著者
増田 樹 中川 慧 星野 崇宏
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.81-88, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

近年、大規模言語モデル(LLM)、特にOpenAIが開発したChatGPTの出現は、多岐にわたる領域での応用が試みられている。なかでも、医師国家試験や、司法試験をはじめとする難関資格試験を解かせる試みが増えてきた。それは公認会計士試験も例外ではなく、特に、米国公認会計士試験についてはすでに合格水準を超える精度が観測されている。一方で、米国公認会計士試験の合格率は50%前後であるものの、日本の公認会計士試験短答式試験の合格率は概ね10%程度で推移しており、より難度が高い可能性がある。本研究の目的は、難解な専門資格試験における言語モデルの応答能力や限界を理解することであり、特に、日本の公認会計士・監査審査会が実施する公認会計士試験(短答式試験)のうち、監査論の問題をChatGPTのAPIを活用し、回答する枠組みの提案を行う。そして、GPT-3.5とGPT-4に回答させることでその精度を比較検証する。結果として、GPT-3.5では、正答率は50%程度(チャンスレート同等)のものの、GPT-4では、60%を超える正答率を確認でき、有意チャンスレートを上回ることが確認できた。今後、このような会計・監査分野に特化したLLMを監査業務へ活用することで、より効率的かつ効果的な監査を行える可能性がある。
著者
田中 博生 野村 忠慶 西山 昇
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.154-155, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

過去のプロジェクトで実施した大型小売店舗の来客数予測の取り組みを紹介する。対象となった店舗は都心へ電車通勤できる郊外に位置する。大型小売店舗にとって毎日の来客数予測は、仕入れ数量に関係することもあり重要である。通常の来客数予測は、店長等の現場責任者がそれまでの経験から2,3日後の来客数を予測している。本プロジェクトでは、各店舗の来客数をモデルにより予測、情報共有する仕組みを検討した。予測するにあたり店舗の過去の来客実績、曜日などの季節性、安売り日等のイベント情報に加え、天候情報を組み合わせる事で予測力が向上するとの仮説のもと検証した。最終的には、過去の実績来客数と予測来客数の差異を「学習期間」のデータによる予測により「予測期間」通期で最小化する結果を得られた。
著者
遠藤 修斗 水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.16-21, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

金融市場の最良気配値付近における注文の偏りはオーダーブックインバランス(OBI)と呼ばれており,この OBI とリターンには正の相関があると考えられている.本研究ではOBIを考慮した執行アルゴリズムをモデル化し,本モデルが市場からどのような影響を受けるのかを人工市場を用いて調査した.
著者
水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.09-15, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合がある.一方で,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.そこで本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,値幅制限とサーキットブレイカーは制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.
著者
木村 泰知 近藤 隆史 門脇 一真 加藤 誠
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.32-38, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

This paper proposes an Understanding of non-Financial Objects in Financial Reports (UFO) task. The UFO task aims to develop techniques for extracting structured information from tabular data and documents, focusing on annual securities reports. We will provide a dataset based on annual securities reports and organize an evaluation-based workshop for participants. The UFO task consists of two subtasks: table data extraction (TDE) and text-to-table relationship extraction (TTRE). The table data extraction subtask aims to extract the correct entries and values in the tables of the annual securities reports. The text-to-table relationship extraction subtask aims to link the values contained in the tables with the relevant statements in the text. In this paper, we describe an overview of the UFO task.
著者
古屋 晋一 片寄 晴弘 木下 博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.SKL-01, pp.04, 2008-09-16 (Released:2021-08-31)

重力を利用して打鍵する「重量奏法」は、百年以上の間、ピアノ打鍵動作における熟練技能であると考えられてきた。本研究では、逆動力学計算と筋電図解析により、重量奏法が一流ピアニストのみが用いる運動技能であることを、世界で初めて実証することに成功した。
著者
水門 善之 田邊 洋人
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.09-13, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

日本における製造業の基調的な生産動向を捉える上で,自動車工業の生産量を把握することは有用である.本研究では,携帯電話端末の位置情報(GPS 情報)を用いて計測した,自動車メーカーの生産拠点における時間帯ごとの滞在人数を基に,自動車生産量のナウキャスティング(即時性の高い推計)を行った.更に本研究では,同情報が示す自動車メーカー各社の生産状況の趨勢に基づいて株式投資戦略を構築した場合,堅調なリターンが得られることを確認した.また,比較検証のため,各社の株価の趨勢(モメンタム情報)に基づいて同戦略を構築した場合には,安定的なリターンは得られなかった.これらの検証結果は,株式投資において,携帯電話の位置情報に基づく即時性の高い生産量推計の有効性を示す内容と言えよう.
著者
中川 慧 指田 晋吾 坂地 泰紀 和泉 潔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.FIN-024, pp.171, 2020-03-14 (Released:2022-11-25)

A lead-lag effect in stock markets describes the situation where one (leading) stock return is cross-correlated with another (lagging) stock return at later times. There are various methods for stock return forecasting based on such a lead-lag effect. One of the most representative methods is based on the supply chain network. In this research, we propose a stock return forecasting method with an economic causal chain. The economic causal chain refers to a cause and effect network structure constructed by extracting a description indicating a causal relationship from the texts of Japanese financial statement summaries. We examine the following lead-lag effect. (1) whether lead-lag effect spreads to the 'effect' stock group when there is a large stock uctuation in the 'cause' stock group in the causal chain. (2) whether lead-lag effect spreads to the 'cause' stock group when there is a large stock uctuation in the 'effect' stock group in the causal chain. We confirm the existence of the both side of lead-lag effect and the evidence of stock return predictability across causally linked firms in the Japanese stock market.
著者
上山 薫 左 毅 上島 康孝 北 栄輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.FIN-004, pp.07, 2010-01-23 (Released:2023-01-06)

In this research, we describe the prediction of the stock price fluctuation by using Bayesian Network. Bayesian Network is trained with stock price fluctuations DJIA30 in New York stock exchange market, FTSE100 in London stock exchange market and NIKKEI225 in Tokyo stock exchange market. Then the network is applied to predict FTSE100 fluctuation. Firstly, FTSE100 fluctuation in 2007 is predicted by technical analysis and Bayesian Network analysis. The results show that the prediction accuracy of Bayesian Network is much better than that of technical analysis. Next, we will discuss the prediction accuracy of the Bayesian Network in 2007 (sub-prime loan problem). The results show that the prediction accuracy decreases not only at the time of the event but at the time of the policy change for the event.
著者
小原 大智 田中 謙司 松田 悠希
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Rin152, 2020 (Released:2020-06-19)

社会全体として自動化、IT化が求められており、機械学習技術の応用分野も広がっている。そこで本研究は、なかなか自動化、IT化が進んでいない医療分野における業務効率化を目的とし、その達成のためにOCR技術を利用した。現在、多くの薬局において処方箋の情報をパソコンへ入力する作業は手作業で行われている。そこでLINEをインターフェースとして、スマートフォンで撮影した処方箋の画像からOCRで情報を獲得するシステムを提案した。論文中で提案した前処理、テキスト処理の手法は処方箋から多くの情報を獲得することができた。我々の研究により日本語処方箋の文字認識に適した前処理・テキスト処理の手法、文字認識がしづらいフォーマットが明らかになり薬局業務の効率化に貢献するような結果が得られたと言える。
著者
四井 美月 Liang Kuo-ching 廣原 茉耶 北沢 桃子 吉村 道孝 江口 洋子 藤田 卓仙 岸本 泰士郎 榊原 康文
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回 (2018) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4C2OS27b02, 2018 (Released:2018-07-30)

精神疾患の診断は現在,問診に基づく医師の主観的判断によって行われている.このような現在の診断方法は医師の経験に強く依存するため,正確な診断を行うための客観的な診断方法を開発する必要があると言われている.したがって我々の目標は,デバイスによって記録されたデータからうつ病患者の重症度を客観的に計算する深層学習手法を構築することである. 本研究では,うつ病患者と健常者を音声データで分類する深層学習プログラムを開発する.
著者
細川 蓮 山田 優生 小川 祐樹 上田 健太郎 諏訪 博彦 梅原 英一 山下 達雄 坪内 孝太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1B3GS201, 2023 (Released:2023-07-10)

近年,個人で資産を形成するために,株式投資による人々の投資行動の需要が高まっている.株式投資において,将来の市場の動向を予測することは,投資家の投資リスクの低減や収益のために重要である.金融指標の一つに,ボラティリティ・インデックス(以下,VI )があり,これは投資家の市場に対する心理状態を表している.一方で,新聞メディアやソーシャルメディアの投稿には,社会情勢や人々の心理状態などを表しており,これらは,VI 指数に影響していると考えられる.本研究では,新聞記事とソーシャルメディアの投稿文書を用いて,日本における VI である日経平均VIの上昇を予測する.さらに,本研究の有用性を検証するために,予測した日経平均VIを用いてオプション取引の売買シミュレーションによる検証を行う.結果として,両メディアを用いることで日経平均VI上昇の予測精度の向上が確認され,売買シミュレーションにおいても収益に対する有用性が確認された.
著者
寺西 真聖 筒井 和詩 武田 一哉 藤井 慶輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3G4OS15b05, 2022 (Released:2022-07-11)

サッカーは22人の選手とボールが複雑に相互作用する競技である。サッカーの攻撃選手の定量的評価については、ボール保持状態に関する研究が多く、数は少ないがボール非保持状態に関する研究も行われている(例えば[1] Spearman et al. 2018)。しかし、ボールを保持せず、受け取らない攻撃選手の評価が難しく、典型的な(あるいは予測された)動きと比べて、どのように動いたことが得点機会の創出に寄与するかを明らかにすることが難しい。本研究では、軌道予測により生成された基準となる動きを実際の動きと比較して、オフボールの得点機会を創出する選手を評価する。提案手法では、まず正確に選手間の関係性をモデル化し長期軌道予測が可能な、グラフ変分再帰型ニューラルネットワークを用いて軌道予測を行う。次に、ボール非保持状態を評価する既存手法[1]の実データの値と軌道予測の値の差に基づき、基準となる予測された動きと比べて、どのように動いたことが得点機会の創出に寄与したかを評価する。検証では、Jリーグの全18チームとの得点との関連やある1試合の例を用いて、提案手法の評価が直観に合うことを示す。
著者
上田 亮
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4H2OS6a01, 2023 (Released:2023-07-10)

本稿の主目的は、シグナリングゲーム最適化の際に用いられるエントロピー正則化項という補助目的関数に着目し、その暗黙の報酬関数を示すことにある。シグナリングゲームとは、言語創発の分野で頻繫に用いられる環境設定であり、非常に簡素なコミュニケーションモデルである。強化学習の手法を用いてシグナリングゲームを最適化する際には、エージェントの探索を補助するために、エントロピー正則化項という補助関数が用いられる。ただし、この補助関数はアドホックに導入されるものであり、そこに暗に仮定されている報酬関数は不明瞭である。また、それ故に当分野における数学的な議論が妨げられている可能性もある。そこで本稿では、エントロピー正則化項の暗黙の報酬関数を明らかにすることで、エージェントの最適化対象をより明確なものとする。また、類似した補助関数であるエントロピー最大化項との関連についても触れる。本稿の貢献が、言語創発分野における数学的な議論を発展させていく上での端緒となることを期待する。
著者
郡司 ペギオ幸夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第22回 (2008) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.112, 2008 (Released:2009-07-31)

直接知覚の表象世界を2^n ブール代数とし、その部分順序集合を論理的に閉じさせた論理を、意識のモデルとする。新たな情報の導入を計算資源節約のもとに定義すると、幾つかの論理的誤謬が得られることを説明する。
著者
小柴 等
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.SAI-039, pp.09, 2020-11-21 (Released:2021-08-31)

予算等の資源を配分を行う際,一部に対して優先的・集中的に配分する "選択と集中” 戦略 が選択される場面は珍しくない.ここで,投資に対して見込める利益率の分布が "べき分布” をとり,か つ,見込める利益率の予測ができない場合には選択をせず,遍く対象に投資する方が全体としての利益 が大きくなることが示されている [野田 19].ただし,予算等の資源は有限ではないため,たとえば申請 があったものについてはすべて予算を支出するとした場合,予算が十分に確保できない可能性が高いほ か,当初から利益が見込めない課題を乱発して自己の資源確保最大化を図るような行動も予想され,現 実的には遍く対象に投資することは難しく,一定のフィルタリングは必要になると考えられる.そこで 本報では投資に対して見込める利益率の分布が "べき分布” の場合に,選択と集中の程度と,個々の課題 の利益率に関する予測精度の関係について,モンテカルロ・シミュレーションを通じて明らかにした.