著者
平井 有三 落合 辰男 安永 守利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1185-1193, 2001-06-01
被引用文献数
9

ディジタル回路を用いて, すべてのニューロンが非同期に動作するパルス密度型ディジタルニューラルネットワークシステムを開発した.システム規模は, 1008個のニューロンが7ビットの精度をもつ100万個以上のシナプスで相互結合されたハードウェアであり, 世界最大規模のものである.本システムの特徴は, ディジタル回路を用いながら個々のニューロンの動作が非線形1次微分方程式に従うことにある.したがって, 1000次元の非線形連立1次微分方程式を連続時間でしかも並列的に解くことができるシステムとなっている.1000個を超えるニューロンを物理的に相互結合するために, パルス密度を用いて信号線数を削減し, シナプス結合係数の精度を7ビットに抑え, シナプス出力の空間加算をパルスのOR回路で簡略化するなどの手法を用いた.これらの簡略化にもかかわらず, 手書き数字を用いた最近傍法による識別実験結果は, 浮動小数点演算を用いたワークステーションと比較して遜(そん)色がないことがわかった.本システムはインターネットに接続されており全世界からアクセス可能である.ホームページアドレスは, http://www.viplab.is.tsukuba.ac.jp/である.
著者
安永 守利 高見 知親 吉原 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2280-2292, 2001-10-01
被引用文献数
7

大量な画像データに対する高速な認識処理は, 産業の様々な分野で要求されている.我々は, 画像認識処理に内在している並列処理可能性に着目し, FPGA(Field Programmable Gate Array)の書換え可能性を利用した細粒度高並列な専用付加ハードウェアにより, 高速認識処理を実現しようと考えた.このために本論文では, 統計的パターン認識手法の一つであるParzen Window法をハードウェア化のために拡張することを提案する.この提案手法により, 画像パターンデータから直接パターン認識回路を生成することができる.これにより, サンプルパターン数と同数の並列度を有する専用回路が, 複雑な演算器等を使用せずに構成できる.したがって, 高速なパターン認識処理を小規模なハードウェアで実現できる.パターンデータを直接回路化することは, 対象問題ごとに異なる集積回路(1問題1品種)を最適設計することである.これは, 従来の方法, すなわちフォトマスクベースの集積回路(汎用1品種)を作成し問題の個別性にはソフトウェアで対応する方法とは根本的に異なる.このような個別対応の専用ハードウェアは, FPGAを利用することで実現できる.本論文では提案ハードウェアを試作し, 顔画像認識を題材に本方式の有効性を評価する.具体的には, 実験結果をニューロコンピュータや超並列計算機を用いた従来技術と比較し, 認識精度, 動作速度(認識処理時間), 回路規模の観点から評価する.その結果, 認識精度は従来手法とほぼ同程度(ベンチマークデータで95.8%)であったが, パーソナルコンピュータより2, 000倍以上高速で, 更に, ニューロコンピュータや超並列計算機より55〜125倍高速なナノ秒オーダの認識処理が可能なハードウェアを1ボードで実現することができた.
著者
藤田 昌彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1278-1290, 2005-07-01
被引用文献数
2

運動学習理論の新しい枠組みを提案する.随意運動の計画段階では, 特に弾道的な運動では運動実行段階も含めて, 視覚系や末梢部からのオンラインフィードバックに依存しない前向きの情報フローで処理を行うのが主であり, 運動-誤差評価-修正運動を繰り返して間欠的に学習を進めていると思われる.基本的な考えとして, 最初の運動指令が修正運動指令を少しずつ取り込むなら, 運動学習はうまくいくはずである.場所符号化された運動指令のユニット群から適切な修正運動ユニットを学習信号が指定し, その修正運動指令の成分を長期減弱の学習機構を通して小脳が皮質下降路や大脳皮質内回路の運動指令に徐々に付与するというフィードフォワード連合学習を提案する.付与する指令が修正運動でなく共同運動であれば階層的な連合学習回路によって運動協調を組織できる.提案する学習の回路と機構に基づいて, 眼球運動saccadeにおける適応を小脳皮質の長期減弱機構で説明する.
著者
畑 幸一 栄藤 稔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.56-63, 2001-01-01
被引用文献数
1

2枚の画像の画像相関を基準とするエピポーラ幾何パラメータ推定方法を提案する.本手法の特徴は, 画像間の特徴点対応を用いた従来のエピポーラ幾何パラメータ推定法と異なり, 画像内のブロックマッチングの結果を2次関数によって近似したパラメトリックブロック相関関数を用いることである.本手法では, まず, 2枚の画像でブロックマッチングを行い, パラメトリックブロック相関関数を得る.次に, 得られたパラメトリックブロック相関関数をエピポーラ幾何パラメータによりロバスト推定を用いて最小化し, エピポーラ幾何パラメータを推定する.本論文では, 線形解法に基づいてエピポーラ幾何パラメータを推定する手法を述べ, それを初期値として非線形解法に基づいてエピポーラ幾何パラメータを推定する手法を述べる.最後に, 実画像を用いた実験によって, 画像相関が高いエピポーラ幾何パラメータが推定できることを示す.それにより, 本手法は, 画像符号化の符号化効率向上や画像合成の画質向上に有効であることを確認した.
著者
興梠 正克 蔵田 武志 坂上 勝彦 村岡 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2293-2301, 2001-10-01
参考文献数
13
被引用文献数
24

本論文では, ライブ映像上への注釈情報の重ね合せ提示を実現するため, パノラマ画像群とその各画像上に与えられた注釈情報, 各画像間の隣接関係を情報源として用いるパノラマベーストアノテーション手法を提案する.提案手法は, 参照するパノラマ画像と入力映像の位置合せを行い, そのパノラマ画像上の注釈情報を映像上の対応する位置に重ね合せ表示する.本手法は, 最初に各パノラマ画像と入力映像の位置合せを行い, 入力映像の撮影地点に最も近いパノラマ画像を注釈情報の参照元として選び出す.その基準として画像間の位置合せによる輝度の平均2乗誤差(MSE)を用いる.以後は選択された参照パノラマ画像との位置合せ結果に基づいて注釈情報を提示する.カメラの視点が移動しても適切に注釈を提示できるようにするため, 参照パノラマ画像と隣接するパノラマ画像との位置合せを並行して行い, 隣接先のパノラマ画像がより良好な位置合せ結果を与える場合, これを以降の参照パノラマ画像として切り換える.この切換状況を監視することで, カメラの位置とその移動軌跡を推定することが可能である.提案手法を計算機システムとして実装して, その有効性と処理の実時間性について良好な結果を得た.
著者
三浦 高志 板垣 史彦 村上 聡 川島 深雪
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.2169-2174, 1999-11-25
被引用文献数
7

本論文は適応的直交変換を併用したLIFS符号化の問題点を指摘し,その改良法を提案する.これによって,同方式の符号化効率を劣化させることなく,エンコーダ及びデコーダの算術演算回数を減ずることができる.同時に,同方式において縮小変換の役割は極めて小さいことを指摘する.
著者
秋本 圭一 服部 進 井本 治孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1299-1309, 2001-07-01
被引用文献数
16 6

この論文では, CCDカメラを用いた画像計測手法で橋梁・船舶のような大型構造物の3次元形状を精密に測定する方法を示した. これによって将来, 仮組工程が省略できると多大のメリットが期待される, 計測対象物に反射ターゲットを貼り, いろいろな方向からストロボ撮影する. 写真のターゲット座標から共線条件式をつくり, これを繰返し最小2乗法で解いて, ターゲットの対象空間座標を求める. このとき基準点がないことから正規方程式の係数行列にランク落ちが起きるため, 人為的な拘束条件を付加するフリーネットワーク解法を用いた. 大きさ600×400×300mmの試験対象を用い, 画像枚数を変えて得られる精度を比較した. 検証のために精密測定機での計測値と比較したところ, 差の2乗平均値は8枚以上の画像で40μm以内であった.
著者
村上 和人 成瀬 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.918-926, 2000-03-25
被引用文献数
11

本論文では, Hough変換を利用した高速な直線検出法について述べる.提案するアルゴリズムでは, 人の視覚の中心視特性を部分的に利用する.すなわち, まず, ある注目する局所的な窓領域内である程度の精度を保証する直線候補をHough変換によって抽出する.次いで, その候補線分を延伸して作られる線分候補存在領域内で, 検証処理を行って直線を検出する.そして, この局所的な窓領域を逐次的・適応的にシフトすることにより, 画像全体から直線検出を行う.これからの処理により, Hough変換の際に生起する量子化誤差の吸収を行うとともに, 従来型のHough変換による直線検出法が苦手とする短い線分抽出も可能にした.全体として, 従来型のHough変換の精度を保証した上で, 高速化(およそ数分の1から10分の1程度の計算コスト)を実現し, 並列処理によるいっそうの高速化の可能性を示した.
著者
秦泉寺 久美 渡辺 裕 岡田 重樹 小林 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.758-768, 2001-05-01
参考文献数
13
被引用文献数
15

新しい画像符号化標準のMPEG-4が標準化されつつある。これは、低いレートにおいてはH.26XやMPEG-1,2に代表される従来符号化法と比較してより高品質の画像を提供するものである。また、新しい機能であるオブジェクト単位の符号化を提供するものである。筆者らはインターネット等に適用できる超低ビットレート符号化方法の開発を行っている。従来法に比べて劇的な符号量削減が可能であるMPEG-4の符号化ツールである「スプライト符号化」に着目し、前景、背景の2層からなるビデオオブジェクトの自動抽出アルゴリズムを提案する。生成した前景、背景のビデオオブジェクトをそれぞれMPEG-4オブジェクト符号化並びにスプライト符号化に適用(スプライトモード)して、スプライトを用いないMPEG-4 Simple profileの符号化法(ノーマルモード)と比較検討を行った。特に、フレームレートや前景オブジェクトの割合を変化させ、符号量に与える影響を調査した。その結果、フレームレートに関係なく、前景比率が画面全体の10〜15%程度である場合にMPEG-4通常符号化方法の1/4〜1/2程度の符号量で同程度の画質を実現できることを確認した。また超低レート(128kbit/s、64kbit/s)においてフレームレート、客観画質の評価を行ったところ、同程度のSNRで倍以上のフレームレートを達成できることを確認した。
著者
関岡 哲也 横川 勇仁 舩曳 信生 東野 輝夫 山田 朋弘 森 悦秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.459-470, 2001-03-01
被引用文献数
24

唇の輪郭線は, 口腔外科における口唇裂症などの術式検討や術後トレースに重要であり, シンプルかつ高精度のモデルでの自動抽出が望まれている.そこで本論文では, 顔画像を入力とし, 前処理, 1次検出, 2次検出の3段階の処理を経て, 唇の輪郭線を関数で合成する手法を提案する.まず前処理では, 顔画像から唇の位置を検出し, おおよその大きさを決定する.次に1次検出ではDeformable templateマッチング法により唇のおおよその輪郭線を探索する.そして2次検出では, 遺伝的プログラミングを用いて置換と分割によって詳細な唇の輪郭線を探索する.本提案手法が従来の動的輪郭モデル(SNAKES)よりも精度, パラメータ数, 探索時間の点で優れていることを一般人の唇, 口唇裂症患者の唇のサンプルに対するシミュレーションにより示す.
著者
橋場 参生 上見 憲弘 及川 雅稔 山口 悦範 須貝 保徳 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1240-1247, 2001-06-01
被引用文献数
16

電気式人工喉頭は, 癌(がん)などの理由によって喉頭を失った人々の重要な発声補助機器である.しかし, 電気式人工喉頭で発声した音声は, 単調で非常に不自然であり, その改善が望まれていた.また, 従来の電気式人工喉頭はすべて海外からの輸入品であり, 国産の製品は存在しなかった.我々は, この自然性の問題を解決するために, 電気式人工喉頭で発声した音声に抑揚を負荷する方法などを提案し, 実験を進める一方, 1993年より電気式人工喉頭の製品化に着手し, 1998年に国産初の電気式人工喉頭を実現した.開発した新型の電気式人工喉頭は, マイクロコンピュータを内臓しており, 抑揚のある自然な発声が可能であるほか, 音程のデータを利用して歌を歌うこともできる.本製品は, 既に1000台以上が利用されており, アンケート調査の結果, 約7割の購入者より良好な反応が得られている.本論文では, まず, 抑揚制御機能を備えた新型電気式人工喉頭の開発経過と機能について述べ, 次に, 購入者からの評価結果と今後の課題について述べる.
著者
岡部 孝弘 佐藤 いまり 佐藤 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1440-1449, 2005-08-01
参考文献数
25

画像を手掛りに光源分布を推定する逆問題はinverse lightingと呼ばれ, 鏡面反射成分, 拡散反射成分, 及び, 影(キャストシャドウ)に基づく三つのアプローチが提案されている. 本研究では, 影に基づく光源推定がなぜうまく働くのかを明らかにするとともに, どのような基底関数が推定に適しているのかについて議論する. まず, 球面調和関数を用いた推定法を提案して周波数空間における解析を行い, 影に基づく光源推定の利点と問題点を明らかにする. 次に, 周波数空間における考察に基づいて, コンパクトなサポートと疎な展開係数をもつHaarウェーブレットを用いた効率的な推定法を提案する. 最後に, 球面調和関数を用いた手法とHaarウェーブレットを用いた手法を比較した実験結果を報告する.
著者
守田 了 石原 由紀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1645-1654, 2001-08-01

ヒトの視覚は画素密度分布が中心窩に相当する近傍で高く,周辺にいくに従って,低くなっている.また周囲の状況を把握するためにオプテイカルフローが重要な役割をもっていることが報告されている.本論文では,中心窩視覚とオプティ力ルフローによる短期記憶とタスクの並列実行に基づく視点移動を提案する.車両が混雑していない状況下での運転時の視点移動を実現するためには,道路に沿った次のエッジへ移動する狭い範囲での視点移動と周囲の状況を把握する広い範囲の視点移動が必要である.このようにタスクに応じて注視の範囲を変更するために,タスクに応じた短期記憶を導入する.オプティ力ルフローから得られるlow-levelの特徴を用いて生成される短期記憶イメージを用いることによって,広い範囲の視野が得られることを明らかにする.実際に車両が混雑していない状況下での車両運転時の視点移動を簡易にシミュレートし,本モデルの有効性を示す.
著者
椋木 雅之 寺尾 元宏 池田 克夫'
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.1016-1024, 2002-06-01
被引用文献数
14

1本のスポーツ映像全体を通して見られる映像構成の規則性を利用することにより,個々のスポーツのドメイン知識を用いずに映像をプレイ単位に分割する方法を提案する.多くのスポーツには,ルールに従った繰返し構造があり,それを反映して,スポーツ映像にも規則的な繰返し構造が見られる.本研究では,この規則性に着目した.提案する映像分割手法では,フレーム単位の色とオプティカルフロー特徴量のカット内の平均と分散によってカットを記述し,それらを分類して識別子を付与する.識別子系列の出現回数をn-gramを用いて調べることによってカット間の連続性を表す結合度を算出する.結合度の谷で映像を区切ることによって,映像を,そのスポーツにおける1プレイに対応する部分映像に分割する.提案手法を様々なスポーツ映像に対して適用し,ドメイン知識を導入せずに1プレイに対応する区間に映像を分割できることを確かめた.
著者
舩冨 卓哉 飯山 将晃 角所 考 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1530-1538, 2005-08-01
参考文献数
8
被引用文献数
3

光切断法による人体の三次元形状計測では, 人が完全に静止できないことに起因する計測形状のひずみを軽減するため, 計測の高速化が図られてきた. これに対し, 本研究では, 形状計測中の体の揺れである身体動揺を部位ごとに計測し, これに基づいて計測形状を補正することにより, 計測の高速化をしなくても計測精度を向上させる手法を提案する. 実験により, 光切断法による計測精度が1mm以下であっても, 身体動揺の影響で計測形状の誤差が10程度になること, 提案手法では2mm程度の計測精度を達成できることを示した.
著者
翠 輝久 駒谷 和範 清田 陽司 河原 達也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.499-508, 2005-03-01
被引用文献数
11

テキストで記述された知識ベースを自然言語音声で検索するシステムのための効率的な確認手法を提案する.音声対話システムにおいては, 音声認識誤りや話し言葉特有の冗長性に対処する必要がある.構造化されたデータベースを検索するタスクではユーザ発話中のキーワードに着目した確認を行うことでこれらの問題に対処できるが, 一般的な文書を検索する際にはキーワードの明示的な定義ができないため, このようなアプローチを用いることは難しい.そこで本研究では, 文書情報検索における有用性の観点から, 音声認識結果中の確認を行うべき個所を同定するために, 検索整合度, 検索重要度の二つの統計的指標を導入する.これらの尺度を用いて, 検索に決定的な影響を与える個所は検索を実行する前に確認し, 結果として検索に影響を及ぼす個所は検索結果の違いに基づいて確認を行う戦略を提案する.この対話戦略をソフトウェアサポートを行うシステム「ダイアログナビ」のフロントエンドとして実装した.評価実験の結果, 単純に音声認識結果を用いる場合より検索成功率が向上し, また音声認識の信頼度を用いる確認戦略よりも効率的に確認が行うことができた.
著者
藤江 真也 江尻 康 菊池 英明 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.489-498, 2005-03-01
参考文献数
20
被引用文献数
14

音声による人間同士の対話は, 発話に含まれる言語情報に加え, 発話者の心的状態や対話調整的情報が韻律や顔表情, 頭部動作によって付加的に表現されることで円滑に進む.これら, 発話に付随して生起し, 言語情報の円滑な伝達を補助する情報をパラ言語情報と呼ぶ.本論文では, パラ言語情報として, 韻律と頭部ジェスチャに現れる発話者の発話態度を取り上げ, それぞれの認識手法を提案するとともにそれらを活用した対話ロボットを実現する.韻律による発話態度の認識は, 態度が肯定的か否定的かを, F_0パターンと音素の継続長を用いて識別する.頭部ジェスチャによる認識は, 肯定的動作をうなずき, 否定的動作をかしげと首振りとして定め, これら三つの動作をオプティカルフローを特徴量としHMMを確率モデルとして用いることによって認識する.実験により, これらの手法が人と同等の認識能力をもつことを示すとともに, これらを組み込んだ対話ロボットが従来にないリズムある効率的な対話を実現することを示す.
著者
川戸 慎二郎 鉄谷 信二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2577-2584, 2001-12-01
参考文献数
11
被引用文献数
26

人の表情やジェスチャの実時間認識のために, 顔表情に影響されずに顔の特徴点を検出・追跡し, 顔の位置と向きを推定することが必要である.本論文では, その端緒として両目の間の点(眉間)を実時間で検出する手法を提案する.本研究では実時間処理に重点を置く.肌色領域を抽出することにより処理領域を限定し, 新しく提案するリング周波数フィルタによって眉間の候補点とその画面内回転角を抽出する.各候補点を中心に周囲パターンをその回転角分だけもとに戻した後, 顔画像データベースから得られた眉間平均パターンと比較することにより, 真の眉間を選択する.データベースの顔画像(40人400画像)に対して誤検出率は1.5%であった.実ビデオ画像に適用して, Pentium III 866MHzプロセッサのPCで, 27フレーム/秒の処理速度を確認した.
著者
小越 康宏 小越 咲子 広瀬 貞樹 木村 春彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.959-964, 2002-05-01
参考文献数
6
被引用文献数
6

独居老人の介護,危険回避のために,家庭内での生活様態を把握することは非常に重要であるが,家庭内での振舞い認知についての研究は少ない.本論文では,赤外線センサを各部屋に分散配置し,部屋ごとに老人の滞在の傾向をとらえることにより家庭内での振舞い認知を実現し,新しく観測される老人の活動が,習慣的な振舞いとは異なる振舞いなのかを検知する手法を提案する.
著者
竹内 俊一 四分一 大介 寺島 信義 富永 英義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2675-2685, 2000-12-25
被引用文献数
8

ズームイン・ズームアウト画像シーケンスを用いた画像モザイク化処理によるロバストな絵画等の高精細ディジタル化手法を提案する.本手法は, 撮影対象の画像特徴やカメラの動きに起因するモザイク化処理のは破綻を回避できる点に特徴がある.本手法では, まずビデオ画像シーケンス獲得時に高解像度化が要求される領域と画像全体像の間でズームイン・ズームアウトを繰り返す撮影を行う.そして, その撮影画像フレーム間(隣接フレーム間及びanchorフレームと任意画像フレーム間)の平面射影変換推定を行い, その平面射影変換の推定精度に関して評価を行う.そして, 十分な精度で推定された平面射影変換行列を判定し, その行列のみを用いた画像モザイク化処理により, 平面静止画の高精細ディジタル化を実現する.本論文では実験を通じ, 本手法が, 平面射影変換推定の誤推定を回避し, 高精度かつ良好に平面静止画の高精細ディジタル化を実現できることを示した.また, 誤推定が生じない場合にも, 本手法が誤差累積の影響を受けず良好に画像モザイク化を実現できることも示した.