著者
山元 修 安田 浩 伊豆 邦夫 西尾 大介 旭 正一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.167-175, 2000-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

1979年7月から2000年2月末まで当教室で経験したフッ化水素酸化学熱傷は9例で, すべて職業性曝露によるものであった. すべて男性で, 年令は20-53歳(中央値35歳, 平均36.8歳), 曝露時従事していた作業の内訳は, 洗浄作業6例, フッ化水素パイプラインの機器交換2例, 不明1例であった. 受傷部位は手・指がほとんどであった. 手・指受傷者の作業中の手の保護が十分でなかったものは5名であった. 受診時の症状としては表皮剥離程度から白色壊死・潰瘍形成までさまざまであった. 過去の報告例も含め総合的に考慮して見ると, 曝露事故の発生要因としてはおおむね, 1)作業中の油断, 特にベテランに多い慣れに伴うフッ化水素酸の危険性の軽視, 2)フッ化水素についての無知・認識不足, 3)手袋の穴に気づかないままの作業, 4)不慮の事故, の4つに分けられた. フッ化水素酸による皮膚障害は重篤になることが多いため, 作業従事者(特に中堅), 特定化学物質等作業主任者, 治療に当たる可能性のある医師への, 皮膚科医・産業医によるフッ化水素酸化学熱傷についての, 再教育あるいは啓蒙活動が必要と思われる. また市販のフッ化水素酸剤を使う小規模事業所の事業主や作業者については地域産業保健センターなどの活用が望まれる.
著者
齋藤 桃 岡田 洋右 鳥本 桂一 田中 良哉
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.301-306, 2022-09-01 (Released:2022-09-09)
参考文献数
14

症例は40歳女性.食後に生じる低血糖症状を主訴に当科紹介受診した.75g経口ブドウ糖負荷試験では,1時間後血糖245 mg/dl,2時間後血糖196 mg/dlであり耐糖能異常と診断した.しかし,6時間後血糖はインスリン遅延過剰分泌に伴い46 mg/dlと低血糖を呈しており,反応性低血糖と診断した.単純糖質を避けるなどの食事指導を行うとともに耐糖能異常・反応性低血糖に対してボグリボース0.6 mgの内服を開始した.低血糖症状の頻度は一旦減少していたが,徐々に低血糖頻度が再度増加した.詳細な問診により月経2-3日前に低血糖の頻度が多いことが判明したため,月経前後の血糖変動を確認するためFlash Glucose Monitoring(FGM)を装着した.FGMでは月経3日前より食後血糖の増悪とともに,反応性低血糖の出現を認め,一方月経4日後には食後高血糖は改善し,反応性低血糖も消失したことを確認した.月経前にはボグリボースの飲み忘れがないように服薬指導を行うとともに,月経数日前には昼食後の補食をするように指導を行い,低血糖出現頻度は減少した.これまで本例のように月経前に増悪する反応性低血糖症をFGMで評価し得た報告はない.反応性低血糖の診断や病勢評価,治療において,月経周期の血糖への影響についても考慮する必要がある.
著者
北條 暉幸 中島 民治 平尾 登美
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.355-357, 1984-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
3 3

北九州市在住の17才の女子高生, 318名の身長,座高および比座高(身長に対する座高の百分率)を対象に研究した, 計測は, Martin-Saller法に基づいて行われた. 計測値は1973年, 1980年および1984年に計測された3群に分けられ, これら3群間に身長, 座高および比座高の各値に統計的に有意な差がなかった. 比座高は約54%で, この値は3群に共通であるばかりでなく, 若干の中国人, エスキモー人, アメリカ・インディアンおよび北海道アイヌ人に共通である.
著者
室屋 和子 田島 司
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.241-246, 2013-09-01 (Released:2013-09-13)
参考文献数
29
被引用文献数
4 2

配偶者と死別後の男性高齢者の心理過程と社会生活への再適応について文献レビューを行った.対象喪失による悲嘆からの心理回復過程は個人差が大きいが,いくつかの対処パターンに分かれるとされている.しかし,喪失体験からの心理回復が,環境要因としての物理的孤立や地域社会における社会的役割の有無と関係しているかは必ずしも十分には明らかにされてはいない.よって,配偶者と死別後の男性高齢者のより速やかな社会生活への再適応をサポートするためには,今後これらの点に関する研究が必要と考えられた.
著者
華表 宏有
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.193-211, 1989-06-01 (Released:2017-04-11)

本研究は, さきに日本カトリック医師会(阿武保郎会長)に設置された「家族計画と性に関する諸問題」専門委員会が, 1988年3月から4月にかけて実施した「性のあり方と生命倫理等に関する意見調査」の回答の中から, 特に受胎調節, NFP(Natural Family Planning)および医師としての人工妊娠中絶とのかかわり方について設問した3問を取り上げて, 詳しく解析したものである. 有効回答229人の結果について, 性, 年令, 受洗年令, 地域, 専攻分野ならびに過去3年間の会費納入の有無の6つの背景要因を取り上げて, 重回帰分析を行った. その結果, 3問とも年令によって意見が異なっているほか, 受胎調節, NFPについては大司教管区別に地域差のあることが把握された. 以上の知見を説明するために, 5つの作業仮説(A-E)を想定し, さらに関連した生命倫理ないし医学倫理上の学際的研究と, 医師としての生涯研修の必要性について考察した.
著者
大森 美保 永田 智久 永田 昌子 藤野 善久 森 晃爾
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.293-303, 2021-09-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
64

Greater workplace social capital (WSC) can be related to workers’ health and productivity. We sought to clarify the association between horizontal WSC and presenteeism and sickness absence (SA) and to examine the effects of psychological distress on these associations among Japanese workers. A cross-sectional study was conducted in 2017 at seven large Japanese companies. Logistic regression analysis was performed with presenteeism and SA as the dependent variables, horizontal WSC as an independent variable, and sociodemographic characteristics and psychological distress as covariates. After adjustment for sociodemographic characteristics, the results showed that greater horizontal WSC was associated with lower presenteeism and SA. The odds ratios for the relationship between horizontal WSC and presenteeism and that between horizontal WSC and SA dropped moderately after adjustment for psychological distress but remained significant. Further exploration of the factors underlying the relationship between WSC and productivity is needed to confirm if WSC enhances workers’ health and productivity and to inform the development of effective occupational health initiatives.
著者
田中 公介
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.53-62, 2022-03-01 (Released:2022-03-07)
参考文献数
23

本論文では,これまでの生成文法理論の枠組みで研究されてきた文法的対比の一つである,Wh疑問文における前置詞残留の項と付加詞の対比を,近年のミニマリスト統語論におけるラベル付与アルゴリズム(Labelling Algorithm: LA)と,LAを基にした外的Pair-Merger分析を用いることによって説明する.更に,Wh疑問文と同様の統語特性を示すものの,項と付加詞の対比が生じない重名詞句転移(heavy DP shift: HDPS)構文における文法性については,上記の分析と,フェイズ理論における各種仮定のもとで適切に説明されることを示す.最後に,一見本論の枠組みにとって経験的な問題となる可能性がある寄生空所(parasitic gap: PG)構文の文法性については,空オペレータ(null operator: NOp)分析が有用となることを示す.
著者
自見 厚郎 堀江 昭夫 八巻 敏雄
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.327-331, 1982-09-01 (Released:2017-04-11)

植物ホルモンの一つである天然オーキシンの主成分は indoleacetic acid (IAA) である. IAAは正常ヒト尿のほか消化管癌組織にも存在し, また動・植物細胞の増殖に関与する (Yamaki et al., 1979). ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞に対するIAAの増殖効果とその拮抗物質PCIB (parachlorophenoxy-iso-butyric acid) の増殖抑制効果をin vitroにおいて検討して, 次の結論がえられた. 1) IAAに増殖効果がみられた. 2) PCIBにIAA, FBS (fetal bovine serum, ウシ胎児血清) に対する拮抗作用がみられた. 3) FBS添加培地の方が細胞増殖作用は優れていた. HeLa細胞はヒト子宮頸癌由来の安定した細胞である. IAAが胃, 食道などの消化管癌などに多く含まれている事実を考え併せると, 癌細胞の増殖にIAAの関与することは想像に難くないと思われる. しかし, 厚い細胞壁を持つ植物細胞と持たない動物細胞に同様の増殖作用がIAAによってみられることから, その構造上の差異に関係しない共通のIAAの作用機序を考える必要がある.
著者
南部 滋郎 田中 晋 南部 文子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.383-391, 2000-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
4 1

アルテミア(属名, Artemia)は節足動物, 甲殻類に分類される動物で, 生態学的にも実験研究的にも大変興味深い存在である. 幼生を用いた実験は記載が多いが, 世代を繰り返し特定な系統を分離するような実験は報告がなく, 飼育法に関して書かれているものが見あたらない. 我々はアルテミアをモデル動物の1つとしてとらえ, 実験材料としてより有用にするため, その近交系株を樹立しつつある. そこで, その飼育法についての我々の実践および飼育成績を述べ, また近年唱えられているアルテミアの分類について記した.
著者
寺尾 岳 谷 幸夫
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.337-340, 1988-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 2

常用量のbenzodiazepine系薬剤(以下BZDと略す)を中断後, 重度の離脱症状を呈した2例を報告した. 症例1は61歳男性で, nitrazepam1 0mg/日を離脱後7日目にせん妄を呈した. 症例2は49歳女性で, nitrazepam 5mg/日とtriazolam 0.5mg/日を離脱後4日目に幻聴, 5日目に視覚性の認知障害を呈した. 常用量のBZD中断において離脱症状が生じることは少なく, さらにこのような精神病様状態が発生することは稀である. 本論文では, 6ヵ月以上の服用期間と強度の不眠を危険因子として挙げ, さらに症状発生日の予測法についても言及した. 不幸にして精神病様状態が発生した場合の処置として, diazepamの静注を勧めた. また, BZDの常用量投与の際にも中止する場合には漸減が望ましいと考え, 具体的な漸減法を示した.
著者
末滿 達憲 宮崎 彰吾 佐藤 和人 橋本 雄太郎
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.177-184, 2022-06-01 (Released:2022-06-06)
参考文献数
23

種々の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に抗すべくSARS-Cov-2ワクチンが急速に開発され,本邦では薬機法に基づく特例承認を経て,医療従事者,高齢者等に続き,職域においても接種が進められている.COVID-19の病態を概観し,公表されている同ワクチン接種後の死亡例,健康被害救済制度,損害賠償制度および関係法令等を整理した.ワクチン接種に先立ち,健康被害に対する損害賠償等による製造販売業者の損失等を補償するための契約を可能とする予防接種法の改正がなされた.一方,健康被害発生時,使用者等の責任が民法,国賠法に定められているが,何れも使用者等の求償権が規定され,直接接種業務に携わる産業保健スタッフを含む医療従事者に対する損害賠償請求を妨げる明規はない.今後の新興・再興感染症の発生等に備え,法制面,実施主体との契約等につき,特に緊急時の予防接種健康被害に係る提言を行った.
著者
田原 昭彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-43, 2000-03-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 3

血液透析は腎不全患者に多大な恩恵をもたらしているが, 一方では副作用が問題となっている. 眼科領域では透析中に眼圧が上昇する症例があることが知られており, 血液透析が眼圧に及ぼす影響が論議されている. 慢性腎不全で血液透析を受けている患者の透析中の眼圧, 血漿浸透圧, 血漿二酸化炭素分圧の変化を経時的に調べると, 血漿浸透圧は透析開始後徐々に低下する. 眼圧は, 房水流出障害がない眼と房水流出障害がある眼とでは異なった変動を示す. 房水流出障害がない眼では透析開始後眼圧に顕著な変化はないが, 房水流出障害がある眼では眼圧は徐々に上昇する. この時, 血漿浸透圧の変化率と眼圧の変化率との間には負の相関関係がある. 房水流出障害があって血液透析中に眼圧が上昇する例に, 高浸透圧薬の点滴あるいは高ナトリウム透析を行って透析中の血漿浸透圧の低下を抑制すると眼圧は上昇しない. したがって, 血液透析中に眼圧は次のような機序で変動すると考えられる. 通常の血液透析では血漿浸透圧は低下する. この時, 眼組織の浸透圧は, 血液眼関門が存在するため血漿浸透圧に遅れて低下する. その結果, 血液中から水分が眼内に流入するが, 房水流出障害がなければ房水が代償性に前房隅角から流出して眼圧は上昇しない. しかし, 房水流出障害が存在すれば, 房水流出による眼圧の調節ができず眼圧は上昇する.
著者
平野 裕真 河野 健一 山内 克哉 安田 日出夫
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.257-262, 2022-09-01 (Released:2022-09-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Patients with minimal change nephrotic syndrome (MCNS) are prone to loss of motor skills due to urinary protein leakage, steroid myopathy, and other factors. Acute kidney injury (AKI) is a common complication that contributes to the loss of physical function. Rehabilitation is crucial, but its efficacy and safety are unknown. Here we present a case of a patient with MCNS complicated by AKI, who commenced rehabilitation after dialysis was discontinued and experienced improved mobility. The patient, a woman in her 70s, was admitted to our hospital with bilateral lower limb edema and decreased urine output for approximately 5 days. Treatment with prednisolone and furosemide was initiated, but then dialysis was initiated due to AKI. Rehabilitation was started after dialysis was discontinued. The patient’s muscle strength and physical activity improved, and her exercise capacity and exercise tolerance improved without adverse effects. Rehabilitation may contribute to the improvement of exercise capacity without worsening renal function and urinary protein in patients with MCNS complicated by AKI.
著者
久保 達彦 藤野 善久 村松 圭司 松田 晋哉
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.299-303, 2013-12-01 (Released:2013-12-14)
参考文献数
10
被引用文献数
2

英国では2010年からThe Statement of Fitness for Work(通称Fit Note)と呼ばれる就業支援を目的とした医療文書を地域医療を担うGeneral Practitioner(GP)が発行する仕組みが導入されている.今回,我々はFit Noteの導入影響に注目しつつ英国の産業医制度の現状について現地で2名の産業医に対してインタビュー調査を実施した.現地の産業医からは産業医が不足して国民全体,とりわけ中小企業や自営業者には産業保健サービスが行き渡っていないことへの強い課題認識が繰り返し聴取された.Fit NoteはGPの産業保健への参加を誘導するツールとして位置づけられ,地域医療の担い手であるGPは産業保健の新たなパートナーとして期待されていた.現地の産業医はFit NoteおよびGPの産業保健への参入を英国の産業衛生の着実な前進と評価していた.
著者
ブレア P. グラブ 長友 敏寿 安部 治彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.239-245, 2000-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 1

Head-up tilt試験の普及により, 再発性の失神および失神前駆症状が自律神経調節障害による一過性の起立性低血圧と徐脈に起因することが明らかになり, 神経調節性失神(neurally mediated syncope)として知られている. 一方, これまでの研究で, 血圧はさほど変化しないにもかかわらず, 起立時に心拍数が異常に増加し, 失神前駆症状・運動不耐性・疲労・ふらつき・眩暈などの起立性不耐性を発現する大きな患者群があることがわかった. 本障害は一般に体位性起立性頻拍症候群(POTS; postural orthostatic tachycardia syndrome)として知られるようになった. 明らかな原因は不明であるが, 軽度の末梢自立神経性ニューロパシー(部分的自律神経障害; partial dysautonomia)やβ受容体過敏性(β-receptor supersensitivity)が病態生理として示唆されている. POTSの診断には詳細な病歴調査と神経学的検査を含む理学的検査が必要で, 特にhead-up tilt試験における反応様式は重要である. 本稿では, 体位性起立性頻拍症候群の歴史的背景, 臨床的特徴と診断, 治療法について概説する.
著者
カサグランデ シンシア マラ ジリー フェレイラ アーサー デ サ
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.25-34, 2022-03-01 (Released:2022-03-07)
参考文献数
38
被引用文献数
1

To review studies on work ability (WA) and its relationship with the biopsychosocial factors of professional drivers. We performed a scoping review of articles published until 2021, extracting location, study design, sample characteristics, transport category, WA assessment methods, and health-related factors. Eighteen studies were found in different transport categories around the world. Most of the studies were cross-sectional (15/18, 83%), in a single branch of professional drivers, and the Work Ability Index (WAI) appears as the most common assessment instrument (7/18, 39%). The characteristics of work organization, lack of physical activity, comorbidities, and psychosocial and ergonomic factors are associated with musculoskeletal symptoms and stress in professional drivers. Comparisons of WA and related factors between studies and professional drivers are limited due to the multiplicity of assessment methods.
著者
北村 尚人 中谷 淳子 中田 光紀
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.295-300, 2014-12-01 (Released:2014-12-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

勤労者の睡眠問題と主観的健康感(以下,健康感)の関連を明らかにするために,日本人43,092人(男性34,164人,女性8,928人)を対象に質問紙調査を行った.健康感と睡眠問題の関連は多重ロジスティック回帰分析により解析し,オッズ比(OR)を求めた.男女間で健康感を「あまり良くない,非常に良くない」と答えた人の割合に有意な差があったため(男性29.4%,女性34.1%,P < 0.001),男女別に解析した.睡眠問題なしの者に比べ,睡眠6時間未満(OR = 男性1.39,女性1.40),入眠困難(OR = 男性4.44,女性3.85),中途覚醒(OR = 男性5.72,女性4.85),早朝覚醒(OR = 男性3.87,女性4.25),起床困難(OR = 男性3.30,女性3.40),起床時疲労感(OR = 4.97,女性4.82)および仕事中の過度の眠気(OR = 男性2.34,女性2.11)を有する者は有意に健康感が悪かった.睡眠問題と健康感の関連の強さは男女差が認められなかった.本研究により,勤労者において睡眠問題と健康感は関連することが示された.
著者
岡井(東) 紀代香 薙野 晴美 山田 香 岡井 康二
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.359-368, 2006-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
23 32

ビタミンB群はこれまでいわゆる抗酸化ビタミンの範疇に分類されていなかったが, 最近一部の研究者がビタミンB群の抗酸化ビタミンの可能性を示唆する研究結果を発表している. そこで著者らはB群に属する6種類のビタミン(B1, B2, B6, B12, 葉酸, ニコチン酸)についてそれぞれのビタミンのリノール酸の過酸化脂質の生成に対する効果を塩化アルミニウム法によって分析した. その結果これらのビタミンの作用は大まかに三つのタイプに分かれ, 第一のタイプ(B1, B2, 葉酸, ニコチン酸)は過酸化脂質の生成の初期反応を促進し, その後の生成反応を抑制した. 第二のタイプのB12は初期反応に有意の効果を示さないが, その後の生成反応を抑制した. 第三のタイプのB6はすべての期間の生成反応を抑制した. 以上の結果より, ビタミンB群において過酸化脂質の生成に対してビタミンの種類や実験条件の違いによって抗酸化作用と酸化促進作用の両方の作用を示す可能性があることが示唆された.
著者
今村 昌平 大西 晃生 山本 辰紀 辻 貞俊 村井 由之
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-183, 1994-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

症例は35歳男. 明らかな先行症状はなく, 四肢遠位部優位の運動・感覚性末梢神経障害で発症し, 寛解と増悪を示す慢性の臨床経過を呈した. 増悪時期に, 急激な視力低下を伴う両側視神経炎が発症し, 同時に髄液の蛋白細胞解離, 末梢神経伝導検査異常および腓腹神経有髄線維の軸索変性および節性脱髄所見が認められた. 図形反転視覚誘発電位検査でP100潜時の延長は認められなかった. ステロイド投与により, 中心暗点の消失と視力の改善ならびに感覚障害, 深部反射異常, 末梢神経伝導検査異常および髄液蛋白高値の明らかな改善を認めた. それ故, 本例の視神経障害を慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の一症状であると判断した. 本例は中枢神経系と末梢神経系の両方が障害された文献上比較的稀な1例である.
著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.183-195, 2007-06-01 (Released:2017-04-11)

我が子の障害を受容する過程には, 子供の障害の内容や親の要因, さらに社会的要因など様々な因子が複雑に絡み合い, その受容過程は決して単純なものではない. 障害受容に関連する様々な要因の中で, 子供の障害の種類と程度は親の受容過程にもっとも大きな影響をおよぼすと考えられるが, 先行研究では様々な疾患を「障害」という一つの枠組みに捉えたものが多い. また子供と親が今後障害と共に生きて行く言わば出発点となる障害告知は, 障害の種類により時期や内容が異なり, 我が子の障害受容過程に多大な影響をおよぼすと考えられる. さらに母親と父親の受容過程は異なると考えられるが, 先行研究の多くは「母親」を対象としており, 「父親」を対象としたものが少ない. 今後の研究課題として障害の種類と程度を勘案した詳細な分析や告知の在り方に関する研究の集積が必要である. また母親だけではなく父親の受容過程やその家族・社会に関する研究を行う必要がある.