著者
越智 敦彦 直井 牧人 江夏 徳寿 藤崎 明 船田 哲 鈴木 康一郎 志賀 直樹 太田 智則 久慈 弘士 細川 直登 岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.644-648, 2011 (Released:2012-08-09)
参考文献数
7

連鎖球菌感染の内,特にA群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎は短時間に敗血症性ショック,多臓器不全から死に至る可能性がある重症感染疾患であり,救命には早期かつ適切な治療(壊死組織のデブリードマンと抗菌薬加療)が要求される.デブリードマンされた組織の鏡検にて連鎖球菌を認めた場合,それがA群溶血性連鎖球菌であるかどうかは,培養結果を待つことなく咽頭用の迅速A群溶血性連鎖球菌抗原検出キット(ストレップA)を用いることで予想することができる. 今回我々は,この検査キットを使用することで早期にA群溶血性連鎖球菌感染症と判断し得た,61歳男性の陰部に発症した壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)の1例を経験した.その起炎菌の早期同定が,適切な外科的処置と抗菌薬の選択を可能とし,救命に繋がったと考えられたため報告する.
著者
上平 修 小野 佳成 佐橋 正文 山田 伸 大島 伸一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1095-1098, 1993-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1

薬物治療に反応しない難治性非細菌性慢性前立腺炎患者13例に対して, Biodan 社製“プロスタサーマー”を用いて経直腸的温熱療法を行った.治療は外来通院にて, 1回の治療で前立腺を42℃~43℃に加温, これを60分間行い, 週2回の割合で合計6回施行した.3ヵ月経過観察できた11例のうち, 6例 (55%) に自覚症状の消失, または改善を認めた. 9例中4例 (44%) にEPS中の白血球数の正常化を認めたが, 自覚症状の推移と白血球数の正常化の間には明らかな相関を認めなかった. 治療中とくに合併症を認めなかった.慢性前立腺炎に対し, なぜこの治療が効果があるのかは必ずしも解明されていないが, 一部の症例において効果があることは事実であり, 温熱療法は難治性慢性前立腺炎の新しい治療法となりうる可能性が示唆された.
著者
大岡 均至
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.177-183, 2016

<p> (目的) 症状の安定した女性間質性膀胱炎症例に対するdietary manipulation(以下DM)の効果につき検討する.</p><p> (対象と方法) 当院で加療中の女性間質性膀胱炎症例20例を対象とした.当院栄養管理室と連携し,間質性膀胱炎食を作成(熱量;1,500kcal,タンパク質;65g,脂質;40g,炭水化物;220g,水分1,000ml,塩分;7g),この栄養量に準拠して,個々の症例に最適な以下の食品を可及的低減する食事メニューを提供し,3カ月後のO'Leary & Santの症状スコア・問題スコア(以下OSSI,OSPI),尿意切迫感(以下U),膀胱痛・骨盤痛(以下P),QOL indexの変化を検討した.</p><p>除去した食品;トマト製品,大豆製品,香辛料,カリウムの豊富な食品,柑橘類,酸味の強いものなど</p><p> (結果) OSSI,OSPIは各々11.7→10.1(p<0.0001),10.7→8.8(p=0.01)と改善が認められた.Uは6.4→5.2(p<0.0001),Pは6.5→4.8(p<0.0001),QOL indexも5.1→3.9(p<0.0001)と有意な改善が認められた.</p><p> (結論) 食事に関する注意点等を頻回に診察時に説明していたにも関わらず,系統的なDMによって症状の改善が認められた.他の治療法には変更を加えず非侵襲的な本治療法は試みられるべきであろう.</p>
著者
小羽田 悠貴 武本 健士郎 郷力 昭宏 梶原 充
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.28-31, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
6

Trousseau症候群は,悪性腫瘍に伴う血液凝固異常により,血栓塞栓症を来す病態である.今回われわれは,内分泌療法が奏効したTrousseau症候群を合併した進行性前立腺癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳男性,平衡障害,背部痛を主訴に近医脳神経外科受診,頭部MRIにて多発性脳梗塞と診断された.しかし,CTにて傍大動脈領域に多発リンパ節腫脹を認めたため,当院総合診療内科紹介加療となった.抗凝固療法としてヘパリンNa持続静注を開始し,Trousseau症候群疑いもあり並行して原疾患となる悪性腫瘍の検索をした.結果,PSA値の著明な上昇を認め,原疾患として進行性前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した結果,前立腺癌と診断し,Combined Androgen Blockade(CAB)治療を開始した.CAB治療が著効し,PSA値の低下,腫大リンパ節の縮小を認めた.現在ヘパリンCa皮下注とCAB治療継続しているが,脳梗塞再発なく,PSA低値安定し経過良好である.Trousseau症候群は原疾患の性質上予後不良とされているが,本症例のごとく前立腺癌を契機に発症した場合,内分泌療法が概して効果的であるため,抗凝固療法にて急性期の血液凝固異常による全身性血栓症を首尾よく乗り切れば,良好な経過を示すことが期待されると考える.
著者
森山 真吾 黄 鼎文 Kriengkrai Sittidilokratna Bahiyah Abdullah 常盤 紫野 宮原 夏子 清水 幸子 野村 昌良
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.137-144, 2017-07-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
34
被引用文献数
4

(目的) 骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨腟固定術(Laparoscopic sacrocolpopexy:LSC)について,当院における安全性および治療効果について検討した. (対象と方法) 2013年1月から2016年3月までに骨盤臓器脱に対してLSCを行った505例を対象とした.全例に前後2枚のポリプロピレンメッシュを使用し,前後腟壁を遠位端まで剥離,メッシュ固定する術式で行った.安全性を手術時間,出血量および周術期合併症,治療効果を解剖学的再発率(POP-Q stage≧II)および再手術率で評価した.また,再発率に関わるリスク因子を多変量解析を用いて検討した. (結果) 手術時間,出血量の平均はそれぞれ236分,27.2mlであった.また,周術期合併症を13例(2.6%)に認め,Clavien grade IIIa以上の術後合併症は5例(1.0%)であった.観察期間中央値12カ月において,解剖学的再発を40例(8.0%)に認め,stage≧IIIは6例(1.2%),再手術を5例(1.0%)に施行した.多変量解析では術前POP-Q stage IVが解剖学的再発の独立したリスク因子であった. (結論) LSCは,比較的合併症が少なく,かつ,stage III以上の再発や再手術を要する症例も少ないことから,安全で治療効果の高い術式と考えられた.
著者
髙橋 聡 和田 耕一郎 公文 裕巳 増田 均 鈴木 康之 横山 修 本間 之夫 武田 正之
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.62-65, 2014-04-20 (Released:2015-06-13)
参考文献数
10

NIH慢性前立腺炎問診票は,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の症状の程度や治療の評価に用いられる症状スコアである.我が国では,日本泌尿器科学会が公認したNIH慢性前立腺炎問診票日本語版が確立されていないことから,日本泌尿器科学会では(排尿機能・神経泌尿器科)専門部会長の武田正之を委員長としてNIH慢性前立腺炎問診票日本語版作成委員会を立ち上げ検討を行った.検討の結果,過去に発表されたNIH慢性前立腺炎問診票日本語版の案と日本語版International Prostatic Symptom Score(IPSS)から,NIH慢性前立腺炎問診票日本語版を作成した.今後の臨床研究において,このNIH慢性前立腺炎問診票日本語版が活用されることを強く希望する.
著者
川西 泰夫 木村 和哲 入口 弘英 宮本 忠幸 田村 雅人 沼田 明 湯浅 誠 香川 征
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1655-1661, 1992-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

陰茎海綿体内にプロスタグランディンE1を直接投与すると勃起が発現し, この薬剤による勃起反応は検査, 治療の目的で広く臨床応用されている. また, 末梢循環不全の治療薬として使用されている経口のプロスタグランディンE1誘導体であるリマプロストは, 陰茎を含む末梢の血流を増加させ, 皮膚温度を上昇させる作用がある. 今回, 51例のインポテンス患者を対象にリマプロストの勃起機能に対する効果を double blind cross over 法で評価した.リマプロストの投与により19.5%の有効率を得た. 全例を対象とした有効性には著しい差はなかったが, 心因性インポテンスの症例においては自覚症状の改善に有意な差が認められ, 有効な治療薬であると考えられた. 副作用は顔面紅潮や消化管の機能亢進による腹部膨満感が見られた.