著者
宮地 悟史 滝嶋 康弘 羽鳥 好律
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1114-1125, 2005-07-01

地上ディジタル1セグメント放送への適用を目的としたH.264レート制御方式について提案する.従来のレート制御では, GOP単位に一定量を割り当てる手法が一般的で, 画像品質の面並びにバッファサイズを用途に応じて厳密に設定できないなどの問題があった.これに対し本論文では, H.264の符号化特性をベースにして, 画像性質を最大限に考慮した情報量割当と, HRDバッファ制約への準拠との両立を目的とした方式を提案する.画像性質の反映に関しては, フレームごとの予測誤差を事前に算出し, それに基づき最適な発生情報量を予測する.また, バッファ制約の考慮については, GOPのバッファ遷移状態から得られるスケーリング概念を新たに導入し, 予測された発生情報量に適用して割り当てるべき情報量を得る.このようにして割り当てられた情報量は, 一定のバッファ制約のもとで, 各フレームの性質を相対的に反映させたものとなる.シミュレーション結果により, 本提案レート制御方式が, 画質変動を最小限に抑え, また, バッファ制約に準拠していることが確認された.
著者
桝本 潤 堀 雅敏 佐藤 嘉伸 村上 卓道 上甲 剛 中村 仁信 田村 進一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.2150-2161, 2001-09-01
参考文献数
13
被引用文献数
28

マルチスライスCTの実用化に伴い, 従来より格段に高速な撮影が可能になり, 造影剤を用いた肝臓CT撮影においては, 1回の呼吸停止間で臓器全体を2回撮影することが可能になった.これにより, 造影剤の循環状態が異なる二つの時相の3次元画像を, 位置ずれなく獲得できるようになった.我々は, 肝臓形状抽出を目的とし, これら2時相の造影3次元CT画像を用いた肝臓領域自動抽出法を提案する.まず造影剤注入直後とその十数秒後に撮影された2時相分の3次元画像から, 各軸にそれぞれの時相のCT値をとる2次元特徴空間を構成する.この空間において, 肝臓に対応する造影変化を示す領域を抽出し, これを用いて肝臓領域が強調された画像を生成する.次に生成した肝臓強調画像に対してオープニング, クロージング処理を行い, 肝臓実質領域を決定する.最後に血管・腫瘤などの幾何学的形状特徴を用いた3次元連結成分処理により, 最終的な肝臓領域を決定する.9症例に対して本手法を適用し, 二つの時相の画像を同時に用いることの有効性を確認した.
著者
辛 徳 嶋田 修 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1860-1869, 2004-09-01
被引用文献数
12 3

これまで,人腕のインピーダンスは,マニピュランダムにより摂動を与えることで計測されてきた.これらの実験結果はいずれも摂動区間の平均値なので,時間に対して連続的に変化するスティフネスは測定不可能であり,その摂動区間以外には測定できない.更に,このような摂動実験環境では運動中や接触作業中の変化するスティフネス特性を解析することは難しい.そこで,本研究では表面筋電信号を運動指令とする筋肉骨格系のモデルを作成して,このモデルから直接スティフネスを推定する方法を提案する.このモデルは筋肉の長さの変化項及び筋肉の硬さの変化項を線形関数で表現し,関節トルクを運動指令に関して2次まで表現した.そして,このモデルのパラメータは,筋電信号と力センサから計測した関節トルクを用いて最小二乗法により求めた.その結果,パラメータの推定に使用していないデータに関しても関節トルクを推定できるようになり,スティフネスの連続的な変化値やスティフネス楕円体を推定することができた.
著者
赤穂 昭太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.934-942, 2003-07-01
被引用文献数
12

オリジナルのSVMでは特徴空間(ヒルベルト空間)でのマージンを最大にする識別面を求めるが,本論文では入力空間でのマージンを最大にする枠組みについて考察する.この枠組みは特に,事前知識が入力空間の計量として埋め込まれているような場合に有効と考えられる.本論文でとるアプローチでは,入力空間のマージンをテイラー展開によって近似することが本質的である.得られるアルゴリズムは,ニュートン法的にサンプル点から識別面へ射影を求めるステップと凸2次計画によって識別空間のパラメータを定めるステップからなる交互最適化の一種となる.アルゴリズムは比較的緩やかな条件で安定に局所最適解に収束する.また,解くべき最適化問題はオリジナルのSVMを特殊な場合として含む.ただし,提案アルゴリズムは入力空間の次元が高くなるにつれて計算量が多くかかるため,オリジナルのSVMと提案アルゴリズムを折衷した簡略化アルゴリズムも示す.
著者
上條 俊介 松下 康之 池内 克史 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2597-2609, 2000-12-25
被引用文献数
51

画像上での車両のトラッキングは, 画像処理をITSにおける事故などの異常事象検出に適用するための基礎技術として重要である.しかし, 車両トラッキングでは, 従来から最も困難な課題の一つとしてオクルージョンの問題があり, 安定したトラッキングを実現することが困難な状況であった.特に, 我々の研究では大きな交差点を対象としているため, 平均20台程度の様々な大きさ, 形状の車両が様々な動きをし, オクルージョンも様々な条件で生じる.こういった状況でのトラッキングには, 従来の直線走行や空いている状況に適用していた.線形軌道予測や車両形状モデルを仮定するものとは異なるパラダイムが必要とされる.この問題を解決するために, 我々はMarkov Random Fieldモデルを時空間画像に拡張適用し, 1枚の画像中のみならず, 時空間画像中の隣接した画像同士でテクスチャの相関や移動物体軌跡の連結の確からしさを評価するアルゴリズムを考案した.更に, この時空間MRFでの表された画像のエネルギー分布を確率緩和過程で最適化した結果, 様々な状況でのオクルージョンに対しロバストなトラッキングが可能となった.この時空間MRFを混雑状況での約25分間の交差点画像に適用し, 3214台の通貨車両をトラックした.その結果, オクルージョンが生じていない車両に関しては99%以上の確率でトラッキングが成功し, オクルージョンを生じている541台に対しては95%程度の確率で複数台の車両を分離したトラッキングに成功した.このアルゴリズムでは, 車両形状モデルなども仮定せず, 濃淡画像から得られる情報のみを用いることで実現できるため汎用性が高く, また安定性も高いことから, 交差点における事故検出などへの応用が期待される.
著者
辻 敏雄 吉田 靖夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.406-415, 2002-03-01
被引用文献数
6 4

この論文はスペクトルモーメントを用いてテクスチャ平面の回転と傾き角を検出する方法を述べる.テクスチャ平面が回転し,傾くと,その角度に応じて画像の2次元パワースペクトルが変化し,スペクトルモーメントも変化する.標準のテクスチャ平面と角度検出されるテクスチャ平面のスペクトルモーメントを比較すれば,その角度依存性からテクスチャ平面の回転と傾き角を検出することが可能となる.Brodatzのアルバムより取り出したテクスチャ平面画像によるシミュレーション実験とCCDカメラでとらえた実画像による実験を行い,この方法の有効性を示す.
著者
佐藤 雄隆 金子 俊一 丹羽 義典 山本 和彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.616-624, 2003-05-01
被引用文献数
60 32

本論文では,背景画像を用いて出現物体を背景から分離するための新しいアルゴリズムについて報告する。従来,単純背景差分は処理コストの低さやインブリメントの容易さから広く用いられてきた。しかし,対象と背景の明度パターンのみに依存する方法であるため,明度の不良条件に対する耐性が低い,対象と背景の明度か近い部位が検出されない,などの問題があった。本論文ではこれらの問題を解決するために,新しいフィルタ処理Radial Reach Filter (RRF)を提案する。そこにおいて我々は,背景画像と対象画像との間の類似部分と非類似部分を画素ごとに判定するための新しい統計量Radial Reach Correlation (RRC)を定義し,明度変動の影響を抑えながら画素単位の分解能で局所的なテクスチヤを評価する。また,RRCでは背景画像の局所的な特性に依存して適応的に定義域を調整するメカニズムを導入することによって,情景内の多様な背景や出現物体に対処することを可能としている。理論的検討及び実画像を用いた実験を行い,手法の有効性を示す。
著者
井ノ上 直己 帆足 啓一郎 橋本 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1158-1166, 2001-06-01
被引用文献数
5

学校などの教育現場へインターネットが普及するにつれ, インターネット上の有害情報へのアクセスが問題となる.この問題に対処するため, 既にいくつかのフィルタリングソフトウェアが開発されているが, これらの多くのソフトはアクセスを制限すべきURLを登録したリストを用い, このリスト中のURLへのアクセスを制限する方式を採用している.しかし, URLは頻繁に変動するため, この方式ではリストの変更が間に合わないという問題がある.そこで, 筆者らは, コンテンツ内に出現する単語の分布を調査し, 自動的に有害か否かを判定してアクセスを制御するソフトウェアを開発した.本論文では, 開発したソフトウェアの概要を示すとともに, 当研究所の位置する上福岡市の小中学校10校に導入して実施したフィールド試験結果について述べる.
著者
先山 卓朗 大野 直樹 椋木 雅之 池田 克夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.248-257, 2001-02-01
参考文献数
12
被引用文献数
41

複数台のカメラにより撮影される遠隔講義において, 遠隔地に送信すべき映像を選択するという作業は, 現在主に講義を行う講師自身により行われており, 講師にとって大きな負担となっている.そこで, 本論文ではこの作業を自動化する手法を提案する.まず, あらかじめ定義した講義状態の遷移系列により講義状況を表し, その講義状況とそれに応じた送信映像との関係をルール化する.講義状態は, 実際の講義の情景から容易に観測可能な情報を組み合わせて構成するため, 抽出された講義状態系列と作成したルールをマッチングさせることにより, 講義の内容理解にまで踏み込むことなく, 適切な映像を選択することが可能となる.黒板, OHPを利用した模擬講義に対して実験を行い, 本手法により実時間での送信映像選択が可能であることを示した.
著者
西川 大亮 兪 文偉 横井 浩史 嘉数 侑昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1510-1519, 1999-09-25
被引用文献数
23

本論文では筋電義手制御のための新しい学習法を提案する.従来研究されている筋電義手の制御手法は,切断者に対する義手適用訓練と義手に対する個人差の学習を別々に行うOff-line型である.そのため切断者は訓練中においては義手操作の感覚をつかみづらく,使用中は義手を自身の変化に追従させるのが困難であった.そこで本論文では実時間で学習を行うOn-line型の学習機構を設計する.本手法では切断者本人が使用中に与える評価から,義手装置は表面筋電位と動作の間の適切な写像関係を獲得する.これにより訓練時間の短縮と個人差への適応を実時間で実現する.本論文では手法の検証のために6種類の動作識別実験を行っている.まず前腕の運動イメージを用いた実験を行い,従来のOff-line型の手法と比較している.更に上腕での切断者を意識して,肩甲帯の運動から筋電信号を取り出し義手駆動実験を行っている.実験における前腕での識別率は提案手法で89.9%,従来法で80.3%であった.また提案手法における肩甲帯での識別率は79.3%の性能が達成されており,上腕切断者に対する本筋電義手制御法の適用の可能性が確かめられている.
著者
井関 文一 バイガルマ ツァガーン 小畑 秀文 大松 広伸 柿沼 龍太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1533-1535, 1999-09-25
被引用文献数
20

本研究では,胸部CT画像から肺野内の血管の3次元木構造を抽出する方法を示す.先に我々が提案した再帰的領域探索法を用いた方法では,必ず探索開始領域を探索に先立って決定する必要がある.今回我々は,肺野内の血管を抽出する際に,心臓から肺野内への血管の侵入部分である肺門部の位置を気管支形状との関係から推測し,肺門部における血管の断面領域を探索開始領域とするアルゴリズムを開発した.更に,このアルゴリズムにより,気管支と同様に血管の自動抽出が可能であることを示す.
著者
新妻 弘崇 石井 信 伊藤 実
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.2375-2384, 1999-12-25
被引用文献数
2

本研究では,ニューラルネットワークに基づく新しい組合せ最適化問題の解法を提案する.特に2次割当て問題に対して適用する.本手法は,順列のλ個の要素を同時に入れ替えるλ-optヒューリスティックスのアナログ版とみなすことができる.λの値として中程度の値を使うことができるため,中距離サーチを実現できる.この中距離サーチは,浅い局所最適解を乗り越えることができる.比較的大きな(N=80∼150)2次割当て問題に対してこの手法の計算機実験を行った結果,我々の新しい手法は今までのチャンピオンのアルゴリズムと同程度に良い近似解を計算できることがわかった.また,二つのべンチマークについては,現在のチャンピオンのアルゴリズムよりも良い解が計算できることがわかった.
著者
青木 美奈 藤田 昌彦 町澤 朗彦 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2338-2345, 2001-10-01
被引用文献数
1

サッカード中には, 網膜に写った外界の像は激しく揺れ動いているにもかかわらず, 我々はその動きを知覚することはない.このサッカード抑制という現象について, 従来から様々な実験が行われてきており, その要因には中枢性の抑制説, マスキング説などが考えられてきた.本論文では, 水平サッカード中に色縞のパターンを垂直, 水平にして瞬時呈示し, その判別をさせる実験を行って, サッカード中にも視覚が成立していることを示した.また, 背景輝度を様々に変化させた実験も行い, 輝度差によるマスキングの効果を確認した.これらの実験結果より, サッカード中の知覚が低下する要因として, 主にマスキングが働き, 更に網膜像の濁りや中枢性の抑制も多少なりとも存在し, それらが合成されていることを単一の実験手法で確認できた.
著者
岡 隆一 西村 拓一 張 建新 伊原 正典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.764-775, 2003-06-01
被引用文献数
21

語彙に依存しない音声の検索方式を二つ取り上げ,それらの性能を比較する.検索方式の二つとは,検索対象の音声データベースと音声クエリー波形の双方について,各フレームの表現が分析フレーム特徴そのものとしてそれを用いるものと,フレーム特徴から音素々に変換したものを用いるもの,である.フレーム系列表現された検索対象の音声データベースと音声クエリーとの間では連続DPによるスポッティング処理が適用される.連続DP値のローカルピークを検出し,それの抽出する音声データベース中の重なりのない音声区間を検索出力とする.日常会話の発話音声を検索対象者音声データとし,音声クエリーによる検索実験を行った.より高い検索性能を与える方式は各フレーム特徴を音素記号に変換した方式であることが明らかになった.
著者
戸崎 哲也 河田 佳樹 仁木 登 大松 広伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1327-1338, 1999-08-25
参考文献数
22
被引用文献数
82

近年, ヘリカルCT技術の開発により, 3次元CT画像診断に大きな関心と期待がもたれている. この中で, 計算機を活用した3次元CT像を解析する手法が求められている. ここでは, 肺がん診断に有益な情報を提供する胸部3次元CT像の解析法について述べる. 肺野領域は気管支, 肺動脈, 肺静脈などの臓器から構成され, 肺がんなどの病変が存在しているとそれらが複雑に絡み合った状態となっている. そこで, 胸部3次元CT像から解剖学的知識と3次元画像処理手法を用いて気管支, 肺動脈, 肺静脈を抽出して分類し, これらと肺がん候補との関係を呈示する手法について述べる. 肺野内臓器の抽出は, バイアス成分除去, 気管支・肺血管の抽出2気管支と肺血管の分離, 肺血管の肺動脈と肺静脈の分離からなる. また, 肺がん候補とそれに接触する肺野内臓器との関係を数値的に呈示する. これらを健常肺及び肺がんの3次元CT像に適用して有効性を示す.
著者
秦東寺 久美 石橋 聡 小林 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.1018-1030, 1999-06-25
被引用文献数
20

次世代動画像圧縮の標準であるMPEG-4では, 新たにVOP (Video Object Plane)という概念を取り入れ, 背景や物体等のビデオオブジェクトごとに符号化することが可能である. 特に動画像中の各々のフレームに共通な領域の動きが一組の平面の動きモデルで表されるとき, スプライトと呼ばれる平面オブジェクトを生成することが可能である. すなわち, 背景画像に代表されるような動画像中の複数フレームにわたる領域を1枚の静止画であるスプライトから再構成できる. スプライトを使用すると符号化効率の大幅な改善が期待できるため, スプライト生成技術に関する期待は大きい. 本論文では, ビデオクリップを撮影したときのカメラモーションに着目し, (1)7種類のカメラモーションと平行移動動きベクトルの関係を定式化し, (2)カメラモーションを反映した大局的な動きを算出するアルゴリズムを提案, (3)大局的な動きを用いてスプライトを自動生成するアルゴリズムを提案した. また, 複数の実画像を用いて実験を行った結果, 撮影時のカメラモーションを良好に抽出でき, これを用いてスプライトを自動生成することができた.
著者
中島 康之 陸 洋 菅野 勝 柳原 広昌 米山 暁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.1361-1371, 2000-05-20
被引用文献数
23

キーワードスポッティングやコンテンツベースのオーディオビジュアル検索システムにおいては動画像のショット切換り点の検出やオーディオ情報の自動分類が非常に重要な課題になる.本論文では, MPEG符号化データからオーディオ情報をサブバンド上で高速に分類する手法を提案する.まず無音区間をサブバンドエネルギーの分散を用いて検出し, 次に有音区間に対してサブバンドデータの時間的エネルギーの疎密度, 平均サブバンド数とサブバンド重心を用いて音楽, 音声, 歓声雑音の3種類のクラスに分類した.識別法としてはクラス数や識別条件が増加するに従い複雑になるしきい値法に代わってBayes決定における正規分布に対する最適識別関数を用いた.分類実験では, MPEGオーディオデータを1秒単位に分類し, 90%以上の精度で無音や音声区間を検出することができ, 検出処理はMPEGオーディオ復号処理時間の1/6以下で検出が可能になった.
著者
宮崎 英明 亀田 能成 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1598-1605, 1999-10-25
被引用文献数
40

講義室に配置された複数の首振りカメラの制御とそれらの映像の切換えにより,複数のユーザがそれぞれ望むように実時間で講義を映像化する方法について述べる.講義を映像化するとき,ユーザが見たい対象は講義の状況によって変わってくる.状況に応じて各ユーザが見たい対象や撮影の方法は変化するが,カメラ台数が限られているので,いくつかのカメラワークだけを選択する必要がある.次に,選択されたカメラワークで各カメラの制御と映像の切換えを行うが,このときの映像の急激な変化の解消法について述べる.
著者
千葉 直樹 蚊野 浩 美濃 導彦 安田 昌司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1581-1589, 1999-10-25
被引用文献数
56

複数の静止画像からパノラマ画像を自動合成する手法を提案する.我々の手法は従来手法よりも処理が高速で,かつ自由なカメラ運動で撮像された奥行の深いシーンでも合成可能である.これを実現するために画像特徴 (小方形領域) を用いた,次の二つの特長を有する手法を提案する.第1は,階層的オプティ力ルフロー推定に基づいて画像特徴の対応を得た後,線形解法により変換行列を算出する高速な変換行列算出方法である.この方法により,画像間の幾何学的な変形を高速かつ正確に行うことが可能になった.第2は,シーンが単一平面で近似できない場合に,画像特徴を頂点とする三角パッチに分割し,各パッチごとに平面射影変換行列を算出することで,奥行が深いシーンへの対応を可能としたことである.ここで,平面射影変換行列を求めるためには,通常4組の対応点が必要であるが,3組の対応点がら算出する手法を提案する.最後に実画像を用いた実験により,本手法の有効性を示す.
著者
関口 博之 杉本 直三 英保 茂 花川 隆 浦山 慎一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.126-133, 2004-01-01
被引用文献数
13

MRAにおける血管領域の信号強度は血流量を反映するため,細い血管ほど輝度が低くなる.また細い血管ほどパーシャルボリュームの影響を強く受け,その輝度は更に低下する.このためMRAの血管輝度は広い範囲にわたり,単純なしきい値処理ですべての血管を抽出することは不可能である.血管輝度のレンジの広さはリージョングローイングによる抽出手法においても大きな問題となり,拡張条件を血管の位置や輝度に応じて動的に変更するといった対処法が必要になる.しかし一般的なリージョングローイングでは複数の血管内で拡張が同時に進行するため,各拡張点に異なる拡張条件を適用することは難しい.これを解決するために,血管を各枝単位に抽出する,枝単位リージョングローイングを提案する.枝単位リージョングローイングでは拡張条件の局所的な最適化だけでなく,拡張の途切れ先への再接続も容易に行えるため,抽出精度の更なる向上が期待できる.本手法を頭部MRAデータ5例に適用したところ,すべての例について抽出誤差が従来手法に比べて減少することを確認した.本論文では上記の抽出手法,並びに,客観的評価を行うために今回開発した,投影像を利用した数値評価法について述べる.