著者
大谷 武司 衣川 直子 飯倉 洋治 星 房子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.454-462, 1984
被引用文献数
4

ダニアレルギーのある小児気管支喘息児の家庭について, 家屋塵, 床材, 寝具, 家具, 玩具などのダニについて調査した.結果:1)家屋塵(床塵)0.5g当り, 平均393匹のダニが検出された.ヤケヒョウヒダニ(D.p)とコナヒョウヒダニ(D.f)が優占種であり66%を占めた.2)家屋では, カーペットのある家屋と古い家屋にダニが有意に多かった.3)床材では, カーペットにダニが多く, 板の間が少なかった(1畳当りのダニ数は, カーペット418匹タタミ131匹, 板の間27匹であった).4)布製のソファー・イス・ぬいぐるみから多数のダニが検出された.5)フトン, マットは1枚当り(上面)238匹のダニが検出された.以上より, 喘息児の家屋でダニが多く問題となるのは, 床材ではカーペット, 家具では布製のソファー, 玩具ではぬいぐるみであり, これらの家庭内からの撤去が望ましい.
著者
子安 ゆうこ 酒井 菜穂 今井 孝成 神田 晃 川口 毅 小田島 安平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.484-493, 2004
被引用文献数
5

【目的】シックハウス症候群(sick house syndrome;SHS)とは,建物の室内環境が原因で健康被害を呈するものである.SHSは社会的には認知されているが,医学的な定義はなく疾病概念も曖昧である.今回,SHSの病態解明のために大規模疫学調査を行った.【方法】厚生労働科学研究費補助金生活安全総合研究事業シックハウス症候群に関する疫学的研究班における調査用紙を用いた.【結果】成人8737人,小児9387人の回答が得られた.疾患の定義の仕方により,SHSと判断されたのは成人女性で3.0〜23.3%,成人男性2.9〜16.1%,小児で5.6〜19.8%であった.原因環境因子は小児・成人とも「シャンプ- ・化粧・香水」,「壁や床の建材のにおい」,「塗料」が上位であった.住居の築年数,増改築の状況でSHS発症に有意差はなかった.ライフスタイルの特徴として,ストレスが多く,においに敏感なものに有病率が高かった.【考察】SHSをどのように定義するかによって,有病率が大きく異なった.SHSを解明するためには,国際的な基準もふまえた定義づけが必要と考える.
著者
寿 順久 小豆澤 宏明 西田 陽子 室田 浩之 片山 一朗 吉川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1510-1514, 2007

症例は33歳の女性.赤い食品の摂取後に出現する顔面を中心とした膨疹,嘔吐,下痢,呼吸困難などの症状を主訴に来院.紅白蒲鉾の負荷試験にて膨疹の出現を認め,紅色の色素成分であるコチニールのプリックテストにても陽性反応を確認した.さらにコチニールの主成分であるカルミン酸を用いた,プリックテスト,スクラッチテストは共に陽性であったため,本症例をカルミン酸によって誘発された蕁麻疹と診断した.コチニール色素はカイガラムシから抽出される紅色の天然色素で,食品や衣類などの染色に幅広く応用されている.近年コチニール色素が原因と考えられる1型アレルギーの報告が散見されるようになり,その背景に関する考察を加え報告する.
著者
中田 安成
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.649-657,660, 1973

ラット肋間筋より, myofibrilの混入をほとんどなくし, 筋膜を純粋に分離する方法を確立した.分離した筋膜は, 位相差顕微鏡下では中空の円筒形で透明な一重の膜として, 電子顕微鏡では3層構造を有した膜として観察された.筋膜の化学組成は, lipid34.4%, 蛋白質61%, 総炭水化物はglucoseとして2.8%, methypentoseはfucoseとして0.4%, hexosamineはglucoseamineとして0.8%であった.アミノ酸組成はglycine, glutamic acid, alanine, aspartic acidなどを高率に含有していた.分離筋膜は, そのままでは免疫生物学的に応用するには制約が多すぎるので, 各種溶解液にてとかすことを試み, 筋膜蛋白量の溶出比で比較検討した.その結果, sodium dodecyl sulfateが56.4%ともっとも高率を示し, 以下pH9.5蒸留水(35.4%), 8M urea(22.8%), sodium desoxychoate(18.3%), collagenase(7.7%)の順であった.すなわち蛋白質の溶出を目的とした場合には, sodium dodecyl sufateが効果的な溶解液であることが判明した.
著者
藤原 英憲
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.29-37, 1982

近年, IgE によって mediate されるアレルギー反応の chemical mediator である histamine または bradykinin が, 標的細胞からの histamine の遊離を抑制するのみでなく, 遅延型アレルギー性反応または細胞性免疫応答の発来を阻止することが報告されてきた.今回, 私は IgE で mediate されるアレルギー性反応の chemical mediator (histamine, bradykinin, serotonin, acetylcholine) が, 抗原または mitogen (PHA, Con A, LPS) によって誘導されるリンパ球の活性化に及ぼす影響について検討した.その結果は次のとおりである. 1) 抗原で誘導されるリンパ球の活性化は, histamine (10^<-4>-10^<-5>M) または bradykinin (10^<-5>M) の処理によって有意に抑制された.また, serotonin の処理によっては軽度に抑制される傾向を示したにすぎず, また, acetylcholine の処理によっては何らの抑制作用も認められなかった. 2) mitogen (PHA, Con A) で誘導されるリンパ球の活性化は, 10^<-4>M serotonin の処理によって抑制されたが, acetylcholine によっては何らの抑制効果も認められなかった. 3) 抗原またはmitogen (Con A) によって誘導されるリンパ球の活性化に対する histamine または bradykinin の抑制効果は, H_1antagonist (dexchlorpheniramine) によって阻止されなかったが, H_2-antagonist (cimetidine) によってかなりよく阻止された.これらの結果は, histamine または bradykinin によるリンパ球の活性化の阻止は, リンパ球の H_2 receptor を介するものであろうことを示唆している.また, このことは, 即時型過敏反応はそれに引続いて起こる細胞性免疫反応に影響を及ぼすものであることを示す.
著者
秋山 一男 三上 理一郎 可部 順三郎 江頭 洋祐 岩田 猛邦 田口 善夫 赤木 克巳 竹山 博泰 羽間 収治 浜野 三吾 河田 兼光 信太 隆夫 三島 健 長谷川 真紀 前田 裕二 永井 一成 工藤 宏一郎 佐野 靖之 荒井 康男 柳川 洋 須藤 守夫 坂東 武志 平賀 洋明 上田 暢男 宮城 征四郎 中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.727-738, 1992
被引用文献数
15

我が国における成人気管支喘息の実態を, 主として患者へのアンケートを中心に調査し, 小児発症群と成人発症群及び成人再発群の3群に分類しその比較を試みた. 1) 成人喘息に占めるそれぞれの頻度は小児発症群11.1%, 成人発症群77.3%, その他11.6% (成人再発群3.7%及び不明) であった. 2) 成人喘息に占める小児発症群は年齢と共に激減し, 一方成人発症群は年齢と共に増加し50歳以後では90%以上を占めた. 3) 小児発症群では男, アトピー型, アレルギー疾患既往・合併症, 軽症例, 夜間外来受診歴, 発作時O_2吸入・人工呼吸歴の頻度が成人発症群に比べて有意に高く, 他方成人発症群では感染型, 薬剤常用者, ステロイド常用者, 重症, アスピリン過敏症の頻度が小児発症群に比べて高かった. 4) 成人再発群は小児発症群と成人発症群との中間に位置する群と考えられた. 5) 以上より発症年齢を基準とする分類法が現時点で臨床上分類が容易かつ曖昧さが少ない点より, 成人にみられる気管支喘息を小児発症喘息・成人発症喘息・成人再発喘息の3群に分類する新しい分類法を提唱した. この分類は今後成人喘息の病因・病態の解明に有用と考える.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004
被引用文献数
2

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.
著者
黨 康夫 小川 忠平 大友 守 荒井 康男 佐野 靖之 田代 裕二 古田 一裕 若林 邦夫 伊藤 幸治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.50-55, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

症例は30歳女性. 1997年5月中旬頃よりの腹痛, 腹部膨満感で当院救急外来を受診. 腹部X線写真にてイレウスを疑われ, 緊急入院となった. 白血球数の増加(12300/μl)及び好酸球比率の上昇(42.5%)を認めたが, CRPは陰性であった. 腹部CTにて大量の腹水貯留及び回腸から上行結腸にかけて広範囲に腸管壁肥厚が認められた. 腹水中細胞のほとんどは好酸球であった. さらに末梢血及び腹水中IL-5が著明高値を呈した. 消化管粘膜生検では好酸球浸潤は証明されなかった. 6月3日よりプレドニゾロン50mg/日の経口投与を開始し漸減. 症状は著明に改善し末梢血好酸球数, IL-5も正常化した. これらの所見から漿膜下優位型の好酸球性胃腸炎と診断した. 鑑別には腹水中好酸球増加の確認が有用で, かつIL-5が疾患活動性の指標となりうる可能性が示唆された.
著者
福録 恵子 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.385-393, 2001
被引用文献数
15

通年性アレルギー性鼻炎は患者の日常生活に様々な影響を及ぼす.しかし患者の主観的健康観については現在よくわかっていない.そこで通年性アレルギー性鼻炎患者のQOL向上のため,個別的ケアに役立つ情報の一般性評価を目的としSF-36を用いて主観的健康観のQOL測定をおこなった.14施設において,1999年6月から同年8月にかけて,外来受診した通年性アレルギー性鼻炎患者252名を対象とした.その内,有効回答を得た249名について患者背景因子を調査し,健康関連QOLスコアに影響を与える因子の同定を行った.また,健康人及びスギ花粉症患者とのHRQOLスコアを比較検討した.結果として,年齢,性別,合併症の数は,HRQOLに対する有意な寄与因子であった.鼻閉がQOLに最も大きい影響を及ぼしており,他症状と比較し重症度に及ぼす影響が大きいと考えられた.スギ花粉症患者と通年性アレルギー性鼻炎患者は健康人と比較し,QOLスコアが有意に低下していた.両者に有意差は認められないが,スギ花粉症患者は通年性アレルギー性鼻炎患者と比較し低いQOLスコアを示した.
著者
中山 壽孝 中山 壽之
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.629-635, 2001
被引用文献数
2

空中花粉調査における染色封入方法は施設ごとに異なっており測定される花粉数に差異が生じている.スギおよびヒノキ料花粉数の測定において染色封入方法が与える影響について検討した.Durham型補集器2台を同一場所に設置し,台上にワセリンを塗布したスライドグラスを置き,24時間空中に曝露した.Calherla染色法(C法)とgentiana-violet-glycerin jelly法(G法)を用いて花粉数を測定した.C法が花粉シーズン中の観察開始から終了までの期間が長く花粉の検出に優れていたC法とG法による花粉数には,有意に相関が認められた(p<0.001).C法によるスギおよびヒノキ料花粉数はG法によるそれぞれの花粉数の38.7%,120.3%増しであった.花粉調査には全国統一してCalberla染色を使用することが望ましい.また,花粉数を公表する場合には捕集法と染色封入方法を併記することを推奨する.
著者
月岡 一治 広野 茂 石川 和光
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.853-858, 1984
被引用文献数
2

ナシ花粉症の2症例を報告した.症例1)は28歳の女性で, ナシ栽培に従事して3年目よりナシの開花期間中に鼻炎と結膜炎症状が出現するようになった.ナシ花粉抗原液による皮内反応とPK反応および鼻粘膜誘発試験と眼瞼結膜誘発試験が陽性であった.職業性のナシ花粉症と診断した.症例2)は14歳の男性で, ナシの開花期間中だけでなく通年性に鼻炎症状があった.ナシ花粉抗原液による皮内反応と鼻粘膜誘発試験が陽性であった.家族も本人もナシ栽培には従事しておらず, ナシ栽培地域に居住しているだけでナシ花粉に感作され発症したと思われた.
著者
田中 稔彦 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.134-139, 2006
被引用文献数
12

【背景】蕁麻疹の病態・原因は多様であり,これまでに様々な分類法が用いられてきた.平成17年に日本皮膚科学会より「蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドライン」が作成され,必要となる検査の内容と意義,治療内容,予後の視点を重視した病型分類が示された.【方法】平成15年から17年に広島大学病院皮膚科外来を受診した260名の蕁麻疹患者をこの分類法に準拠して病型を診断し,その内訳を調査した.【結果】物理性蕁麻疹10.0%,コリン性蕁麻疹6.5%,外来物質による蕁麻疹は6.5%であり,残りの76.9%が明らかな誘因なく生じる特発性の蕁麻疹であった.また38.8%の患者で複数の病型が合併しており,特に慢性蕁麻疹と機械性蕁麻疹あるいは血管性浮腫との合併が多く見られた.【結語】多くの蕁麻疹は丁寧な病歴聴取と簡単な負荷試験により病型を診断することができ,それを踏まえて検査,治療内容の決定および予後の推定を行うべきであると考えられる.
著者
中村 晋 川崎 達矢
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.451-460,490-49, 1971

Allergy centre開設以来6年間に来院し, 耳鼻咽喉科との協力の下に診療した鼻アレルギー症患者208例の臨床集計成績を報告し, 若干の検討を加えた.1)患者の住居別分布をみると52.9%が静岡市内から, 残りが静岡市周辺より来院した.2)年令別にみると30才代と20才代が多く, 性別では男女同数であつた.3)われわれは患者の病歴, 鼻腔内局所所見.末梢血並びに鼻汁の好酸球増加, 皮内反応および点鼻誘発試験をもとに5型に分類した.RaA群:誘発試験によりアレルギー性鼻炎と確定せるもの.RaB群:誘発試験を行なつていないがアレルギー性鼻炎が確実なもの.RaC群:アレルギー性鼻炎が推定されるもの.RV群:アレルギー性因子に乏しく血管運動性鼻炎と考えられるもの.R群:むしろ鼻炎と考えるのが適当なもの.4)病歴をみると32.7%に鼻アレルギー症および気管支喘息の遺伝素因が認められた.そして鼻症状は春(とくに3月, 4月)と秋(とくに9月, 10月):朝晩:雨の前, 寒冷とくに寒暖の差の著しい時に多い傾向がみられた.5)くしゃみ, 水様性鼻汁, 鼻閉のごとき鼻アレルギー症の主要症状のほかRaA, B, C群ではアレルギー性結膜炎というべき症状や気管支喘息, あるいはその前段階の症状を伴なう場合ないしはこれらとの移行型とみられる症例がしばしばあり, アレルギー性鼻炎の鑑別診断に際しては他のアレルギー症状が随伴するか否かに注意し, 全身症状との関連を考慮する必要があると考えられた.6)皮内反応陽性率の高い吸入性抗原は家塵, ブタクサ花粉, ヒメガマ花粉, マユ, スギ花粉, 絹等であるが, とくに春来院するものの中にアレルギー学的検索によりスギ花粉症と考えられるものが13例見出された.7)減感作療法を施行した20例(RaAおよびB群)についてその治療成績にも論及した.
著者
今井 透 野原 修 遠藤 朝彦 深谷 修司
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.559-568, 2005
参考文献数
5
被引用文献数
4

【背景】空中飛散花粉の自動計測の有効性が示されているが, 現在は自動計測器による観測法や評価法の標準化は行われていないので, 自動計測情報は混乱している. 【方法】2000年から2004年までの5年間の春季に東京都内で, ダーラム式花粉採集器と自動計測器(KH-3000)を用いて飛散花粉を観測した. 【結果】自動計測値と従来からのダーラム式観測値と良い相関関係を示した時期では, 自動計測器の有用性は高いと考えられた. 両観測値の相関が高い時期は, 大量飛散年の主に2月下旬から4月上旬だった. 逆に少量飛散年や2月上旬と中旬, 4月中旬と下旬は両観測値の相関が低下した. 自動計測値とダーラム式観測値の比はノイズの少ない時期で平均3. 5であり, 自動計測値を換算することでリアルタイムに飛散状況を判断できるようになろう. 【結語】花粉飛散数が多く花粉回避が必要な時期ほど, 自動計測の信頼性が高いので花粉回避に自動計測値は有用である. 今後自動計測の実用性を高めるために, データの集積と計測法の標準化が望まれる.
著者
池田 七衣 門田 亜矢 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.464-470, 2005
参考文献数
7
被引用文献数
2

【目的】花粉症患者数は増加傾向にあるが, 医療機関を受診せず市販薬ですませてしまう患者も多い. 患者動態を把握するにあたり, 医療機関だけでの調査では不十分と考え, 患者が比較的利用しやすいWebサイトを用いその実態についてアンケート調査を行った. 【方法】2003年2月1日から4月30日, B製薬会社のWebサイトによるアンケート調査を行なった. 花粉飛散数とアクセス数の相関, 花粉症情報収集源, 初期治療につき検討した. 【結果】Webへのアクセス数は348,045件, アンケートに回答した患者は1,612名であった. アクセス数と花粉飛散実測値には有意な正の相関がみられた. 花粉症の情報源はテレビ/ラジオが61.2%, インターネットが61.2%であった. 治療開始時期について, 年齢別には, 40歳未満は症状出現後が多く, 40歳以上は症状出現前が多かった. また, 地域別にみると, 東日本では症状出現前が多く, 西日本では症状出現後が多かった. 【結語】年齢, 地域などが受診状況に影響を与えることが認められた. 近年パソコンの普及率も急速に広がり, 今後さらにインターネットからの情報提供は重要性を増す. 情報提供者には信頼性の高いWebサイトの製作が求められる.
著者
池津 善郎 池部 敏市 小倉 英郎 小田嶋 博 黒坂 文武 佐瀬 くらら 杉内 政巳 杉山 朝美 勝呂 宏 鈴木 慎一郎 藤沢 重樹 北條 徹 松井 猛彦 松田 三千雄 山本 淳 四本 秀昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.633-642, 1991
被引用文献数
8

米アレルギーの関与が考えられるアトピー性皮膚炎(AD)患者に対する通常米の厳格除去効果を臨床的に検討することを目的として, 低アレルゲン米(HRS-1)の代替食療法を多施設共同で実施した. その際, 米と小麦との交叉反応性を考慮し小麦も厳格除去した. このHRS-1は, 抗原蛋白を除去するため蛋白分解酵素処理した米である. 総実施例49例のうち除外・脱落などを除いた43例を解析対象とした. 多くの症例でHRS-1摂取直後から4週にかけてAD病変の範囲・重症度指数(ADASI)の急速な低下が観察され, 2週後, 4週後, 最終判定日(平均5.6週)のADASIは, それぞれ開始時と比較して有意に低下した. 全般改善度において「改善」以上の改善率は, 2週後では39%, 4週後では67%, 最終判定日では74%であった. また, 併用ステロイド外用剤の減量効果においても「軽減」以上の症例は, 最終判定日で約半数に認められた. 3例の悪化のほかに特記すべき副作用は認められなかった. 有用性の成績は, 43例中「非常に有用」が17例(40%),「有用」が13例(30%),「やや有用」が9例(21%)であり,「有用」以上の有用率は70%であった. HRS-1は, 米アレルギーに悩む難治性重症AD患者の代替食として高い有用性のあることが認められた.