著者
藤井 健太朗 磯村 拓哉 村田 真悟
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2G5OS21e04, 2023 (Released:2023-07-10)

人間のように未学習の環境であったとしても適切に知覚し、目標を達成するための適応的な行動生成が可能な知能ロボットの実現が期待されている。人間の脳の計算原理である自由エネルギー原理に基づく能動的推論に深層学習を導入した深層能動的推論によって、シミュレーション環境におけるトイプロブレムの解決は示されているが、実ロボットに応用した例はない。そこで本研究は、実ロボットによる行動生成のための深層能動的推論フレームワークを提案する。提案フレームワークは世界モデル、行動モデル、期待自由エネルギーモデルから構成される。世界モデルは対照変分自由エネルギーの最小化に基づき学習を行うことで環境の適切な知覚が可能になる。行動モデルは、期待自由エネルギーモデルによって推定される対照期待自由エネルギーの最小化に基づいた模倣学習を行うことで、目標を達成するための適応的な行動生成が可能になる。評価実験として、実ロボットによるリーチングタスクを、学習済み・未学習の環境で行なった。実験の結果、提案フレームワークはどちらの環境においても適切に知覚し、目標を達成するための適応的な行動生成が実現可能であることが確認された。
著者
石黒 浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.558-563, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
被引用文献数
5
著者
小瀨木 悠佳 立石 修平 大杉 康仁 狩野 悌久 中辻 真
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1T3GS604, 2023 (Released:2023-07-10)

近年,新型コロナウイルスの影響によりチャットボットやボイスボット,メタバースの活用などオンライン接客の注目が強まっている.接客において相手の感情を読み取りながら対応を変化させることは,相手と信頼関係を築きコミュニケーションを円滑にするために重要である.一方で,普及しているチャットボットの多くは,感情情報や文脈を考慮せず短絡的な会話になってしまうことがある. そこで本研究では,丁寧な接客応答ができる次世代対話システム構築に向けて,マルチターン対話の中に現れる感情の変化を捉え,相手の感情に合わせた対話応答ができるように予測するモデルを提案する.具体的には,マルチターン対話における感情予測と,直前の発話における相手の感情に合わせた対話応答の学習を同時に行う学習モデルを提案する. 提案手法の有効性を示すためにMELDデータセットを用いて比較実験を行った.結果として,マルチターン対話における感情を把握しながら応答予測を行うことは,応答予測の精度向上の効果が確認できた.
著者
岩崎 凌 森 直樹 上野 未貴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3C3J902, 2019 (Released:2019-06-01)

近年,人工知能による小説や漫画,アニメ,漫画といった創作物を対象とした研究が大きな関心を集めている. 創作物理解や自動生成といった試みは非常におもしろいものではある反面,そもそも人の創作物理解は高次の知的活動であり,どういったタスクであれば計算機が創作物を理解したといえるのかを定義することさえ難しい. 人の創作物の中で,特に漫画を工学的に扱う分野をコミック工学という. この分野では,日々様々な研究が報告されているが,多くはコミックの持つ画像を対象としており,ストーリーといったコミックの意味を自然言語から解析しようとする研究は少ないのが現状である. その一因としては,上で述べたような意味理解のためにどのようなタスクを設定すればよいか非常に難しいということが挙げられる. 更にデータセットが十分にデータを持っていないこともコミック工学の実験を制限する要因となっているため, Data Augmentation による解決を試み,今後の人工知能による創作物理解の可能性を示すという立場で結果を解析する.
著者
内山 朋規 高橋 大志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.BI-003, pp.01, 2015-11-13 (Released:2022-02-25)

本研究では,企業の利益還元政策の変更が株価に与える影響を分析し,その情報が持つ意味を探究する.結果として,増配アナウンス後の株価の正の異常リターンはマーケットタイミング仮説に整合的で,自社株買いアナウンス後のそれはシグナリング仮説とフリーキャッシュフロー仮説の双方に整合的なことを得た.さらに,アナウンスを行った企業に関するアナリストの推奨やニュース記事のトーンもまたこれらの仮説に整合的であった.本研究の結果は,経営者と投資家の間の情報の非対称性やエージェンシー問題といった市場摩擦がアナウンス後の異常リターンの要因であることを示している.
著者
伊藤 昭 矢野 博之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.271-278, 1995-03-01 (Released:2020-09-29)

The social sanction mechanism against unfair deals is investigated in a society of autonomous agents. The mechanism is realized by disclosing the contract histories of all the agents. To simulate the situation, each agent is made to engage in the deal equivalent to the "Prisoner's dilemma" problem repetitively, each time changing the other party of the deal. Optimal deal strategies are searched under the condition that the contract records will be disclosed and open to all the agents. Several deal algorithms are taken up, and their behaviors are investigated by matching them under various conditions. Based on the results, the condition for optimal deal strategies of the agents are discussed.
著者
飯塚 重善
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2Q5OS13b01, 2020 (Released:2020-06-19)

人間と人工知能が共生するであろう近未来の社会をどのようにデザインしていく必要があるのかについて,まず「親和性」に着目して,複数のSF映画からいくつかのシーンを抽出するとともに,既往の研究等を基にした予備的な検討をおこなっている. 現在,人工知能にかけられている期待は非常に大きいが,その一方で警戒感も大きい. その一方で,人工知能は人間にとって「パートナー」としての役割を求められる. 鉄腕アトムやHAL9000のような人間と対等に話せるパートナーがいてほしいという,我々の純粋な夢が,今日のロボットや人工知能研究の礎になっているという見方がある. 真に「親和性」の高い人工知能は,自律的で,かつ感情・意思を有するべきで,決して人間の奴隷であってはいけない. もちろん,人工知能もまた,他のシステム等と同様に人間中心であるべきであろう.ただその一方で,人間の側の考え方・捉え方として,単なる人工知能システムから人間共生システムへのパラダイムシフトが必要となるのかもしれない.
著者
古川 慈之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.KST-22, pp.04, 2014-07-22 (Released:2021-08-28)

知識・技術・技能の伝承支援研究会(SIG-KST)は2007年に設立されて以来,関連する研究講演を100件以上実施してきた.また,2012年からはほぼ毎回討論会を実施し,対象とする分野や技術の体系的な整理を試みている.本発表では,これまでの研究会活動から得られた知見をまとめ,考察を行う.
著者
森 俊人 谷津 元樹 森田 武史 江上 周作 鵜飼 孝典 福田 賢一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.SWO-059, pp.08, 2023-03-17 (Released:2023-03-23)

DBpediaやWikidataなどの大規模知識グラフは集合知により構築されるため,人手で構築するのには限界があり,不完全な知識グラフが構築されることがある.この問題を解決するために,知識グラフ中の欠損したエンティティや関係を補完する知識グラフ補完に関する研究が行われている.最近は,知識グラフの埋め込みに基づく知識グラフ補完の研究が注目されている.知識グラフの埋め込みに基づく手法の多くは,学習時に利用する知識グラフ(既存の知識グラフ)に含まれるエンティティの表現ベクトルを用いて関係予測などを行う.既存の知識グラフに含まれないエンティティ(未知エンティティ)は表現ベクトルを計算することができないため,未知エンティティに関する知識グラフ補完を行うことは困難である.最新の話題に対応した知識グラフに基づく質問応答や対話システムを構築するためには,未知エンティティを対象とした知識グラフの構築や補完が必要だと考えられる.本研究は,Wikipediaの赤リンクをDBpediaにおける未知エンティティとみなし,DBpediaを拡張することを目的とする.赤リンクとはWikipediaにまだ存在しない記事(記事名)への,初期設定では赤色で表示されるリンクであり,DBpedia上には赤リンクに対応するエンティティは基本的には存在しない.赤リンクはその性質上,記事が作られるべきであると判断されて作られているため,今後,赤リンクに対応する記事が作成され,DBpediaにおける新たなエンティティとして追加される可能性が高い.本稿では,Wikipediaの記事から赤リンクを抽出して未知エンティティとみなし,DBpediaにおける既存エンティティとの関係構築を行う方法について検討する.
著者
上條 達也 石本 幸暉 松嶋 達也 岩澤 有祐 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2G1OS21c01, 2023 (Released:2023-07-10)

人間は環境の構造を理解し,複数モダリティからなる感覚器官からの情報を処理することで実世界で様々なスキルを獲得できる.人間のように多様なスキルを自律的に獲得できる知能ロボットの実現を目指す上で,複数モダリティからなるセンサ情報から世界モデルを学習し,モデルベース強化学習を行う手法は,自然なアプローチである.本稿では,ロボットアームのPick and Placeタスクにおいて,世界モデルに基づくモデルベース強化学習手法であるDreamerアルゴリズムを用いて,実ロボットアームの手先に触覚センサを取り付け,観測に用いることで,学習にかかる時間が短縮されることを検証する.また,実ロボットを用いて深層強化学習によりマニピュレーションタスクを学習させる際の学習環境について考察を行う.
著者
磯沼 大 森 純一郎 坂田 一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1T3GS605, 2023 (Released:2023-07-10)

近年、ChatGPTをはじめとした幅広いタスクに汎化できる汎用言語モデルを学習する方法として、タスクごとにプロンプトを付与しマルチタスク学習を行うinstruction tuningが注目されている。 これまで様々なプロンプトがinstruction tuningのために作成されているが、どのようなプロンプトがモデルの汎化性能向上に最適なのか明らかになっていない。 本研究では学習用プロンプトを二段階最適化により最適化するinstruction optimizationを提案し、instruction tuningに最適なプロンプトを明らかにする。 評価実験において、タスクの指示をプロンプトに用いる実験設定(zero-shot)では、二段階最適化によりプロンプトを多様化することが汎化性能向上に有効である一方、タスクの例示をプロンプトに用いる実験設定(few-shot)では、多様な種類の例示ではなく同一の例示を用いる方が有効であることが明らかになった。
著者
染谷 大河 石垣 達也 大関 洋平 永田 亮 高村 大也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2M5GS1005, 2023 (Released:2023-07-10)

サッカーは、制約が少なく複雑性が高いチームスポーツの一つであり、試合の成り行きを予測するのは非常に難しい。近年では、主に機械学習の手法を用いて、サッカーの試合においてどの選手がどこで何のアクションをしたかを示すイベントの系列の予測が試みられており、先行イベント系列を考慮したゴール期待値の計算や特定のアクションの有効性の評価への応用が見込まれている。一方で、次にどのようなイベントが発生するかは、単に先行するイベントの系列だけでなくどの選手がそのイベントを発生させるかに大きく依存すると考えられる。そこで、本研究では選手を分散表現すなわちベクトルで表現しニューラルイベント予測モデルの入力に加えることで、先行研究では考慮されていなかった選手の特性を考慮した予測を行うことを提案する。実験の結果、選手特性を考慮することでモデルの予測精度が向上することに加え、モデルを学習する過程で得られた「選手ベクトル」が選手のポジションに関する情報を含んでいることが示された。
著者
香月 祥 田中 宏和 中村 啓信 岸本 泰士郎 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Xin150, 2023 (Released:2023-07-10)

我々はこれまで、診断や疾患評価、音声とその文字起こしや音声・言語学的アノテーションが付与されたUNDERPIN大規模精神疾患会話コーパスを構築してきた。このコーパスを用いて、うつ病患者の分類実験を行った。分類の際は、健常者・軽症患者・中等度以上の患者・うつ病と診断されたことがあるがテストの評価値で症状のない患者の4分類を設定し、4分類のすべてのペア6つそれぞれで2値分類を行った。結果、軽症・中等度以上の重症度に応じた分類ができること、また現在の症状にかかわらずうつ病になった性質で分類可能であることを確認した。分類に貢献した特徴量の分析では、重症度ごとに異なる特徴量や共通している特徴量を確認できた。今後は、新しい特徴量を追加しての学習や、特徴のもととなった人手のアノテーションを自動付与するシステムを構築したい。