著者
鳥羽 剛 清水 正寛 西牟田 敏之 木内 信二 麻生 誠二郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.606-611,623-62, 1977

乳児期の急性・慢性下痢症には, 二次性・症候性乳糖不耐症が時に続発することはよく知られている.この事実に基づき, 本邦の小児科医は, この症候性酵素欠損の考えられる乳児下痢症にしばしば乳糖分解酵素製剤(β-D-galactosidase, Galantase[○!R])を投与する.しかし, この製剤は, 分子量約10万の蛋白質であり, 生体を感作して過敏症を起こす可能性を有している.私どもは, 即時型・アナフィラキシー型の Galantase[○!R] アレルギーの2カ月女児を経験し, アレルギー学的見地から観察する機会を得た.10^<-4> 液の皮内注射後15分では, 陽性の発赤・膨疹を呈したが, Galantase[○!R] specific IgE 検出のための RAST(paper disc 法)は陰性であった.一方, 患者血清中の沈降素の存在は, Ouchterlony の二重拡散法で, 抗原希釈系列の128倍希釈まで証明され, IgG 沈降帯上の Galantase[○!R] binding activity も ^<125>I-Galantase[○!R] を用いた radioimmunodiffusion で証明された.以上の結果から, この症例の Galantase[○!R] アレルギーは, この IgG 抗体により惹起されたものと推定された.
著者
足立 満 森川 昭廣 石原 享介
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.411-420, 2002
参考文献数
10
被引用文献数
25

本邦における喘息患者の実態を調査するために,2000年9月から12月にかけて全国に無作為に電話によるインタビューを行った.協力世帯は38,132世帯,このうち喘息患者は1,326世帯で確認され,最終的に成人401名,小児402名の喘息患者を解析対象とした.この1ヵ月間の喘息の症状は成人,小児ともに日中で半数以上,夜間で4割で認められた.この1年間の通院は成人で4割,小児で6割が経験した.日常生活・社会活動上で何らかの制約を感じたのは成人で7割,小児で6割に及んだ.肺機能検査を受けたことが無い患者は成人で半数,小児で8割に上った.喘息の病態を「気道炎症」と回答した患者は成人で6%,小児の保護者で7%,吸入ステロイド薬使用頻度は成人で12%,小児で5%と低くかった.重症の患者では客観的重症度と白己評価の重症度に大きなギャップが認められ,自分を実際よりも軽症と判断している場合が多かった.本調査より,有効な治療法が存在するにもかかわらず,本邦の喘息管理はガイドラインの目標に遥かに及んでいないことが判明した.全ての臨床医への正しい知識の普及,さらに喘息に対する社会認識を高めるためより一層の社会への教育,啓蒙の重要性が示唆された.
著者
的場 八千代
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.9, no.12, pp.941-949,1004, 1960

The antigenicity of the pollens of American giant and common ragweed which are regarded as the most important factor in asthma and hey feber and butakusa which grows in Japan, originating for the American ragweed botanically are compared, of 120 asthma patients who were intradermally tested with butakusa pollen extract, 15 showed a positive reaction (2: 3 plus positive, 3: 2 plus positive, 10: 1 plus positive). 10 of these positive patients were intradermally tested with a further 2 pollen extracts-American giant and common ragweed, and also were exposed to the above mentioned 3 pollen. Three cases showed wheezing after nasal inhalation of butakusa pollen, 1 case after nasal inhalation of giant ragweed, 1 case after common ragweed pollen. 8 patients were tested by the passive transfer method of Prausnitz Kuestner and 3 showed a positive result. But there was no definite correlation between the positive result and clinical symptom. Sera of intradermal test positive and negative patients were tested for hemagglutinability of tannic acid and protein treated red blood cells, but hemagglutination did not develop. The author performed antigen-antibody studies with the precipitation ring test, Ouchterlony test and hemagglutination test, using tannic acid and protein treated red blood cells, and found that giant, common and butakusa pollen are serologically different and butakusa pollen is far different form giant ragweed pollen and even different from common ragweed pollen, too.
著者
石井 譲治 小川 保 内藤 健晴 宮田 昌 石原 正健 馬場 錬 妹尾 淑郎 岩田 重信 横山 尚樹
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1251-1257, 1997
被引用文献数
3

スギ花粉主要抗原の一つであるCry j Iをラット腹腔内注射にて感作し, さらにCry j Iを点鼻, その6時間後の鼻腔, 喉頭, 気管粘膜に浸潤している好酸球およびリンパ球を観察し比較検討した。ラットはBrown Norwayのオス13匹を用いた。5匹をコントロール群, 8匹にCry j I 10μgとアルミニウムゲル4.5mgを0.4ml蒸留水に溶解し, 12日の間隔をあけ2回腹腔内注射を行った。血清Cry j I特異IgE 抗体価はIgE-capture ELISA法にて測定した。鼻粘膜, 喉頭, 気管はCry j I溶液点鼻6時間後に採取した。血清Cry j I特異IgE抗体価は感作群307.1±185.3任意U/ml, コントロール群0.0±0.0任意U/mlで感作群において有意の上昇 (p<0.01) を認めた。浸潤細胞について鼻粘膜では好酸球 (p<0.01), リンパ球 (p<0.05) ともに感作群に有意に多く浸潤していた。喉頭では感作群で好酸球浸潤が有意に多かった (p<0.01) が, リンパ球は両群で有意差は見られなかった。気管では両群とも好酸球, リンパ球ともにほとんど見られなかった。Cry j I腹腔感作ラットは鼻腔及び喉頭においてアレルギー性病変を起し得るものと考えた。
著者
奥田 稔 大久保 公裕 後藤 穣 石田 裕子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.555-558, 2005
被引用文献数
1

【目的】スギ花粉時然曝露による花粉の身体への付着を花粉症発症予防のために明らかにする. 【方法】非スギ花粉症男性高校生10名を洗顔後, 非花粉汚染木綿Tシャツ, 運動帽を着用, 運動場および教室内で2003年3月16日それぞれ2時間自由行動させ, 粘着テープでシャツ, 帽子, 顔面皮膚から付着花粉を採取カウントした. 不織木綿, 綿ポリエステル混紡, 羊毛布地を水洗, 運動場10カ所で5時間放置乾燥後, 付着スギ花粉を同様に採取カウントした. 実験運動場, 教室の浮遊, 落下花粉数もカウントした. 【結果】Tシャツ, 帽子, 皮膚付着花粉は運動場で教室内より多かった. 教室内外では単位面積当り付着数は有意差がなく, 教室内ではTシャツが皮膚より多い傾向にあった. 水洗布地への付着数は混紡で, 綿, 羊毛より少なかったが傾向差であった. 浮遊花粉数は教室内で少なかった. 【考察】結論:外出には混紡のコート, 帽子を着用し, 帰宅後は洗顔をする. コート, 帽子は玄関のコート掛けにかけておくが良い.
著者
瀬川 博子 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.1427-1436, 1990

本研究は, theophyllineの長期連用と問題行動との関連について, 5名の難治例を含む気管支喘息児14名と健常児24名を対象として検討した.喘息児群はThophylline内服とcromolyn吸入を3.6±3.8年間併用していた.神経心理学的検査:幼児児童問題行動・性格診断用紙, 小児問題行動調査用紙, caffeine様副作用調査用紙, 不安テスト, 視覚集中力テスト, 内田・クレッペリン精神作業検査, soft neurological signsの検査を1〜12週の間隔をおき施行した.Theophylline投与中, 腹痛や不眠, 途中覚醒などのcaffeine様副作用が児の両親から指摘されたが, theophylline中止により減少した.喘息児群およびそのうち難治例ではクレッペリン精神作業検査の誤謬率が健常児群に比べ有意に高く, 喘息児群はsoft neurological signsに異常を認めた.他のテストは喘息群と対照群の間およびtheophylline中止前後において有意の変化を認めなかった.これらの結果から気管支喘息児の問題行動や学習障害は, theophyllineよりは, 気管支喘息の病因または症状による影響がより大きいと思われる.
著者
寺尾 浩 岸川 禮子 加藤 真理子 野田 啓史 岩永 友秋 庄司 俊輔 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1119-1122, 2004
被引用文献数
4

症例は65歳の男性. 主訴は全身の発赤, 腫脹, 掻痒, 意識消失. 既往歴は34歳時より糖尿病発症, 近医受診中. 現病歴は34歳時にパーティーでビールを摂った後, 20分後に全身の発赤, 腫脹, 意識消失が出現した. その後, 患者は様々な食物(すべて小麦が使われていた)摂取後に散歩をし, 蕁麻疹, 意識消失を生じていた. 平成13年2月肉団子入りの食事を摂った後, 散歩に出かけ, 帰宅後, 全身の発赤, 腫脹, 意識消失が出現した. 初診時検査では血清IgE値253IU/ml, IgE RAST値は小麦で2.13UA/ml(クラスを示した. 運動負荷試験方法では空腹時負荷異常なし, アレルギー除去食(小麦, エビ, カニ除去)摂取後, 運動負荷異常なし, 食パン1/2枚摂取後運動負荷異常なし, 食パン1枚摂取後運動負荷で全身に蕁麻疹出現. 以上より小麦を原因とするfood-dependent exercise-induced anaphylaxisと診断した. 物理的アレルギーのなかで, 運動という物理的刺激によりアナフィラキシー症状を呈する疾患を運動誘発性アナフィラキシーという. そのなかでも, 特定の食物摂取時にのみ運動誘発性アナフィラキシー症状が現れる場合, 食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FEIAn)という.
著者
石崎 達 宮本 昭正 信太 隆夫 村松 行雄 水野 勝之 都丸 昌明 斉藤 恒子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.504-513,550-55, 1971
被引用文献数
1

栃木県鹿沼市の木工業者を対象に米杉喘息の疫学調査を行なった.木工団地組合の米杉喘息発生率は6%で, 患者の4割が米杉材輸入後発病した.米杉喘息の主要症状は鼻炎, 喘息, 眼結膜炎, 皮膚炎で, 発作は午後から夜にかけて起こる.職種からみて, 製材で眼結膜炎, 加工で鼻炎と喘息が起こりやすい.症状発現には米杉作業, アレルギー素質の関与が大きく, 喘息患者の半数近くに慢性気管支炎の合併があった.
著者
山口 博明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.571-581, 1993
被引用文献数
10

昭和42年 (1967) より昭和62年 (1987) までの21年間に, アレルギー疾患を持って九段坂病院小児科外来を受診及び入院した2157名の患児を対象として, 特異抗体を皮内反応及びRASTによって測定し, 年次推移, 性別, アレルギー疾患別, 重症度別に比較した。1) 皮内反応の陽性率が増加したのは, 家塵とスギであった。真菌類では昭和40年代から50年代前半に一時的な増加がみられた。2) 陽性率に男女差はみられなかった。3) アレルギー疾患別の検討では, 家塵で皮内反応とRASTとも喘息単独例より喘息に鼻炎を合併した症例に陽性率が高かった。4) 重症度分類では, 皮内反応で家塵, 真菌類, スギ, プタクサ, ネコ, 絹, ソバガラで重症ほど皮内反応の陽性率が高値を示した。5) 総IgE値が高いほど家塵, ダニ, カンジダ, スギの皮内反応の陽性率が高値を示した。近年のアレルギー疾患の増加は, 家塵及びスギ花粉などの皮内反応の陽性率が年次的に上昇していることからも裏づけられた。その原因として, 東京都の新築された非木造家屋が昭和44年以降に木造の2倍に増加したことなどの住宅構造の変化, また高層住宅が昭和40年初期に比べ50年以降に3倍以上に増加し, この生活環境の著しい変化が, 住居内のダニ数の増加を促し, また, スギ林の植林の増加による花粉の飛散数が上昇に加え, 大気汚染などが影響しているものと推測された。
著者
尾上 洋一 村上 巧啓 高柳 幹 岩谷 雅子 萱原 昌子 足立 陽子 松野 正知 足立 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1207-1215, 1995
被引用文献数
6

6〜16歳の気管支喘息児51名において4種のゴキブリ特異IgE抗体をRASTおよびCAP-RASTにて測定した. ゴキブリ特異IgE抗体陽性率はRASTでクロゴキブリ17.6%, チャバネゴキブリ29.4%, ワモンゴキブリ19.6%, ヤマトゴキブリ15.7%であり, CAP-RASTではクロゴキブリ, チヤバネゴキプリとも15.7%であった. また, この4種のゴキブリRASTを陰性と陽性に分けて検討すると相関関係が認められた. クロゴキブリおよびチャバネゴキプリ虫体と糞のRASTは相関関係を認め, 2名のゴキブリ陽性患児血清を用いた. immunoblot法では虫体と糞に共通の感作抗原分画を認めた. ゴキブリ抗原吸入誘発試験では既時型の気道反応を示し, RAST抑制試験ではゴキブリ抗原によりダニRASTは抑制されなかった. 以上より小児気管支喘息においてゴキブリはダニとは異なる吸入性アレルゲンとして注目すべきと考えらられた.
著者
十字 文子 高嶋 宏哉 須甲 松伸 土肥 真 高石 敏明 奥平 博一 伊藤 幸治 宮本 昭正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1515-1522, 1990
被引用文献数
5

17歳の女子.既往に気管支喘息, アトピー性皮膚炎, アレルギー性鼻炎あり.巻貝(トコブシ, SSとして売られていた通称ラパス貝.以後トコブシ[○!L]と略)を食べて55分後, 運動中に全身の蕁麻痺, 呼吸困難, 意識消失発作を起こし, 救急治療を受け数時間内に回復.3ヵ月後, 巻貝(サザエ, TC)を食べて30分後, ランニング途上にて同様症状起こり, 救急治療により, 数時間以内に回復した.自家製のトコブシ[○!L], サザエ粗抗原によるRASTスコアは4と2.ELISAによるinhibition testにより, KLHとトコブシ[○!L], サザエ間に高い共通抗原性を示したが, トコブシ[○!L]-サザエ間では共通抗原性は低かった.SephacrylG-200ゲルクロマトグラフィーによる溶出分画を用いたELISAにて.トコブシ[○!L], サザエ各々に数種の互いに異なるアレルゲンの存在が認められた.運動誘発後のFEV_<1.0>の変化では即時型の反応と血中ヒスタミンの有意の上昇を認めた.
著者
江田 昭英 永井 博弌 渡辺 茂勝 団迫 裕 井上 吉郎 坂本 憲市 中神 啓仁
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.640-648,659, 1973
被引用文献数
1

強力なhistidine decarboxylase阻害作用があるといわれる35-NZの抗アレルギー作用について検討し, 以下の成績をおさめた.1) 抗egg albuminウサギ血清を用いたモルモットのpassive systemic anaphylaxisは35-NZにより軽度抑制された.2) 感作モルモット肺切片からのアナフィラキシー性mediator遊離はin vitroで35-NZにより抑制されなかった.また, 反応惹起3時間前に35-NZを投与したモルモットの肺切片からのmediator遊離量は減少しなかったが, 反応惹起5日前から1日1回宛連続投与した場合には軽度減少した.3) 抗egg albuminウサギ血清を用いたモルモットのheterologous PCAは35-NZの反応惹起3時間前または5日前からの連続投与により抑制されなかった.4) 抗DNA-Asラット血清によるラットのhomologus PCAは35-NZの反応惹起3時間前後の投与により抑制されなかったが, 5日前からの連続投与では抑制された.5) 抗ラットウサギ血清によるラットのアレルギー性炎症は35-NZの反応惹起3時間前の投与により抑制されなかった.6) モルモットのp-phenylenediamineによる接触性皮膚炎は35-NZの反応惹起3時間前の投与により抑制された.7) 35-NZの抗アレルギー作用はhistidine decarboxylase阻害以外の機序によるものと思われる.
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 荒川 正昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.655-659, 1996

アトピー型喘息(ABA) 20例, 非アトピー型喘息(NABA) 15例, 肺癌(LC) 20例, 他の肺疾患(PD) 40例, 他の内科疾患(OD) 63例を対象に抗核抗体(ANA, 間接蛍光抗体法, 40倍以上を陽性とした)検出の有無を検討した. ABAでは4/20例に, NABAでは8/15例に, LCでは6/20例に, PDでは5/40例に, ODでは7/63例にANAを検出した. NABAでは, 年齢, 性別を考慮しても, 有意に自己抗体が検出された. NABAでは, 主としてリンパ球や好酸球が浸潤する慢性好酸球性気道炎症に加え, ウイルス感染などによる気道炎症も加わり, 自己抗原の暴露が起ニり, 加齢による免疫異常も影響して, 抗核抗体産生を起こしやすいのかもしれない.
著者
近藤 哲理 田崎 厳 廣川 豊 谷垣 俊守 小野 容明 太田 保世
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.621-625, 1999
被引用文献数
8

1998年末に,わが国にドライパウダー(DPI)ステロイドが導入された.本研究では,DPI未導入時に以下の群のディスクヘラーの吸気気流(PIF)を検討した:器具に習熟した医薬情報担当者(EX群,5名),原理のみを理解している呼吸器科医(RP群,19名)および一般人(NM群,31名),ビデオテープによる簡易指導後の患者(TP群,93名).50l/min以下のPIFではブリスター内に高頻度に薬剤の残留を認めた.EX群のPIFは96.1±12.6l/m(平均±標準偏差)であった.PIFとマウスピース内圧(Paw)にはPIF=√^<16.3><Paw-1.19>,(r=0.97)の関係があったため,他の群では市販の気圧計を改造した携帯型圧力計により,Pawを測定してPIFを計算した.RP群のPIFは77.0±30.1l/mで,不適切と考えられるPIF(100l/m以上および50l/m未満)の者が36.8%存在した.NM群のPIFは53.5±20.4l/mでRP群より有意(t検定)に低く,不適切PIF者が54.8%存在した.TP群のPFは64.9±24.5lmでRP群よりも有意に低く,不適切PIF者は43.2%存在した.適切な吸入気量を効率よく達成するためには,PIFの定量的な表示が必要と思われる.
著者
遠藤 薫 檜澤 孝之 吹角 隆之 片岡 葉子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1309-1315, 1999

症例:生後2カ月女児.IgE 62 IU/ml,RAST(ハウスダスト 1.06 Ua/ml, Df 0.03, Dp 0.01,犬皮屑 7.99).母の実家に行くと症状が悪化.実家では室内犬が飼育され,患児は生後1カ月間そこにいた.犬の失踪後,実家訪問後の悪化は徐々に消失した.2歳以下のアトピー性皮膚炎患児368名について,自宅及び自宅外での犬の飼育の有無と皮膚症状,検査所見の関係を検討した.犬皮屑に対するRAST陽性率は,自宅で飼育していれば高かったが,父母の実家で飼育されているときにも高いことがわかった.室内飼育の場合,室外飼育よりも陽性率が高かったが,自宅と父母の実家で有意差はなかった.室内飼育の場合,陽性率は生後3カ月以内に高値となり,それ以後陽性率は有意に上昇しなかった.室内飼育の場合,実家を訪れる回数に比例して陽性率が上昇していた.皮膚症状は,室内で飼育した場合,室外で飼育した場合と飼育していない場合に比して有意に重症であり,室内犬を室外に隔離するだけで症状が改善する可能性があると考えられる.