著者
本城 久司 北小路 博司 川喜田 健司 斎藤 雅人 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱 荒巻 駿三
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.665-669, 1998-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

(目的) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなった尿失禁に対する鍼治療の有用性について検討した.(対象と方法) 尿失禁を有する慢性期脊髄損傷患者の男性8名に鍼治療を施行した. 年齢は20~33歳 (平均27歳) であった. 損傷レベルは頚髄損傷4例・胸髄損傷4例であった. 全例ともウロダイナミクス検査により無抑制収縮が証明され, 排尿筋過反射と診断された. 鍼治療はステンレスディスポーザブル鍼 (直径0.3mm, 長さ60mm) を左右の第3後仙骨孔部 (BL-33) に刺入し, 10分間の手による半回旋刺激とした. 鍼治療は週1回の間隔で4回施行した. 鍼治療の効果について, ウロダイナミクス検査を治療直前, 初回治療直後および4回治療終了1週後に行って評価し, 臨床症状の変化は治療前と4回治療終了1週後で評価した.(結果) 鍼治療による副用はみられなかった. 8例のうち尿失禁が消失したものは3例であり, 他の3例に改善がみられた. 平均膀胱容量は治療前42.3±37.9mlであったのが, 治療終了1週後148.1±101.2mlと有意 (p<0. 05) に増大したが, 平均最大膀胱内圧には有意な変化はみられなかった.(結論) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなう尿失禁に対して鍼治療は有用であった.
著者
奥村 昌央 森井 章裕 桐山 正人
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.138-143, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
10

腹腔鏡下子宮全摘出術による医原性尿管損傷の3例を経験したので報告する.症例1は50歳女性で近医にて腹腔鏡下子宮全摘出術を施行され術後採血で腎機能低下と腹部エコーにて左水腎症を認めたため翌日,当科へ紹介された.CTで左水腎症を認めRPでは左尿管口から2cmの部位で尿管カテーテルの挿入が困難であり,産婦人科手術の2日後に開腹手術とした.左尿管下端部で尿管が結紮されており挫滅した部分を切除し尿管端々吻合術を施行した.症例2は38歳女性で近医にて腹腔鏡下子宮全摘出術を施行され,術後に腹部膨満感と下痢が生じた.術後9日目の採血で腎機能の低下と腹部エコーで左水腎症を認め,翌日当科へ紹介された.CTで左水腎症と腹水を認め,RPでは造影剤の尿管外への溢流を認めた.左尿管損傷による腹腔内尿溢流と診断し開腹し左尿管膀胱新吻合術を行った.症例3は45歳女性で近医にて腹腔鏡下子宮全摘出術を施行され,術後採血で腎機能低下と腹部エコーにて左水腎症を認め術後5日目に当科へ紹介された.CTで左水腎症と左尿管下部での尿管閉塞を認め,腹腔鏡と膀胱鏡,X線透視を併用し,同日手術を行った.腹腔鏡で腹腔内を観察すると左尿管下部が結紮糸により引きつれ屈曲しており,腹腔鏡下で結紮糸を切断すると尿管の屈曲が解除され尿管ステントが留置できた.1カ月後,尿管ステントを抜去し左水腎症は改善した.
著者
黒瀬 浩文 植田 浩介 大西 怜 小笠原 尚之 築井 克聡 陶山 俊輔 西原 聖顕 名切 信 松尾 光哲 末金 茂高 井川 掌
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.251-255, 2016-10-20 (Released:2017-10-24)
参考文献数
10

後腎性腺腫(metanephric adenoma)は極めて稀な腎良性腫瘍であり,画像診断では悪性腫瘍との鑑別が困難である.今回我々は,2例の後腎性腺腫を経験したので報告する.症例1は57歳,女性.検診時の腹部超音波検査にて右腎腫瘍を指摘され当科受診.造影CTにて右腎上極に造影早期相で造影増強効果は乏しく,経時的に不均一な造影効果を示す26mm大の腫瘤性病変を認めた.右腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下右腎部分切除術を施行した.症例2は79歳,女性.両側乳癌術後の腹部CTにて偶発的に左腎腫瘍を指摘された.左腎中極腹側に不均一な造影効果を示す24mm大の腫瘤性病変を認めた.左腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下左腎摘除術を施行した.両症例の病理組織診断は共に後腎性腺腫であった.これまでの後腎性腺腫に対する報告においては,術前腎細胞癌との鑑別が困難であり外科的切除が選択されていることが多い.画像検査にて本疾患などの良性腫瘍も疑われる際には,術前の腎腫瘍生検を含めた比較的低侵襲な診断ならびに術式を考慮することが肝要と思われる.
著者
郡 健二郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.552-562, 1994-04-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
128
被引用文献数
2
著者
北風 宏明 松下 慎 岡田 紘一 湊 のり子 森 直樹 吉岡 俊昭
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.204-209, 2017-10-20 (Released:2018-10-18)
参考文献数
15

66歳男性.約3カ月前から頻尿と下腹部違和感を自覚したため2015年7月に当科を受診した.膀胱鏡で左側壁~前壁に隆起性病変を認めたため経尿道的切除を施行した.病理結果は印環細胞癌であり精査の結果膀胱原発印環細胞癌,cT3N0M0と診断し膀胱全摘術の方針とした.しかし骨盤壁との癒着が強く膀胱全摘は断念,両側尿管皮膚瘻を造設した.右骨盤壁の生検で癌の浸潤を認めたためpT4N0M0と診断した.術後,2015年8月からTS-1+シスプラチン(CDDP)による化学療法を12コース,16カ月間施行した.投与開始後,腫瘍マーカーは8カ月間低下傾向にあったが,8カ月以降は経時的な上昇を認めた.CT・MRIでは膀胱内腫瘍の増大や遠隔転移・リンパ節転移を疑う所見を認めなかったため,画像上は16カ月間SDであった.化学療法施行中に大きな副作用は認めず,2017年1月現時点では明らかな再発なく経過している.
著者
金子 正大 南川 哲寛 谷口 英史 山田 恭弘 中村 潤 沖原 宏治 中内 博夫
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.44-47, 2016-01-15 (Released:2017-01-27)
参考文献数
10

精巣鞘膜悪性中皮腫の一例を報告する.93歳,男性.主訴は有痛性の右陰嚢腫大.石綿暴露歴なし.超音波検査およびMRI検査にて右陰嚢水腫の診断.陰嚢水穿刺細胞診にて,中皮細胞を認めるも異型性に乏しく明らかな悪性所見を認めず,classIIIaであった.右陰嚢水腫根治術を施行したところ,切除標本の組織診断にて上皮型の精巣鞘膜悪性中皮腫を認め,追加治療としてdartos筋膜を全周性に付けて右高位精巣摘除術を施行した.術後6カ月時点で再発を認めない.精巣鞘膜悪性中皮腫は稀な疾患で,術前の正診率は低い.急速増大する血性の陰嚢水腫や精巣固有鞘膜から生じた腫瘤を認めた際は悪性中皮腫の可能性を考慮すべきである.予後不良の疾患であり,二期的手術となっても高位精巣摘除術を行う必要がある.
著者
工藤 真哉 対馬 伸晃 澤田 善章 斎藤 文匡 本村 文一 高島 徹 古川 利有 鈴木 唯司 黒滝 日出一 増森 二良 渡辺 耕平 稲積 秀一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1594-1602, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

1983年10月より1989年6月までの間に弘前大学泌尿器科で膀胱移行上皮癌と診断定れ, BCG膀胱内注入療法をうけた120症例における副作用をまとめるとともに, 重篤な合併症とBCG投与との関連性について検討を加えた. 局所的には, 頻尿, 排尿痛などの膀胱刺激症状が102例 (85.0%), 血膿尿が46例 (38.3%) だった. 全身的には, 発熱が43例 (35.8%), 血清GOT, GPT値異常が9例 (7.5%), 全身倦怠感が3例 (2.5%) だった. 重篤な合併症としては, 膀胱容量が50ml以下の高度萎縮膀胱が4例に, 難治性関節炎が2例に, 間質性肺炎が1例に認められた. 高度萎縮膀胱の4例ともに, BCG膀注前後に膀胱部分切除術を施行定れており, 3例はBCG膀注回数が10回以上であった. 低膀胱容量状態に加え, BCG膀注回数が多いことが萎縮膀胱の誘因となることが推. 定れた. また, 4例中2例は非可逆性であり, 組織学的には, 筋層の線維化がより高度であったが, 結核性変化は認めず, 可逆性か否かは線維化の程度により決まると思われた. 難治性関節炎の2例ともに, 関節穿刺液の結核菌培養は陰性で, 非特異的炎症反応だった. 重篤な間質性肺炎の1例は, 気管支鏡生検組織において, 肺胞中隔の著明な線維化とリンパ球浸潤を認めたが, 結核性変化は認めず, BCGに対する過敏性反応が病因であると考えられた.