著者
増田 俊樹 坂井 智行 山田 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-69, 2016 (Released:2016-01-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は79歳, 女性. 糖尿病性腎症を原病とし, 73歳時に血液透析を導入された. 76歳頃より無尿であった. 糖尿病性神経障害による下肢壊疽のため, 両側下腿切断術を受け入院加療中であった. 術後に血尿, 下腹部痛および透析中の著明な血圧低下を認めたため精査したところ, 腹部造影CTにて膀胱壁の肥厚および膀胱粘膜下のガス貯留像を認め, 気腫性膀胱炎と診断した. 発症時の尿からはEscherichia coliが培養されたが, 血液からはBacteroides fragilisが培養され, 両者を起因菌とした気腫性膀胱炎から敗血症をきたしたと考えた. 抗生剤投与, 膀胱ドレナージを実施し, 速やかに軽快した. とくに無尿の維持血液透析患者において, 気腫性膀胱炎の報告は少ないが, 発症が認識されないまま経験的抗生剤投与にて軽快している可能性がある. 気腫性膀胱炎の大部分は適切な抗生剤投与と排尿管理で軽快するが, 治療開始の遅れから重篤な経過に至ることがあり, 早期に診断し治療を行うことが重要である.
著者
犬飼 幸男 多屋 秀人 山田 伸志 落合 博明 時田 保夫
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.61-70, 2006-02-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1

低周波音のガイドライン作成に必要な基礎資料を得るため, 一般成人21人及び苦情者10人を対象に, 低周波純音及び狭帯域ノイズの「聴覚閾値」及び「居間・寝室の主観的許容値」及び「気になるレベル」を心理物理実験で測定し, パーセンタイル値による評価法の信頼性・妥当性を検討した。同時に, 複合音の許容値を測定して結果の整合性を検討した。その結果, 一般成人における寝室の許容値は再現性が高く, その10パーセンタイル値は苦情者の実験データにも適合し, 苦情現場の1/3オクターブバンド測定値で苦情対応の有無を良く識別した。また, ヨーロッパ諸国におけるガイドラインとも良く整合した。この結果は, 環境省により公表された「低周波音問題対応の手引書 (2004)」に示されている,「低周波音による心身に係る苦情に関する参照値」として活用された。
著者
山田 伸一
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

今年度は主に、『日本外交文書』や外務省外交史料館所蔵史料など外交関係史料の調査と、北海道立文書館所蔵の開拓使文書・佐藤正克日記(北海道立図書館所蔵)や阿部正己文庫(鶴岡市立図書館所蔵)中の松本十郎関係文書の分析を進めた。既往の研究の成果を基本的には再確認し事実関係をより詳細に把握できた諸点以外に、今回特に確認できたのは次の点である。なお、樺太アイヌの石狩地方移住後の状況については分析が十分に進んでおらず、今後に課題を残している。1)1875年の樺太千島交換条約の交渉過程においては、先住民族の帰属をめぐる問題は無視されていたに等しく、条約締結後の東京での日露間の交渉で、先住民族にのみ国籍と居住地の合致を義務づけることを再確認したものである。2)樺太アイヌの対雁への移住は、アイヌ自身の意向や開拓使札幌本庁の意見を押し切って開拓長官黒田清隆が断行したものである。3)移住に際して開拓使は、樺太で漁業経営を請け負っていた商人とアイヌとの間の慣習や人間関係を利用しつつ、アイヌと商人との関係の断絶・官への直接の依存を図っていった。4)北海道へ移住させられたアイヌの樺太への帰還は、1905年の日露講和条約以前から活発だったが、郷土で生計を立てようにも日本国籍を持つ故に漁業経営から制度的に排除される点で不利な立場に置かれる一方、北海道へ移住しなかったアイヌは比較的有利な立場にあった。南樺太が日本領になるとその立場が逆転する。1875年の条約締結時に同民族内に生じさせられた分断は、日本領時代は日本岡籍の有無の差として存在し、長く影響を与えた。
著者
増田 俊樹 坂井 智行 山田 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-69, 2016

症例は79歳, 女性. 糖尿病性腎症を原病とし, 73歳時に血液透析を導入された. 76歳頃より無尿であった. 糖尿病性神経障害による下肢壊疽のため, 両側下腿切断術を受け入院加療中であった. 術後に血尿, 下腹部痛および透析中の著明な血圧低下を認めたため精査したところ, 腹部造影CTにて膀胱壁の肥厚および膀胱粘膜下のガス貯留像を認め, 気腫性膀胱炎と診断した. 発症時の尿からは<i>Escherichia coli</i>が培養されたが, 血液からは<i>Bacteroides fragilis</i>が培養され, 両者を起因菌とした気腫性膀胱炎から敗血症をきたしたと考えた. 抗生剤投与, 膀胱ドレナージを実施し, 速やかに軽快した. とくに無尿の維持血液透析患者において, 気腫性膀胱炎の報告は少ないが, 発症が認識されないまま経験的抗生剤投与にて軽快している可能性がある. 気腫性膀胱炎の大部分は適切な抗生剤投与と排尿管理で軽快するが, 治療開始の遅れから重篤な経過に至ることがあり, 早期に診断し治療を行うことが重要である.
著者
竹内 淳彦 森 秀雄 佐藤 滋 大橋 正義 北嶋 一甫 山田 伸顕 本木 弘悌
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-59, 2000-03-31

1999年の地域大会として11月27日に上記のフォーラムを開催した.午前は「工業のまちを歩く」と題して東京都大田区内の住工混在地域を巡検し, 午後は大田区産業プラザにおいて会議が行われた.はじめに小関智弘氏の特別講演「工場に生きる人々とそのまち」が行われ, 続いて竹内淳彦の基調報告, 5名のパネラーの報告の後, 討論が行われた.なお, 巡検参加者は66名, フォーラム参加者は203名であった.座長は上野和彦(東京学芸大学)と松橋公治(明治大学)が務めた.以下には各報告の要旨, 討論と巡検の記録を掲げる.
著者
熊谷 崇宏 伊藤 健 西川 滉大 伊東 淳一 山根 和貴 山田 伸明 名和 政道
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.313-323, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
41
被引用文献数
2

This study proposes a reduction method for iron loss in stator core using the optimum pulse pattern for a high-speed interior-permanent-magnet-synchronous-motor (IPMSM). In this paper, a simple evaluation function for iron loss of stator core in a pulse-width-modulation (PWM) drive is introduced. In particular, the iron loss in stator core is approximately estimated from the flux level obtained from the integral of the line-to-line voltage of the PWM drive. In addition, the pulse pattern is optimized to reduce the iron loss in stator core based on the introduced evaluation function. To validate the evaluation function, the correlation coefficient between the evaluation value and the measured iron loss is calculated in 12 random pulse patterns applied to the inductor and IPMSM. As a result, the correlation coefficients are 0.991 and 0.982 in the inductor and IPMSM, respectively. In addition, the iron loss of the IPMSM with the optimum pulse pattern is reduced by 8.5% and 3.7% in comparison with a carry-asynchronous PWM and carry-synchronous PWM, respectively.
著者
大谷 道輝 山田 伸夫 高山 和郎 小瀧 一 江藤 隆史 假家 悟 内野 克喜 伊賀 立二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.107-112, 2002-01-01 (Released:2003-02-13)
参考文献数
14
被引用文献数
8 8

A commonly used admixture of commercially available ointments and/or creams was selected from the prescribed sheets in our hospital, and questionnaire to dermatologists. To assess the relationship between permeability of corticosteroid through murine skin and clinical effects in human, we attempted to investigate the vasoconstrictor activity of these admixtures of topical corticosteroid by double-blind controlled study. Test samples were occluded at random on the back of 20 healthy volunteers for 4 hours. The vasoconstrictor activity of corticosteroid creams (Lidomex®) alone was significantly large as compared with that of ointments alone. The vasoconstrictor activity of corticosteroid in the admixture of Lidomex® ointment and urea ointments or heparinoid ointment was 1.5—2 fold significantly larger than that from ointments alone. The extent of the stability of the emulsion after mixing was related to the vasoconstrictor activity. These experiments demonstrated a close relationship between the vasoconstrictor activity of human skin and permeability of hairless mice skin. These results suggested that the vasoconstrictor activity of topical corticosteroids mixed with commercially available ointments and/or creams depends upon their physicochemical characteristics.
著者
上平 修 小野 佳成 佐橋 正文 山田 伸 大島 伸一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1095-1098, 1993-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1

薬物治療に反応しない難治性非細菌性慢性前立腺炎患者13例に対して, Biodan 社製“プロスタサーマー”を用いて経直腸的温熱療法を行った.治療は外来通院にて, 1回の治療で前立腺を42℃~43℃に加温, これを60分間行い, 週2回の割合で合計6回施行した.3ヵ月経過観察できた11例のうち, 6例 (55%) に自覚症状の消失, または改善を認めた. 9例中4例 (44%) にEPS中の白血球数の正常化を認めたが, 自覚症状の推移と白血球数の正常化の間には明らかな相関を認めなかった. 治療中とくに合併症を認めなかった.慢性前立腺炎に対し, なぜこの治療が効果があるのかは必ずしも解明されていないが, 一部の症例において効果があることは事実であり, 温熱療法は難治性慢性前立腺炎の新しい治療法となりうる可能性が示唆された.
著者
張 謹 上口 博司 北村 敏也 山田 伸志
出版者
The Institute of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.50-54, 1997-02-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
2

本研究では主に射出成形によって製造されたプラスチック歯車及び切削によって製造されたプラスチック歯車を使用し, 歯車試験装置を用いて, 歯車の軸間距離, トルク, 回転数, 潤滑剤の充填等が騒音に及ぼす影響について実験を行い, 平歯車の騒音特性を求めた。
著者
山田 伸明
出版者
中部大学
雑誌
国際関係学部紀要 (ISSN:09108882)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.87-97, 1993-03-30
著者
木村 研一 矢野 忠 山田 伸之 今井 賢治 廣 正基 渡辺 一平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.279-291, 1998-09-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
46

皮膚交感神経機能に及ぼす鍼刺激の効果を検討するためにSSR (sympathetic skin response) 、SFR (sympathetic flow response) 及び手掌部の精神性発汗量を指標に検討すると同時に各指標間の関連性についても併せて検討した。被験者は健康成人男性10名、平均年齢24.7±3.1歳 (mean±SD) とした。実験は無刺激対照群 (以降、対照群) と鍼刺激群を設定し、同一被験者を対象とした。SSRは記録電極を左手掌部中央に、基準電極を同側中指爪上部に貼付し、SFRはレーザードップラー血流計のプローブを左示指指腹に装着した。精神性発汗波はハイドログラフを用い、右手掌部に1cm2のカプセルを装着した。各指標は同時測定し、電気刺激は前額部正中線上に刺激間隔および刺激強度をランダムに変更して行い、各反応を誘発し。記録した。尚、対照群は安静負荷前後、鍼刺激群は鍼刺激前後で測定を行った。鍼刺激は右側の合谷穴にステンレス鍼 (セイリン化成) を刺入し、鍼響を得た後1Hzの雀啄刺激を1分間行った後に、10分置鍼した。結果は以下の通りであった。 (1) SSR、SFR及び手掌部の精神性発汗波はHabituationを起こすことなく記録できたが、各々の相関関係は小さかった。 (2) SSR及び精神性発汗量は鍼刺激後有意に抑制されたが、SFRは無刺激及び鍼刺激の両方で抑制された。以上のことから鍼刺激は皮膚交感神経機能を抑制する作用があることが示唆された。
著者
山田 伸志
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.756-759, 1984-10-30 (Released:2010-03-18)
参考文献数
3
著者
氏家 等 朝倉 敏夫 村上 孝一 山田 伸一 池田 貴夫 會田 理人
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本時代から現在に至るサハリン朝鮮民族の生活文化の変遷について、サハリン州や帰還者の住む韓国安山市において、約30名のサハリン朝鮮人の方々から基礎的情報を収集し、記録にとどめてきた。その結果、朝鮮文化のなかでも、オンドルや頭上運搬のような日本時代ないしソ連時代初期に失われた文化要素が少なくない一方で、日本→ソ連→ロシア時代を通じて、(1)日本時代を経験した多くの朝鮮人がウズベキスタンの朝鮮人から餅米を取り寄せ、臼と杵を使って餅を掲き続けてきたこと、(2)ロシア人の墓とは対照的に朝鮮人の墓は盛り土の前に墓石を立てる朝鮮半島方式を守ってきたこと、(3)還暦の行事を朝鮮方式で行い続けてきたなど、継続して守ってきた文化があったことを確認し、食文化や精神文化に関する文化要素は残り、住生活、衣生活などにおいてはその継承が難しかったことを明らかにした。一方、サハリン朝鮮民族は、多様な民族的関係史のなかで、韓国スタイル、北朝鮮スタイル、日本スタイル、ロシア・スタイルをそれぞれ重層的に取り入れた多重化したライフスタイルを構築してきた。また、ペレストロイカ以降の自由主義経済の展開を通じ、韓国人、北朝鮮人、沿海州の朝鮮人、中国人、日本人との交流関係が定着し、そのライフスタイルはより多角化の傾向にあることがわかってきた。日本時代を経験した朝鮮人、ソ連時代に生まれ育ち多くを社会主義経済下で過ごした朝鮮人、ペレストロイカ前後に生まれ育ち多くを自由主義経済下で暮らした朝鮮人など、世代間でそのライフスタイルの指向に違いが見られる事実も浮かび上がっている。韓国安山市等に帰還した元サハリン在住者の間では、周囲にロシア文化を流入させ、韓国文化を拒否する人々が相次ぐなどの課題も生じている。これら新たに生じた課題に踏み込むことにより、サハリン朝鮮民族の文化に対する理解がより深まることとなる。