著者
石原 達也 中村 幸博 武藤 伸洋 阿部 匡伸 下倉 健一朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1434-1449, 2011-08-01

住居におけるユーザとユーザ周辺の家電・家具等のモノの位置を取得できるセンサシステムを屋内に導入するためには,センサの導入コストを抑える仕組みが必要となる.本論文では,そのような要求を満たすものとして,ユーザ周辺の家具・家電等にユニークなIDが付与されたタグを配置し,ユーザが所持する計測端末で得られたタグのIDとタグとの相対距離情報を用いてそれら空間配置を推定する手法を提案する.具体的には,SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を応用し,距離のログデータから選択された距離情報の集合から計測端末位置を算出するモーションモデル用いて,計測端末とタグの位置並びにタグの推定位置に対するゆう度を同時に算出する.本提案手法の特徴は,計測端末とタグとの相対関係のみから各タグ位置を独立に推定すること.そして,タグのゆう度を監視することでタグが設置されたモノの移動を検知し,日常生活において起こり得るモノの移動に対して適応的な位置修正を行うことにある.超音波センサを用いた実験では,タグが設置されたモノを移動させた場合においても,計測端末とタグの位置推定誤差が200 mm程度で推定できることを確認した.
著者
高橋 勇 宮川 勝年 小高 知宏 白井 治彦 黒岩 丈介 小倉 久和
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.11, pp.2989-2999, 2007-11-01

従来,不正な剽窃行為は学習者間で行われていた.しかし,近年ではWebページの一部をコピー&ペーストして不正なレポートを作成する学習者が増えている.このような不正なレポートへの対策には,剽窃元のWebページの探索から剽窃箇所の学習者への提示までを含めたトータルな支援システムが必要である.本研究では,Web検索機能,剽窃評価機能,剽窃箇所特定機能の三つの機能からなる支援システムの枠組み,及び,n-gramを用いた類似度評価手法を応用したシステムを提案し,実装した.更に,これを用いてWebから擬似的に作成した剽窃レポートと,実際の授業で回収されたレポートを用いた評価実験を行った.その結果,前者の実験ではすべての剽窃元Webページが検出され,後者の実験では,本システムで剽窃の可能性が高いと判断されたレポートは,手作業・主観的評価による評価でも剽窃と判断されることが示された.
著者
五十嵐 洋介 福井 和広
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.7, pp.1125-1134, 2011-07-01

時系列画像において抽出・追跡された特徴点集合の座標情報から因子分解法によって得られる形状空間は,特徴点集合の三次元的な幾何関係を表現しており,視点や対象物の動きに対して不変である.本論文ではこの形状空間の特性に着目し,形状空間同士の構造的な類似度に基づく物体認識のフレームワークを提案する.形状空間は特徴点数を次元とするベクトル空間中の三次元部分空間として得られるので,二つの形状空間の構造的な類似度は両者のなす正準角によって測ることができる.しかしながら,この類似度が意味をもって定義されるためには,二つの特徴点集合同士で特徴点が対応づけられている必要がある.この問題に対して,形状空間に付随して得られる直交射影行列を並べ換えることで対応付けを行う方法を提案する.提案する物体認識のフレームワーク及び対応付け法の有効性は,合成データを用いた性能評価,及びホクロなどの微小特徴に基づく顔認識実験により確認する.
著者
遠山 毅 松本 勉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.957-967, 2011-06-01

ステガノグラフィは,通信している事実を第三者に悟られないことを目的とし,無害なデータに真に伝えたい情報を埋め込む技術である.広く使われる可能性のあるXML文書はステガノグラフィの媒体として魅力的であり,その研究においては,埋込手法の埋込効率性の評価に加え,埋込の検出攻撃に対する安全性も評価する必要がある.本論文は,オフィススイート文書保存形式の一つであるODTファイルを,幅広く用いられるXML文書の例として埋込媒体に採用する場合,既存の埋込手法により達成し得る安全性の評価を行う.また,ODTファイルの編集ソフトウェアがODTファイルに与える特徴を考慮した新たなステガノグラフィの埋込手法を提案する.更に,この提案手法は既存の手法に比べ高い安全性をもつことを確認する.
著者
鶴田 雅信 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.977-988, 2011-06-01

手掛り語「会社概要」,及び,企業の公式ページのトップページURL一覧を入力とし,企業の基本情報を含むページの探索を行いながら,基本情報の属性を属性名,属性値の組の形で自動的に抽出する手法を提案する.提案手法は,企業の公式Webサイト全体からの属性抽出というタスクの一部を,基本情報ページの探索問題に置き換え,属性抽出の対象となるページ数を削減した上で,属性抽出を行う.そのため,Webサイト全体から属性抽出を行う場合に比べ,属性抽出手法そのものが単純であっても,良好な抽出を行うことが可能となることが特徴である.評価実験の結果,抽出された属性の精度は0.656,再現率は0.416,探索に成功したページのみにおける抽出結果の精度は0.781,再現率は0.625となり,幅優先探索によりページを探索するベースライン手法,及び,幅優先探索によって探索したページから,ナイーブベイズ分類器を用いて基本情報ページを選択するベースライン手法と比較して,良好な結果を示した.
著者
関口 達彦 川畑 秀明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.1017-1024, 2011-06-01

脳活動の計測手法と解析手法の発展により,Brain-Machine Interfaceのように脳活動から情報を取り出す技術の研究が盛んである.本論文ではその手法を対象物に対する「選好」の推定に適用し,商品(腕時計)のデザインを脳活動から評価する可能性について検討を行った.機能的核磁気共鳴撮像法(fMRI)によって計測した全脳の活動信号データを対象として,提示された個々の腕時計の画像に対する被験者の選好(好き嫌い)を推定したところ,「好き/嫌い」の2択で74.4%,「好き/どちらでもない/嫌い」の3択で54.2%とチャンスレベルよりも統計的に優位に高い正解率で選好を推定できた.以上のことから,脳活動を用いて商品のデザインに対する選好の推定が可能であることが示された.この結果から,選好評価に応じた脳活動部位の解析の信頼性について検証する方法を提示するとともに,アンケート調査結果の信頼性を明らかにするものとして脳活動の多変量パターン解析が有効であることを議論する.
著者
中野 雄介 近藤 悟 森谷 高明 大西 浩行 赤埴 淳一 寺西 裕一 西尾 章治郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.5, pp.780-790, 2011-05-01

ネットワーク上の複数PCの計算リソースを用いるグリッドコンピューティングに関する研究が行われてきた.特に,Webブラウザを介して計算リソースを利用することで,より多くのPCの計算リソースを利用できる有効な手法がある.しかし,PCの負荷を考慮せずにリソースを利用するため,ユーザのWeb閲覧を妨げる可能性がある.加えて,計算対象がXMLのような複雑な構造をもち,問題分割の時間を考慮する必要がある場合,効率的に計算できないと考えられる.本論文ではこのような課題を解決する,Web閲覧者のPCの余剰リソースの効率的利用の手法を提案する.本手法はWebブラウザの負荷に応じて計算速度を動的に変化させることで,ブラウザユーザのWebページ閲覧に対する影響を考慮した計算を行う.これにより,Webアプリケーションを提供するために必要なリソースを,Webアプリケーションユーザ自身から収集することが可能となる.また,計算対象問題の分割に掛かる時間を考慮した効率的な問題の分配を実現する.
著者
中林 智之 佐々木 敬泰 大野 和彦 近藤 利夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.646-656, 2011-04-01

近年,モバイル端末等の消費エネルギーの増大が問題となっており,低消費エネルギーと高性能の両立が要求されている.そこで我々は,その要求を満たす手法の一つとしてVSP(Variable Stages Pipeline)を提案している.VSPはパイプライン段数を動的に変化させることで低消費エネルギーと高性能の両立を目指す手法である.また,LDS-cellという特殊なセルを導入することでパイプラインステージ統合によって増加する回路内のグリッチを削減している.しかし,LDS-cellはグリッチを低減するためにクロックを供給する必要があるため,クロックトリーの消費エネルギーが増大する危険性がある.そこで本論文ではLDS-cellの駆動によるオーバヘッドを低減する手法として,LDS-cellへのクロックゲーティング適用と,高性能セミスタティックTSPC DFFをベースとした改良型LDS-cellを提案する.更に,二つの提案手法を併用した場合に発生する問題点を解決する手法も提案する.提案手法を実装し,評価を行ったところ,従来VSPから18%消費エネルギーが低減できた.
著者
柴田 誠也 本田 晋也 冨山 宏之 高田 広章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.657-670, 2011-04-01

組込みマルチプロセッサシステムの設計空間探索を効率化するためのシステムレベル設計環境 SystemBuilder-MPを開発した.本環境は,新規開発したマルチプロセッサ対応実装合成機能と複数の外部ツールを組み合わせ,設計から評価までのシステムレベル設計全体を支援する.実装合成機能は,プロセッサや専用ハードウェアへの割当を考えない高い抽象度で記述された機能記述と,ハードウェアアーキテクチャ,及び機能とハードウェア間のマッピングを入力として,組込みマルチプロセッサシステムの実装記述を自動合成する.合成結果は,SystemBuilder-MPが生成する外部ツール用設定ファイルを用いることで,手間なくシミュレーションやFPGAプロトタイプ実装により実行することができる.プロセスのマッピング変更,実装及び評価の繰返しを容易化することで,要求を満たすマッピングを探索する期間を短縮する.本環境を用いた設計の効率の高さを,MPEG-4デコーダの設計事例により示す.
著者
木下 航一 小西 嘉典 勞 世 川出 雅人 村瀬 洋
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.721-729, 2011-04-01

顔画像に対して,高速で高精度に形状モデルフィッティングを行う手法を提案する.形状モデルのフィッティング手法は多数提案されているが,顔画像に対するフィッティングは影や表情変化などのノイズの影響を受けやすく,高精度な結果が得られにくいという課題があった.また多数の繰返し演算を必要とするため,リアルタイム処理の実現は難しかった.我々はこれらの課題に対して,(1)形状モデル上でのサンプリング点の構造的配置,(2)特徴量による形状パラメータの摂動量推定,を行うフィッティング手法を提案する.(1)によってノイズの影響を受けにくい局所特徴量を有効に活用でき,影や表情変化などに対する頑健性が向上する.また(2)によって特徴量から一度の行列演算で形状パラメータの修正量を求めることが可能となり,処理時間が削減できる.公開データベースによる実験の結果,従来手法と比較して約20倍の高速化を実現しつつ,影や表情変化などのノイズのある顔画像に対して従来手法を上回る検出性能を示した.
著者
吉安 祐介 山崎 信寿
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.3, pp.582-592, 2011-03-01

本論文では,一般的なディジタルカメラとその内蔵フラッシュで撮影した複数の画像から,身体3次元形状を簡便かつ詳細に復元する方法を提案する.本手法では,身体に貼り付けたマーカの3次元位置,画像のシルエット及び陰影から推定した法線に適合するように,あらかじめ用意したテンプレートメッシュを変形する.本研究の主な貢献は,(1)内蔵フラッシュでフォトメトリックステレオを実現するための光源変化の獲得方法と,(2)陰影から推定した法線に対してメッシュを正確かつ効率的に適合させるアルゴリズムである.計測手法の妥当性を確認するために足長250 mmの足模型を計測し,市販のレンジスキャナと比較した結果,両データ間の距離は平均1.4 mmとなった.また,計測した被験者9名の足型から甲の表面長さを推定し,巻尺の計測値と比較した結果,その差が約2%となり,ISOの定める最大許容誤差程度であることを確認した.最後に,計測した足形状から個人に合う靴型モデルを自動的に作成する方法も示した.
著者
磯村 直樹 鳥海 不二夫 石井 健一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.4, pp.542-551, 2009-04-01

近年,人間と対話のできるコンピュータ(対話システム)は様々な分野で利用されている.このようなシステムの実現のためには,性能の定量的評価が不可欠である.チケット,切符の予約などを目的としたタスク指向型対話システムでは,客観的・定量的な評価法がある程度確立されているのに対し,雑談などを目的とした非タスク指向型対話システムではアンケートなどの主観的な評価法が用いられているにすぎない.本論文ではテキスト対話を取り上げ,非タスク指向型対話システムの客観的・定量的な評価法を提案する.本論文では,いわゆる対話の「浅い構造」にのみ着目し,発話間のつながりという最低限の自然さを評価することを試みる.本手法では,人間同士の対話は自然で理想的な対話であると仮定し,人間同士の対話に発話タグを手動で付与し,付与したタグの系列を学習したHMMを作成する.実験の結果,HMMによって複数の非タスク指向型対話システムの性能を比較評価できることが確認された.
著者
田邊 喜一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.2, pp.505-508, 2011-02-01

スイッチ操作に利用される随意性瞬目と,誤入力の要因となる自発性瞬目について,瞬目波形の形状特徴パラメータを比較した.従来の指標である持続時間だけでなく,振幅・速度・面積を利用することにより,両瞬目を判別できる可能性が示唆された.
著者
大野 健彦 中谷 桃子 中根 愛 セン ユージン
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.94-106, 2011-01-01

情報家電の利用時,ユーザが「作業にうんざりする」と感じる場面がしばしば登場する.このような状態を検出し,その発生原因を特定,解消することは情報家電の使いやすさを向上させる上で重要な役割を果たす.特に利用開始前に必要な接続・設定作業には,うんざりしやすい様々な要因が含まれる.本研究では情報家電の接続作業におけるうんざり状態の要因を明らかにすることを目的として,ビー玉評価法と呼ぶ「うんざり」状態を検出する簡易な方法を考案し,情報家電の配線作業に適用した実験について述べる.実験の結果,うんざりする程度は人によって大きく異なること,またユーザがマニュアル読解時,特に適切なページにたどりつけない場合にうんざりする場合が多いことが示された.またビー玉評価法がこのような作業の評価に適切であることが示された.
著者
峯松 信明 櫻庭 京子 西村 多寿子 喬 宇 朝川 智 鈴木 雅之 齋藤 大輔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.12-26, 2011-01-01

近年の計算機性能の飛躍的な向上により,大規模語彙を対象とした音声認識は実用段階を迎えている.音声合成においても話者性や発話スタイルを制御できる合成方式など,種々の応用場面を念頭においた技術開発が行われている.その一方で,音声工学研究の目的を「人間に匹敵するような」音声言語情報処理能力の計算機実装と考えた場合,人間と機械との間には,今なお,大きな溝があることも指摘されている.本研究ではまず,現在の音声認識・音声合成相当の情報処理を行う人間が現に存在した場合,その人間の挙動は,音声言語の獲得に困難を示す重度自閉症者の挙動と類似するであろうことを指摘する.その上で,(定型発達を遂げた)人間らしい音声情報処理の実現に向けて,現在の音声技術に欠けている基礎技術は何であるのかを幅広い視点から考え,欠損技術の一つとして「音声に含まれる言語的情報を,非言語的情報から音響的に分離して抽出する技術」を主張する.と同時に,その実現に向けて一つの技術的提案を行い,いくつかの実験結果を述べる.
著者
筧 康明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.3-11, 2011-01-01

近年のインターネット環境の発展に伴い,より自由な表現が可能になったことで,新たなWeb環境とのかかわり方を設計することが重要となってきている.特に,実世界とWeb世界の乖離を解消するために,実世界とのつながりや,他のユーザとの緩やかなつながりを提供することが重要な課題とされる.このために,本研究では,(1) Web上のアクティビティの視覚化,(2)実世界情報の取得と視覚化,(3)実世界と関連づけた情報提示の三つの要素をアプリケーション上に付与し,実世界指向Webアプリケーションを提案する.本論文では,Webと実世界をつなぐ試みとしてこれまでの筆者らの試みを紹介するとともに,それらの運用を通した考察を行う.
著者
中田 篤志 角 康之 西田 豊明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.113-123, 2011-01-01

我々は会話中に,視線,指差し,うなずきといった様々な非言語行動を行っている.それらの非言語行動は会話の制御に使われていると考えられ,その出現パターンには一定の構造がある.本研究ではこれを会話構造と呼ぶ.本研究では,会話参加者らによる非言語行動出現の時間構造をN-gramで表現し,会話記録のデータから会話構造を自動抽出するインタラクションマイニングの手法を提案する.そして,提案手法を用いてポスター発表会話とポスター環境自由会話という2種類の会話状況における会話構造の自動抽出を試みた.その結果,発話者は非発話者より指差しが多い,とか,うなずきの後に相槌を行うことが多いといった会話構造は二つの会話状況に共通して見られる一方で,沈黙の後に発話を続けるのは元の発話者であるという会話構造はポスター発表会話特有のものであるといったことを確認することができた.
著者
西本 卓也 渡辺 隆行
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.209-220, 2011-01-01

視覚障害者のコンピュータ利用に適した超早口音声の音質を改善することが望まれている.しかし超早口音声の評価のためには,聞き手の慣れの効果の考慮が重要である.本研究では親密度を統制した超早口音声の聴取において(1)実験の途中での親密度条件の変化,(2)親密度に関する教示の有無,の要因が聞き手の課題への慣れに与える影響を検証した.約21モーラ/秒という超早口音声の聴取における了解度と心的負荷に着目した実験から,「慣れによって親密度が高いという自覚が促された場合に,特にトップダウン情報としての心的辞書へのアクセスが促進され,その結果として了解度が高くなり心的負荷が少なくなる」という仮説を支持する結果が得られた.
著者
國信 茂太 半田 恵一 佐々木 康 飯窪 孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.312-323, 2011-01-01

ノートPCのきょう体内に様々な配置制約をもつ部品をコンパクトに配置するための配置案を算出するシステムを提案する.提案する部品配置設計システムは,与えられた幅・奥行でできるだけ厚みの薄い配置案を算出する.提案システムには,開発コストや重さ等に影響するメイン基板のサイズを小さくする機能がある.また,設計者に選択の幅を残すため,複数の配置案を算出する.提案システムでは,PCのきょう体は五つの配置層(二次元平面)から構成されると考え,部品は,まず鉛直方向の配置位置制約に対応した配置層に,配置制約及び配置要求を考慮して配置される.配置層への部品配置は二次元平面上の配置位置を決めることに対応する.そして,配置層に配置された部品を三次元に集積することで三次元の部品配置案を得る.実験の結果,部品数が54の高機能・多機能AVノートPCの場合,約200秒で実際のPC設計者が入力する許容最大厚みを下回る配置案が10程度得られることを確認した.
著者
後藤 敏行 田村 直良 立野 玲子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J93-D, no.10, pp.1947-1957, 2010-10-01

電子楽譜の普及によりインターネットを経由して楽譜情報にアクセスできる環境が整ってきた.これに対して,視覚障害者が用いる点字楽譜はいまだ入手が困難である.筆者らは,電子楽譜( MusicXML )から点字楽譜を生成する自動翻訳システムを研究開発し,ホームページで公開するとともに,システムの評価と拡張を進めてきた.本研究では,交響曲などを含めた多様な楽譜に対応し,点字楽譜における短縮表現などの多様な表現形式を取捨選択できるように自動翻訳手法の機能拡張を行うとともに,インターネット上の電子楽譜を翻訳して提供する機能を開発した.本論文では,これらの機能と利用状況から示されたシステムの有用性について報告する.