著者
浅賀 英人 吉田 博一 馬場 廣太郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.357-363, 2002
被引用文献数
2

スギ花粉飛散期におけるエバスチンの効果および発現時期,持続性の検討を行うために,2000年3月5日,周囲を多くのスギ林に囲まれた宇都宮市森林公園にて野外比較試験(single blind)を実施した.試験当日は快晴に恵まれたこともあり,公園内の測定で235個/cm^2と大量のスギ花粉が飛散した.特に投薬を行った10時からの2時間は1時間に50個/cm^2を越える大量のスギ花粉が飛散し,この期間におけるプラセポ内服群の鼻症状は急激に悪化した.エバスチン内服群においてはこのスギ花粉大量曝露下の内服後2時間目からすでに症状改善傾向を認めた.またその効果は,24時間後の翌朝10時まで持続して認められた.エバスチンは,スギ花粉飛散期の大量曝露下における症状を即効性をもって抑制し,その効果は1日1回の内服により24時間得られるものと考えられた.また野外比較試験は,スギ花粉飛散期に行うことにより患者の症状を自然経過のまま観察,評価することが可能であり,抗アレルギー薬を含むさまざまな花粉症治療の臨床効果判定に有用であることが示唆された.
著者
藤宮 大 熊田 貴彦 中村 好克 宮田 英雄 中島 茂 野澤 義則
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.142-151, 1994
被引用文献数
6

ラット好塩基球性白血病(RBL-2H3)細胞を用いて, 抗原刺激による膜リン脂質代謝, カルシウム動態を検討し, 抗アレルギー薬TBX(ペミロラストカリウム)の作用機序の解明を試みた. 抗原刺激による分泌反応を, TBXは濃度依存的(0.01〜10μg/ml)に抑制した. また, TBXは分泌反応を抑制する同等の濃度で, セカンドメッセンジャーであるイノシトール1, 4, 5-トリスリン酸の産生とカルシウムの動員を抑えた. 従って, ホスホリパーゼC(PI-PLC)の活性化を抑制していることが示唆された. PI-PLC の活性化に続く, 主にホスファチジルコリンに由来する1, 2-ジアシルグリセロールとホスファチジン酸の産生も抑制された. さらに, エイコサノイドの前駆体であるアラキドン酸遊離を抑えることから, ホスホリパーゼA_2の活性化抑制も推測された. ホスファチジルコリンの分解, ホスホリパーゼA_2活性化は, イノシトールリン脂質代謝(PI-PLC活性化)が引き金となっていることから, PI-PLC活性化抑制がTBXの作用点として重要であると考えられる.
著者
網本 裕子 新垣 洋平 村上 至孝 増本 夏子 田場 直彦 村上 洋子 手塚 純一郎 本荘 哲 本村 知華子 柴田 瑠美子 岡田 賢司 小田嶋 博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1641-1645, 2011

【背景・目的】呼気中一酸化窒素(fraction of exhaled nitric oxide:FE_<NO>)は簡便な気道炎症の評価法である.気管支喘息キャンプに参加した吸入ステロイド(inhaled corticosteroids:ICS)使用者のコンプライアンスとキャンプ中の吸入指導によるFE_<NO>変化の関係を検討した.【方法】2008〜2010年のキャンプに参加した6-12歳の喘息児131人中ICS使用者50人にキャンプ前の予診時に家庭での薬剤管理状況を質問し,4群に分けた.キャンプ中の吸入指導により初日と最終日のFE_<NO>変化を薬剤管理状況別に比較検討した.【結果】年齢,性別,治療ステップ,FE_<NO>中央値いずれも4群間で差を認めなかった.FE_<NO>値は毎日ICS吸入をしている者では変化を認めなかったが,ICS吸入を忘れることがある者では最終日は初日と比較して有意に低下した.【結語】FE_<NO>値の変化はICS使用者におけるコンプライアンスをみる指標になる可能性がある.
著者
平 英彰 吉井 エリ 寺西 秀豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1187-1194, 2004
参考文献数
27
被引用文献数
6

スギは日本の準固有種で, 最も古い化石は秋田県田沢湖の北方, 檜木内川の上流にある宮田のおよそ530万年前の地層から発見されている. このことから, 日本におけるスギの出現は, 他の針葉樹に比べ比較的新しいと考えられている. スギは現在, 青森県から鹿児島県の屋久島まで広く天然分布している. 日本列島に生育しているスギは, 環境に対する適応性が高く, 他の樹木に比べ成長が早く, また, 材は通直で割裂性が高いため, 柱などの建築材やたらい, 桶等の生活品として古くから利用され, 日本の文化を支えてきた重要な樹木である. 万葉集(十巻1814)にも「古の人の植けむスギが枝に霞たなびく春は来ぬらし」と歌われているように, スギの植林は1000年以上も前からおこなわれていた. 商品としての材を生産するための大面積の植林も400年以上も前からおこなわれており, 江戸時代においては, 都市近郊に大面積のスギの植林地があった. そして, 江戸末期から明治年代にかけて, 産業の発展に伴いスギ材の需要が高まり, 全国でスギの植林が盛んに進められた.
著者
須藤 守夫 小林 仁 中澤 次夫 可部 順三郎 堀内 正 佐野 靖之 刑部 義美 秋山 一男 宮城 征四郎 城 智彦 上田 暢男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1262-1269, 1996
被引用文献数
1

喘息死および致死的高度発作救命例(以下, 救命例)についてアンケート調査により比較検討した. 喘息死は67例, 救命例は80例である. 喘息死は51.9歳と救命例の44.3歳より8歳高齢であるが, 病型, 重症度, 過去の高度発作歴など差を認めなかった. 高度発作の起こり方は急速型は喘息死で救命例より多く, 不安定急変型は喘息死で救命例より少なかった. 喘息死は在宅〜来院途中の死亡が76.2%を占めていた. 高度発作をおこした因子では受診の遅れが喘息死で救命例より有意に多く, また不適当な治療, 仕事・勉強の優先などがみられた. 死亡例と救命例の致死的高度発作前の状況では両群とも酸素吸入, 救急車の利用, 夜間外来受診, 入院歴などが目立つが差を認めない. 以上のごとく喘息死と救命例は, 基本的には同一のハイリスクグループに属し, 受診の遅れによりDOAになる前に救急施設に到着するかどうかの差であった. また喘息死の解明には救命例の分析が有力であることが判明した.
著者
今井 孝成 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1006-1013, 2003
被引用文献数
33

目的 食物アレルギーの臨床は混乱している.これは詳細な病態生理が未だ不明であることはもちろん,その疫学データが少ない点も一因となっている.我々は今後の基礎研究,臨床診療に寄与することを目的とし,即時型食物アレルギーに関する全国疫学調査を行った.方法 国内100床以上で小児科を有する病院2689施設に対し,"何らかの食物摂取後60分以内に症状が出現し,かつ医療機関を受診したもの"を対象とし調査分析を行った.結果 回収率は60.4%で,該当症例のあった498施設の1420症例を対象として検討した。平均年齢は6.7歳±13.1 (平均±標準偏差)であった.頻度の多かった原因食品は鶏卵,乳製品,小麦であり,以下ソバ,魚類,果物類,エビが多かった.症状は原因食品摂取後24.2分±19.4(平均±標準偏差)で出現し,皮膚,呼吸器症状が多く見られた.結論 本結果を基に厚生労働省はアレルギー表示制度に関する省令を一部改正し,卵,乳,小麦,ソバ,落花生の表示を義務化した.
著者
高橋 裕一 松浦 敬次郎 片桐 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.7-15, 1987
被引用文献数
7

山形県において, 4月下旬, 農業従事者の間に花粉症様疾患が多発しているとの情報があった.その原因を探索するために, 県内各地区の8集団, 農村住民5集団1878名(20-79歳)および学生3集団1866名(12-17歳)を対象にしてアンケート調査と臨床検査, 農村部および都市部における空中花粉量の定点調査と植生調査を行った.花粉症様症状, くしゃみ, 鼻汁過多, 鼻閉, 鼻のかゆみ, 眼のかゆみおよび結膜充血などを示す患者の出現頻度は, 農村住民で約10%, 学生集団で約5%であり, 患者の大部分は, 毎年4-5月に発症していることがわかった.発症時期の明らかな患者108名について皮膚反応試験を行った.4月-5月に皮膚反応が陽性の患者の大部分は, イネ科花粉, 特にスズメノカタビラ花粉に感受性を示すものが目立った.スギ花粉に対する感受性者は予想外に少なかった.空中花粉量の月別変動をみると, スギ花粉は3月末から4月中旬にかけて飛散し, 測定地点による空中花粉量の差は認められなかった.一方, イネ科花粉は4月-6月に飛散し, 測定地点により, または農作業の前後で飛散量に大きな違いが認められた.4月下旬から5月初旬に飛散する果樹花粉においても同様の傾向があった.調査対象地域の植生をみると, 患者が多発する4月下旬には, カモガヤ, ホソムギ, ナガハグサなどのイネ科植物はまだ開花しておらず, 果樹園および田起こし前の水田にはスズメノカタビラが著しく繁茂し, 開花中であった.また, スズメノカタビラとほぼ同じ時期に開花するスズメノテッポウは, 前者に比してその数は極めて少なく, 特に果樹園ではほとんど認められなかった.これらのことから, 4月-5月に当地方の農業従事者の間に存在する花粉症患者の多くはスズメノカタビラ花粉によると考えられる.
著者
岸川 禮子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.684-695, 1990
被引用文献数
7

福岡市の花粉症の実態と空中花粉を経年的に調査して地域性を見い出し, 花粉症患者の発症と空中花粉飛散との関係を検討した.市内6施設の耳鼻科医院で, 問診表により花粉飛散期間に一致してアレルギー性鼻炎をもつ症例を1983年から7年間にわたり, 調査・集計した.同時に7ヵ所で空中花粉を重力法により調査し、1月から6月まで半年間のスギ花粉, ヒノキ科花粉およびイネ科花粉について集計した.集計された花粉症患者(4193名)は男女比が4:6で30代(41.9%), 20代(19.8%), 40代(18.4%)の順に多くみられた.スギ花粉症はイネ科花粉症との重複例(23.0%)を含め92.6%, イネ科単独花粉症は7.3%である.関東地方の症例に比較して症状が軽度で, 花粉症の重症度は地域性のあることがわかった.空中花粉捕集数の経年変化は毎年著しい変動を示した.福岡市のスギ花粉症患者はスギ・ヒノキ科空中花粉捕集数の多い年は患者が多く, 少ない年は患者数が減少する傾向にある.
著者
藤井 つかさ 荻野 敏 山邉 えり
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1543-1550, 2006
被引用文献数
3

【目的】スギ・ヒノキ花粉飛散量が大きく異なる3年間において,Web siteにアクセスした花粉症患者の症状・セルフケアなど,どのような項目で相違がみられるかを検討する.【方法】2003年・2004年・2005年の2月1日から4月30日までの3カ月間,B薬品株式会社のWeb siteによるアンケート調査を行った.【結果】初期療法の施行率は花粉飛散量と関連し,多い年は高率であり,少ない年は低率であった.前年との症状の比較では,飛散量が症状の重さに関係する成績が得られた.特に花粉飛散後期(3月15日〜4月30日)では「鼻閉」・「眼のかゆみ・涙」・「不眠」の症状において飛散量との間に明確な関連がみられた.セルフケアに関しては,外出に関連した項目と飛散量との間に関連がみられた.【結語】Web siteを用いたアンケート調査はインターネットにアクセスできる患者という限定した調査ではあるが,花粉症患者の動向調査においては極めて意義があると思われた.
著者
高橋 裕一 川島 茂人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1217-1221, 1999
被引用文献数
12

スギ花粉の総飛散数を予測する方法として,前年と前々年との夏期気温の差を用いた予測法を検討した.全国9地点におけるスギ花粉の実測総飛散数と予測総飛散数との相関はいずれの地点においてもr=0.84を越えた.7月の平均気温との相関が高い地点が多かったが,中には8月の最高気温,8月の平均気温あるいは7月の最高気温との相関が高い地点もあった.検討した135例のうち101例(75%)で実測総飛散数と予測総飛散数との差が1000個/cm^2以下であった.各地点で多く飛散した方から3年間について予測誤差を調べたところ,その誤差は40%以下で,その平均は17.5%であった.従来行われてきた前年の気象からの予測では過大評価になった大飛散年の翌年の予測が正確にできた.以上からこの総飛散数の予測方法は実用化できると考えられる.
著者
月岡 一治 中俣 正美 広野 茂
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.1047-1053, 1987

Candida albicans(以下 Cand.)を抗原とする気管支喘息(以下カンジダ喘息)の発症機序を知るために, Candと共通抗原性をもつ4種の真菌, Aspergillus fumigatus(以下 Asp.), Penicillium luteum (以下 Pc.), Alternaria kikuchiana(以下 Alt.), Cladosporium cladosporioides(以下 Clad.)とハウスダスト(以下 HD)を抗原とする喘息を対象に, 発症におけるIgE抗体の関与をPK反応法により検討し, カンジダを抗原とする喘息と比較した.以下の結果がえられた.1.PK反応陽性の抗原を用いたBPTの陽性率は, Cand., HD, Asp., Pc.の間で明らかな差はなく, いずれも高率であった.2.PK反応陰性の抗原を用いたBPTの陽性率は, HD, Asp., PC., Alt., Pc.の間では明らかな差はなく, いずれも低率であった.しかしCand.では他の抗原にくらべて明らかに高率であった.3.Cand.のBPTでは, 53.5%の患者に遅発型気管支反応(LAR)がみられ, この単独LARを示した患者の26.1%だけがカンジダのPK反応陽性であった.
著者
松本 一郎 小田嶋 博 西間 三馨 加野 草平 荒木 速雄 梅野 英輔 津田 恵次郎 犬塚 悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.435-442, 1999
被引用文献数
17

アレルギー疾患罹患率の経年的変化を調査する目的で, 1981年より1995年までの15年間, 福岡市の5小学校に入学した1年生(各年度平均533人, 総対象者数8000人)を対象に, ATS-DLD日本版・改訂版による質問票を用いたアレルギー疾患アンケート調査を同一地区, 同一手法で行い, 以下の結果を得た. 1. 気管支喘息の有病率には有意な増加を認めないが, 累積罹患率は1981年からの3年間の平均5.7%より1993年からの3年間7.7%へと経年的に有意に増加しており, 男女比は1.7:1で男子に高率であった. 2. アトピー性皮膚炎の累積罹患率は平均36.3%, 男女比は1:1.2で経年的変化は認めなかったが, 寛解児率は1987年からの2年間の平均14.3%よリ1994年からの2年間平均19.6%へと経年的に有意に増加していた. 3. アレルギー性鼻炎の累積罹患率は平均17.6%であり経年的変化は認めず, 男女比は1.5:1で男子に高率であった. 4. アレルギー性結膜炎の累積罹患率は1987年からの2年間の平均8.4%より1994年からの2年間平均11.1%へと経年的に有意に増加していた.