著者
楠 隆 是松 聖悟 中畑 龍俊 細井 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.15-19, 2002
被引用文献数
7

(目的)近年増加しているとされる学童期スギ花粉症(cedar pollinosis, CP)の実態を, 大規模疫学調査により明らかにする.(方法)京都・滋賀地域の小・中学校に通う生徒56,108人を対象として厚生省研究班の作成したアレルギー疾患疫学調査票を配布し, 回収し得た50,086人(回収率89.3%)のデータを基に解析した.(結果と考察)学童期のCP有症率は全体で5.2%となり, 年齢と共に上昇する傾向があった.誕生季節別の検討では, 秋生まれの児にCP有症率が多い傾向を認めた.農村部の多い京都府下北部地域と都市部の多い南部地域におけるCP有症率の比較を行うと, 明らかに南部地域で高い傾向を認め, 大気汚染をはじめとする都市環境がCP発症に影響を与えている可能性が示唆された.アトピー性皮膚炎及び喘息の有症者につき, 合併するCPの有無による重症度の差を見ると, アトピー性皮膚炎においてのみCP合併例で有意に重症例が多く, CP又はスギ花粉感作がアトピー性皮膚炎の病態に影響を与える可能性が示唆された.CPは, 従来小児期のアレルギー疾患としては必ずしも充分な検討がされて来なかったが, 今回の調査結果を踏まえて今後更に検討を重ねていく必要があると思われる.
著者
坂本 公也 永田 真 保谷 功 井上 憲一 木内 英則 坂本 芳雄 山本 恵一郎 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.840-845, 1993

十分量のステロイドを含む薬物療法によっても鎮静し得ず, therapeutic awakeningを試みることにより改善が得られた気管支喘息の1例を経験したので報告する。症例は33歳の女性で17歳発症の気管支喘息である。重積発作のため近医へ入院したが, 症状の改善が得られず当科へ転送となった。種々の治療により喘息症状の軽快が得られ, 順調に経過していたが, 再度早朝から始まる喘息発作が頻発するようになった。就寝前の気管支拡張剤およびプレドニゾロンの十分量の投与等を行ったが, 喘息発作の改善は得られなかった。therapeutic awakening, すなわち患者を午前3時に治療的に静かに覚醒させサルブタモール2.5mgの吸入投与を行ったところ, 自覚症状および理学的所見の速やかかつ著明な改善が得られた。治療抵抗性のmorning dippingに対して, therapeutic awakeningは試みる価値のある治療手段の1つであると考えられた。
著者
国府 肇
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.140-154, 1987

非発作時の気管支喘息患児にアストグラフを用いてメサコリン吸入テストを行った際, 誘発されているにかかわらず呼吸抵抗(Rrs)曲線が下降する現象を17%の症例に認めた.この原因を追求するため, Rrsの構成要素である口腔内圧(P)と気流速度(V)の両波について解析したところ, Rrs下降群では負荷後両波の位相差が大であったため, Pは小さな値をとり, ΔPao/ΔVmax=Rrsは小となることによると思われた.また一方P-Vリサージュの解析からは, Rrs下降群ではメサコリン吸入後のリサージュ傾斜角が大であったが, 吸入前の傾斜角もすでに高値をとっていた.これは患児の吸入前の%FEV_1が44.3%と低値で, また吸入前Rrsが4.8cmH_2O/secと高値であったことと一致していた.以上のことより, 無発作にあると思われていてもかなりの気道収縮状態にある患児に負荷をかけた場合に, PとV間の大きな位相差がさらに大きくなり, そのことがRrs下降の一因と考えられた.生体側における他の種々の要因, 例えば披検児の呼吸パターン, 胸廓, 末梢気道閉塞およびair trappingの有無などは, Rrs下降現象との間に一定の関係を見いだせず, これらの関与は少ないものと考えられた.
著者
谷崎 勝朗 駒越 春樹 周藤 真康 大谷 純 多田 慎也 高橋 清 木村 郁郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.60-66, 1986

抗原およびcomp.48/80刺激時のラット腹腔肥満細胞の ^<45>Ca uptake, およびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果について検討を加えた.1.肥満細胞の^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果は, preincubation time20分で最高となり, 以後preincubation timeが長くなるにつれて減弱する傾向がみられた.2.抗原刺激による肥満細胞の ^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対して, tranilastは濃度依存性の抑制効果を示した.その最高% inhibitonは ^<45>Ca uptakeに対しては42.0±3.3%, ヒスタミン遊離に対しては50.4%±1.9%であった.また抗原とphosphatidylserine(PS)の同時刺激時には, ^<45>Ca uptakeに対する抑制効果は減弱傾向を示したが, ヒスタミン遊離に対する効果はPS添加による影響をあまり受けなかった.3.comp.48/80刺激による肥満細胞の ^<45>Ca uptakeおよびヒスタミン遊離に対するtranilastの抑制効果は, 抗原刺激時に比べかなり弱いことが示された.
著者
平 英影 寺西 秀豊 劔田 幸子 槻 陽一郎 清水 規矩雄 河合 康守
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.1200-1209, 1991
被引用文献数
17

富山県内のスギ林の分布及び雄花の着花状況を観察しスギ空中花粉調査結果との関連性について検討した結果, 次のような結論を得た. 1. 富山県の平野部におけるスギ空中花粉とその飛散パターンは30年生以上のスギ林の標高別面積, 雄花の着花状況, 花粉飛散開始日, 気象条件によってよく説明できる. 2. 富山県の平野部におけるスギ花粉の総飛散数及び最大ピークは標高200m以下の地帯に分布するスギ林から飛散する花粉によって大きく影響されていた. 3. 観測点から20〜30kmの距離に分布しているスギ天然林からの花粉はほとんど観測されなかった. そのため, 観測点から遠くに分布するスギ林ほど観測点の空中花粉に及ぼす影響は小さいものと推定された.
著者
石崎 達 牧野 荘平 荒木 英斉 根本 順吉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.753-759,778, 1974
被引用文献数
4

気管支喘息者に与えて記録させた喘息日記を集計して, 満3年間にわたり毎日の喘息発作出現率をもとめ, この出現率の日変動, 気象要因との相関関係を追跡した.気象要因は気象庁のデータからえた.統計処理の基準には移動15日平均値からの偏差をもとめ, 1SD 以上の差を増加または減少と規定した.気象要因曲線と喘息発作曲線の一致度(上昇, 平, 下降)から, 高気圧下で喘息発作数の増加傾向がみとめられた.喘息発作に関連する天候要因としては晴, 曇, 天候不定(前線通過), 雨と分類するのが重要で, 後2者の場合発作が多発する.その理由を追跡したところ, 寒冷刺激とくにその変化(前日との湿度低下)が重要で, 湿度は補助要因と思われた.これは年間の発作多発月が9月であることと一致する現象である.痰は湿度が高く天候不定, 雨の日, および乾燥日(湿度40%以下)に多発しやすいことがわかった.
著者
井上 洋西 谷 典生 飯島 秀弥 五十嵐 敦 岡田 信司 瀧島 任
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-213, 1993
被引用文献数
4

選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405が, 遅発型喘息反応 (LAR) 時の呼吸抵抗 (respiratory resistanse; Rrs) および気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) に与える影響を, Ascaris suum抗原感作モルモットを用いて検討した。呼吸抵抗 (Rrs) は, 30Hzオッシレーション法にて無麻酔下に測定し, 抗原吸入前のRrに対する増加率 (%Rrs) で評価した。抗原吸入2時間後, BAY u 3405 10mg/kgまたは溶媒の0.5%メチルセルロースのみを経口投与した。抗原吸入4および5時間後の%Rrsは, BAY群ではそれぞれ32.5±6.2%, 23.5±5.0%であったのに対し, 対照群ではそれぞれ101.4±27.5%, 77.5±19.9%で4および5時間後ともBAY群が対照群より有意に低値を示した (p<0.05)。抗原吸入4時間後のBALでは対照群とBAY群との間に有意な差は認められなかったが, 吸入6時間後のBAL中総細胞数, 好酸球数およびリンパ球数は, BAY群ではそれぞれ274.9±70.5, 62.5±13.1, 11.3±3.3 (×10^5cells) であったのに対し, 対照群ではそれぞれ491.9±55.1, 198.6±43.9, 32.1±7.3 (×10^5cells) で, いずれもBAY群は対照群より有意に (おのおのp<0.05) 少なかった。抗原吸入4時間後のBAL液中のhistamine (ng/ml), TxB_2 (pg/ml) およびPGD_2 (pg/ml) は増加傾向を示したが, 両群間に有意差はなく, LTC_4は, 両群とも測定限界 (20pg/ml) 以下であった。以上より, 選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405は, LAR時の呼吸抵抗の上昇と気道への炎症細胞浸潤を抑制したものと考えられ, TxA_2がLARの発現に重要な役割をしていることが示唆された。
著者
美田 俊一 小田 成人 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1394-1400, 1995
被引用文献数
4

当科喘息外来通院中の患者90例を対象として, 血中IgE抗体をMAST法, CAP RAST法により測定し, 両者の結果を比較した. さらに, CAP RAST法で陽性, MAST法で陰性であった例について, 吸入誘発試験, 皮内反応およびCAP RAST抑制試験を行った. 両者間の相関はハウスダスト2(r=0.617), コナヒョウヒダニ(r=0.776)およびスギ(r=0.609)で有意な相関が認められた. 一方, 検討した3種の真菌類では両者間に有意な相関は認められなかった. CAP+/MAST一例は, 各々のアレルゲンで1.4〜27.8%であったが, MAST+/CAP一例は0〜2.7%であった. CAP+/MAST一例は, CAP RAST抑制試験, 皮内反応または吸入誘発試験によりIgE抗体の存在が確認された. 以上の結果より, CAP RAST法はMAST法よりも高感度であり, MAST法で病因アレルゲンのスクリーニングを行った際, 陰性であってもアレルギー疾患を疑われる患者において, CAP RAST法等高感度の測定法で再度確認すべきと考えられた.
著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.378-385, 1996
被引用文献数
9

著者は花粉抗原への感作と発症との関連を調べる目的で大学生における杉花粉症の頻度調査を実施してきた. 今回は1988年以来7年間に得られた成績を綜括報告する. 新入生における特異抗体保有率は1988年には27.4%で, 1989〜1993年には32.0〜38.1%のlevelを維持した. また有病率は1988年には12.0%, 1989〜1993年には15.5〜17.4%のlevelにあった. しかし1994年にはそれぞれ29.3%, 14.7%と低値を示しこれは前年の異常気象による花粉飛散の減少と関連するものと考えられた. 著者はさらに在学中の特異抗体保有率と有病率の推移についても調査を行った. 1990年以前の入学者では4年次のこれらの頻度は明確な上昇がみられた(抗体保有率38.6〜43.0%, 有病率23.1〜24.9%)が, 1991年入学者においては花粉飛散の減少との関連で1994年には有意の低下がみられた.(抗体保有率25.2%, 有病率13.6%) これらの調査結果から花粉症の症状発現は花粉抗原への曝露の多寡と直結することが結論された.