著者
内山 朋規 瀧澤 秀明 菊川 匡
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.BI-008, pp.11, 2018-01-20 (Released:2022-02-25)

資産価格のプレミアム(期待リターン)は時系列に変動し,リターンが予測可能であることは現在のファイナンスにおける標準的な考え方である.実務においては投資パフォーマンスの向上のために,学術研究においてはプレミアムの特徴を解明するために,ファクター(予測変数)によってリターンを予測する分析が精力的に行われてきた.しかし,統計的にこれを検出することは容易でないため,より有意な実証的証拠を得ようとデータマイニングを行うと,実際には無意味であるにもかかわらず有意に見えてしまうというオーバーフィッティング(過剰適合)を引き起こす.特に近年では,ビッグデータとして多様なデータを低コストで扱えるようになり,また,工学的な側面から機械学習への注目度が増している.これらは予測精度の向上に貢献する可能性がある一方で,オーバーフィッティングの可能性をより高めてしまう. オーバーフィッティングは,予測対象の標本数が有限であるにもかかわらず,変数選択に自由度があることから生じる.通常の単一検定の基準ではなく,多重検定であることを考慮して有意性を評価する必要がある.従来の資産価格理論の実証では,この影響が軽視されてきた.本研究では,変数選択の自由度だけでなく,モデル選択の自由度,言い換えれば,モデルマイニングの問題も含めて扱う.この結果,時系列におけるリターンの予測可能性を対象に,オーバーフィッティングの影響が大きいことを実証的に示す.変数選択やモデル選択に伴う多重検定を考慮すると,t値の分布は大幅に上方にシフトし,有意水準の臨界値は極めて高くなる.本研究の結果は,ファイナンスの学術的枠組みにオーバーフィッティングの問題を体系的に取り込む必要があることを示唆している.
著者
福原 知宏 中島 正人 三輪 洋靖 濱崎 雅弘 西村 拓一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.468-479, 2013-11-01 (Released:2013-10-11)
参考文献数
28
被引用文献数
6 4

A handover support system that supports care workers to share information and knowledge on patients and nursing-care work based on information recommendation is described. A handover is time consuming work because it takes much time to write and retrieve information on patients. We investigated the handover work in a nursing home, and found that about 25% of the work time was spent for sharing information among care workers. The aim of this study is to support care workers to share handover information efficiently.For this aim, we propose a novel handover support system called DANCE (Dynamic Action and kNowledge assistant for Collaborative sErvice fields) that supports care workers to share information and knowledge on patients and nursing-care work based on information recommendation. The system has following functions; (1) a function for recommending handover information based on attribute names and their values, (2) a function for recommending free-text contents of handover information, and (3) a function for sharing multimedia information. We had experiments for evaluating effectiveness of the system, and confirmed that the system can reduce the time for sharing handover information through a day compared to the time based on a notebook. We compared the work time for sharing two types of handover infomation between the system and notebook conditions; (a) information on patients and nursing-care work which is stored as pairs of attribute names and their values, (b) free-text contents on patients. Results of experiments revealed that the system can reduce the time for the former type of information as 55.2% (64.0s) per person a day compared to the notebook condition, and 59.0% (200s) for the latter type of information. An overview of the system and results of experiments are described.
著者
荒堀 淳一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2J5OS24a01, 2022 (Released:2022-07-11)

AI ガバナンスをめぐる国内外の動向としては、AI 原則からガバナンスの具体化への進捗が顕著と言われる。各国政府や国際機関だけでなく、多くの企業や団体がAI 原則案を公表している。 AI 原則を社会で実現するための自律的なガバナンスや規制案の考え方は多様であり、AI開発者や活用者の自主性に任せるものから、当局により厳格な規制を課すべきだとする案もあり、とくに後者の場合には今後のイノベーションを阻害する要因となりかねない。 本稿では、特にエポックメーキングなEUの規制案を俯瞰したうえで、将来のAI技術開発や実装に与える影響について検討したい。
著者
石塚 光 白松 俊 小野 恵子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1P1GS1003, 2022 (Released:2022-07-11)

2つの対立する主張があった際に,そのどちらの主張も否定せずに発展した答えを導くことを「アウフヘーベン」という.アウフヘーベンは日本語で「止揚」と訳される.この止揚の考え方は,話し合いや議論の場などで,皆の納得できる高度な結論を導くうえで重要だと考えられる. 本研究では,議論において対立意見の止揚が起こるのに必要な要素を明らかにするため,まずは止揚の度合を定量化した上で,議論実験とその分析を行った.その結果,議論中に自分の意見の根拠となる情報として投稿されたURLの数と,議論での止揚の度合いの間に弱い正の相関関係が確認された. また議論で止揚が起こるには前提として,対立する主張が存在する必要がある.しかし実際の話し合いや議論では,皆が似たような主張で対立する主張を述べる人が少ない,または存在しないことがある.このような状態は,議論の中で意見の偏りが生じていて,止揚が起こりにくい状態だといえる.そこで本研究では,議論においてbotが少数派の意見を補強する情報を投稿する,意見の偏り解消手法を提案する.
著者
川本 稔己 山崎 天 坂田 亘 佐藤 敏紀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会 93回 (2021/11) (ISSN:09185682)
巻号頁・発行日
pp.131-136, 2021 (Released:2021-11-20)

本稿では、対話システムライブコンペティション4のシチュエーショントラックに提出した対話システムについて述べる。本システムはTransformerをベースとした言語モデルの「HyperCLOVA」を用いて応答生成を行った。言語モデルには対話履歴だけでなく、状況や発話者のペルソナをFew-Shotのプロンプトとして入力することでシチュエーションに沿った応答生成を可能にした。また、シチュエーションに沿わない応答を生成した場合に備えて、応答開始語句を指定した後に再度生成を行う機構を備えている。その結果、本システムは予選で2位の成績を収め、日本語の大規模言語モデルがシチュエーションに沿ったタスク指向対話の応答生成に有用であることを確認した。一方で、生成文には時折Hallucinationが起こることにより、発話の信頼性や対話の一貫性に未だ課題が残る。本稿では、予選の対話ログを参照し課題の議論を行う。
著者
水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.FIN-017, pp.01, 2016-10-08 (Released:2022-12-17)

経済のマクロモデルは,ミクロプロセスの積み上げによって構築する,いわいる "ミクロ的基礎付け"(micro-foundation)がなされるべきとの主張が多くなされ,ミクロ的基礎付けがなされた経済のマクロモデルが多く生まれた.一方,リスク資産の価格変動というマクロ量をモデル化したものは多く存在するが,これらのモデルをミクロ的基礎付けしようという試みは多くない.そこで本研究では人工市場研究からの知見を用いて,ARCH モデルのミクロ的基礎付け,すなわち,各係数がどのミクロプロセスから生じているのかを明らかにすることを試みた.その結果,投資家の予想価格のばらつきと需給の歪みが大きくなるとボラティリティは大きくなり,流動性を奪う投資家の存在割合が大きくなったり投資家のリスク回避度が小さくなるとボラティリティクラスタリングは大きくなることが分かった.
著者
岡田 雅司 谷口 忠大
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2M1OS19a01, 2022 (Released:2022-07-11)

本稿では、世界モデルに基づく強化学習であるDreamerV2とDreamingを拡張したDreamingV2を提案する。DreamerV2は潜在状態をカテゴリ変数で表現する離散世界モデルを用いた強化学習手法である。またDreamingは、対照学習により、一般的な世界モデル学習におけるオートエンコーディング(再構成)の過程を用いない強化学習手法である。提案するDreamingV2は、DreamingV2の離散状態表現とDreamingの再構成不要な世界モデル学習の両者を採用した手法である。5つのロボットアームのタスクのシミュレーション実験において、DreamingV2はDreamerV2および最新の世界モデルを上回る性能を達成した。DreamingV2は実世界の不連続的なダイナミクスを離散表現で適切に表現でき、また実世界の複雑な画像観測の再構成を不要とすることから、DreamingV2はロボット強化学習の有効な手段であると考えられる。
著者
梅津 大雅 中田 和秀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.45-50, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

資産運用において,単一の銘柄に投資を行うことは非常にリスクのある行動とみなされている.そのため資産運用を行う際は,複数銘柄に分散投資を行うことが求められる.このように市場に存在する様々な金融資産に対して,どの資産にどれだけ投資するかを決定する問題はポートフォリオマネジメントと呼ばれている.ポートフォリオマネジメントの代表的なモデルとして,ポートフォリオの期待収益率の最大化と分散の最小化を行う平均分散法のような最適化のアプローチの手法が知られている.しかし,最適化の手法は,主に特徴量として平均と分散を使用しており,強い定常性を仮定している点が問題である.これらの問題に対して本研究では,強化学習の枠組みを用いてポートフォリオマネジメントを行う.強化学習は機械学習の分野の1つであり,コンピュータ上のエージェントが環境と相互作用を繰り返すことで,タスクの報酬を最大化する意思決定の方策を学習する.また定常性を仮定せず,長期的な依存関係を考慮した学習を行うため,資産運用と相性が良い.一方で,強化学習には2つの問題が存在する.その1つが金融市場のデータ不足である.強化学習を行う際は,多量の訓練データを必要とするが,金融時系列は時間に対して1対1にしかデータが増えない.また強化学習に入力する特徴量は,基本的に行動を決定する時点の情報のみを使用するが,資産運用に関しては将来の状態を考慮することが重要である.本研究ではこれらの問題に対処するために,CSDIによるデータ生成とLSTMによる予測を用いた強化学習フレームワークを提案する.CSDIはDiffusion Modelを基としたデータ生成手法の1つであり,金融時系列の分布を模した人工データを生成することが可能であるため,データ不足の問題を解消できる.また時系列予測の分野で高性能を記録しているLSTMによる予測特徴量を入力とすることで将来の状態を明示的に把握させた.これらの提案手法の性能を検証するために,ダウ・ジョーンズ工業株価平均の30銘柄を用いて定量評価を行い,提案モデルはベンチマーク手法よりも優れていることを確認した.
著者
大柿 高志 吉仲 亮 山本 章博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4A15, 2014 (Released:2018-07-30)

近年、古典和歌のテキストデータベースがWebやCD-ROMで公開されてきている。それにともなって、マイニングの技術が文学研究においても利用され始めている。これまでの古典和歌の文学研究は自立語による語句の分析が主だった。しかし、和歌は朗詠の文化を持ち、音が重要な意味をもつことも十分考えられる。和歌を音素の記号列に変換し、テキストマイニングを行うことで、新しい和歌の分析手法を提案する。
著者
河本 哲 秋光 淳生 浅井 紀久夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.D-M51_1-14, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
31

In Internet advertising, text information is added to increase the appeal of the ad to the viewers. However, some of the advertising documents contain inappropriate expressions. Wording or expressions that exaggerate the efficacy of a product or that recommend a product by a medical professional may violate the Pharmaceutical Affairs Law and the Act against Unjustifiable Premiums and Misleading Representations. Therefore, a system that can effectively and quickly detect problematic advertisements is required. Some advertisements cannot be properly classified based on word statistics alone. Therefore, information other than word statistics must be embedded in the document vector. The advertising documents targeted in this study have characteristics such as “biases in the word positions of specific words” and “periodic occurrence of specific words.” Frequently appearing words in problematic documents (especially in cosmetics advertisements) have strong biases in their word positions, resulting in a complex multimodal distribution of position of occurrence. Therefore, embedding word order information and word period information in document vectors is considered very effective for identifying problematic advertising documents.In recent years, the effectiveness of the BERT model has been recognized in various natural language processing tasks. However, it is also true that faster models are required for application on the Internet advertising. Therefore, as a means of achieving both inference speed and discrimination performance, we propose a document feature based on the discrete Fourier transform(DFT) of word vectors weighted by an index previously proposed in a study that attempted to categorize Chinese Internet advertisements. In addition, we employed the Complex-valued Support Vector Machines as discriminative models that can handle complex numbers and have high generalization performance even with small amounts of data.Although the discrimination performance of the proposed model is inferior to that of ALBERT and BERT to some extent, it is higher than that of DistilBERT, XGBoost, and LightGBM. The inference speed of the proposed model is somewhat slower than XGBoost and LightGBM and needs improvement, but is faster than DistilBERT. Those results indicate that the proposed model is promising when applied on the Internet. In addition, we found that when the index proposed in the previous study (which attempted to categorize Chinese advertisements) was applied to Japanese advertisements, that index emphasized the word vectors of specific nouns and verbs.
著者
落合 友四郎 ナチェル ホセ
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.FIN-014, pp.05, 2015-01-21 (Released:2023-01-12)

Recent financial crises have shown the importance of determining the directionality of the in uence between financial assets in order to identify the origin of market unstabilities. Here, we analyze the correlation between Japan's Nikkei stock average index (Nikkei 225) and other financial markets by introducing a volatility-constrained correlation metrics. The asymmetric feature of the metrics reveals which asset is more in uential than the other. As a result, this method allows us to unveil the directionality of correlation effect, which could not be observed from the standard correlation analysis. Furthemore, we present a theoretical model that reproduces the results observed in empirical analysis.
著者
籔内 陽斗 松井 藤五郎 武藤 敦子 島 孔介 森山 甲一 犬塚 信博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.32-39, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

ファンド(投資信託)の中には目論見書に記された運用方針と実際の運用方針が異なる場合がある。先行研究では実際の運用方針に基づくファンドのグループ分けを目的に、月次リターンの時系列に対してk-meansとUMAPを組み合わせた手法を用いてファンドをクラスタリングする方法が提案された。しかし、k-meansによるクラスタリングではラベル情報を一切使用しないという問題がある。本論文では、インデックスファンドのラベルは正しいと仮定し、ラベル情報を使用可能な手法であるOne-class SVMを導入する。ところが、通常のOne-class SVMでは、ラベルが付与されたインデックスファンドだけをインデックスと判別するモデルを作成するため、インデックスに類似した隠れインデックスファンドをインデックスと判別することができない。この問題を解決するために、本論文ではOne-class SVMモデルの出力値に着目し、One-class SVMの出力を校正する新しい方法を提案する。提案手法を同一の指標をベンチマークとするファンド群に対して適用することで隠れインデックスファンドを見つけることができた。
著者
塩崎 恭平 田中 一晶 中西 英之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第27回 (2013) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1G52in, 2013 (Released:2018-07-30)

ビデオチャットにおいて,ロボットを用いて身体動作や身体接触を再現する場合,映像とロボットを組み合わせたシステムのデザインによってソーシャルテレプレゼンスが変動する可能性がある.本研究では,身体接触と身体動作を再現する指相撲ロボットハンドを開発し,ロボットハンドの配置や操作者の映像の範囲を変えて組み合わせた.これらの方法がソーシャルテレプレゼンスにどのような影響を与えるか検証する実験を行った.
著者
曽我 真人 松田 憲幸 瀧 寛和
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.96-104, 2008 (Released:2008-02-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2 9

Skill, such as arts, sports and crafts, is regarded as a cycle that consists of the following three steps: recognition of objects, selection of appropriate action series and execution of the action. In arts and crafts, people produce works as a result of this cycle. Skill-learning environment should involve diagnosis-function providing appropriate advice for each step. This paper describes technique that is providing advice in real time when a learner learns recognition of drawing. To assist learners' recognition, we developed the sketch-area-dependent advising system that presents advice with voice for learners' drawing. The effectiveness of advice was confirmed through an experiment evaluating proposed technique.
著者
箕輪 峻 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.DSI-F_1-13, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)
参考文献数
17

Recently, end-to-end learning is frequently used to implement dialogue systems. However, existing systems still suffer from issues to handle complex dialogues. In this paper, we target on the conversation game “Mafia”, which requires players to make consistent and complex communications. We propose a middle language expression and a converter from natural language input. We implemented our dialogue system to play the Mafia game with humans and other automatic agents. Our evaluation on the play shows that our middle language increases conversion coverage.
著者
南 朱音 小林 優希奈 甲野 佑 高橋 達二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2I5GS203, 2020 (Released:2020-06-19)

複雑な入力情報から取るべき行動を推論する深層強化学習は,強力な関数近似器での学習(Deep Learning)が発展の核となった.強化学習には教師あり学習とは異なり,自分でデータ収集しなければならない探索の概念を持ち,単純な強化学習の一種であるバンディット問題では最適な探索アルゴリズムが明らかになっている.しかしながら関数近似を用いる文脈付きバンディット問題では最適な探索が保証されなくなる.そこで本研究では従来とは異なる探索アルゴリズムの検証を行った.人間は報酬の目標水準を持ち,それを満たす行動を速やかに探索する性質(満足化)が知られている.この満足化を応用した文脈付きバンディットアルゴリズムに応用した linear Risk-sensitive Satisficing (LinRS) は人工的な分布を用いた課題では既存アルゴリズムと比較しても良い成績が得られている.本研究では実世界から実測データでの文脈付きバンディット問題での検証を行った.人工データより実世界データの成績は悪化すると言われており,その対処法として LinRS における適切な探索のための目標水準の調整について議論する.