,数値シミュレーションによりIFoF伝送方式が適用可能な伝送条件の範囲を明らかにする.商用のLTE無線基地局及び実フィールドに設置された光ファイバを用いた実験を行い,数値シミュレーション結果との比較を行うとともに,IFoF伝送方式の商用システムへの適用可能性を示す.
著者
高浪 五男 本多 波雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J54-C, no.3, pp.250-256, 1971-03-25

有限確定事象を拡張して,準有限確定事象と呼ぶ事象のクラスを定義する.まず,この事象のクラスの閉包的性質(closure property)を論ずる.つぎに,与えられたオートマトンが準有限確定事象を受理するオートマトン(準有限確定オートマトン)であるか否かを判定する方法と,準有限確定オートマトンが受理する語の集合の定められた形の正規表現を求める方法とを述べる.ついで,準有限確定事象の唯一な標準形を求める方法を与える.
著者
黒河 進 家安 健三 河野 正
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J69-C, no.4, pp.478-486, 1986-04-25

CR単同調増幅回路は,一般に,同調周波数を高くとる程,高選択率,高増幅度を得ることが困難となる.筆者らは,リアクタンス・トランジスタとして,高周波用電界効果トランジスタを用い,また,駆動回路の負荷であるCR同調回路をアース側に接続することにより,近接効果(body effect)を大いに軽減することができた.従って,このような増幅回路を2段縦続に接続して複同調増幅回路とすると,周波数帯域幅を拡大することができ,中心周波数455kHz,電圧利得,約80dBにおいても安定に動作することが分った.本論文では,このようなCR複同調増幅回路の周波数特性の解析を行い,所要の双峰特性を得るための計算式を示している.さらに,複同調増幅回路の2つの同調周波数を等しくすることにより得られる単峰特性は,単同調増幅回路の周波数特性に比べて,選択率が約55%大となり,また,特性の裾の部分の減衰特性を相当に改善することができる.なお,試作回路により,周波数特性を実測した結果,計算値と良く一致し,また,複同調増幅回路は,受信機の中間周波増幅回路としても充分使用し得るものと考えている.
著者
細野 敏夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.J77-C1, no.10, pp.519-528, 1994-10-25

Poyntingベクトルは普通,空間における電力流を表すベクトル場と考えられているが,電磁気学の多くの教科書には次のような主張がなされ,混乱を巻き起こしてきた.(a)Poyntingベクトルに発散が零の任意のベクトル場を加えても,エネルギーの保存則に違反しないから,電力流の表現としてPoyntingベクトルは唯一のものではない.(b)帯電した磁石の付近の空間でPoyntingベクトルは零ではない値をもつが,この空間に電力流が実在するとは考えられず,Poyntingベクトルが電力流を表さない場合がある.このような主張がなされ混乱が起きた原因は電磁理論の相対論的側面を軽視した教育にある.本論文は,電磁教育に寄与する目的で,(a)電磁理論が本質的に相対論的であることのわかりやすい説明,(b)抜山ベクトルは,Poyntingベクトルの代役を果たし得ないことの説明,(c)Poyntingベクトルに付加できるベクトル場の満たすべき一般条件,(d)電力流密度の表現としてPoyntingベクトルが唯一のものと考えられる根拠,などについて考察したものである.
著者
池崎 秀和 林 健司 山中 章己 立川 理江子 都甲 潔 山藤 馨
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.J74-C2, no.5, pp.434-442, 1991-05-25

筆者らは,既に人工脂質膜を用いたマルチチャネルの味覚センサの特性が,人間の味覚特性と非常に類似していることを示した.本論文では,計測方法の改良を行うことで,センサの再現性をより高め,微妙な味の差の識別を可能とし,工業的な味の計測の実用化を計ることを目的とする.改良点は,以下のとおりである,第1は,絶対値測定から,センサにあらかじめ味のバイアスをかけた相対値測定にした点である.これにより,センサのトランスデューサ部は被検液に侵されにくくなり,繰返し使用が可能となった.第2は,センサに一定周期で外乱を与え,これに同期させて計測を行う点である.これにより,センサ出力が安定するまでの待ち時間が大幅に短縮でき,また,外乱による影響を受けなくなった.これらの結果,測定の再現性を飛躍的に向上させることに成功し,人間以上の詳細な味の識別が可能となった.そして,相対値測定の際のバイアスの変動や,測定時間の長さに測定結果が依存しないことを実験的に示し,これらの改良の妥当性を示す.更に実際の食品への適用例を挙げ,その有効性を示す.
著者
庄子 習一 江刺 正喜 松尾 正之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J68-C, no.6, pp.475-481, 1985-06-25

生体計測を目的としたpNa,pK用ISFETの性能を向上させるため,そのイオン感応膜であるM2O-Al2O3-SiO2(MAS,M:アルカリ金属)膜のイオン選択性について研究を行った.MAS膜はpNa,pK用のガラス電極の材料として用いられているものであり,そのイオン選択性はMAS膜の組成に依存することが知られている.そこで,pNa,pK用ISFETのイオン選択性を最大にするため,MAS膜ゲートISFETのMAS膜組成を変化させイオン選択性を測定し,両者の関係を調べた.その結果,MAS膜ゲートISFETのNa+-K+イオン間の選択性はMAS膜のアルカリ金属の種類とアルカリ金属,アルミニウムの含有比の両方に依存することが確められ,pNa,pK用ISFETのイオン感応膜として最適な組成を決定することができた.pNa用のISFETとしてはアルカリ金属としてLiを含むLAS膜をイオン感応膜として用いK+イオンに対するNa+イオン選択性が約200倍で低ドリフト長寿命のものが実現できた.また,pK用ISFETとしてもKを含むKAS膜を用いることにより,Na+イオンに対するK+イオン選択性が約40倍のものが得られた.
著者
園田 潤 丹治 紀彦 海野 啓明 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J102-C, no.5, pp.146-152, 2019-05-01

近年,フラクタル構造中の電磁波伝搬散乱解析が行われており,フラクタル構造は周期構造に比べ透過・共振特性がマルチバンドになり,Q値も大きくなることが理論的に明らかにされている.しかしながら,3次元構造は製作や測定が困難になる問題があった.そこで我々は,製作が比較的容易な一次元のフラクタルであるカントール構造に着目し,分割幅を変えることによる最小透過係数・最大共振係数やQ値の制御方法を提案している.本論文では,分割幅可変カントール構造を石膏ボードを用いた多層板構造により実現し,GHz帯マイクロ波実験で透過特性を測定しFDTD法による理論計算と比較することで,カントール構造の分割幅を可変することにより最小透過係数や最大共振係数及びQ値を制御できることを明らかにする.
著者
池田 博明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J96-C, no.11, pp.311-318, 2013-11-01

平成20年度から平成24年度に至る5年間,ASETに於いてNEDO委託事業「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発」が実施された.このプロジェクトは,半導体製品の更なる性能向上を図るため,TSVを活用した三次元集積化技術の開発により配線遅延,消費電力問題・高性能化の限界に対する有望な解決策を提供するとともに,新たな多機能デバイスの実用化を促進し,電子・情報技術の競争力を強化することを狙った.また異機能をもつチップの積層技術など,これまでにない立体構造新機能集積回路を実現することを目的としている.今回機会を頂いて,ASETにおける三次元積層技術開発の成果を報告する.本論文で紹介するテーマ別の成果を示す図表は,2013年3月8日に行われたASET最終成果報告会で各ワーキンググループの主査によって発表され,ASETホームページに掲載された資料から引用している(http://www.aset.or.jp/kenkyu/kenkyu_sanjigen_index.html).
著者
園田 潤 昆 太一 佐藤 源之 阿部 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.8, pp.302-309, 2017-08-01

現在,トンネルや道路などインフラの劣化が社会問題化しており,異常箇所を効果的に早期発見することが必要とされている.このような社会インフラの検査センシングには地中レーダが有効である.しかしながら,例えば,鉄筋コンクリート下の空洞検出のような電磁波が多重散乱しレーダ画像が複雑になるような場合では,信号処理をしても空洞の判定が困難で熟練技術者による判読が必要になる問題があり,得られたレーダ画像の検証や検出可能な物体サイズなどの理論的検討が必要であった.そこで本研究では,地中レーダを用いた鉄筋コンクリート下の空洞を客観的・定量的に検証するために,GPUを用いたFDTD法による高速地中レーダシミュレーションにより空洞検出特性を明らかにする.
著者
金 成主 成瀬 誠 青野 真士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.6, pp.261-268, 2017-06-01

我々は先行研究において,意思決定問題を物理的に解く新しい計算原理である「綱引き原理」を提案した.本研究では,無線通信におけるチャネル割当ての全体最適解の計算を,「ユーザ内意思決定」と「ユーザ間相互作用」を表現する綱引き原理の導入により物理的に実現できることを示す.そこでは,複数のシリンダ内の二種類の流体のダイナミックスが利用される.この「全体最適意思決定装置」を使うことにより,膨大な計算コストが要求される評価値の計算を流体の物理プロセスに委ねることができ,高々ユーザ数に比例したコストを要する操作(シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで,全体最適解を得ることができる.これは,自然現象の揺らぎ,保存則,アナログ性から,知的能力を引き出す新しい試みである.
著者
金田 悠紀夫 相磯 秀夫 淵 一博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J52-C, no.5, pp.267-273, 1969-05-25

タイム・シェアリング・システムにおいては,多くのユーザ・プログラムに主記憶装置を有効に割当てる必要がある.その一方式として擬似ページ・アドレス方式を本論文で提案する.本方式は筆者らが開発したETSS(ETL's Time-Sharing System)に採用されていて,ほとんど特別なハードウェアなしでページングを実現し,ページングの利点を生かしてオーバヘッドの軽減に役立っている.またその効率についてもユーザ・プログラムがランダムおよびラウンド・ロビンの順で実行されているとした場合について統計的解析を行ない,その一般解が得られたのでそれを示す.また若干の計算例も得られたので,擬似ページ・アドレス方式の効果を示すものとして図2~図7に示した.
著者
今野 海航 園田 潤 金澤 靖 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J98-C, no.5, pp.87-95, 2015-05-01

FDTD (Finite-Difference Time-Domain)法を用いた実環境における電波環境解析を実現するために,撮影した対象環境中の物体までの距離情報が直接得られる深度センサと,三次元点群処理のライブラリであるPCL (Point Cloud Library)による三次元復元技術を応用した実環境FDTD数値モデル構築システムを開発する.本システムは,(1)深度センサで測定された距離情報からPCLにより深度センサを基準にした相対座標を取得し,(2)得られた相対座標と対象環境中の基準平面から深度センサの傾き角を算出することで対象環境中の水平垂直面を基準にした絶対座標を計算し,(3)ポイントクラウドデータが存在する三次元セル上に電気定数を与えることでFDTD数値モデルを構築するものである.本論文では,実際に室内二つの対象環境でFDTD数値モデルを構築し,三次元座標の精度や処理時間を評価している.
著者
堀部 雅弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J97-C, no.2, pp.51-60, 2014-02-01

本論文では,近年利用が進むサブミリ波・テラヘルツ波領域のベクトルネットワークアナライザの(VNA)測定確度(不確かさ)を改善及び解析する手法を報告する.一般に,VNAの測定確度は,校正用標準器等の不完全な特性や接続部での反射等による偏差と,VNAの安定性や被測定物のテストポートへの接続の繰り返し性などのばらつきにより決まる.本論文では,サブミリ波・テラヘルツ波領域の測定における測定確度低下の要因を抽出・対策を行うことで,高精度化するとともに,VNAの測定確度(不確かさ)を決定する要因の紹介と解析方法を解説し,例として,測定周波数範囲750 GHz 〜 1.1 THzのWR-1.0導波管VNAについて,不確かさの解析結果を紹介する.
著者
小関 勇気 園田 潤 金澤 靖 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J96-C, no.6, pp.151-155, 2013-06-01

これまで,室内モデル等によるFDTD解析が行われているが,解析結果の現実的かつ三次元可視化の高速化に課題があった.本論文では,SfMシステムにより構築した実環境モデルと,データ転送量を削減したマルチGPUによるFDTD法を組み合わせ,実環境下における三次元ポインティングベクトル分布の高速可視化を実現する.
著者
新井 俊希 北村 和也 米内 淳 大竹 浩 林田 哲哉 丸山 裕孝 バン クイク ハリー 江藤 剛治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J94-C, no.9, pp.252-260, 2011-09-01

最高撮影速度が200万枚/秒の30万画素超高速度CCDを開発した.この超高速度CCDはフォトダイオードと読出し用垂直転送路の間にフォトダイオード1個につきそれぞれ144個のCCDメモリを配置した特殊な構造により構成される.全画素一斉の並列動作で信号電荷をCCDメモリに記録することで超高速度撮影が可能になった.超高速度CCDの最高撮影速度を見積もるため,フォトダイオード中の電荷の移動時間により制限される最高撮影速度と,CCDメモリに印加される電圧波形がなまり,電荷転送容量が低下しその結果飽和信号レベルが低下することで制限される最高撮影速度について検討を行った.その結果,電圧波形なまりに起因する飽和信号レベルの低下が最高撮影速度を制限する主要因であることが明らかになった.対策として分割駆動と配線抵抗の低減について検討を行い,いずれも効果的であることを示した.計算結果を踏まえて,分割駆動の分割数を8とし画素配線抵抗を2分の1に低減することを行った超高速度CCD-V6を新たに設計し素子を試作した.駆動評価実験の結果,飽和信号レベルは30万枚/秒まで100%を維持し,100万枚/秒において50%,200万枚/秒において13%が得られていることを確認した.200万枚/秒におけるダイナミックレンジは36.8 dBであり,映像信号6ビット相当が得られていることを確認した.
著者
奥村 治彦 内田 龍男 金子 節夫 下平 美文 内池 平樹 服部 励治 中西 洋一郎 山崎 映一 中本 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J92-C, no.8, pp.433-453, 2009-08-01

2002年には,金額ベースでは,FPD全体の市場がCRT市場を超え,特に成長が著しくFPDの活躍の場である携帯電話を中心としたモバイル市場はもとより,最近になって,CRTの最大市場であるテレビ受像機市場でも逆転現象が発生するまでにFPD市場が急成長してきた.このような中,本論文では,中心的な役割を果たしてきたCRTと,その主役を引き継ぐFPD(LCD,PDP,EL,FEDに分類)について,ここ40年のそれぞれの技術進化を振り返り,将来を展望する.
著者
渡辺 重佳
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J92-C, no.8, pp.467-476, 2009-08-01

本論文では現在の半導体メモリ市場の主流製品であるDRAM,フラッシュメモリと今後の大きな市場が期待される FeRAM ,MRAM,PRAM, ReRAM 等の新型メモリの過去40年の歴史とその将来展望に関して述べる.DRAMではメモリセルの構造とメモリセルサイズの縮小が重要であり,その高速性のため,パソコンの主記憶等に使われる.マルチメディア情報の記憶媒体として使われるフラッシュメモリは不揮発性特性と低コスト技術が重要であり,低コスト化のため多値化,積層化が進められている.新型メモリは近い将来は各メモリ固有の研究開発状況に合わせた製品化が重要だが,将来はDRAMとフラッシュメモリの特性を併せ持つユニバーサルメモリの実現が期待される.