著者
小川 貢平 阪口 和滋 岡 優 永本 将一 黒澤 和宏 浦上 慎司 岡根谷 利一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.41-46, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

症例は59歳女性.2015年3月肉眼的血尿,右腰部痛を主訴に当科を受診した.腹部CTにて両側腎盂に長径右18mm大,左15mm大の結石を認めた.並存疾患として潰瘍性大腸炎があり,サラゾスルファピリジン(SASP)を約30年間内服していた.尿検査所見は酸性尿で,尿酸結晶を認め,腹部単純X線では結石陰影を認めなかったことから尿酸結石を疑い,尿アルカリ化薬と尿酸生成抑制薬の投与を開始した.しかし,治療開始3カ月後の腹部CTにて,両側の腎結石は右25mm大,左24mm大と増大傾向を示し,右腰部痛増悪を認めたため,2015年9月右腎結石に対し,経尿道的砕石術(TUL)を行った.結石は橙色で柔らかく,約半分を砕石し結石分析に提出したところ,尿酸結石ではなく薬剤性結石が疑われた.結石と共にSASP錠を提出し,赤外分光分析法にて照合したところ結石と類似していたため,SASPによる薬剤性尿路結石と診断した.治療として潰瘍性大腸炎治療薬をSASPからメサラジンに変更し,尿アルカリ化薬の増量を行ったところ,3カ月後の腹部CTで両側腎結石消失を認めた.その後,結石予防薬の投与なしで,結石再発は認めていない.
著者
星 宣次 折笠 精一 吉川 和行 鈴木 謙一 石戸谷 滋人 伊藤 明宏 近藤 丘 今井 克忠 木崎 徳 鈴木 康義 加藤 正和
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.46-52, 1997-01-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
20

(背景と目的) 腎癌肺転移切除例を検討し, その有用性と手術適応を明らかにする.(対象と方法) 1981年より1994年末までに腎癌肺転移の切除術を行った17例 (男性14例, 女性3例) を対象とした. 肺転移手術時の年齢は, 45歳から73歳で平均年齢61歳. 原発巣術後に肺転移が出現したのが11例, 6例は腎癌診断時肺転移があり, 3例は肺手術を, 3例は腎摘を先行した. 他臓器転移が4例に見られ, 脳転移摘出, 対側腎転移に対する腎部分切除, 胸壁と肋骨転移部切除, 対側副腎転移の切除がそれぞれ行われた. 肺の片側手術例14例, 両側手術例が3例であり, 12例に肺部分切除が行われ, 5例に肺葉切除術が行われた.(結果) 肺手術後生存期間は10ヵ月から10年9ヵ月で, 肺手術による合併症は認められなかった. 疾患特異的生存率, 無病生存率はそれぞれ5年で55, 48%, 10年で27, 14%であった. 癌なし生存例はすべて10個未満の肺転移例であった.(結論) 腎癌の肺転移切除により長期生存例が得られ, 症例によっては大変有用であった. 肺転移数が10個未満の症例に予後良好例が認められた.
著者
金田 真実 伊藤 秀明 堀江 直世 多賀 峰克 渡邉 望 大越 忠和 今村 好章 横山 修
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.712-715, 2013-11-20 (Released:2014-12-11)
参考文献数
9

症例1は62歳,女性.腹部CT検査にて左腎腫瘍を指摘され受診した.腎細胞癌を疑い腹腔鏡下左腎部分切除術を施行した.腫瘍は類上皮細胞からなり,類上皮型腎血管筋脂肪腫と診断された.症例2は35歳,女性.背部痛精査のCT検査にて右腎腫瘍を指摘された.腎細胞癌の術前診断のもと,腹腔鏡下右腎摘除術を施行した.免疫組織化学検査にてHMB-45, MelanAなどが陽性で類上皮型腎血管筋脂肪腫と診断された.類上皮型腎血管筋脂肪腫は腎血管筋脂肪腫の一亜型であり,腎細胞癌や他の悪性疾患との鑑別が困難な,比較的稀な疾患である.悪性の経過を辿る例が報告されており,悪性腫瘍と捉えて腎細胞癌と同様の経過観察が必要と考える.
著者
笠井 利則 守山 和道 辻 雅士 上間 健造 桜井 紀嗣
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.538-541, 2001-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

症例は82歳, 女性. 無症候性肉眼的血尿を認め1997年6月3日, 当科を受診した. 膀胱, 後部尿道に多発性乳頭状腫瘍を認め膀胱生検を施行し, 病理所見は移行上皮癌, Grade 2 (TCC, G2) であった. CTで壁外浸潤, 遠隔転移を認めず adriamycin (ADM) 膀胱内注入, 低用量の cisplatin (CDDP) 点滴静注, 膀胱への放射線照射 (計50Gy) を施行した. 腫瘍は著明に縮小し, TUR-Bt. を施行した. 病理所見で膀胱筋層への浸潤は認めなかった. 1998年4月, 不正性器出血が出現し膣壁に多発性乳頭状腫瘍を認めた. 同時に膀胱内にも再発を認めTUR-Bt. を施行した. 膣粘膜生検の結果は, TCC, G2であった. MRI・全層針生検では膀胱から膣への浸潤は認めず膀胱移行上皮癌の膣内播種と診断し, 膣・子宮腔内照射を施行した. 膀胱内再発に対してはBCG膀胱内注入療法を施行している.
著者
池上 雅久 橋本 潔 大西 規夫 井口 正典 際本 宏 栗田 孝
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1781-1783, 1994-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

われわれは矮小陰茎を主訴として来院した48XXYYクラインフェルター症候群の1例を経験した. 症例は21歳の男性で高身長, 肥満型で女性化乳房を認め, 陰茎長は短く, 両側の精巣は発育不良であった. 内分泌学的にLH, FSHの高値, テストステロンの低値をしめした. 染色体分析にて非常にまれな48XXYY Klinefelter Syndrome と診断された. 軽度の知能障害があり, 精神状態が不安定であるということより, 会社を退職していたが, 外来にてプロテスチン処方により, 二次成長に関する変化がみられ, さらに精神状態が安定し, 再就職可能となった.
著者
高橋 正博 堀口 明男 濱田 真輔 神原 太樹 辻田 裕二郎 住友 誠 浅野 友彦 新本 弘
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.636-639, 2012-07-20 (Released:2013-09-03)
参考文献数
11

症例は42歳男性.右陰囊痛にて近医を受診し,精巣上体炎の診断にて抗生物質の投与を受けた.その後,症状増悪する為に,紹介受診となった.超音波検査では,右精巣上極に血流が認められない径4 cm大の低エコー領域を認めた.MRIでは右精巣上極にT2強調画像で高信号,T1強調画像で淡い高信号を呈する病変を認めた.造影にて同部位に局所的な血流障害を認め,区域性精巣梗塞と診断されたため,保存的に経過観察した.陰囊痛は保存的に軽快し,発症3カ月後のMRIでは梗塞巣の縮小を認めた.精巣区域梗塞は稀であり,精巣腫瘍や精巣捻転との鑑別が困難なため,外科的摘除後に診断が確定する例が多い.急性陰囊症におけるMRI検査は不要な外科的治療を回避するのに重要な検査と思われた.
著者
三木 恒治 前田 修 細木 茂 木内 利明 黒田 昌男 宇佐美 道之 古武 敏彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1789-1794, 1992-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

大阪府立成人病センター泌尿器科における stage I 精巣セミノーマの治療成績を検討し, 予防的放射線療法を行わない surveillance の適応について考察した. 1962年から1990年末迄に当科において治療を行った stage I 精巣セミノーマ50例を対象とし, その再発率, 再発部位, 予後などを検討した. 27例は予防的放射線療法を行い (RT群), 1986年以後の23例は予防的放射線療法を行わない surveillance のみとした (S群). RT群では1例 (3.6%) に除睾術後3ヵ月で肺に再発を認め死亡したが, 26例は全例再発なく生存している. 予防的放射線療法による副作用は, 照射時の一時的な食思不振のほかは認めなかった. 一方S群では2例 (8.7%) に除睾術後4ヵ月, 7ヵ月で後腹膜リンパ節に再発を認めたが, 2例とも化学療法にて完治した. 残りの21例は全例再発なく生存している (観察期間14~70ヵ月). 以上より再発率についてはRT群が低く, 肺のみの再発であり, 再発の検索は比較的容易である. しかし, シスプラチンを用いた有効な化学療法により, 予後について両者に差はなく, 十分な再発の検索が可能ならば, 今後 stage I 精巣セミノーマに対する surveillance 法は適応可能といえよう.
著者
小澤 迪喜 窪木 祐弥 末永 信太 石井 達矢 鈴木 仁 土谷 順彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.114-117, 2017-04-20 (Released:2018-04-19)
参考文献数
11

61歳男性,維持透析中.PSA高値のため経直腸的前立腺生検を施行.生検1時間後から肛門部重苦感が出現,7時間後から強い下腹部痛と胆汁様嘔吐が出現.貧血の進行と単純CTで一部腹腔内に達する巨大な後腹膜腔内出血を認め,前立腺生検時の動脈性出血が原因と考えられた.全身状態安定しており輸血と保存的加療にて症状は改善した.
著者
槙山 和秀 中井川 昇 村上 貴之 林 成彦 佐野 太 河原 崇司 関口 善吉 窪田 吉信
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.721-725, 2010 (Released:2012-03-16)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

(目的) 腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)は従来の開腹膀胱全摘除術(ORC)と比較し,周術期にメリットがあるか否か検討した. (対象と方法) 横浜市立大学付属病院で膀胱全摘除術を施行した連続した22例を対象とした.2008年2月から2009年5月に施行したLRC 11例と,2006年10月から2009年4月に施行したORC 11例の周術期成績を比較した. (結果) 平均手術時間はLRC 521分,ORC 428分で有意にLRCが長かった(p=0.00794).平均出血量はLRC 801ml,ORC 2,156mlでLRCが有意に少なかった(p=0.0014).術後食事開始日の平均はLRC 4.6日目,ORC 9.3日目で有意にLRCが早期に食事開始できた(p=0.0142).術後最大C反応性蛋白(CRP)の平均はLRC 10.8mg/dl,ORC 16.6mg/dlで有意にLRCが低かった(p=0.0124).合併症発生率はLRC 27%,ORC 45%で有意な差はなかった(p=0.375).平均郭清リンパ節数はLRC 10.9個,ORC 13.7個で有意な差はなかった(p=0.262). (結論) LRCはORCに比べて,有意に手術時間は長いが,出血量は少なく,食事開始時期が早く,術後CRPのピークは低い.したがって,LRCはより低侵襲であり,術後早期にはメリットのある術式である.
著者
上村 吉穂 福田 護 江川 雅之 小杉 郁子 大竹 裕志
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.633-637, 2011 (Released:2012-08-09)
参考文献数
16

症例は,20歳代の男性.左背部痛を主訴に救急外来を受診.検尿で血尿を指摘され,当科を受診.DIPで左水腎症(grade 2),左腎盂尿管移行部(ureteropelvic junction;UPJ)狭窄,多発左腎結石を指摘.腹部CTでナットクラッカーディスタンスの短縮,腎血管造影検査で左腎高血圧を認め,ナットクラッカー症候群と診断.これらに対し,左腎静脈転位術,左腎盂形成術,左腎盂切石術を一期的に施行.術後経過は良好で,術後2カ月目には,背部痛や血尿は消失.術後3カ月目のDIPで,左水腎症の改善(grade 1),腹部CTでナットクラッカーディスタンスの延長を認めた.術後12カ月が経過し,症状や左水腎症の再燃は認めていない.我々が知る限りでは,ナットクラッカー症候群,UPJ狭窄及び多発腎結石の合併,及びこれらを一期的に手術治療した報告はこれまでにない.
著者
梅本 晋 野口 剛 堤 壮吾 小林 幸太 逢坂 公人 岸田 健
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.160-167, 2019-07-20 (Released:2020-07-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

(目的) がん微小環境によるサイトカイン分泌の結果,末梢血リンパ球数(absolute lymphocyte count:ALC)の減少が起こるとされる.我々は抗癌剤治療を施行した進行性尿路上皮癌症例におけるALCと治療効果,予後との関連性について検討した. (対象と方法) 2011年1月から2018年4月までに,根治手術不能または根治術後再発転移例に対し当院でプラチナ製剤による化学療法を施行した63例を後方視的に検討した. (結果) 観察期間中央値は12.2カ月で,38例(60%)が癌死し,全生存期間の中央値は15.3カ月であった.非奏功群(SD+PD)における平均ALCは,奏功群(CR+PR)よりも有意に低値であった(1,312/μL,1,666/μL,p = 0.004).奏効性予測における至適リンパ球数をROC曲線で検討するとcut-off値は1,460/μLとなり,リンパ球数減少群(ALC <1,460/μL)は非リンパ球数減少群よりも全生存において有意に予後不良であった(p = 0.001).全生存に対する多変量解析では,リンパ球数減少が独立した予後不良因子であった(HR 3.46,p=0.002). (結論) プラチナ製剤による化学療法を施行した進行性尿路上皮癌において,治療開始時のリンパ球数減少は効果不良および予後不良因子であった.
著者
都筑 俊介 三木 淳 森武 潤 木村 章嗣 下村 達也 木村 高弘 岸本 幸一 頴川 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.71-78, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

(目的) 東京慈恵会医科大学附属病院および柏病院におけるT1 high grade膀胱癌の臨床的特徴を検討した. (対象と方法) 2006年1月から2012年12月までにT1 high grade膀胱癌と診断された134例を対象とした.治療経過,再発・進展,再発・進展予測因子,生存率について解析を行った. (結果) 観察期間中央値は31.5カ月.2nd TURは,57例に施行し,2nd TURでの残存は33例,upstagingは4例に認められた.再発率は41.5%,再発に寄与する因子は,初回TURで筋層を含まない,非2nd TURおよび非BCG注入療法の3因子であった.進展率は10.5%,進展に関しては,有意な因子を認めなかった.経過中に膀胱全摘を施行した症例は31例(21.8%)であり,全摘病理T stage別の癌特異生存曲線で非upstaging群(pT2未満)とupstaging群(pT2以上)を比較すると,非upstaging群で有意に生存率が高かった(p=0.0027). (結論) T1 high grade膀胱癌の再発に関して,初回TURで筋層なし,非2nd TUR,非BCG注入療法が重要な予後因子であった.多岐にわたる臨床経過を示すT1 high grade膀胱癌の治療成績向上のためには,再発,進展の予防,適切な膀胱全摘の選択など,今後さらなる検討が必要である.
著者
舟橋 康人 上平 修 春日井 震 木村 恭祐 深津 顕俊 松浦 治
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.580-582, 2007-03-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
5

症例は71歳男性, 頻尿を主訴に当科受診した. PSA8.0ng/mlにて前立腺針生検を施行, 中分化腺癌と診断された. 画像診断にて前立腺部尿道に異所開口する右側完全重複尿管と診断された. 前立腺全摘除術時に尿管尿管吻合を施行した. 術後11ヵ月現在, 水腎症および腫瘍の再発を認めていない. 尿管異所開口を有する前立腺癌に対する前立腺全摘除術に関する報告は稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
三浦 徳宣 井出 健弘 宇田 尚史 野田 輝乙 浅井 聖史 西村 謙一 白戸 玲臣 柳原 豊 宮内 勇貴 菊川 忠彦 丹司 望 横山 雅好
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.79-84, 2014-07-20 (Released:2015-08-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

(目的) 副腎皮質癌は稀な疾患であるが,予後不良で治療に難渋する症例が多い.当科で副腎皮質癌と診断された7例における,臨床病理学的特徴と予後について検討した. (対象と方法) 2002年1月から2012年12月までに診断された7例の副腎皮質癌症例の臨床的背景,原発巣最大径,治療法,転帰について調査した. (結果) 男性4例,女性3例であった.診断時の年齢は中央値63歳(36~71歳)で,最大腫瘍径は中央値7.0 cm(4~13 cm)であった.治療は,Stage Iの1例は腹腔鏡下副腎摘除術のみ,Stage IIIの4例は,副腎摘除術に加え,周囲臓器合併切除をおこなった.完全切除した5例のうち4例は中央値55カ月(22~107カ月)で再発なく生存している.遠隔転移があった2例のうち,1例は外科的切除困難にて全身化学療法(エトポシド+アドリアシン+シスプラチン療法+ミトタン)をおこなったが19カ月目に癌死した.もう1例は,副腎皮質癌肺転移に対し,原発巣と転移巣を外科的切除し,術後補助療法としてミトタン内服治療を行っており,術後9カ月で再発は認めていない.7例の3年癌特異生存率は56%であった. (結論) 周囲臓器への浸潤が疑われても,副腎周囲臓器を含めて合併切除することで長期生存できる症例が存在しており,診断時の可能な限りの完全な外科的切除が予後改善に重要であると思われた.
著者
北小路 博司 寺崎 豊博 本城 久司 小田原 良誠 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1514-1519, 1995-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
4
被引用文献数
10 10

(背景と目的) 過活動性膀胱に対して鍼治療を行い, その有効性について検討した.(対象と方法) 対象は尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した症例11例 (男性9例, 女性2例) で, 年齢は51歳から82歳 (平均71歳) であった. 主訴は切迫性尿失禁9例, 尿意切迫2例であった. 全例に対して, 鍼治療前後に自覚症状を評価し, さらに尿流動態検査を施行して鍼の効果判定を行った. 鍼治療部位は, 左右の中りょう穴 (BL-3) であり, ディスポーザブルの鍼 (直径0.3mm) を50~60mm刺入し, 10分間手による回旋刺激を行った. 鍼治療の回数は4回から12回 (平均7回) であった.(結果) 自覚症状では, 切迫性尿失禁は9例中5例に著明改善 (尿失禁の消失), 2例に改善 (尿失禁回数および量の減少) を認め, 尿意切迫を主訴とした2例の排尿症状は正常化した. その結果, 自覚症状の改善率は82%であった. また, 治療前の尿流動態検査にて11例全例に認められた無抑制収縮は, 治療後6例で消失し, 治療前後の比較では, 最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ, 尿流動態検査でも改善が認められた.(結論) 以上より, 中りょう穴を用いた鍼治療は, 過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であった.
著者
菅谷 公男 西島 さおり 嘉手川 豪心 安次富 勝博 野口 克彦 松本 成史 山本 秀幸
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.11-17, 2021

<p> (目的) 水素は体内の酸化防止に効果があるとされているが,体内では水素は腸内細菌叢によって産生され,呼気中に排泄される.そこで,呼気中水素濃度(以下,呼気水素)の日内変動と,飲食物や泌尿器疾患との関連を検討した.</p><p> (対象と方法) 健常ボランティア(男40例,女45例,30~83歳)と,60歳以上の前立腺肥大症40例と女性過活動膀胱30例を対象とした.3例のボランティアでは飲食物摂取前後の呼気水素を測定し,1例では呼気水素の日内変動を調べた.ボランティアと泌尿器科外来患者では呼気水素と年齢や泌尿器疾患との関連を調べた.呼気水素が高値の1例と低値の1例では10日以上同一時刻に呼気水素を測定して変動幅を調べた.</p><p> (結果) 水道水,水素水や食物でも,摂取後に呼気水素は一時的に上昇した.日常生活では呼気水素は排便後に低下し,食事摂取で上昇し,腸管ガスが溜まった鼓腸で上昇した.呼気水素の最も高い女性の値は11.2~188.6ppmであったが,最も低い女性では0.4~2.3ppmであった.ボランティアの女性では加齢に伴って呼気水素は有意に上昇した.60歳以上では健常ボランティアと,前立腺肥大症,過活動膀胱や便秘の患者の呼気水素に差はなかった.</p><p> (結論) 呼気水素は飲食や加齢に伴って上昇し,前立腺肥大症,過活動膀胱や便秘とは関連しなかった.呼気水素は個人差が大きく,腸内細菌叢の違いによる差と考えられた.</p>
著者
山本 圭介 松岡 庸洋 高尾 徹也 辻村 晃 奥山 明彦 久保 盾貴 細川 亙 角田 洋一 山口 誓司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.500-503, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
13

41歳, 男性.家族歴・往歴に特記すべきことなし.以前より陰茎腫大を自覚し, 排尿時痛も出現したため前医受診.陰茎の著明な腫大を認めた.MRIにて, 陰茎皮膚および皮下組織の著明な肥厚を認めた.自排尿困難のため, 尿道カテーテル留置の上, 当科紹介.病的な皮膚・皮下組織を切除し, 左大腿部より採取した分層皮弁を陰茎に巻きつけて植皮を行った.病理診断では悪性所見を認めず, 非特異的炎症性変化であった.植皮の生着は良好で, 痛みは減少し尿道カテーテル抜去後も排尿可能であった.術後6カ月現在, 明らかな再発を認めず, 排尿・性機能についても特に問題ない.象皮病はリンパ浮腫の終末像であり, フィラリア感染や外傷・治療・腫瘍・液状異物自己注入などが原因で生じる.自験例ではフィラリア感染は否定的であり, 特発性と考えられた.