著者
海老澤 元宏 田知本 寛 池松 かおり 杉崎 千鶴子 増田 泰伸 木村 守
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.471-477, 2005

【背景, 目的】卵殻カルシウムの卵としてのアレルゲン性についての検討はほとんどされていない. 卵殻カルシウムの中でも未焼成カルシウムのアレルゲン性については明確になっておらず, エビデンスがないということによりアレルギー表示の対象となっている. 【方法】市販の卵殻未焼成カルシウムのアレルゲン性について, 電気泳動法(SDS-PAGE), ウエスタンブロット法, inhibition ELISA法およびsandwich ELISA法, さらには, 卵アレルギー児に対する経口負荷試験を実施し検討した. 【結果】SDS-PAGE, ウエスタンブロット法およびinhibition ELISA法により, 未焼成カルシウムの卵としてのアレルゲン性は焼成カルシウムと同等であることが確認された. また, sandwich ELISA法でも未焼成カルシウムのアレルゲン性は低いことが確認された. さらに, 卵白に対し強い即時型反応を認めた卵アレルギー児への卵殻未焼成カルシウムによる経口負荷試験においても6例すべて陰性であった. 【結語】卵殻未焼成カルシウムは卵のアレルゲンの混入がほとんど認められず, また, 卵としてのアレルゲン性も低いことから, そのアレルゲン性を過度に危惧する必要はないものと考えられた.
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 荒川 正昭 下条 文武
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.713-718, 1999
被引用文献数
4

慢性持続咳嗽は, 臨床上頻繁に遭遇する問題である。この鑑別診断における気道過敏性検査の臨床的意義について検討した。胸部単純X線写真および1秒率に異常のない慢性持続咳嗽症例に, アストグラフ法による気道過敏性検査を行い, 累積反応閾値のDminと年齢, %努力肺活量, %1秒量, 1秒率, %V_<50>, %V_<20>, 末梢血好酸球数, 血清IgE値との相関性を検討した。慢性持続咳嗽51例(男20例, 女31例, 平均年齢41歳)の原因疾患は, 咳喘息29例, かぜ症候群後持続咳嗽13例, アトピー咳嗽6例, その他3例であった。Dminと有意に相関したのは, %V_<25> (r=0.31, p=0.02)であった。Dmin 10単位未満を気道過敏性の亢進と判定した時, 咳喘息診断の感受性は93%, 特異性は87%であった。気道過敏性検査は, 他の検査では代用が難しく, 有用であるが, その診断限界があることを認識しておく必要がある。
著者
相原 雄幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.451-456, 2007
被引用文献数
14 11

Food-dependent exercise-induced anaphylaxis (FEIAn) is a rare disease. The disease is classified into physical allergy and/or a subtype of food allergy. However, the pathophysiology and epidemiology are not well known. In this article we presented our studies of the epidemiology of FEIAn, in school students (elementary. junior-high, and high school) in Yokohama City and/or Kanagawa Prefecture, Japan. Also, we reviewed FEIAn cases in the literatures in Japan as well as in foreign countries. Six hundred and seven school nurses responded the questionnaire, 30 (Male : Female, 24 : 6) cases of FEIAn and 44 (M : F, 22 : 22) with exercise-induced anaphylaxis (EIAn) among 353977 students were reported. The frequency of FEIAn and EIAn was 0.0085% and 0.012%, respectively. Only one third of nurses had knowledge of FEIAn. We performed provocation tests in 11 of the 30 students with FEIAn and confirmed the diagnosis. We demonstrated transient increases in plasma histamine but not serum tryptase levels during the tests. The causative foods were mainly wheat and crustaceans in 170 Japanese cases and beans and wheat in foreign countries. As for exercise, ball games and running were more frequent sports in both groups. The age of first episode of FEIAn was 10 to 20 years old in most cases. Provocation test often fails to induce symptoms. In addition, we do not have the standard method. Now we are establishing the protocol. FEIAn and EIAn are relatively rare among school students in Japan. There is no evidence to prevent the onset of FEIAn with medicines. Therefore, to avoid serious outcomes and unnecessary restriction, we believe it is important to be familiar with the diseases for not only physicians, but also school nurses and teachers of physical education.
著者
藤村 政樹
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.365-375, 1983
被引用文献数
8

気管支喘息の治療に広く用いられているステロイドは, アラキドン酸からslow-reacting substance of anaphylaxis (SRS-A) への合成過程を阻害することがin vitroの研究で示されている.著者はモルモットを用いてleukotriene C_4 (LTC_4)および抗原吸入時のSRS-Aによる気道反応に対するステロイドの抑制作用を, 肺粘性抵抗(RL)と動肺コンプライアンス(Cdyn)を客観的指標として検討した.dexamethasone phosphate (20mg/kg)を18-22時間前に腹腔内に投与すると, 抗原吸入時のSRS-Aによる気道反応は抑制されたが, LTC_4による気道反応は抑制されなかった.この抑制作用は, RLよりもCdynにおいて著明だった.以上の所見より, ステロイドはとくに末梢側気道でのSRS-Aの合成, 遊出過程を抑制することが示唆された.
著者
木原 令夫 足立 哲也 藤永 秀子 小川 隆一 小関 隆 姫野 友美 牧野 荘平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.609-617, 1995
被引用文献数
3

伊豆大島住民のうち15歳以上の4673名を対象としてスギ花粉症のアンケート調査を行ったところ回収率は22.3%であり, 春先 (2月中旬から3月中旬) に鼻症状を有する例は8.9%, 眼症状例は5.7%, 皮膚症状例は8.1%であった. 有症状例に行ったスクラッチテストで13.8%の例がスギ抗原陽性であり, IgE RAST score 2以上の例は33.3%であった. 平成2年2月から4月までの最高スギ花粉飛散数は北部診療所で3月7日に118個/cm^2, 南部診療所では2月28日に271個/cm^2であった. 全住民に対するスギ花粉症患者を推定すべく再度アンケート調査を行ったところ (回収率53.1%) 鼻症状3項目以上と眼症状2項目とを同時に有する例は4.7%であり, 未回答者のうちランダムに選んだ100名に対する電話での調査結果と合わせて頻度を検討すると, 全住民のうち5.64%にスギ花粉症を疑わせる例が見出された.
著者
嶋倉 邦嘉 長島 裕二 塩見 一雄 久能 昌朗 海老澤 元宏 赤澤 晃 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.522-529, 2003
被引用文献数
4

食物負荷試験(FPT)は食物アレルギーの重要な診断法の一つであるが, FPT用の標準抗原は開発されていない.本研究では,5種類の食物(牛乳,鶏卵,鶏肉,大豆および小麦)からスプレードライ法またはフリーズドライ法により粉末を製造し,FPT用抗原としての有用性をin vitroで調べた。SDS-PAGEでは,各粉末およびその原料の抽出液は同じまたは類似した泳動パターンを示した.食物アレルギー患児の血清を用いたELISAで分析したところ,各粉末抽出液の反応性と原料抽出液の反応性との間には良好な相関(r=0.853-0.978)がみられた。さらに,牛乳,鶏卵および大豆では,粉末抽出液および原料抽出液を固相化抗原として用いても阻害剤として用いても,ほぼ同じELISA阻害曲線が得られた.これらの結果から,各粉末は原料と同じアレルゲンを同レベルで含み,FPT用抗原として有用であると判断された.なお,粉末のアレルゲン性は-20℃または5℃貯蔵では18カ月以上安定であることも判明した.
著者
中沢 次夫 稲沢 正士 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.491-494, 1979

カエルの体成分に起因するアレルギー症状(気管支喘息, 皮膚炎)を呈した稀有な1症例を経験したので報告する.症例は31才, 女性, 実験助手, 昭和42年, 食用ガエル(bull frog;Rana catesbeiana)の脳波壊実験を開始し1年後からカエルにさわると皮膚〓痒感出現, 昭和52年9月, 実験中に脳の付着した注射針を右中指に誤刺したところその部が腫脹, 20分後, 喘鳴呼吸困難が出現した.脳破壊実験に使用したbull frog 3匹から脳をとり出し作製した抗原液を用いて行つた各種アレルギー検査では, PK反応が陽性で, RAST値はscore 3であり, 特異的IgE抗体を証明しえた.一方, モルモットのheterologous PCA反応やゲル内沈降反応を用いて検索した特異的IgG抗体は検出できなかつた.これらのことから, 本例のアレルギー症状はbull frogの体成分に起因するものであり, それに対する特異的IgE抗体との反応, すなわちI型アレルギー反応の結果生じた症状であることが考えられた.
著者
小笠原 英樹 形浦 昭克 朝倉 光司 松井 利憲
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.726-736, 1999
被引用文献数
6

北海道における代表的な花粉症は従来からイネ科花粉症が知られているが, 最近はシラカンバ花粉症の増加が知られ, 特に, 札幌地方においてはそれが顕著である。著者らはシラカンバ花粉の飛散数と気象条件との関連について統計学的に検討した。また, 1997年の札幌地方における主な空中花粉の飛散状況について調査し, 過去のデータとの比較を行った。その結果, 気象条件とその翌年のシラカンバ花粉の総飛散数との間には密接な関連が示唆され, 特に, 5月から6月にかけての気象条件が重要であると考えられた。また, 湿度と強い負の相関を認め, これが花芽の育成に影響を与えている可能性が示唆された。主な空中花粉の飛散状況は, 3月下旬よりシラカンバなどの樹木花粉が飛散し始め, 6月にはイネ科花粉, 8月下旬頃からはヨモギ属花粉の飛散をそれぞれ認めた。イネ科花粉の飛散数は減少の傾向を示した。
著者
高鳥 美奈子 信太 隆夫 秋山 一男 高鳥 浩介
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-8, 1994
被引用文献数
11

相模原地区における屋外空中飛散真菌を1970年および1980年と同一の地点で同じ落下培養法により1983年から1992年まで毎週調査した. 全10年間の平均検出率順から, 酵母類とMycelia steriliaを除きCladosporium, Alternaria, Epicoccum, Aureobasidium, Curvularia, Ulocoladium, Penicillium, Arthrinium, Nigrospora, Fusarium, Trichoderma, Pestalotiaが主要優先菌とみられ, 1980年の相模原および全国の調査成績とほぼ同様である. CladosporiumとAlternariaは毎年最優先2属で, 次いでEpicoccumが3位となることが多かった. しかし, 1970年に4位以内にあったAspergillusとPenicilliumは後退し, 特にAspergillusは既に低頻度菌でさえある. 季節性分布では, 総じて6月の梅雨期と9〜10月の秋期をピークとする2峰性を示した. この2峰はCladosporiumとAlternariaから主に成り, 後者は梅雨期がより優位である. 明らかな単峰性分布が確認されたものに梅雨期のEpicoccum, 秋期のUlocladium, 夏期のCurvulariaとNigrosporaがある. その他の主要菌に明瞭な季節性はみられなかった.
著者
中村 晋 室久 敏三郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.702-717,728-72, 1970
被引用文献数
2

1)そば粉を摂取しあるいは吸入することによつて典型的アレルギー症状(鼻炎, 結膜炎, 喘息, 蕁麻疹, 胃腸症)を呈したと考えられる3例を経験し, アレルギー学的検索を試みたのでその成績を報告した.2)そばアレルギーの症候学的特徴につき文献的考察を試み, 筆者の経験を加味してそばアレルギーの典型的症候像を打ち出した.3)そばによる過敏症状は抗原抗体反応による典型的アレルギー反応と考えられ, 仮性アレルギーとしての意義は少く, また精神身体医学的因子が関与しないことを諸種アレルギー学的検査成績などより指摘した.4)本報告の症例3はそば屋に調理師として就業後9年という感作期間を経て発病した職業性そばアレルギーの貴重な症例であつて, わが国には未だ同様の症例の報告がない.5)そばアレルギー患者にX線透視下でそば添加造影剤を与え, 胃腸通過状況を検したところ, 対照に比して胃の著明な蠕動亢進があり、胃排出時間はむしろ短縮, 回盲部進入時間は著明に延長, 大腸通過は速いという結果が得られた.6)そばアレルギーの合理的かつ効果的治療法はまず抗原の除去ないし回避であり, 可及的に抗原よりの離脱をはからねばならないこと, 症例3のごとく職業上抗原に曝露を免れ難いものでは職場転換を考慮すべきで, これが不可能な時に減感作療法の適応となることを強調した.
著者
原 敦子 深堀 範 中田 裕子 福島 千鶴 松瀬 厚人 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.574-577, 2006
被引用文献数
2

症例は21歳,男性.夕食摂取後に突然のくしゃみ,咳嗽,鼻閉を伴った呼吸困難が出現し,救急外来を受診したところ,低酸素血症,高炭酸ガス血症を認め,全肺野で笛声音を聴取し,顔面・前胸部・四肢に膨疹を認めた.夕食は市販の粉を使用して作ったお好み焼きであり,この粉は数カ月前に一度開封した後,室温で保存されていたものであった.皮膚プリックテストでは原因となったお好み焼き粉とハウスダストに対しては陽性であったが,開封直後の粉に対しては陰性であった.そのほか免疫学的精査の結果から,お好み焼き粉に混入したダニが原因のアナフィラキシー症例であったと考えられた.
著者
我妻 義則 信太 隆夫 宮田 亮 松山 隆治 今村 光男 伊藤 浩司
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.56-69,90, 1969
被引用文献数
8

1. Tree pollen season extended from the first week of April to the last week of June and significant trees were Birch, Alder, Oak, Spruce, Fir, Yew and Maple. Grass pollen season extended from the first week of June to the last week of August, but grass pollens were found until the middle of September. The most significant and abundant grasses were Orchard grass, Timothy, June grass, Rye grass and Red top, all of which were introduced. Weed pollens were found from the first week of June to the middle of September. Dominant weeds were Sheep sorrel, Blunt-leaved dock and Wormwood (Artemisia montana), but Short regweed, allergically troublesome plant, was not found anywhere in this area. The wormwood was found abundantly, showing a peak in the pollen counts at the begining of September in Sapporo area. 2. Variation in pollen incidence from year to year was wider in trees, particularly Birch, Alder and Maple, than in grasses. Counts of all pollen grains in 1 966 were recorded twice in 1965. Low pollen counts were obtained in the days when it was higher than 80% in relative humidity, and rainfall. Variation in pollen incidence from place to place was wide and high counts occured locally in the neighbouring area of Sapporo. Cyclic pollen releases in grasses were confirmed to particular times of day and the majority of the pollen was released in the early morning with mild wind. 3. The comparative study with the new pollen sampler (Durhams' standard sampler) and the old type of instrument (the pollen slide shelter employed in 1965 and 1966) during the grass season of 1967 revealed that higher counts were obtained with the old type than the new. 4. Vegetation of Hokkaido and Sapporo were described briefly from the point of view of allegy. Finally, the implication of this study were discussed.