著者
榎本 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.180-190, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
27 14

本研究は, 青年期の友人関係の発達的な変化を明らかにすることが目的である。青年期の友人関係を友人との「活動的側面」と友人に対する「感情的側面」の2側面から捉え, これらの関連とそれぞれの発達的な変化を質問紙を用いて検討した。対象者は中学生 (326名), 高校生 (335名), 大学生 (247名) の計 908名であった。因子分析の結果, 活動的側面については4因子 (「相互理解活動」, 「親密確認活動」, 「共有活動」, 「閉鎖的活動」) が見いだされた。発達的変化としては, 男子は友人と遊ぶ関係の「共有活動」からお互いを尊重する「相互理解活動」へと変化し, 女子は友人との類似性に重点をおいた「親密確認活動」から他者を入れない絆を持つ「閉鎖的活動」へと変化し, その後「相互理解活動」へ変化した。感情的側面については, 因子分析から5因子 (「信頼・安定」, 「不安・懸念」, 「独立」, 「ライバル意識」, 「葛藤」) が見出された。また, 発達的変化は, あまり見られなかった。2側面の関連については, どの活動的側面も感情的側面の「信頼・安定」と関連しており, 親しい友人とは信頼し安定した感情で友人関係を築いていることがわかった。また, 活動的側面の「親密確認活動」は主に感情的側面の「不安・懸念」と関連しており, 「相互理解活動」は「独立」と関連していた。
著者
落合 良行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.233-238, 1982-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
小野田 亮介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.185-200, 2019

<p> 自分の意見を分かりやすく説得的に文章化する能力は,学校教育での活動(e.g., 作文,学級新聞,小論文,レポート,論文などの執筆)のみならず,社会生活(e.g., 意見書や要望書の執筆,企画の提案から書面での交渉)を営む上でも重要になる。したがって,学校教育を通した意見文産出能力の育成は,学校教育以降を見据えた長期的な視点のもとで計画され,実行されるべきだといえる。本論文では,学校教育における意見文産出指導について「誰に,何を,どう書くか」という3つの観点から検討した。具体的には,それぞれの観点を「誰に:読み手意識」,「何を:理由想定」,「どう:意見文スキーマと産出方略」といったキーワードで捉え,(1)観点ごとに関連する先行研究を概観し,(2)学校教育での指導で課題となりうる点を指摘するとともに,(3)それらの課題に対応する指導方法について提案した。最後に,全体の議論をふまえて今後の意見文産出研究,および意見文産出指導の展開について考察した。</p>
著者
小林 朋子 櫻田 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.430-442, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は, 災害を体験した中学生が災害直後から1ヶ月の間にどのようなことを感じ, 考えていたのかを明らかにし, その心理的な変化のモデルを生成することである。2004年の新潟県中越地震を経験した中学生の震災後の作文を, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果, 56個の概念, そして32個のカテゴリー, さらに5個のカテゴリー・グループが抽出された。災害後に, 家族や友人の安否がわかることで安心感が生まれ, 特に学校で友人に会えたことによって不安が解消されていったことがわかったことから, 学校再開がこころのケアにおいて非常に重要であると考えられた。また, 周囲の状況を冷静に捉え, 「自分の方がまだましだ」と考え対処しようとしたり, 自分だけではなく地域全体が早く復興できるよう願うなど, 自分だけの視点に捉われずに状況を把握していた。そして支援を受けるだけではなく, 「みんなの役に立ちたい」という思いを持っていたことが示された。
著者
堀口 康太 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-114, 2014-06-30 (Released:2015-03-27)
参考文献数
50
被引用文献数
5 2

本研究は, 自己決定理論の枠組を参考にし, 老年期の発達課題を考慮した社会的活動参加動機づけ尺度を作成することを目的として実施された。都市部において社会的活動に参加する60歳から89歳まで424名を対象とした質問紙調査を実施し, 男女278名(男性72名, 女性195名, 不明11名 ; M=72.0歳, SD=5.9)を有効回答として分析を実施した。予備調査によって抽出された暫定版37項目を用いて因子分析を実施し, 最終的に「自己成長の追求」, 「自己の発揮志向」, 「喪失の制御」, 「他者への同調」, 「周囲への貢献希求」の5因子22項目によって構成される社会的活動参加動機づけ尺度が作成された。その後, 作成された尺度を構成している下位尺度について理論上想定された動機づけとの対応・相違が検討され, 尺度の妥当性・信頼性が確認された。本研究で作成された尺度によって, 老年期特有の動機づけを測定することが可能となり, 老年期における社会的活動への参加に関する研究が発展する可能性が示唆された。
著者
森 一夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-25, 1976-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

物質観の発達をとらえるにあたって, まず幼児の物質観は素朴実在論的物質観であると措定する。これは, 外界に実在する物質を知覚されるとおりのままの固まり (mass) としてみて, 物質の内的構造の把握にまでは至らないから,(1) 物質の表面的属性だけで判断するために重さの概念は見かけの大きさに従属していて, したがって重量と体積とは概念的に未分化である。(2) 自らの意識に反映されたとおりのままの物質としてとらえているため, 欲求の度合に応じて物質の大きさの知覚に差異が生じる。このような基本的仮説に基づいて実験を行ったところ, 次のような知見が得られた。1. 3才児と4才児では大きい球を重いと判断する傾向が認められる。つまり幼児に関する限り, 視覚が介在すると反Charpentier効果ともいうべき傾向が認められる。これは幼児の場合, 重量が見かけの体積に依存しそいるため, Charpentier効果に優先してこれと逆の結果が現われたものであろうと考えられる。2. 4・5才児にpositiveな価値をもつ刺激としてビスケットと,偽ビスケットの2次元的形態の大きさを評価させたところ, 後者よりも前者の方を大きく知覚している。また4・5才児ともビスケットを過大視している。さらに4・5才児に同一標本を, 一方ではpositiveな刺激として「チョコレート」と教示し, 他方のグループではnegativeな刺激として「苦い薬」と教示して3次元的形態の大きさを評価させたところ, 前者の方が後者の場合よりも大きく知覚している。また, 前者の場合には刺激体を過大視しているが, 5才児では後者の場合を実物よりも過小視している。3. 「大きい物体は重く, 小さい物体は軽い」と判断している4才児が, 体積と重量との量的矛盾関係, すなわち「大きいが軽く, 小さいが重い」ことを知覚的体験して, 「大きい」「小さい」「重い」「軽い」という言語でこれを表現できた場合, もはや見かけの体積 (かさ) に惑わされずにかなり正確に重さの弁別が可能になる。そして, このとき重さの弁別に際してCharpentier効果が認められる。
著者
外山 美樹 湯 立 長峯 聖人 黒住 嶺 三和 秀平 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.287-299, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
参考文献数
43
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,学習性無力感パラダイムを用いて,実験参加者にストレスフルな失敗経験を与えた後の,制御焦点と課題パフォーマンスの関連を検討することであった。促進焦点と防止焦点で基本的な認知能力のパフォーマンスには差はないが,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点のパフォーマンスが優位になるという仮説を立てて検証を行った。実験参加者は大学生57名であった。本研究の結果より,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも,パフォーマンスが高いことが示され,仮説が支持された。また,解決可能な課題と解決不可能な課題が混在している課題においては,防止焦点のほうが促進焦点よりも,パフォーマンスが高い傾向にあることが明らかとなった。本研究より,文脈によって促進焦点と防止焦点のどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示された。促進焦点は,挫折や失敗から回復する“レジリエンス”が優れており,一方で,防止焦点は,解決不可能な課題が混在した文脈での課題パフォーマンスが優れていることが示唆された。
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.234, 2020 (Released:2020-11-03)

下記論文は,理事会のもとに設置されたワーキンググループにおいて,研究の手続きに関し,重要な先行研究が引用されておらず,結果的に他者のアイディアを無断で流用したものに該当すると判断されました。著者に説明を求めたところ,先行研究の引用が欠落していたことを認め,論文を取り下げたいとの申し出がありました。理事会は,著者の他の論文では当該先行研究が正しく引用されていることから,下記論文での引用の欠落が不注意によるものと判断し,著者からの論文取り下げの申し出を承認することとしました。 記 吉野 巌・島貫 靜(2019). 小学校算数授業におけるメタ認知育成の試み ――「頭の中の先生」としてのメタ認知の意識づけとメタ認知訓練の効果―― 教育心理学研究, 67, 343-356.