著者
稲本 奈穂 斎藤 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1693-1701, 2005-08-01
被引用文献数
21

スポーツイベントを対象にした自由視点映像合成技術を複合現実感に応用し, HMDを用いた新しいスポーツ観戦の枠組みを提案する. スタジアムで撮影される多視点スポーツ映像から, 視点の内挿によって観察者の視点位置に相当する仮想視点の映像を生成し, HMDを用いて現実空間にスポーツシーンを重畳表示する. これにより, HMDを装着した観察者は, あたかも目の前で試合が行われているかのような感覚を得ることができる. 本手法では, 試合を撮影する多視点カメラや現実空間を撮影するHMDカメラの校正を行わずに, 自然特徴点の対応関係のみから推定可能なカメラ間の射影幾何的関係を用いて, 仮想視点映像の生成や現実空間と仮想物体との位置合せを実現する. 本論文では, 本手法の有用性を検証するために, サッカー映像を複合現実提示するシステムを構築した. このシステムでは, サッカースタジアムで多視点カメラにより撮影したサッカー映像を, 机の上に設置したフィールド模型の上にHMDを用いて重畳表示することができる.
著者
椿井 正義 伊東 正安
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.895-907, 2003-06-01
被引用文献数
4

可変構造要素による適応的モフォロジーの境界強調機能について議論する.境界が強調される仕組みを定量的に説明し,超音波画像の境界強調とスペック低減のための有効な構造要素の定義域の設定と値の制御方法を提案する.構造要素の値を画像の境界部分で大きくして,境界以外の部分で小さくなるように制御するば,opening演算とclosing演算によって境界強調とスペックル除去を同時に行えることを示す.これを処理対象画像の情報を使って自動設定するために,超音波画像の空間分解能とスペックルの輝度値の統計的性質を利用する.本手法の有効性を,計算機シミュレーションによって作成した数値ファントムを用いた定量的評価と,実際の生体超音波画像からの境界抽出への応用によって明らかにする.スペックル低減と境界強調の性能が従来手法よりも高いことが示された.
著者
柳原 英孝 河上 雅範 工藤 峰一 外山 淳 新保 勝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.1266-1273, 2000-05-20
被引用文献数
4

画像を低周波成分と高周波成分の二つの成分に分離し, 各成分を別々に符号化する2チャネル符号化において, 低周波成分の符号化にスプライン曲面を用いる手法を提案する.本手法では, 原画像から抽出した標本点をもとに, スプライン曲面を用いて原画像を近似することにより, 少ないビット数で滑らかな低周波成分を得る.高周波成分は原画像と低周波成分との差分を離散コサイン変換符号化を用いて符号化する.実験により, 本手法が従来の多チャネル符号化方式やJPEG方式と比較して, より高品位な再生画像を得ることができることを示す.
著者
伊田 政樹 中村 哲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.195-203, 2003-02-01
被引用文献数
18

実環境下で音声認識システムを利用することを考えた場合,入力音声への周囲の環境雑音の混入が避けられず,認識性能の劣化を招く.混入する雑音を予測することは多くの場合困難であり,入力信号と音響モデルの間の雑音環境の不一致が認識性能劣化の原因である.このことから,多様な雑音の混入に対してロバストな音響モデルの構築法が求められている.混入する雑音の問題は雑音の種類の多様性の問題とSN比の多様性の問題の二つに分けて考えることができる.本論文では,前者の問題に対しては雑音GMMの重み適応化によるHMM合成法を用い,後者の問題に対してSN比別のマルチパスモデルを用いることで,これらの問題の解決を試みる.旅行対話タスクとAURORA2タスクによる雑音下音声認識実験により,二つの手法を併用した場合の性能評価を行った.実験の結果,AURORA2タスクSN比=5dBにおいて1秒の適応データを用いた場合,ベースラインのHMMに対して53%の認識率改善を得た.これは従来法のHMM合成では10秒の適応データを用いた場合に匹敵する.
著者
若原 徹 木村 義政 鈴木 章 塩 昭夫 佐野 睦夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.63-71, 2003-01-01
参考文献数
15
被引用文献数
23

身体特徴を用いた個人認証手段として指紋照合技術への期待が大きい.本論文では,高精度な回転・位置ずれ補正,高速・安定なマニューシャマッチングを実現する指紋照合方式を提案する.処理の流れとしては,濃淡指紋画像の 2 値化を行った後,1) 局所領域ごとの指紋隆線方向分布を用いた登録指紋-入力指紋間の高精度な回転・位置ずれ補正,2) 登録-入力マニューシャ間での高速組合せ探索による最適対応付け,3) 指紋隆線方向分布間距離及びマニューシャ照合率のしきい値処理による本人受理/拒否の判定,の過程を経る.静電容量方式の市販半導体式指紋センサを用いて収集した80名×4指×10枚の指紋画像データを対象とした指紋照合実験より,本人拒否率及び他人受理率を評価して,提案手法の有効性を示す.
著者
原崎 俊介 斎藤 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.46-55, 2002-01-01
参考文献数
17
被引用文献数
5

本論文では, 拡張現実感における実画像と仮想物体との幾何学的整合性を解決するために, 2台の未校正カメラから定義される射影グリッド空間と, 視点間のエピポーラ幾何を表すF行列を用いて, 未校正カメラにより撮影された任意視点画像に仮想物体像をオーバレイ表示する手法を提案する.本手法では, 仮想物体を定義するオブジェクト座標系と基底画像間で5点以上の対応点を与えることにより, オブジェクト空間と射影グリッド空間の座標変換を算出する.そして, 任意視点のカメラ画像と基底画像間で8点以上の対応点からF行列を算出し, 任意視点画像とオブジェクト空間を座標変換することによって, 仮想物体を任意視点画像にオーバレイ表示する.本手法は, 射影カメラを用いているので仮想物体の奥行や視点から仮想物体までの距離に関しての制限がない.また, 実装時には, 幾何学的位置合せのための特徴点の3次元位置や幾何学的特徴が不要であるため, 特殊なマーカ等の設置が不要となる.更に, 8点以上の対応点のトラッキングを行うことにより実現できるので, 仮想物体を実画像にオーバレイ表示する処理が軽く, 実時間処理に向いている.本手法に基づいて拡張現実感表示を行う実験システムを構築したところ, 良好な結果が得られ本手法の有効性が確認できた.
著者
羽下 哲司 鷲見 和彦 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.1104-1111, 2004-05-01
参考文献数
6
被引用文献数
23

木の揺れや,水面の乱反射等の背景変動のある屋外情景から,歩行者を検出する画像処理アルゴリズムを提案する.従来より,人のようにほぼ等速直線運動する対象は時空間的パス内での局所的な動きが強め合い,他の背景変動では弱め合うことに着目して,歩行者のみを検出する手法が提案されている.しかしこのような,時間平均した動きの強さを用いた判定では,移動対象の誤った関連付けや,高コントラスト領域の一時的な動きが平均値を引き上げ,誤報となるケースが見られる.本手法では,動きの特徴量として,時間平均した動きの強さに加えて,空間平均した動きの強さ,時間的な動きの一様性という特徴量を定義し,これら三つの特徴により構成される特徴空間で歩行者と他の背景変動とを識別する.実画像による評価で,提案手法は時間平均した動きの強さにのみ着目した従来手法に比べて誤検出率,未検出率ともに約1/3に低減できることを確認した.更に提案手法をオンラインで実現するシステム構築し,実環境で2週間にわたる評価試験を行った結果,失報率1%未満,誤報発生1日平均3件以下の性能を得ることができた.
著者
島田 竜也 河口 尚広 加賀 健太 山田 博三 森 晃徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.2054-2068, 2005-10-01
参考文献数
11
被引用文献数
27

近年犯罪の著しい増加に伴い, 侵入者検知の研究・開発の必要性が叫ばれている. 本論文は, 安価で高機能な侵入者検知システム開発のための一つのシーズを提案するものである. 本論文で解決した機能は, (1)光源の移動を含め滑らかな照明の変化に対処できること(2)ゆっくり移動する侵入者の存在領域の明りょうな検出(3)途中で静止する侵入者の存在領域の明りょうな検出の三つの機能である. 機能(1)と(2)は, 互いに矛盾しているように見えるものである. 具体的手法は, 「侵入者を含まない現在の背景画像と現在の入力画像の差分画像から侵入者の存在領域を検出するもの」である. 現在の背景画像をいかに簡単かつ正確に更新するかが最も重要な点であり, 上記三つの機能を同時に実現する手法はなかった. 我々は, 「侵入者検出領域及びその境界では, 加重平均処理を背景画像に施さない」という手法で上記機能を実現した.
著者
ブンクムクラオ ウィチャイ 三木 信弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.2171-2179, 2000-11-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

FPGA(Field Programmable Gate Array)は, プログラマブルデバイスであり, いくつかの方式があって何回も回路を書換え可能である.特殊DSPを少量生産する場合, コストが安くできるという大きな利点がある.音声信号とデータ(DTMF信号)を同一の帯域に混在させて通信する無線通信方式があり, この方式では, データの帯域を消去して音声信号を聞きやすくするフィルタが要求される.我々が提案するアーキテクチャでは, 音声信号とデータの混在する信号を効率良くDTMF信号だけ消去できる高次帯域消去フィルタをFPGAで実現するために有用である.実際に設計したフィルタを実現する方法を示し, また実現した回路での実験結果を示す.
著者
菅谷 史昭 竹澤 寿幸 横尾 昭男 山本 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.2362-2370, 2001-11-01
参考文献数
9
被引用文献数
17

音声翻訳システムの新たな評価手法として翻訳一対比較法を提案し, ATR音声翻訳通信研究所が研究開発した音声翻訳システムで評価した.言語翻訳部単体, 音声認識部と言語翻訳部を結合した場合の翻訳一対比較法の評価結果を述べるとともに, 音声認識のシステム性能に与える影響を分析した.また, 評価結果を文ごとの平均単語エントロピーを使い分析し, 同システムで採用されたコーパスベース音声翻訳システム性能の特徴を明らかにした。また翻訳一対比較法の誤差解析を行った.
著者
尾上 耕一 西田 友是
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.282-289, 2003-02-01
被引用文献数
4

本論文ではコンピュータグラフィックスを用いて砂漠の景観をリアルに表示するための方法を提案する.まず,砂漠地形のモデリングについて議論する.砂漠地形は主に砂丘とその表面にできる細かいしま模様である風紋からなっている.それぞれを形成するためのモデルについて述べる.次に砂丘と風紋を組み合わせて砂漠の景観をレンダリングする方法について提案する.レンダリングでは砂丘の表面上に小さな凹凸である風紋を表現するためにバンプマッピングの手法を用いている.この計算の効率化のためにLODの手法を用いる.また砂漠の景観をよりリアルに表示するために,砂丘の影,風絞の影,砂埃を考慮している.最後にレンダリング結果として砂丘表面上の風紋,砂丘の影,風紋の影,の有無を比較した画像を作成しそれぞれの効果を示した.
著者
久保村 千明 亀田 弘之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.418-428, 2003-03-01
被引用文献数
5

高度な情報検索システムは,文字表記の揺れ(異表記)に対応する能力を備えもつことが必要である.例えばキーワード「バイオリン」を検索した場合,情報検索システムはキーワードの異表記である「ヴァイオリン」をも検索できなければならない.しかしながら現在利用されている情報検索システムは,入力されたキーワードに対する異表記を十分に処理することは不可能である.また,1999年情報検索システムの評価プロジェクトの一環であるNTCIRワークショップにおいて,日本語検索における片仮名異表記の処理の必要性が指摘されている.このような状況にかんがみ,片仮名異表記処理能力を備えもつ情報検索システムを構築した.本論文では片仮名異表記処理能力を備えもつ情報検索システムに関して,片仮名異表記の分類・書換え規則,情報検索モデルとそれに基づく片仮名異表記処理能力を備えもつ情報検索システムの概要,システムの処理手順,最後にシステムの評価とその考察について述べる.
著者
李 晃伸 河原 達也 武田 一哉 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2517-2525, 2000-12-25
被引用文献数
47

大語彙(い)連続音声認識のための新たなphonetic tied-mixture(PTM)モデルを提案する.このモデルは各音素モデル(monophone)の各状態がもつ64個のガウス分布集合をtriphoneの対応する状態に割り当て, 重みのみを変えて共有することで合成する.通常の状態共有triphoneに比べて音響空間を効率良く表現でき, また巨大なコードブックを要する従来のtied-mixtureモデルよりも学習が容易である.2万語の新聞記事読み上げタスクにおいて評価した結果, triphoneでの最大性能に近い7.0%の単語誤り率をより少ないパラメータ数で達成した.処理効率の点においては, 音響スコア計算に用いるガウス分布を上位3%にまで削減しても精度がほとんど低下しなかった.いくつかのガウス分布の足切り計算(Gaussian pruning)手法を提案及び比較した結果, 最終的に音響ゆう度計算を約5分の1にまで削減できた.
著者
宮川 道夫 小林 康之 鳥羽 啓 石井 望
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2810-2821, 2000-12-25
被引用文献数
10

注視位置情報を利用したヒトとコンピュータとの円滑な情報伝達を目的とし, 無拘束で自由な体の動きを許容した注視点検出手法を開発した.PSDカメラにより眼球回転中心を, またCCDカメラにより角膜の曲率中心をステレオ計測し, ビデオ信号処理と推定演算により注視点を求める.無拘束状態で注視点を検出するため, カメラと眼球間の距離に応じて眼球反射光が広がりをもち輝度値も低下する.検出精度が低下しないよう, AGC回路や輝点の中心座標を算出するパルス中心位置計測回路を備え, 精度の高い注視点検出を可能としている.また, コンピュータ使用時の頭部変動量をPSDカメラで測定・評価し, 頭部の最大移動量を算出した.その結果, コンピュータ使用時の頭部変動は本システムの計測範囲内に収まることを確認した.
著者
岸 啓補 森島 繁生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2716-2724, 2000-12-25
被引用文献数
11

サイバースペースにおける仮想人物の合成やコミュニケーションシステムの実現に向け, コンピュータグラフィックスによる人物画像合成等が注目を集めている.本論文では, 特に人物のCGの中でも合成が難しいとされる頭髪の表現方法について述べる.人物画像において頭髪は視覚的に重要であるにもかかわらず, 簡単な曲面や背景の一部で代用されることが多い, 頭髪をマッピング技術を用いて表現する手法が成果をあげているが運動の表現には不適当である.そこで頭髪の表現にテクスチャやポリゴンを用いずに空間曲線を用いる.更に頭髪の部分的な集まりである房単位にモデル化することでヘアスタイルデザインを簡略化する.本論文では, この新しいヘアスタイルデザインシステム, 房のモデル化手法, レタリング手法, 4分岐法による衝突判定, 運動表現について述べる.また, 実際にこのヘアスタイルデザインシステムを用いて頭髪をデザインし, 風になびかせるアニメーションを実現した.
著者
森田 真司 山澤 一誠 寺沢 征彦 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.864-875, 2005-05-01
被引用文献数
36

カメラを使った遠隔監視においては, 環境を常に広範囲に撮影し, かつ注目対象の実時間での検出・追跡が求められる.環境を常に広範囲に撮影するために回転カメラを用いる方法や全方位画像センサを用いる方法が提案されている.前者では見回しに機械的な時間遅延が生じる.これに対し後者では観測者の視線変化からその方向の画像提示までの時間遅延が少ないが, 取得した全方位画像を直接, 計算機に伝送しており, ネットワークを介した実装には至っていなく, ビル全体など多くのセンサを必要とする環境には適用できない.本論文ではネットワークを介して複数の全方位画像を伝送する遠隔監視システムについて述べる.本システムは監視環境側をサーバ, 監視者側をクライアントとしたサーバ/クライアントモデルであり, サーバ側において移動物体の検出, クライアント側において移動物体の位置推定及び物体方向の画像提示による追跡を行う.また, ネットワークを利用した画像及び物体の検出情報の伝送を行うことで, クライアント側での一極集中型遠隔監視を実現する.
著者
森本 正志 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1398-1411, 2005-08-01

本論文は, 回転・拡大縮小などの幾何学的変換によらない画像識別のための手法として, 直線パラメータから得られる不変量を用いた直線不変量ヒストグラムマッチング法を提案する. 画像の構造記述パラメータから得られる不変量を用いた識別では, 幾何学的変換への不変性だけでなく, 雑音重畳などに起因するパラメータ抽出誤差やパラメータ欠落などが存在しても安定した識別ができることや, 大量のデータの中から少ない計算量で識別できることも重要である. 本手法では, 直線パラメータ集合から不変量を算出することで抽出誤差の影響を抑え, 直線不変量集合をヒストグラム化したデータセットに基づくマッチングと交差角インデックスサーチによりパラメータ欠落・誤抽出及び計算量への対処を行う. また, 可変フィルタリングによりヒストグラム化に伴う性能低下を補償する. 実画像における直線抽出性能測定からパラメータ抽出誤差・変動要素数条件を設定し, その条件に基づいた識別評価実験により本提案手法の有効性を確認した.
著者
芳澤 伸一 馬場 朗 松浪 加奈子 米良 祐一郎 山田 実一 李 晃伸 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.382-389, 2002-03-01
被引用文献数
16

十分統計量と話者距離を用いた音韻モデルの教師なし学習法を提案する.提案法では,音響的に近い話者群の十分統計量を用いて統計処理計算により正確に適応モデルを構築する.提案法では,(1)発声話者に音響的に近い話者を選択し,(2)選択された話者の十分統計量を用いて発声話者に適応した音韻モデルを作成する.十分統計量の計算は適応処理の前にオフラインで行う.提案法では発声話者の音響的に近い話者群の十分統計量を用いて統計処理計算に基づき適応化を行うため高い認識率を獲得することができる.また,少量の発声文章で適応処理が行われる.更に,十分統計量をオフラインで計算することにより適応時の処理が短時間で行われる.話者クラスタリングによる方法と比較すると,提案法では発声話者のデータによりオンラインで動的に話者クラスタを決定するため,適切な話者クラスタを獲得することができる.認識実験により,少量の発声文章により適応を行った場合,MLLRより高い認識率を獲得できることを示す.
著者
齊藤 剛史 金子 豊久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1419-1429, 2001-07-01
被引用文献数
20

本論文では野草の自動認識法について提案する. 一つの野草について真上かそれに近い斜め上の角度から撮影した花画像と葉画像の2枚を1セットとして用いる. クラスタリング法を用いて各画像から対象物(花, 葉)を抽出し, 花画像から10個, 葉画像から11個の特徴量を求め区分的線形識別関数により認識を行う. 我々は春から初夏にかけて大学キャンパス付近に生育する34種各20セットの野草を収集し実験を行った. 実験結果ではすべての特徴量(21)を用いた場合96.0%の認識率を得た. 次に認識において特に有効な特徴量を選び出す実験を行い, その結果花画像から6個, 葉画像から2個の特徴量が有効であることを示し, 96.8%の認識率を得ることができた.
著者
勝山 裕 武部 浩明 黒川 浩司 齊藤 孝広 直井 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1740-1749, 2005-08-01
被引用文献数
2

文書管理システムにおいて, OCR結果の候補文字情報と, キーワード領域の推定を使い, 通常のテキスト検索エンジンで高精度に文書画像を検索できる技術を提案する. この手法では, 文書画像は最初に通常のOCRで文字認識される. 次に, OCRの出力したテキストから, 形態素解析によりキーワード領域が推定される. 候補文字ラティスがこの領域から求められ, 未登録語単語領域ではk-th DP処理により, 名詞単語領域では更に単語辞書との整合により, 候補文字ラティスから文字列が抽出される. 最後に, 通常のテキスト検索エンジンによる高精度な検索を可能にするために, 抽出された文字列は通常のOCRの出力したテキストに追加される. 49枚のOHP文書画像を対象にした検索実験では, 検索精度は, 通常のOCRの出力したテキストのみで検索再現率90.1%, 適合率100%であったが, 提案手法では再現率98.2%, 適合率100%を達成した. また, 処理時間は通常のOCR処理とほぼ変わらず, テキスト量もOCRの出力したテキストの約6倍程度に収まった.