5 0 0 0 OA 頭痛

著者
端詰 勝敬 都田 淳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.833-838, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
7

5 0 0 0 OA 笑いと免疫能

著者
伊丹 仁朗 昇 幹夫 手嶋 秀毅
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.565-571, 1994-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
4

This experiment was conducted to clarify the influence of laughter on the immune system. Nineteen volunteer subjects were taken to a variety theater to experience laughter for three hours. Blood samples were taken from the subjects immediately before and after the performance. The NK activity and CD 4/8 ratio of these blood samples were examined. Without exception, in those subjects with NK activity levels which were below average before the performance, there was a significant increase in these activity levels, and in the CD 4/8 ratiosimmediately after the performance (p<0. 05,Wilcoxon's rank-sum test). In all the subjects who had CD 4/8 ratios that were above the standard level immediately before the performance, there was a significant decrease of these ratios immediately after the performance (p<0. 05,t-test). From these findings it is concluded that laughing increases the NK activity of people whose ac- tivity levels are below average and normalizes the CD 4/8 ratios of people whose ratios are above or below the standard levels.
著者
松原 慎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.993-1000, 2016 (Released:2016-10-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

機能性消化管疾患 : 診療ガイドライン2014が上梓された. その中でも過敏性腸症候群 (IBS) の治療の第3段階においては, 催眠療法, 認知行動療法 (CBT), 弛緩法がエビデンスのある有効な治療として推奨された1) . これらは心身医学の専門医が積極的に適用すべき治療法である. しかし一方で, 第3段階の治療を複数はおろか一つでも縦横に使いこなせる心療内科医もまだ十分には育成されていないと思われる. 従来の常識とは異なり, 現代の催眠は, オーダーメイドが可能なことから自律訓練法 (AT) より支配性が少なく安全に用いることができる. しかし, エビデンスのある腸指向催眠療法 (GDH) は伝統的催眠の手法を用いている. またCBTも瞑想およびリラクセーションを取り入れ, 催眠もCBTも変性意識を扱うようである. 本稿では, 催眠療法およびその近縁であるATとCBTのエビデンスの紹介および実践上の注意点, 各治療法の長短について, 横断的に比較検討して概説した.
著者
北岡 志保 古屋敷 智之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.922-928, 2017 (Released:2017-09-01)
参考文献数
21

社会や環境から受けるストレスは内分泌系, 免疫系, 自律神経系を介したストレス応答を惹起する. しかし, これらのストレス応答がいかに統合されて情動変容や精神疾患を促すかには不明な点が多い. 近年ストレスによる情動変容における炎症様反応の重要性が確立され, この炎症様反応における内分泌系, 免疫系, 自律神経系の関与が調べられている. 末梢では, ストレスによる内分泌応答は骨髄系細胞を活性化し血中の炎症性サイトカインを上昇させ, 交感神経の活性化は血中の顆粒球・単球を増加させる. また, ストレスは腸内細菌叢を変化させ免疫系を活性化する. 脳内では, ストレスはミクログリアを活性化し炎症関連分子を介して前頭前皮質のドパミン系を抑制する. これらの知見は, 多様なストレス応答が脳内外の炎症様反応に収斂して情動変容や精神疾患を促すことを示唆しており, ストレスによる炎症様反応を標的とした新規抗うつ薬の開発を期待させる.
著者
富田 望 嶋 大樹 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.65-73, 2018 (Released:2018-01-01)
参考文献数
18

本研究では, 社交不安症における心的視点を測定する尺度を作成し, 信頼性と妥当性を確認することを目的とした. Field視点 (F視点), Observer視点 (O視点), Detached Mindfulness視点 (DM視点) の3因子構造を想定した17項目の尺度を作成し, 学生283名に対して質問紙調査を実施した. 因子分析によって項目を抽出し, 内的整合性を確認するためにα係数を算出した. また, 構成概念妥当性を検討するために, 3下位尺度と, それぞれに類似する概念もしくは異なる概念を測定する尺度との相関係数を算出した. さらに, 再検査信頼性を検証するために2週間の間隔をあけた再テスト法を用いた. その結果, F視点, O視点, DM視点の3因子13項目から構成される質問紙が作成された. また, 十分な内的整合性, 再検査信頼性, 構成概念妥当性が示された.
著者
岡本 百合 三宅 典恵 香川 芙美 吉原 正治
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.423-428, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
12

近年, 受診する成人の背景に自閉症スペクトラム障害 (autism spectrum disorder : ASD) をもつ例が多いことがいわれている. 大学の中にも, 自閉症スペクトラム (autism spectrum : AS) 特性を背景として, 併存症や不適応問題を抱えて来談・受診する学生が増加している. 保健管理センターに来談・受診する学生に, 厳密にASD診断がつく者は一定割合はいるものの, 多くはグレイゾーンの学生たちである. 今回は, 広い意味でAS特性をもつ大学生の臨床像について報告した. 障害学生支援については, 2016年 (平成28年) 4月に障害者差別解消法の合理的配慮規定などが施行され, 修学上の支援は充実されつつある. しかしながら, 修学上の問題以外の不適応問題に取り組む必要がある. また, 大学生活への適応だけでなく, 卒業後の方向性もふまえて支援していくことが重要と思われた.
著者
楠 裕明 山下 直人 本多 啓介 井上 和彦 石井 学 今村 祐司 眞部 紀明 鎌田 智有 塩谷 昭子 春間 賢
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.949-954, 2010-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

炎症性腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎は消化器心身症の代表的存在として扱われてきた.われわれは現在の炎症性腸疾患と心身医学の関係について総説した.潰瘍性大腸炎はその発症に心理社会的因子は高率に関与するとした報告もあり,患者本人のストレスを受けやすい強迫的性格もみられ,症状の増悪や再燃などの長期経過にも関連性が強い.クローン病も潰瘍性大腸炎より低率であるが心理社会的因子は発症に関連し,患者にストレスを受けやすい強迫的性格が多く,長期経過にも心理的因子は関連性が強かった.治療に関しては,潰瘍性大腸炎では心身医学的なアプローチが行われる症例もみられるが,クローン病ではあまり行われていない.
著者
田中 輝明 小山 司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.979-985, 2009-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

単極性うつ病と双極性うつ病では治療アプローチが異なるため,「うつ病」診療においては早期診断が重要な鍵となる.抑うつ症状のみで鑑別することは困難であるが,双極性うつ病では非定型症状や躁成分の混入が診断の手掛かりとなることもある.双極性障害の診断には(軽)躁病エピソードの存在が必須であるが,患者の認識は乏しく,周囲からも注意深く(軽)躁症状の有無を聴取する必要がある.双極性障害のスクリーニングには自記式質問紙票も有用である.また,パーソナリティ障害や薬物依存などの併存も多く,複雑な病像を呈するため注意を要する.双極スペクトラムの観点から,双極性障害の家族歴や抗うつ薬による躁転などbipolarityについても確認することが望ましい.双極性障害の薬物治療としては,エピソードにかかわらず気分安定薬が第一選択であり,有効性や副作用(躁転や急速交代化)の面から,抗うつ薬の使用には慎重さが求められる.
著者
本郷 道夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.451-457, 2022 (Released:2022-11-01)
参考文献数
26

腸内細菌は,多種にわたり大量に腸管内に存在する.腸管粘膜は,上皮細胞間のタイトジャンクションにより緊密に結合し,表面は粘液により被覆される.粘液はその物理的性状,粘液中に分泌されるs-IgAおよび抗菌蛋白により免疫学的に管腔内物質の生体への侵入を予防し,上皮内の樹状細胞,上皮下の免疫細胞およびs-IgAによってより強固な防御機構を形成する.加齢や心理社会環境ストレスは粘液産生低下および免疫機能低下により腸管バリア機能が低下したleaky gutを誘発する.その結果,精神神経系,消化器系,代謝系,免疫系の多彩な腸内細菌関連疾患を誘発する.その主要な機序は,炎症,細菌代謝物などの侵入もしくは吸収,免疫反応である.精神神経疾患の病態においては,精神疾患は主として炎症反応が脳血液関門を障害し,神経炎症を引き起こすこと,神経変性疾患では腸管で吸収された物質が求心性神経を経由して中枢神経系で凝集すること,がその主要な病態と推測される.
著者
岡 孝和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.407-415, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
28

心因性発熱に関する最近の基礎研究と, その中で日本人研究者が果たしてきた役割について紹介した. 特に実験動物におけるストレス性高体温を抑える薬理学的検討, ストレス性高体温を生じる脳内機序と感染性発熱を生じる脳内機序の違い, 慢性ストレスが体温調節に及ぼす影響について焦点を当てて概説した. さらに心因性発熱患者では, 実際にストレッサーに曝露されなくても, ストレス面接によって心因性発熱を再現できる症例があることを紹介した.
著者
近藤 一博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.828-833, 2014-09-01 (Released:2017-08-01)

現代はストレス時代といわれ,ストレスの蓄積状態である「疲労」による,うつ病や自殺が増加している.このような状況を打開するためには,疲労のメカニズムの解明や,疲労を客観的に測定して予防することが必要となる.われわれはこの目的のために,人の意思では変化しない疲労のバイオマーカーを検索し,唾液中に放出されるヒトヘルペスウイルス(HHV-)6による疲労測定法を開発した.HHV-6は突発性発疹の原因ウイルスで,ほとんどの人の体内でマクロファージと脳内アストロサイトに潜伏感染している.マクロファージで潜伏感染しているHHV-6は,1週間程度の疲労の蓄積に反応して再活性化し,唾液中に放出される.このため,唾液中のHHV-6の量を測定することによって中長期の疲労の蓄積を知ることができた.脳の前頭葉や側頭葉のアストロサイトに潜伏感染しているHHV-6も,ストレス・疲労によって再活性化が誘導されると考えられる.われわれは,脳での再活性化時に特異的に産生される,HHV-6潜伏感染遺伝子タンパクSITH-1を見い出した.SITH-1発現は,血液中の抗体産生に反映され,血中抗SITH-1抗体を測定することによって,脳へのストレスと疾患との関係を検討することが可能であった.抗SITH-1抗体陽性者は,主としてうつ病患者に特異的にみられ,抗SITH-1抗体がうつ病のバイオマーカーとなることが示唆された.ヘルペスウイルスの再活性化の指標となる抗体のavidity indexを指標にヘルペスウイルス再活性化と精神疾患との関係を検討した.この結果,ストレスによって誘導されると考えられる単純ヘルペスウイルス1型の再活性化の亢進は,アルツハイマー病の前段階である健忘型軽度認知機能障害と関係することがわかった.これらの現象は,心身相関にはヒトそのものの因子の他に,体内に潜伏するヘルペスウイルスも関連し,社会的ストレスとともに複雑な因果関係を形成していることを示すものと考えられた.
著者
岡 孝和 松下 智子 有村 達之
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.978-985, 2011-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
33
被引用文献数
3

失体感症とは心身症患者にみられる特徴として,1979年に池見酉次郎により提唱された概念である.しかしながら,その定義は必ずしも明確でない.そこでわれわれは,失体感症の概念を明確にするために,まず池見が失体感症概念を提唱するに至った経緯と背景を検討した.次に池見による著書から,失体感症に関する記載を抜粋し,失体感症を構成する要素を整理した.失体感症において気づきが鈍麻している感覚には,(1)空腹感や眠気などの,生体の恒常性を維持するために必要な感覚,(2)疲労感などの,外部環境への適応過程で生じる,警告信号しての感覚,そして(3)身体疾患に伴う自覚症状,などが挙げられた.池見は,失体感症では,これらの感覚に対する気づきが鈍麻しているだけでなく,それを表現したり,適切に反応することも困難であるとした.また自己破壊的なライフスタイルを送ったり,自然の変化に対する感受性や自然に接する機会も低下するとした.
著者
辻内 琢也 鈴木 勝己 辻内 優子 熊野 宏昭 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.53-62, 2005-01-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
6

本研究では, クラインマンが提唱した「説明モテル」を鍵概念として, わが国における民俗セクター医療を利用する患者の社会文化的背景に対して, 医療人類学的視点に基づいた質的研究法による解明が試みられた. 対象は東洋医学, 仏教医学, スピリチュアリズム理論に基づく治療実践を行う治療家Aのクライエントらとし, 自由記述式のアンケート調査および聞き取り調査が行われた. その結果, 民俗セクター医療を利用しやすい病態群や受療行動パターンが持定され, 病いの物語りからは, 人々が多元的医療システムの中でそれぞれのライフストーリーに裏づけられた価値観に基づいて, 自分に合った医療を主体的に選択していくありさまが認められた. 研究の背景と目的 「医療」が「人間の病気に対する対処行動の全体系」であると定義されるように, 現代社会には治療の基盤となる根本原理がまったく異なる複数のヘルス, ケア, システムが多元的, 多様的, 多層的に存在しており, そのありさまは「多元的医療システム(pluralistic medical systems)」とよばれる.
著者
上村 恵一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.789-795, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
13

がん患者は告知後, 治療中, 再発時, 治療の中止を告げられたときなど多大なストレスに曝露されるためメンタルヘルスの危機にさらされる機会が数多くある. そんな中で, 希死念慮を呈することも少なくない. 疫学研究では, がん患者の自殺率は一般健康人と比べて2倍程度高く, そのリスクが最も高いのは診断後間もない時期であり, 男性, 診断時の進行がん, 頭頸部がんなどが危険因子とされている.  多くの危険因子が知られているものの, 危険因子の把握のみが自殺予防にとって最も重要なわけではないことが最近の多くの研究で指摘されている. 本稿で紹介するJoinerの対人関係理論は, これまでの自殺に関する研究知見を包括的に説明し, かつ臨床においてリスク評価および介入までを連続的に提示しているモデルとして期待されている. 希死念慮を呈したがん患者に対して, その背景にある苦痛を理解しようとする共感的な態度が必須であることはいうまでもない.
著者
村上 典子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.227-233, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

大災害においては, 災害そのものによるトラウマティック・ストレス, 災害による喪失体験による悲嘆反応, その後の生活環境の変化に伴うストレスなど, さまざまな要素がからみあい, 心身症が発症したり, さまざまな身体症状が現れると考えられる. 急性期には心身医学的視点をもちながら身体症状・身体疾患中心のケアを行い, 心のケアのニーズが顕在化する慢性期には身体医療から入り心のケアもともに行い, 復興期には長期にわたるストレスや喪失悲嘆が身体症状化した被災者へのケアを行うなど, 災害のあらゆるフェイズにおいて 「心身医学的支援」 のニーズは高い. 来たるべき災害に備えて, われわれ心身医学専門家にも準備が必要である.
著者
磯野 真穂
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.849-856, 2013-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
25

不適切な親子関係が摂食障害を引き起こすとするモデル(=「家族モデル」)は,すでに多くの批判にあい,現在主流の機序モデルではない.しかし,このモデルは当事者や家族に対し,いまだ強い影響力をもつ.これまで「家族モデル」に対する批判は「正・誤」の二項対立の中で展開されてきたが,単に「家族モデル」を「誤り」とするだけでは,このモデルがいまだ当事者や家族に受容される理由を明らかにすることはできない.したがって,本稿は,「家族モデル」を内面化したと思われる1事例を取り上げ,当事者にとっての「家族モデル」の意義とその内面化の功罪を,「物語」の観点から解析した.結果,「家族モデル」は,親を原因とすることで,当事者を病気にかかったことの罪悪感から救済するが,疾病利得を生み出し,救済の範囲を親子関係の中にとどめて,社会性の回復を促さないという弊害も見出された.
著者
尾辻 美沙 佐藤 菜保子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.160-172, 2017 (Released:2017-02-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

背景 : 音楽のもつリラクセーション効果やストレス軽減効果から, 医療現場でもBGMが活用されている. 本研究は, 聴き手の精神的健康状態と状況, BGMの嗜好性の関連を検証し, 医療現場における効果的なBGM選択に関し検討した.  方法 : 大学生を対象にCES-Dと, BGMの嗜好に関する質問で構成する質問紙調査を実施した (有効回答数100名).  結果 : 抑うつ傾向の高い人ほどBGMの嗜好性が低く (p<0.05), オルゴール, 自然の音, 陽気で楽しげな曲, 情熱的で激しい曲は聴き手の状況により, 嗜好性が異なった. また, 元気を出したいときほど速いテンポ, 不安なときや夜眠れないときほど遅いテンポを好む傾向にあった (p<0.0001).  結論 : 聴き手の精神的健康状態, 置かれた状況によってBGMの嗜好性は異なることが明らかとなった. 病院内の環境や患者の状況により, BGMのテンポや音の種類, 曲想を考慮する必要性がある.
著者
土居 正人 三宅 俊治
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.423-431, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
12

本研究の目的は, 自傷行為傾向に及ぼす親子関係の影響を検討することである. 自傷者は親からの 「不承認」 を含めて, どのような不適切な親子関係に影響を受けているのか, そして高校生から大学生に至る親子関係の発達的推移において, 自傷傾向を顕著に示す対象者はどのような親子関係の発達的特徴を有するのか, をそれぞれ明らかにする. 方法として, 高校生426名と大学生262名を対象に, 自傷行為尺度4) と親子関係尺度8) の関係を吟味した. その結果, 両親から自傷者への 「不承認」, また, 母親からの過干渉と同時に適切なサポートが供与されないといった矛盾した関わり方がそれぞれ子どもの自傷行為を誘発していることが判明した. さらに, 自傷者は親子関係における心理的離乳の発達段階に到達していないことも明らかとなった. 以上のことから, 自傷の低減には, 親子相互の建設的関係の再構築が必要であることが示唆された.