著者
上長 然
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.18-37, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
114
被引用文献数
5

本稿は, 日本において2014年7月から2015年6月までに発表された青年期・成人期・老年期を対象とした発達研究について概観したものである。1年間に発表された青年期以降を対象とした発達研究の動向を「自己」, 「対人関係」, 「適応と精神的健康」, 「進路・キャリア発達」, 「その他」の5つに分類し, 論評を行った。自己に関する研究では, 青年期のアイデンティティ発達に関する研究, 自己概念・自己評価に関する研究, 世代性や子育てに伴う心理発達に関する研究がなされていた。対人関係では, 夫婦関係の継続理由や夫婦関係と家族機能の関連を扱った研究が見られた。適応と精神的健康では, 学校行事や接続教育, いじめ, 非行といった学校生活・学校適応に関する研究が多く報告されていた。進路・キャリア発達に関する研究では, キャリア教育や職業意識の形成, 社会参加に関する発達的意義について論じられていた。その他としては, 青年期から老年期にかけての認知機能やパーソナリティの発達について報告されていた。最後に, 青年期以降の発達研究における展望とともに, 今後の課題について論じた。
著者
秋田 喜代美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.176-186, 1996-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
20 4

In order to investigate how images of teaching change in the course of expertise, experienced teachers, novice teachers, students who took teacher education courses at the university, and students who didn't take them were compared on metaphor-making tasks. They were asked to make metaphors on 3 topics: “Lesson, Teacher and Teaching”. Both teachers and students made almost the same amount of metaphors. In the contents of the metaphors, however, there were some differences between them. Many students had images of teaching as transmission and routine work, and of teacher as teller. On the contrary, many expert teachers had images of teaching as joint construction with pupils and managing unpredictable situations, and of teacher as helper and supporter. These results suggested that students had explicit preconceptions about teaching before becoming teachers and their images of teaching changed with expertise.
著者
内海 しょか
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.12-22, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
40
被引用文献数
14 9

本研究では, 青年期の子どもにおけるネットいじめの特徴を調べ, 親の統制に対する子どもの認知とネット行動との関連を示すモデルを検討した。中学生487名を対象にした質問紙調査を行い, パソコンと携帯電話によるネット使用時間, インターネットを通して攻撃を行った経験・受けた経験, 関係性攻撃, 表出性攻撃, 親のネット統制(実践, 把握, 接続自由)認知を測定した。その結果, ネットいじめ非経験者の割合は67%, いじめの経験のみ8%, いじめられの経験のみ7%, 両方経験は18%であった。両方の経験を持つ者は, どちらも経験していない者に比べ関係性攻撃や表出性攻撃が有意に高く, 携帯電話によるインターネット使用時間が有意に長かった。いずれの統制認知もネットいじめ・いじめられ経験を直接予測しなかったが, 実践認知は間接的に, 把握認知と接続自由の認知は直接的に子どものネット使用時間を予測した。ネット使用時間および, 関係性攻撃はネットいじめ・いじめられ経験の両方に直接関連することが明らかとなった。
著者
江上 園子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.169-180, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
34
被引用文献数
5 2

本研究は, 幼児を持つ夫婦304組(合計608名)を対象にして, 父親と母親の「母性愛」信奉傾向が両者の抱く夫婦関係満足度と養育態度へ与える影響を家族システムの観点から検証したものである。分析の結果, 父親(夫)の場合, 自身と母親(妻)の「母性愛」信奉傾向は夫婦関係満足度に影響しないが, 母親の場合は父親と自身の「母性愛」信奉傾向の交互作用効果が見られ, 夫婦双方の「母性愛」信奉傾向が低い場合に夫婦関係満足度が高く, 父親の「母性愛」信奉傾向が高く自身の「母性愛」信奉傾向が低い場合に夫婦関係満足度が低いということがわかった。養育態度については, 父親の場合, 夫婦関係満足度が高いと子どもへの応答性も統制も強くなり, 積極的に子どもとかかわる姿勢が見られるということ, 自身の「母性愛」信奉傾向が2つの養育態度に異なる作用の仕方をしているということが認められた。母親の場合には父親と自身の「母性愛」信奉傾向の交互作用効果が認められ, 夫婦双方の「母性愛」信奉傾向が高い場合に応答的な養育態度が高く, 父親の「母性愛」信奉傾向が高く母親の「母性愛」信奉傾向が低い場合に応答性は低かった。父親と母親で, 「母性愛」信奉傾向の夫婦関係満足度と養育態度への作用の様相が異なることが議論された。
著者
麻柄 啓一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.20-28, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Whereas Piaget established conservation task to asess children's understanding of extensive quantity, this study aimed at establishing another kind of conservation task to asess children's understanding of intensive quantity, e.g. the concept of density. The following study examined children's misconception of density by using our conservation task. Subjects were sixth graders. A typical question was asked in the conservation task: Which density is greater, a big or a small aluminium lump? Although subjects were taught in advance that density of substance was given by its weight per unit volume (1 cm3), commonly explained in school education, half of the subjects failed to answer the question. They answered that the density was greater for the big lump, suggesting they did not understand the concept of density by a commonly given definition. Results were discussed from the viewpoint of the formation process of intensive quantity concept. A teaching method to lead children to a better understanding of the nature of intensive quantity was proposed.
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-12, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
34
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, 熟考を“結果に対する熟考”と“計画に対する熟考”に分けて測定できる認知的方略尺度を新たに作成し, その信頼性と妥当性を検証することであった。研究1より, “失敗に対する予期・熟考”, “成功に対する熟考”, “計画に対する熟考”ならびに“過去のパフォーマンスの認知”の4つを下位尺度とする認知的方略尺度20項目が作成された。また, 研究2より, 認知的方略尺度の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と一部の妥当性が確認された。研究3より, 認知的方略尺度の下位尺度の組み合わせによって, 4つ(防衛的悲観主義群, 楽観主義群, 悲観主義群, メタ認知低群)の異なった認知的方略パターンが確認された。4つの群の存在ならびに各群における特徴は, 先行研究とほぼ同様であり, 本尺度を用いて4つの異なった認知的方略パターンを抽出することが可能になったと言える。
著者
松原 達哉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.37-44, 1966-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

子どもの就学は, おおまかに6才といわれるが, しかし, 誕生日の違いで, 実際に入学する年令は異なっている。ある子どもは6才0か月で, 他の子どもは6才11月で小学校1年生になる。そこで, 本研究では, 子どもを年少児群・中間児群・年長兜群の3群にわけ, 学力・体位・欠席日数「指導性について縦断的に比較検討した。年少児群は, 6才0~1か月, 中間児群は, 6才5~6か月, 年長児群は, 6才10~11か月で入学するものである。結果はつぎのようである。1. 国語, 社会, 算数, 理科などの知的教科は, 平均しで2~3年間年長児群の方が年少児群に比較してすぐ, れている。しかし, 3~4年ころからその差異はなくなっている。2. 音楽は1年間, 図工は5年まで, 特に, 体育は, 6年間年長児群が有意にすぐれていることがめだっている。3. 身長・体重・胸囲・座高などの体位は, 男女とも小学1年生から中学3年生まで, 年長児群が年少児群に比較してすぐれている (ただし, 女子の身長, 座高は中学2年生まで) 。中間児群は, 両群の中位を占めて発達している。4. 欠席日数は, 小学1~2年間は年少児群の方にやや多い傾向がある。5. 学校委員およびクラブ活動の委員の人数は, 4年生まで年長児群にやや多い傾向がある。
著者
小塩 真司 岡田 涼 茂垣 まどか 並川 努 脇田 貴文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.273-282, 2014
被引用文献数
26

本研究では, 日本で測定されたRosenberg(1965)の自尊感情尺度の平均値に与える調査対象者の年齢段階や調査年の要因を検討するために, 時間横断的メタ分析を試みた。1980年から2013年までに日本で刊行された査読誌に掲載された論文のうち256研究を分析の対象とした。全サンプルサイズは48,927名であった。重回帰分析の結果, 調査対象者の年齢段階と調査年がともに, 自尊感情の平均値に影響を及ぼすことが明らかにされた。年齢段階に関しては, 大学生を基準として, 調査対象者が中高生であることが自尊感情の平均値を低下させ, 成人以降であることが自尊感情の平均値を上昇させていた。また調査年に関しては年齢層によって効果が異なっていた。中高生や成人においては最近の調査であるほど直線的に自尊感情の平均値が低下しており, 大学生では曲線的に変化し, 近年は低下していた。また件法が自尊感情得点の平均値に影響を及ぼすことも明らかにされた。
著者
三木 安正 波多野 誼余夫 久原 恵子 井上 早苗 江口 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-11,59, 1964-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
3
被引用文献数
1

以上のべたように, われわれは双生児の対人関係の発達をさまざまな面から検討してきた。その主な結果は, 以下の点に要約されよう。(1) 親との関係双生児は, 対の相手を持つているという特殊な条件のために, 一般児と比較した時に, 親との関係において差があるのではないか, すなわち, 双生児は相手に対して依存的であるために, 親からの独立は一般児におけるほど抵抗がなく, 早くすすむのではないか, あるいは反対に, 相互に依存的であることは親に対しても依存傾向が汎化し, 一般児より親からの独立がおくれるのではないか, という予想をもつていたのであるが, これらは, いずれも否定され, 双生児と一般児の間に有意な差がほとんど認められなかつた。これに対しては, 母親に対する依存は対の相手に対するそれとは, 質的に異なつたものではないかという理由が考えられる。(2) 友だちとの関係双生児の対の相手が, 親友の役割りを果たしてしまうことから, 双生児の友だち関係は一般児の場合に比べ発展しにくいのではないか, という予想をもつていた。結果は予想どおりで, 双生児は友だちに依存することが少なく, かつまた友だちそのものを求めることが弱いようであつた。相手に強く依存しているときにはとくにこの傾向が著しい。(3) 双生児の自主的傾向双生児の対の相手の存在が双生児の自主的傾向の発達を妨げてしまうごとがあるのではないか, という予想も, ほぼ支持された。すなわち, 一般児にくらべ双生児, しかも相手とのむすびつきが強い双生児ほど, 自分で決める回数が少なく, 他人の決定に従うことが多いことが見出された。第I報 (三木安正ほか, 1963) にも述べたように, われわれは対人関係の発達は, 依存から自立へとすすむという従来の考え方に加えて, その過程として, 依存性の発達をとおしての自立ということを考えてきたわけである。すなわち, 人間は, 赤ん坊時代の, まつたく依存している状態から, 成長するにつれて自文性を獲得していくのであるが, それは, 依存傾向がしだいに禁止されるというのではなく, 依存のしかたに変化がおきて依存の質が変つていくというプロセスをたどつていくものと考えているのである。従来, 自立性は自分の意志を貫きとおせること, 自分ひとりでものごとを処理できること, ひとりでいられること, などというその最終的な現象面が強調されてきた (たとえばHeathers, 1955)。そのために, ひとりでおくことや依存を禁止することが自立性の確立のために有益である, と考えられていたようである。けれどもわれわれは, 自立性とはいろいろなものにじようずに依存し, しつかりした依存構造のうえにたつた自己の確立であるという見方が必要であり, かつまたこのような見方こそが, 教育の場において有効であると考えている。すなわち, 特定の対象への中心化から脱して, さまざまなものに依存しているという状態が自立性の発達する可能性を与えると考えているわけである。この点に関連して, 今回の研究により示唆されたことを次に述べよう。(1) 依存の対象・位置 依存の対象となるものは, それぞれ独自の機能を果たしていると考えられる。IIIでみたように, 双生児も一般児も, 親との関係では差がみられなかつた。双生児は, 相互の結びつきの強い, 同性で同年令の相手を持つているにもかかわらず, そのことによつて親への依存は, ほとんど影響をうけてはいなかつた。親は年令も違うし役割りもちがい, とうてい対の相手ではかわることのできぬ存在なのであろう。3. 3. でも述べたように, 双生児はたしかに対の相手になんでも話し相談するが, 親に相談しなくてはならぬ領域 (たとえば, 進路の決定) も多いことからも, 親が果たしている機能は, 相手のそれとはまた別のものであることがうかがわれよう。もし, 依存構造というものを仮定するならば, その構造の中に親のしめる位置が分化してあり, 他のもの (この場合には, 双生児の対の相手) によつては代用されにくいということが考えられよう。これとは異なり, 依存の対象として比較的よく似た機能をはたしている者相互においては,“代用される”という現象が十分生じうるであろう。事実このことは3. 2., 3. 3. にも示されている。第1に双生児では, 友だちとのむすびつきが一般児よりも弱いということがそれである。そして, さらに3. 3. で分析したように双生児の相手へのむすびつきの強い場合は, 友だちに相談することが少なく, 反対にむすびつきの弱い場合には, 友だちとのむすびつきが強くなつている。みかたをかえれば, 友だちとのむすびつきが強まるにつれて, 相手へのむすびつきが弱まるということである。これは双生児の片方は, 他方に対して友だちの役割り, またはそれ以上のものを果たしてしまうということにもとつくものであろう。友だち-そのほとんどが同年令 (同学年) で同性と考えられる-の機能は, 同年令で同性である対の相手がいつも身近にいるということで, すでにお互いの間で果たされてしまつていて, あらためてわざわざ他に求める必要がおきないのだ, という解釈が妥当のように思われる。“代用される”という点については, 同じく3. 2., 3. 3. で明らかになつたもうひとつの証拠が注目される。それは, 双生児と他のきようだいとの関係は, 友だちの場合にくらべて, 一般児とそのきようだいとの関係にかなり近い, ということである。今回の研究では, 年令の隔たりについての資料がないので, はつきりはつかめないが, 双生児の相手以外のきようだいとの関係は, 年令の隔たりが大きければそれだけ一般児のきようだいとの関係に似てくると予想される。つまり, 依存構造のなかで, 同性で同年令である友人の場所には, 対の相手がおさまつているのだが, 年令のちがうきようだいの位置は, 友だちの場合とはちがつて, 相手では代用されにくい。依存構造の中には, それぞれ質のちがう対象が, おのおのの位置を占めているのだが, 双生児の場合には対の相手がいるため, 相手とよく似た質のものが, すなわち, 友だちや年令の近いきようだいの必要度が小さくなつているのではないだろうか。とくに相手との結びつきが強いときには, この傾向が著しくなるのであろう。(2) 依存の対象の数と距離依存の対象は, 成長するにつれて, 増えていく。親, 教師, きようだい, 友だち, 他人……という具合に増えていくことが知られている。そして, 対象は数が増えると同時に, 身近なものから, 遠い存在のものへと, あるいは現実的なものから抽象的なものへと, その範囲が拡がり, その距離が遠くなる。つまり, 依存の対象は, 徐々にその数と距離とを増したものまでを含めることができるようになつていく。このようなプロセスで, 依存性が発達していくにつれて自立性が獲得される。すなわち, 多くのものに依存している状態は, いいかえればある特定の対象に中心化することがない状態である。したがつて, ある対象によつて行動が左右されてしまう, ということは, 少なくなる。他人に左右されることの少ない, 行動の柔軟性と均衡とを持つことができるのである。このことが, 自立性の発達する前提条件だと考えているわけである。このように考えていくと, 成長のプロセスにおいて, 依存の対象として, 友だちを必要とすることの少ない双生児に, 問題がないとはいえないであろう。双生児は一般に結びつきが強い。われわれが, 幼児双生児について行なつた積木あそびの観察 (久原恵子ほか, 1963) では以心伝心型とよばざるをえないコミュニケーションが多かつたし, また今回の面接においては, 「相手に話していると, 自分に話している感じがする」(中1, 女子) と0いう発言があつたほど, 一体感を持つことが多いようである。双生児においては, ふたりでありながら, ひとりのような感じのする対の相手が, 全然ちがう個体であり, しかも, 全然ちがうものを持つているはずの友だちの役割りまで果たしてしまうことになる。このことは, 次の2点で重要である。ひとつには, このために特定の, 対象への中心化に伴なうマイナスがいつそう大きくなるであろう。中心化される対象が自分といろいろな点で異なつているであろう「親友」などの場合にくらべ, 双生児の中心化する相手は, ある意味では自分自身にほかならない。第2に, このためにこそ, 中心化していることの不都合さが意識されず, 相手に対する依存がいつまでも強いままで, 脱中心化が生じにくい。つまり, 対の相手に強く依存している双生児は, 依存の発達のステツプを踏みはずしてしまうことになりかねない。この点について, われわれは, さらに別の面から別の方法でアプローチするつもりであるが, 3. 2., 3. 3. に述べた, 双生児の自主的傾向の未発達は問題の一端を示しているのではないであろうか。
著者
越中 康治
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.219-230, 2007-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
4

本研究では, 社会的領域理論の観点から, 攻撃行動に対する幼児の善悪判断に及ぼす社会的文脈の影響について, 実験的に検討を行った。研究1では, 幼児が, 報復的公正の問題に理解を示すかについて検討を行った。幼児に, 被害の回避を目的とした攻撃と復讐を目的とした攻撃に対する善悪判断を求めた。結果として, 幼児は, 被害の回避という直接的な利益をもたらす攻撃よりも, 何ら直接的な利益をもたらすことのない復讐を目的とした攻撃を許容する傾向にあった。幼児でも, 報復的公正の問題に理解を示す可能性が示唆された。研究2及び3では, 擁護及び制裁を目的とした攻撃に対する善悪判断が, 道徳と慣習のいずれの思考によるのかを検討した。結果として, 幼児は, 他者の福祉の問題よりも, 権威者である保育者の反応を重視して, 攻撃の善悪を判断することが明らかとなった。しかしながら, 年長児の中には, 他者の福祉の問題を重視する者も少数ながらいた。児童期以降, 慣習領域の思考から道徳領域の思考へと, 発達的な変化が認められる可能性が示唆された。
著者
三木 安正 木村 幸子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-10,53, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
被引用文献数
1
著者
溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.62-70, 1997-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

Recently an idiographic approach into a nomothetic method has been the eyes of the world. Higgins, E. T. & Endo. Y. are quite famous for stressing the significance of this approach, though Higgins' approach is a little different from Endo's: the former is seen as an approach that a person represents idiographic points spontaneously while the latter is seen as an approach having a person select his own idiographic points in some items given by a researcher. The former is called “inner frame as an idiographic approach” and the latter is called “outer frame as an idiographic approach.” The purpose of this study is to examine the relationship between inner frame and outer frame as the base of factors regulating self-esteem or self-evaluation. At the results, both high-self-esteem group and low-self-esteem group can select many regulating factors through outer frame and are also easy to represent them through inner frame. Furthermore, regulating factors in ambivalent self-evaluations are also examined, and the relationship between inner frame and outer frame is eventually better clarified.
著者
中村 晃 神藤 貴昭 田口 真奈 西森 年寿 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.491-500, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では, 大学教員初任者がもつ教育に対する不安について検討し, さらにこのような不安と同時に周囲からのサポートについても考慮し, これらがどのように仕事に対する満足感と関係するかを検討することを目的とした。そのため, まず教育不安尺度を作成し, 次に教育不安が周囲からのサポート, および職務満足感とどのような関係にあるかを質問紙により検討した。その結果, 教育不安尺度では因子分析により「教育方法に関する不安」「学生に関する不安」「教育システムに関する不安」の3因子が見出された。また教育不安と職場におけるサポート, および職務内容満足感との関係を検討した結果, 教育に関する不安が高い場合, 先輩教員のサポートが満足感を上げる要因になること, および教育システムに関する不安が高い場合, 同世代教員によるサポートが少ないと満足感が低くなることが示唆された。これらのことから, 特に不安の高い教員に対しては, 職場のサポートが仕事の満足感を上げるうえで重要であると考えられる。