著者
大隅 智之 清水 博之 小室 治孝 川田 智子 井上 明子 喜古 康博 岩瀬 滋 西川 正憲
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.125-131, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
22

病院職員の集団接種において,mRNAワクチンであるBNT162b2接種後の副反応とIgG抗体価の関連について調査した.副反応は自己申告形式の調査票を用いて2回目接種の副反応の程度を,抗体価は2回目接種の9週間後のスパイク蛋白に対するIgG抗体価の変動を用いて検討した.調査対象者は228名であり,発熱,倦怠感,頭痛の程度とIgG抗体価の上昇に関連が認められた.対象者の年齢を45歳未満と45歳以上に群別すると,45歳未満群では倦怠感,45歳以上群では発熱とIgG抗体価の上昇が関連していた.IgG抗体価と接種後の一部の副反応の程度には関連がある可能性が示唆された.
著者
粕谷 志郎 後藤 千寿 大友 弘士
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1152-1156, 1988-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3

アニサキス幼虫に対する殺虫効果のあるなしを13の食品もしくはその抽出液について検討した.それぞれ乾燥重量に対し5%となるよう生理食塩水にて抽出液を作成し, これにスケトウダラ内臓より採取したアニサキス幼虫を入れ24時間観察した.その結果, アオジソ, ショウガ, ワサビ, ニンニクの4食品の抽出液で完全に虫体の運動を消失 (死亡と推定) させることができた.エタノールは8%以上の=濃度で強い致死効果が認められた.シソ, ワサビの2.5%抽出液ではそれぞれの5%溶液に比し致死率が低下したが, ショウガの2.5%溶液はなお完全な効果を示した.運動停止 (1分間の観察中動きが認められない) までの平均時間はシソ3.1時間, ショウガ3.2時間, ワサビ5.6時間, ニンニク10.8時間であった.ネギ, パセリ, ダイコン, キャベツ, ホウレンソウ, ミツイシコンブ, トウガラシ, チャ (茶) には致死効果は認められなかった.強力な殺虫効果を示したシソ, ショウガの若干の既知成分についてもこのような効果があるか検討し,[6]-shogao1,[6]-gingerol (以上ショウガ), perillaldehyde, perillylalcoho1 (以上アオジソ) のそれぞれが100%致死効果を発揮する最少濃度が62.5μg/ml, 250μg/ml, 125μg/ml, 250μg/mlであることが判明した.一方, 陽性対照に使用したthiabendazoleでは10mg/dlでも死亡虫体を認めなかった.
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981-05-20 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
著者
江田 邦夫 大田黒 滋 松嶋 喬 品川 敦彦 池松 秀之 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.274-281, 2012-05-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

長崎県壱岐市(人口約30,000 人の島)におけるA(H1N1)pdm09 の流行状況を調査した.流行は,2009 年8 月に始まり2010 年3 月に終ったが,流行が始まる以前より市医師会では対策委員会を立ち上げていた.流行開始後各医療機関ではインフルエンザと診断した患者について,その日のうちに保健所にFax で連絡した.保健所はその報告患者数を毎日集計し,流行状況により医師会は学校長及び教育委員会と協議し,学級・学年閉鎖,休園・休校を行った.本市での流行は,ピークが分散し2 峰性となったが,これらの措置が迅速かつ徹底して行われたためと考えられた. A(H1N1)pdm09 ウイルスの罹患者は2,024 例で全人口の6.6%であった.年齢群別の人口における罹患率は10~19 歳が最も高く849 例(26.8%),ついで0~9 歳の594 例(21.3%)で,19 歳以下が全罹患者の71.3%を占めた.60 歳以上の高齢者の罹患率はきわめて低かった.A(H1N1)pdm09 ウイルスの抗体保有状況をみるため,流行終息後の2010 年9 月21 日~11 月15 日までに一般住民358 例の採血を行い,A(H1N1)pdm 09 ウイルスのHI 価を測定した.HI 価≧1 : 40 は全体の57.3%で,7~49 歳までが約70%と高率であった.これらのHI 価≧1 : 40 の要因を検討したが,最も多いのはワクチン接種,次いでA(H1N1)pdm09 罹患で,不顕性感染は11.7%と低かった. 以上から,壱岐市でのA(H1N1)pdm09 の流行について, 1.罹患率は全人口の6.6%であった. 2.罹患者の71.3%は19 歳以下であり,高齢者の罹患率はきわめて低かった. 3.流行に対して学級・学年閉鎖,休園・休校が有効であり,2 峰性となった.
著者
山室 亮介 萩野 昇
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.1-5, 2023-01-20 (Released:2023-01-20)
参考文献数
10

抗原定性検査と逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR:Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)の新型コロナウイルス検出に関する比較試験はこれまでにも行われているが,感染性を有する患者の特定に関する差については分かっていない.抗原定性検査,RT-PCR検査を入院時に同時に採取し,2021年2月21日から2021年10月8日に入院した患者1,101人に対してスクリーニングを行ない,それぞれの検査が感染性を有する患者の特定にどのように寄与したのかを後ろ向きに検討した.検査結果が乖離した症例は7例あり全て抗原定性検査陰性,RT-PCR検査陽性だった.いずれの検査も陽性が9例,いずれも陰性が1,085例だった.抗原定性陰性,RT-PCR検査陽性となった7例中6例が最終的に感染性はないと判断された.また,7例中1例が感染性あると判断され,この症例は肺炎を伴っていた.研究期間内の感染性を有する患者の検出に関して,症状や暴露状況から新型コロナウイルス感染の事前確率が高い場合は抗原定性検査よりRT-PCR検査が有用だった症例が1例あったが,無症状かつ暴露がない場合には抗原定性検査とRT-PCR検査は同等だった.
著者
竹田 美文 野村 隆司
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.687-693, 2000-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

わが国においては, 1999年 (平成11年) 4月から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行され, 感染症予防・医療体制の抜本的な見直しが図られた.法律に基づく感染症医療提供体制としては, 特定感染症指定医療機関, 第1種感染症指定医療機関及び第2種感染症指定医療機関の3種類が規定されている.最近, 都道府県毎に各2床整備することが定められている第1種感染症指定医療機関について,(1) 都道府県毎に各2床整備することの必要性,(2) 病室の構造等に関する施設基準,(3) ペストは2類感染症又は4類感染症での対応で十分であり, 第1種感染症指定医療機関での対応は必要ないといった新たな提言がなされている.本稿は, これらの提言への反論を含め, 薪しい法律に基づく感染症医療のあり方について包括的に概説し, 日本における感染症医療の方向性を検証することを目的とする.
著者
藪内 英子 縣 邦雄
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.90-98, 2004-02-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
14 16

宮崎県日向市の日向サンパーク温泉「お舟出の湯」は, 平成14年6月20, 21日に各200人ずつの体験入浴を実施後, 7月1日に正式開業したが, レジオネラ症集団発生のため7月24日に営業停止となった. 6月20日から7月23日までの入浴者19, 773名のうち295名が発症し, そのうち34名が, 喀痰培養陽性, 尿中レジオネラ特異抗原陽性, Legionella pneumophila SG1に対する血清抗体価有意上昇の何れか1つまたは2つにより確定診断され, うち7名が死亡した. L. pneumophila SG1が患者喀痰と浴槽水から検出され, Sfi Iによる患者株と浴槽水株のDNA切断像が一致したことから, 「お舟出の湯」が感染源と確定した.日向市設置の「日向サンパーク温泉施設レジオネラ菌原因等究明委員会」は集団感染の原因として: 宮崎県の委員会が推定した8項目の他に (1) 施設関係者のレジオネラ症に対する知識と認識の不足,(2) 施設完成時, 試運転後の配管内の水の滞留とレジオネラ属菌増殖の可能性, および (3) 体験入浴前の循環系統全体の消毒・清掃が不十分の3項目を加え, 全11項目を指摘した. 改善対策として: (1) 維持管理マニュアルの整備, (2) 浴槽水の溢水の確保,(3) ろ過装置の消毒の徹底, (4) 浴槽水の残留塩素濃度の測定と維持, 及び (5) ろ材を多孔質セラミックから砂に変更, など全24項目を指示した.
著者
新井 陽子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.815-822, 2004-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
6 6

1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルス株の中から高免株と, 小松川株の核タンパク (N) 遺伝子1,353全塩基の配列を決定した. 従来より研究されてきた日本の諸ウイルス株と世界で分離, 研究されてきたリッサウイルス 140株 (128株の遺伝子型1と12株の他の遺伝子型) の関係を知る目的で系統樹解析を行った. その結果狂犬病ウイルスは少なくとも12のクラスターに分けられた. 高免株および西ヶ原株は, ヨーロッパ, 中近東, アフリカからなる最も広い地域の分離株で形成されるクラスターに属した. さらに, これら2株は中国でヒトから分離された北京株由来の3aG (中国のワクチン株) と同じクラスターを形成した. 一方, 小松川株は北極, カナダ, ロシアから分離されたウイルスのクラスターに属し, 特にバイカル湖地域のsteppe fox, ハバロフスク地域のraccoon dogから分離されたウイルスと同じクラスターを形成した. これらの結果と史実から, 1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルスは中国およびロシア由来のウイルスが伝播してきたと推測された.
著者
藤井 修照
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.64-69, 1986-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8

1984年6月初めから2ヵ月の間に, 発熱を以って始まる特異な発疹性疾患103例を経験した.強い流行性を示し, 家族内伝播の傾向が著明であり, 殆んどが9歳以下の小児であったが, 患児の親にも感染は及んだ.材料の採取できた症例の90%にEchovirus type 16 (以下Echo 16と略す) が証明され, この疾患はBoston exanthemであると結論するに至った.本疾患は数日の発熱のあと, 特異な発疹が出現, 約1週間で消退し, 合併症もなく比較的軽症であるが, 類似する他の発疹性疾患との鑑別は比較的容易であると考えられる.Echo16の分離される頻度は極めて低いと云われるが, 今回観察された強い流行の原因についての解明が待たれる.
著者
諸藤 美樹 梶山 渉 中島 孝哉 野口 晶教 林 純 柏木 征三郎 隅田 郁男 花田 基典
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1013-1018, 1990-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
21

九州地方は, HTLV-IのEndemicareaとされているが, その中でも佐賀県は, 比較的陽性率の低い地域と報告されていた.今回, 佐賀県北部の唐津, 東松浦地区における抗ATLA抗体陽性率を検討するため, 1985年9月から10月にかけ唐津赤十字病院を受診した患者757例を対象とし, 抗ATLA抗体をEIA法により測定した.1. 全患者の抗ATLA抗体陽性率は, 13.7%(757例中104例) で陽性率は加齢と共に上昇し, 60~69歳で最高の21.1%に達した.2. 性別の陽性率は, 男性9.6%, 女性17.8%と有意に女性が高率であった (p<0.001).3. 悪性腫瘍患者を除く患者の居住地別陽性率は, 玄海灘に面する鎮西町, 肥前町, 浜玉町が高く, 沿岸部と山間部の比較では, 有意に沿岸部が高かった (p<0.001).4. 疾患別では, 新生物が26.1%と最も高率で, ATLが100%, ATL以外の悪性腫瘍でも, 25.9%と高く, HTLV-I感染がATLのみならず, 他臓器癌とも関わっていることが示唆された.
著者
鈴木 悠 鈴木 里香 鈴木 葉子 杉原 茂考 大谷 智子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.198-203, 2022-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
17

Typhoid fever is common in developing countries. Even in developed countries, however, small epidemics could occur, caused not only by overseas travelers, but also by chronic carriers. Detection of chronic carriers is difficult. A small number of patients become chronic carriers and act as a source of infection if only usual treatment is given, and not complete treatment. We report two cases of typhoid fever that occurred 30 months apart in members of a family with no history of overseas travel. We examined the molecular epidemiology and identified a chronic carrier in one of the family members with gallbladder stones, and treated the carrier with antibiotics and cholecystectomy. No case of typhoid fever has occurred in the family since. No guidelines recommend examination of the gallbladder for chronic carriers, although many reports indicate gallbladder abnormalities. The above suggests that follow-up examination of typhoid fever patients should include gallbladder examination for abnormalities, especially in non-epidemic countries.
著者
若盛 ゆき音 新妻 隆広 米山 俊之 嶋 泰樹 織田 久之 大日方 薫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.377-380, 2021-09-20 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is often mild in children, but many severe cases with Kawasaki disease-like symptoms have been reported in Europe and the United States, and termed as multisystem inflammatory syndrome in children(MIS-C). We experienced a 12-year-old boy met the diagnostic criteria for Kawasaki disease and MIS-C after COVID-19. His clinical feature reviewed neither shock nor respiratory failure. His laboratory findings on admission showed remarkable inflammatory reaction, lymphocytopenia, thrombocytopenia, and coagulation abnormality. The number of pediatric cases of COVID-19 is increasing in Japan, and attention should be paid to the development of Kawasaki disease and MIS-C in the future.
著者
谷 賢治 高橋 宏 加藤 清 松永 敬一郎 坂本 洋 成田 雅弘 千場 純 進藤 邦彦 伊藤 章 福島 孝吉
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.280-285, 1983-03-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
17

風疹に続発する中枢神経系合併症のうち, 脳炎を併発した成人の一例を報告し, 本邦の報告例11例の文献的考察を加え, 小児の風疹脳炎と比較検討し報告した.[症例] 22歳男性.主訴は嘔吐と意識消失. 家族歴と既往歴に特記事項なし. 現病歴は体幹部の粟粒大の発疹, 発熱と頭痛が初発症状, 3日後に症状消失, 第7病日に主訴出現し入院. 意識レベルは100で神経学的な病的反射と髄膜刺激症状はなし, 末梢血で白血球増多と核の左方移動, 血清の風疹抗体価はHI512倍, CRP (±) とIgA増加. 検尿で蛋白 (+), 糖 (2+), 沈渣は赤血球やや多数/1視野, 白血球18~20/1視野. 腰椎穿刺で初圧75mm水柱, 細胞数189/3 (顆粒球59/3, リンパ球130/3), 蛋白94mg/dl, 脳波はθ波のslowing. 第8病日の意識レベルは3で項部硬直出現. 第9病日の血清風疹抗体価4,096倍, 第11病日の意識は明瞭, 第12病日に項部硬直消失. 第14病日の血清風疹抗体価8,192倍, 第27病日は2,048倍と低下.[自験例を含む本邦の成人風疹脳炎12症例と小児風疹脳炎の比較] 発疹出現から脳炎症状出現までの日数, 臨床症状, 髄液所見で成人の風疹脳炎と小児の風疹脳炎に差は見られないが, 初発症状で小児例に嘔気, 嘔吐と痙李が見られるのに成人例では認められない事や, 予後で小児例に死亡する例が有るが成人例では無い事が異なる.
著者
高田 浩次 安達 茂樹 大塚 隆嗣 辻 昭一郎 吉田 公彦 戸倉 夏木 中野 太郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.25-28, 2022-01-20 (Released:2022-01-28)
参考文献数
8

The reported major adverse reactions to COVID-19 vaccination are fever, headache, and malaise, but the possibility of other adverse effects should be considered. We encountered a patient who developed facial nerve paralysis with aseptic meningitis after COVID-19 vaccination. The patient was clinically diagnosed as having Ramsay Hunt syndrome, but there is the possibility that the vaccination contributed to re-activation of the varicella-zoster virus. Immediate treatment should be undertaken for facial nerve paralysis as well as critical anaphylactic shock, and careful observations should be made for the possibility of delayed adverse reactions, such as facial paralysis, to COVID-19 vaccination.
著者
氏家 無限 加藤 康幸 黒木 淳 寺島 俊和 伊藤 稔之 麻岡 大裕 白野 倫徳 柿木 康孝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.32-36, 2021-01-20 (Released:2021-08-01)
参考文献数
10

The novel coronavirus disease 2019 (COVID-19) was first reported to the World Health Organization by the WHO country office in China in December 2019 and has since become a worldwide pandemic. In Japan, COVID-19 is a designated infectious disease under the Infectious Disease Control Act, meaning that hospitalization or isolation measures are required for infected persons. It has been noted that in some cases, patients show positive PCR test results even after discharge from the hospital upon meeting the discharge criteria for COVID-19. However, so far, there is a lack of substantial evidence on the pathogenesis of reinfection or relapse in patients with COVID-19. We report 4 cases of COVID-19 who showed repeat-positive PCR test results for SARS-COV-2 after discharge from the hospital, and assessed their infectivity using clinical information collected via a public epidemiological survey. All 4 cases showed a repeat-positive PCR test results within 40 days of the initial onset of symptoms. All the PCR test results showed high Ct values of 33 or higher in the repeat-positive test. In addition, neutralizing antibodies were detected in all cases within 3 days from the date of the repeat-positive test. Furthermore, an epidemiological survey was conducted in 18 persons who were in close contact with the 4 cases, and 11 of them tested negative by the PCR test, and no case of secondary infection was found. Based on these findings, the risk of secondary infection from the 4 cases was considered as low. No specimens collected at the time of the first infection or virus culture test results were available for further evaluation. Issues remain to be resolved in respect of the systems needed for cooperation with healthcare providers and the laboratory testing required for the evaluation of re-infection. In order to further elucidate the pathogenesis of COVID-19, and to provide appropriate medical care, it is essential to evaluate the infectivity of patients with a repeat-positive PCR test and to accumulate further knowledge about the disease.
著者
中川 裕太 笠松 悠 福岡 里紗 森田 諒 山根 和彦 小西 啓司 麻岡 大裕 中河 秀憲 白野 倫徳 天羽 清子 外川 正生 後藤 哲志
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.814-820, 2020-11-20 (Released:2021-06-10)
参考文献数
11

大阪市立総合医療センターに入院したCOVID-19関連肺炎13例において,再検例を含むのべ20件の胸部CT画像について検討した.全例で胸膜直下の病変とground-glass opacity(GGO)を認めたが,胸水,心嚢水,縦隔・肺門部リンパ節腫脹,空洞形成は認めなかった.また,酸素投与を要した3例は下葉のvolume loss とともに胸膜直下の病変と結合する気管支血管束の病変が認められた.発症時期から画像所見を分類するとGGOは発症早期(10日未満)に多く認められ,crazy-paving pattern,consolidation,背側のconsolidation の帯状の融合像は発症後期(10日以降)に多く認められた.鑑別疾患としてはインフルエンザなどによるウイルス性肺炎と器質化肺炎が重要と考えられた.詳細な問診による発症からの期間と胸部CT画像の特徴的な所見や経時的変化を合わせて理解することで,COVID-19の事前確率を適切に評価し,診断と治療および感染対策につなげることが重要である.
著者
渡辺 実 野田 伸司 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.367-372, 1981-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.
著者
廣津 伸夫 長谷川 貴大 税所 優 村手 純子 池松 秀之 岩城 紀男 河合 直樹 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.117-125, 2014-01-20 (Released:2016-09-27)
参考文献数
15

発熱疾患の鑑別には末梢血検査が行われ,細菌感染においてその診断および治療効果の判定に有用な手段となっているが,ウイルス感染においてはその検討は少なく,明確な見解はない.このたび,2004/05 年度から2009/10 年度に至る発熱疾患に対するルーチンの末梢血検査(白血球数とその分画およびCRP)の蓄積を後ろ向きに検討した結果,季節性インフルエンザA 型(H3N2 及びH1N1 を含む,以下季節性A 型)614 例と2009/10 年のパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009(以下,A/H1N1/pdm09)548 例の述べ1,162 例からインフルエンザの特徴的な所見が示され両者の違いも明らかとなった. 検討に当たっては,白血球とその分画は年齢により異なるため,全症例を一般化加法モデル(GAM,generalized additive model)を用いて年齢調整を行い,解析を実施した.インフルエンザの感染初期には顆粒球の増加,リンパ球の減少が確認され,その後顆粒球は減少,リンパ球は増加に転じることが観察された.顆粒球数では,季節性A 型に対してA/H1N1/pdm09 は,治療開始前は0.93 倍,治療後は0.82 倍とそれぞれで統計的に有意に低く推移していた.リンパ球数の比率は,治療開始前,治療後のいずれも,1.12~1.30 倍であり,統計的に有意に高い推移であった.CRP は発症後24 時間から36 時間にピークを迎え,その平均値はA/H1N1/pdm09 で0.88mg/dL,季節性A 型で1.53mg/dL であった. 末梢血は疾病の時間的経過,合併症の併発,治療による修飾,治療薬の副次作用等によって変動する.このようなインフルエンザ本来の末梢血の白血球分画の変化・動態を知ることは,診断時(特に迅速診断の要否の判断),経過中の合併症や副作用の出現を把握するために重要と考え報告する.
著者
寺中 さやか 阿部 克昭 静野 健一 寺井 勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.310-316, 2020-05-20 (Released:2020-12-03)
参考文献数
15

2009 年から2018 年までの10 年間に当院小児科において有熱性尿路感染症の診断で入院した患者320 名・339 例の尿より分離された腸内細菌科細菌341 株を対象とし抗菌薬感受性を調査した.入院時の年齢は日齢11~14 歳9 カ月(中央値:日齢174),男児195 例,女児144 例であった.菌株はEscherichia coli が297 株(87.1%)で大半を占めた.extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌は16 株(4.7%)であり,すべてE. coli であった.CTX 耐性率は2014 年までは2~4% と低値で安定していたが,2015 年以降耐性株が増加し,直近2 年は10% 以上を占めた.LVFX 耐性率も近年上昇傾向をみとめ2018 年は13% を超えた.一方でCMZ は感性率90% 以上を保っていた.TAZ/PIPC の感性率は2010 年以降95% 以上,MEPM の感性率は全期間100% であった. 小児における腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性化は現時点では成人と比較すると深刻ではないといえるが,ESBL 産生菌やAmpC 過剰産生菌など多剤耐性菌の増加傾向をみとめており,今後も継続して抗菌薬感受性の推移を監視することが必要と考えられた.