著者
内田 誠一 迫江 博昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2622-2629, 2000-12-25
被引用文献数
16

2画像の最大一致を与える2次元-2次元写像を2次元ワープと呼ぶ.パターン認識の立場から見れば, 2次元ワープは画像の弾性マッチング処理であり, 同時に画素をプリミティブとする構造解析処理でもある.筆者らは単調連続性の条件下で純粋に非線形な2次元ワープを探索する動的計画アルゴリズムを検討してきたが, 計算量が画像サイズの指数オーダとなる問題があった.その改善を目指し, 本論文では区分線形2次元ワープ法を提案する, 本手法では画像の各行のワープによる像は折れ線となる.ワープの最適化はこの折れ線の屈曲点の位置に関して行われる.最適ワープを求めるための計算量は単調連続2次元ワープの場合に比べて大幅に低減される.計算機実験を通じて, 本手法の有効性及び問題点を考察する.
著者
徐 光哲 金子 正秀 榑松 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1279-1288, 2001-07-01
参考文献数
6
被引用文献数
25

似顔絵は個人の顔の特徴を端的に表現したものであり, 新聞, 雑誌での利用のほか, ホームページへの掲載, エージェントとしての利用など多くの用途が考えられる. 本論文では, 各顔部品の形状特徴, 配置に関する特徴, 及び傾きに関する特徴を個別に制御可能な, より柔軟性の高い似顔絵生成方法について述べる. まず, 眉, 目, 口などの顔部品の各々について輪郭形状に対する固有空間を求める. これとは別に, 各顔部品の配置情報に関する固有空間を求める. 次に似顔絵を生成しようとする対象顔画像について, 各顔部品の形状, 配置の各々について平均顔との差を求め, 固有空間の基底(固有ベクトル)への直交展開を行う. 直交展開により求められた係数に従って強調倍率を決め, 固有ベクトルに対する強調処理を施す. 顔部品の傾きに対しては, 平均顔における顔部品の傾きとの差を2次関数を用いて強調する. これらの結果に平均形状, 平均配置, 及び平均の傾きを加えることにより, 似顔絵の形状を得る. 生成した似顔絵に対して主観評価実験を行い, 似顔絵の生成方法としての有効性を明らかにする.
著者
大垣 健一 岩井 儀雄 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1739-1749, 1999-10-25
参考文献数
15
被引用文献数
21

人の動きの計測はジェスチャ認識や,CGなどによる動きの再現に利用され応用範囲は広がっている.装着物を使用しない画像による動きの計測は対象の負担とならず,より望ましい.本研究では形状モデル,動きモデルを利用して時系列ステレオ画像から姿勢を推定する方法を提案する.具体的には時系列ステレオ画像から色と位置を利用した領域抽出により,頭と手の領域を抽出し,ステレオマッチングを行うことで対象の3次元位置を求める.頭と手の3次元位置と形状モデルを利用した逆運動学問題を解くことにより姿勢のパラメータを推定する.効率良くパラメータを推定するため動きモデルを用いたパラメータ予測を行い,シルエット領域とのモデルマッチングによる最適化を行う.また,合成画像に対するシミュレーション,実画像に対する実験を行い姿勢推定の有効性を示す.
著者
十河 卓司 石黒 浩 トリベディ モーハン M.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2567-2577, 2000-12-25
被引用文献数
16

本論文では, 複数の全方位視覚センサを用いた実時間人間追跡システムを提案する.このシステムは, 複数の全方位視覚センサによって得られる周囲360度を映した全方位画像から, 従来の3眼ステレオ視を拡張したN眼ステレオ視によって, 画像特徴を用いることなく複数の人間の位置を実時間で推定し追跡を行う.N眼ステレオ視においては, 人間のモデルの誤差と人間の方位角の観測誤差, 及び全方位画像に基づくステレオ視における位置推定精度の問題を考慮し, 更にそれを簡略化して種々の誤り補正を行うことで, 実時間でのロバストな位置推定を可能とする.この手法を用いてシステムを試作し, 人間の追跡実験を行うことでその有効性を確認した.
著者
安藤 英由樹 渡邊 淳司 稲見 昌彦 杉本 麻樹 前田 太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.2025-2033, 2004-11-01
被引用文献数
18

これまで,指先に皮膚触覚情報を提示する手法についての研究が数多く成されている.しかし,これらの研究においては,指の腹側から触覚提示を行う方式が採用されているため,実環境からの触覚情報にバーチャルな触覚情報を重畳することは困難である.そこで,指の腹側ではなく,爪の側から振動を加えることによって,指のなぞり動作時に実環境ヘバーチャルな凹凸感を重畳可能な触覚提示デバイスを提案する.本デバイスは,指先で物体をなぞるときに指先に振動が加わると,振動ではなく凹凸といった知覚が生じることを利用している.本論文においては,そのなぞり動作時に指腹部で起きている圧力変化について調べ,その知覚が生じるメカニズムについて考察した.そして,心理物理実験によって任意のバーチャルな凸状幅を提示するための振動タイミングを特定した.
著者
九津見 洋 内藤 榮一 荒木 昭一 江村 里志 新居 薫治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1149-1157, 2001-06-01
被引用文献数
17

インターネット利用初心者をメインターゲットとしたホームページ情報を簡単に入手するためのツールとして, ホームページの閲覧履歴からユーザの嗜好を学習し, その嗜好にあった新たなホームページを推薦するソフトウェア"ウェブナビゲーター"を開発したので報告する.ユーザ嗜好の学習では, 興味の変化に対する即応性と, 観測データに含まれるノイズに左右されない頑健性が重要である.本ソフトにおいては, 過去のユーザプロファイルと現在閲覧したホームページの特徴ベクトルを合成するパラメータを設定しており, よりユーザの興味の推移に合ったパラメータ値の決定が課題である.ここでは, ユーザが「興味がある」または「興味がない」と判定した複数のホームページを用いて, この割合のパラメータを学習により求める.このパラメータの時間的変化を観察することにより, ユーザの興味の推移を調べることができる.本論文では, 様々なユーザの興味の推移を実験的に調べることにより, 本ソフトによるホームページ推薦の妥当性を検証した結果について述べる.
著者
関本 信博 西村 拓一 高橋 裕信 岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.747-757, 2001-05-01
被引用文献数
8

動画像や音声などの大規模な時系列データベースの中から、逐次入力される時系列クエリーと類似した時系列区間を検出する方式、「Rutic法」を提案する。従来、逐次入力される時系列クエリーを扱う方式としてRIFCDPやIPMがあったが、これらは比較的計算量が多く、検索対象のデータベースが大きくなった場合のリアルタイム検索に不向きであった。本方式は逐次入力される時系列クエリーに対してフレーム入力ごとに検索出力を可能とする。また、本方式は計算量が少ないため、リアルタイムでのスポッティング検索を実現する。本論文では、Rutic法のアルゴリズムを示し、動画像検索に用いた実験を行い他方式と比較することでその有効性を検証する。
著者
徳田 恵一 益子 貴史 宮崎 昇 小林 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1579-1589, 2000-07-25
被引用文献数
65

HMM(hidden Markov model)による時系列の統計的モデル化手法は, 特に音声認識における音声スペクトル列の統計的モデル化手法として広く成功を収めている.HMMは, 離散的なシンボル列を扱う離散分布HMMと、連続値をもったベクトル列を扱う連続分布HMMとに大別されるが, 実際の観測系列には, 離散的なシンボルと連続値が時間的に混在したものがあり, 従来のHMMでこのような観測系列をそのまま取り扱うことはできない.音声のピッチパターンは, このような系列の例である.この問題を解決するため, 本論文では, 可変次元の多空間上における確率分布に基づいたHMMを新たに定義し, 拡張されたHMMのモデルパラメータの再推定アルゴリズムを与えている.拡張されたHMMは, 離散分布HMM, 混合連続分布HMMを特別な場合として含み, 更に離散シンボルと連続値が時間的に混合した観測系列をモデル化することができる.
著者
森 大樹 内海 章 大谷 淳 谷内田 正彦 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.102-110, 2001-01-01
被引用文献数
27

非同期多視点画像を用いて人物追跡を行う手法を提案する.提案手法では, 多視点で非同期に得られる観測情報をカルマンフィルタにより統合し人物追跡を効率的に行う.試作システムは, 非同期に動作して各視点の画像を処理する複数の観測ノードと人物の追跡を行う追跡ノード, 発見を行う発見ノードからなる.各観測ノードは追跡ノードから送られる予測観測値に基づいて画像特徴と追跡モデルの対応付けを行う.モデルに対応づけられた画像特徴は追跡ノードに送られ, 追跡モデルの更新が行われる.対応づけられない画像特徴は発見ノードに送られ, 新規人物の発見に用いられる.本手法により, 同期型システムに見られる視点数の増加による処理効率の低下, 観測間の冗長性の増大といった問題の発生を抑制しながら, 大規模な追跡システムの構築が可能になる.実画像を用いた実験により, 本手法の有効性を示す.
著者
竹村 安弘 多田羅 勝義 中島 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.2152-2162, 2005-10-01
被引用文献数
6

筋ジストロフィー患者らの人工呼吸中の神経筋疾患患者における人工呼吸回路不全の早期発見を目的として, 呼吸運動モニタ装置を用いた異常検出方法を提案し, その有効性を検証した. 使用した呼吸運動モニタ装置は非接触の三次元視覚センサを応用したもので, 長期間のモニタリングが必要な患者の使用に適している. 異常状態のデータ取得は被検者に大きな負担をかけるため, 正常状態と異常状態の識別領域を形成するための十分なデータが取得できないことから, 判定時点直前の一定期間の状態の生起確率をそれ以前の確率分布から推測し, それが設定された誤報率を下回ったときに異常と判定する方法を考案し, 更に過去の状態に関係なく呼吸停止を判定する機能を組み合わせて検出漏れを防ぐ仕組みとした. 被検者7名による延べ12回の終夜呼吸運動波形測定データにおいて, 本方法による検出テストを行ったところ, 患者の呼吸状態に合わせて60秒から600秒で異常検出を行うとともに, 誤報は3回に抑えられた. これらの結果から, 本方法は人工呼吸回路不全の発見に有効であることが確認された.
著者
後藤 真孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.12-22, 2001-01-01
被引用文献数
40

本論文では, 複数の楽器音が混在したモノラルの音楽音響信号に対して, メロディーとベースの音高(基本周波数)を推定する手法を提案する.従来の音高推定手法や音源分離手法は, たかだか三つの音の混合音しか扱うことができず, 市販のCDによるジャズやポピュラー音楽の音響信号には有効に機能しなかった.本手法は, 混合音下で安定に抽出できない基本周波数成分には依存せず, 意図的に制限した周波数帯域(メロディーは中高域, ベースは低域)にある高調波成分が支持する最も優勢な音高を求める.その際, 音源数を仮定せずにあらゆる音高の高調波構造が混在しているとみなして混合音をモデル化し, EM(Expectation-Maximization)アルゴリズムにより各高調波構造が相対的にどれくらい優勢かを推定する.更に, マルチエージェントモデルを導入し, 各エージェントが音高の時間的な軌跡を追跡することで, 最も優勢で安定な音高の軌跡を得ることができる.本手法に基づくシステムを実装して実験した結果, 市販のCDからサンプリングした実世界の音響信号に対し, メロディーとベースの音高をリアルタイムに推定できることを確認した.
著者
保坂 良資
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.571-578, 2003-04-01
被引用文献数
3

近年我が国では,患者環境での医療事故が増加している.その多くは,看護師の過誤とされている.しかし中には,物品の管理が適正であれば未然に防ぐことができた事例もある.患者環境では,患者を中心に各医用物品は従属的な関係にある.この従属性が満たされない場合,前述の事故が発生する.適正な患者環境モニタシステムが実現すれば,事故を予防することができる.ここでは,長波帯RFIDをタグとして利用することで,患者環境のモニタを可能とする方法について提案する.この方法では,患者及びそれに従属するすべての医用物品にタグを貼付する.これを,随時ワイヤレスでモニタすることで,他の患者に関連した物品が混在することを予防できる.また本システムではタグが自動的に認識されるため,その運用に際して,看護師らの業務負荷の増大は少ない.本論文では,改良を施した長波帯RFIDタグの認識特性を,現場を模した環境で検証し,実現可能性を確認した.
著者
中村 高雄 片山 淳 山室 雅司 曽根原 登
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.2145-2155, 2004-12-01
被引用文献数
18

電子透かし技術の応用として,印刷物などのアナログ画像中に埋め込まれている透かし情報を読み取り,アナログ情報からディジタル情報に導くシステムが提案されている.本論文では,近年普及してきたカメラ付携帯電話機を上記システムの端末として適用する際に必要となる,高速処理可能な電子透かし検出方式を提案する.提案方式は棒線を利用した幾何ひずみ補正方法と,微少な幾何ひずみと雑音に対するロバスト性をもつ高速な電子透かしアルゴリズムにより構成される.また,サービス運用上必要となる検出透かし隋報の信頼性についても定量評価方法を示す.実験の結果から,比較的計算処理能力の低い携帯電話機上で動作するJava Applicationとして提案方式を実装した場合でも,1秒程度の処理時間で処理を行うことが可能であることを示し,提案方式の有効性を確認できた.
著者
森山 剛 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1122-1131, 2001-06-01
被引用文献数
29

本論文では, テレビドラマ映像の心理的内容に基づいた要約映像の生成手法を提案する.従来の映像要約の研究では, カットなどの映像の構造を利用する方法やビデオ中のオブジェクトに基づく方法などがほとんどであった.一方テレビドラマに対しては, 映像コンテンツの心理的な展開(盛り上がりなど)を視聴者は重要視していると考えられるが, 映像の心理面に基づいた方法はまだ提案されていない.テレビドラマは, 物理的構成要素としてトラック構造(カッティング、登場人物のセリフ, BGM, 効果音)を有しているが, 演出家などは特定の心理的な印象を表現するために経験的知識に基づいてその時間的構造を巧みに操作していると考えられる.そこで本研究では, この経験的知識に基づき, 心理的に重要な箇所をそれに対応するトラック構造の時系列パターンとして検出し, 要約映像を生成する手法を提案する.実験において本手法をテレビドラマ映像に適用した結果, 約14分の1の時間長に圧縮でき, 更に主観評価実験の結果, 本編内容の保存性能及び切出しの自然性に関しても本手法の有効性が示唆された.
著者
谷塚 昇 カーン Md.モスタフイズル ラマン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.825-832, 2002-05-01

深宇宙にある銀河階層のシステム(QSO)から放射される電波の観測値時系列を解析し,システムの進化・自己組織化に関する数理的・情報論的な構造を研究した.解析にはべき乗則の方法,及び時系列再構成状態空間写像法を使った.べき乗則の解析から,システムのダイナミックスの構造が進化していると考えられること,状態空間写像法の解析から,3次元状態空間上でアトラクタ様のパターンを得たこと,相関積分によるGP法から力学系の推定次元が限定された次数であることを示した.
著者
澤井 一義 吉田 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.2054-2061, 2004-11-01
被引用文献数
2

近年,高齢社会を迎えて独居高齢者が増加している.そこで,独居高齢者の在宅健康管理を目的として,家屋内にセンサを設置し,長期間のモニタリングが実施されている.本論文は,日常生活における在宅高齢者の異常状態(体調不良でどこかにとどまっている場合,転倒や急激に体調が悪化して動けなくなった場合)を検出することを目的として,実際の高齢者宅に取り付けられた様々なセンサの動作時刻のデータから被験者(高齢者)の異常状態を検出するアルゴリズムの開発を行った.そのアルゴリズムとして,被験者に何らかの異常があった場合に長時間センサが反応しなくなると考えて,すべてのセンサの出力信号のORをとるという簡単な論理演算を用いたアルゴリズムを開発した.更に,センサの反応しない時間に対して,検出率にどう影響があるのかを検討した.その結果,センサの反応が2時間15分ない場合に異常と検出するのが妥当となった.
著者
益子 宗 星野 准一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.585-595, 2005-03-01
被引用文献数
2

映画やゲームをはじめとするマルチメディアコンテンツにおいて, 仮想俳優が会話をするアニメーションが多く見られるようになった.しかし, そのようなアニメーション作成は発話内容や会話状態など多くの要素を考慮する必要があるため, 多くの時間や手間がかかるといった問題がある.そこで, 本論文では会話に連動した仮想俳優の頭部・眼球動作を簡易に生成する手法を提案する.本手法では, 視線角度を頭部と眼球の回転角の和とし, 視線方向によって頭部と眼球の回転の割合を動的に変更する動的分担機構を考え, 頭部と眼球の複合的な動作を生成する.また, 頭部と眼球の動作を生成する二つのモジュール間で同一の会話状態を共有することにより, 会話に連動した頭部・眼球動作を生成する.最後に, 提案した手法を用いて会話に連動した仮想俳優のアニメーションを示す.
著者
諸岡 健一 浜元 和久 長橋 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1269-1277, 2005-07-01
被引用文献数
7

実環境でロボットが適応的に行動するには, 他者動作の認識機能と, 自己動作の生成機能が必要である.我々は, 現在, 他者動作認識モジュールと自己動作生成モジュールからなるシステムを開発中であり, 本論文では, 自己動作に基づく他者動作認識に焦点を当てる.認識及び生成モジュールは, それぞれ隠れマルコフモデル(HMM)と強化学習によって構築される.このとき, HMMの推定では, 一般に, 多数の学習用データが必要であるが, 実世界で十分な数の動作データを取得できる保証はなく, したがって, HMMの精度が低下する可能性がある.そこで, 本論文では, 強化学習の学習結果に基づくHMMの新たな推定法について述べる.強化学習の状態価値関数をいくつかのクラスタに離散化し, 各クラスタをHMMの各状態と対応づける.これにより, 価値関数値に基づいてHMMの出力分布を推定し, HMMの精度の向上が可能となる.実験により, 提案手法によるHMMは, 学習データが少数の場合でも, 認識精度の低下を抑えることができることを確認した.
著者
永野 秀尚 柏野 邦夫 村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.1179-1188, 2004-05-01
被引用文献数
6

音声が音楽に重畳した音響信号(蓄積信号)中から,参照信号として与えられた音楽が音声の背景に含まれる区間(目的区間)を見つけ出すことを背景音楽探索と呼ぶ.本論文では,この背景音楽探索を高速に行う手法について述べる.背景音楽探索では,探索の目的となる目的区間においても,他の音声の重畳により,その音響信号は参照信号と著しく異なり,参照信号を蓄積信号と直接照合する手法での探索は困難である.そこで,参照信号のスペクトログラムを時間周波数領域において多数の小領域に分割し,これらの小領域スペクトログラムと類似度の高い小領域スペクトログラムをもつ時点を蓄積信号のスペクトログラムから探索し,その探索結果を統合することで,目的区間を探索する手法を提案する.本手法は,参照信号の各小領域スペクトログラムと類似度の高い小領域スペクトログラムのみを,蓄積信号のスペクトログラムから,高速な探索手法を用いて探索することで,背景音楽探索全体を高速に行うことを特徴とする.実験では,各小領域スペクトログラムの探索に時系列アクティブ探索法(TAS)を用いることで,約30分の蓄積信号からの15秒の目的区間の背景音楽探索を1秒未満で行うことができた.
著者
渡辺 大地 千代倉 弘明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.1344-1352, 2000-05-20
被引用文献数
6

近年, インターネットの普及と3次元描画ライブラリの機能向上に伴って, 三角形メッシュに対する最適化の研究が盛んである.しかし, 多くの最適化の手法では形状がもつ意匠的な特徴が失われるという欠点をもつ.本論文では, 数種類のパラメータを与えることによって, 事前に三角形メッシュのもつ特徴稜線を自動的に抽出する手法を提案する.本手法を用いることにより, 最適化の形状特徴を表す稜線をできるだけ反映させることが可能となる.次に, パラメータ変更による再計算が非常に高速になるような設計, 三角形メッシュの位相分布が規則的なものとそうでないものの双方に対応などの特徴を述べる.最後に, いくつかのデータで本手法の有用性を示す.