著者
今木 雅英 三好 保 吉村 武 棚田 成紀 松本 和興
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.87-91, 1988-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13

健康な中年および老年者における血清LDH活性値およびアイソザイム分画比と血清ビタミンCの関連性について検討した。対象者は、漁村住民男性87名, 女性83名 (年令45-84才) である。男女とも各年令グループ (45-59才グループ, 60-69才グループ, 70才以上グループ) において血清LDH総活性値と血清ビタミンCは、統計的に有意な関係はみとめられなかった。しかし、男女とも血清LDH-4分画比, 血清LDH-5分画比と血清ビタミンCはすべての年令グループにおいて統計的に有意な負の相関関係が認められた。
著者
若月 俊一 松島 松翠 荒木 紹一 筒井 淳平 白井 伊三郎 高松 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.399-413, 1973-01-10 (Released:2011-02-17)

長野, 愛知, 三重, 徳島, 福岡の5地区において, 同一の調査方法により, ハウス栽培従事者の健康調査を行なった。調査人員は, 昭和45年415名 (男230名, 女185名), 昭和46年458名 (男185名, 女273名) であるが, 別に対照として, 一般農家を昭和45年152名 (男73名, 女79名), 昭和46年281名 (男118名, 女163名) 同一方法で調査した。このうち農繁閑期を通じて同一人を調査できた30代, 40代のものについて, ハウス栽培状況及び健康状況を分析した結果は次の如くである。1) 各地域におけるハウス栽培状況の比較調査対象農家1戸あたりのハウス栽培面積は, 三重。が最も多く, 29.7a, 長野が13.5aでもっとも少なかった。暖房の設備状況は, 各地域によって異なるが, そのうち煙突を装備しているものは, 愛知, 三重, 徳 島では大部分であるが, 長野及び三重では約半数に過ぎなかった。その他副室, 換気窓, 面側扉の設備は地域により差異がある。農薬はハウス内でかなり使われており, 有機硫黄剤が多いが, その他の強毒性殺虫剤も多かった。2) 各地域及び農繁閑期における健康状態の比較労働時間は, 一般に農繁期, しかも女子に多く, 睡眠時間は, 逆に農繁期, 女子は少ない。ハウス栽培作業の最盛期には, ハウス内作業は1日8時間にも及んでいる。農夫症症候群は農繁期に多く, 症状としては, 肩こり, 腰痛が多く, 男子に比べて女子に多い。自覚的疲労症状も同様で農繁期に多く, 女子に多い傾向にある。地域別では, 農夫症症候群は三重, 福岡に多く, 疲労症状の発現率は福岡に多くみられた。検査成績では, 女子に貧血の傾向がみられるが, とくに農繁閑期で大きな差はみられない。地域別には若干の違いがみられた。血清コリンエステラーゼ活性値が20%近く異常値を示したことは, 今後ハウス内の, dermal absorption riskのほかに, inhalational exposureの危険についてもさらに深い調査を行なわねばならないことを示すものと思われる。3) ハウス栽培農家と対照農家の健康状態の比較労働時間は, ハウス栽培農家の方が対照農家に比べて多く, とくに女子において著明である。睡眠時間は, ハウス栽培農家の方が少ない傾向がみられた。農夫症症候群は, 農繁期にはハウス栽培農家に多い傾向がみられ, 症状として, 肩こり, 腰痛, めまい, 不眠などがハウス栽培農家に多い。疲労症状もとくに農繁期には, ハウス栽培農家に高いが, 「頭が重い」「全身がだるい」「肩がこる」「体のどこかがだるい」「足がだるい」 といった症状が多くみられた。また検査成績では, ハウス栽培農家に肝機能異常や血清コリンエステラーゼ活性値低下を示すものが若干みられた。以上の結果により, ハウス栽培従事者には, 一般農家にくらべて, とくに農夫症, 疲労症状等, 自覚症状が多くみられており, これらはハウス病症候群と呼ばれる症候群の一部を構成している。そして, その原因として高温多湿の作業環境, 農薬散布, 作業姿勢等が考えられるが, 今後, 予防対策として, ハウス内の構造の改善, とくに大型換気扇の設置, また労働条件の改善, とくに農薬散布方法の改善等が必要であろう。さいごに, 去る第5回国際農村医学会 (ブルガリヤ・バルナ市) における東欧諸国の研究や調査の発表では, ハウス栽培における農薬散布が原因する健康障害のテーマが, 少なからずとりあげられていたことをとくに付記する。
著者
白石 卓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.886-890, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
7

脊柱側弯症は, 思春期児童の約1~2%にみられる比較的頻度の高い疾患である。疼痛などの自覚症状を伴うことは少なく, 外見上の背部変形を観察することで発見されるため, 脊柱側弯症学校検診 (以下, 検診) は大きな意味をもっている。側弯症は早い段階から適切な保健指導や治療を始めることが極めて重要であるため, 早期かつ確実に発見するための体制づくりが求められる。しかし, 検診の内容は各自治体間で一定せず, 専門外の内科医や小児科医が内科健診と併せて行なうことが多いのが実情である。近年, 検診に問診票を取り入れる自治体が増えているが, 本研究では平成27年度に当地域で導入した機会を捉えて, 問診票の保護者に及ぼす効果を検討した。検診終了後に問診票導入に関するアンケートを配布・回収することにより集計・解析した。その結果, 問診票の活用は, 注意深く診察しなければならない児童の抽出に有効であるばかりでなく, 保護者に対する側弯症の啓発および学校健診に対する関心の向上につながっていることがわかった。また, 年1回の検診による子供の体型の確認に加え, 問診票の活用により保護者が日頃から子供の体型の変化に気をつけるようになるため, 側弯症の早期発見につながる可能性が示唆された。
著者
小島 順子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.62, 2011 (Released:2012-02-13)

多くの認知症患者が入院する当療養病棟では、毎日の食事、おやつを兼ねたレクレーション、個別リハビリ以外ではベッドに休んでいることが多く、刺激が少ない入院生活を送っているのが現実である。 今回、長谷川スケール1点の重度認知症患者A氏に対し、変化のない入院生活の中でも、居心地がよく、笑顔が見られることを目的とした絵本の読み聞かせを1日15分程度、間隔をあけることなく7回実施した。この読み聞かせを行なう事によって、A氏の表情や普段は聞かれない言葉、認知症になってしまったA氏自身の気持ちをうかがわせる言葉を聞くことが出来た。又、家族の中で娘さんしか認識できず、面会時のみ「おねえちゃん」と呼んで笑顔を見せていたA氏であったが、絵本の中の場面を繰り返し読み進めるうち、娘さんが絵本の中に出てくるような言葉が聞かれ、面会時だけでなく何かのきっかけを与えることにより、家族を思い出すことが出来、それを表現する能力が残っていることに気づいた。 この研究を通して、重度の認知症患者であり、単調で刺激の少ない入院生活であっても、本人にとって快適な環境に置いてあげることや、興味があることを繰り返し行なう事で良い結果が得られたので報告する。
著者
日本農村医学会農薬中毒研究班
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-139, 1984-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
65
被引用文献数
4 2

Of clinical cases of pesticide poisoning at rural hospitals across the country, it has been requested to provide reports on 31 cases the course of which had been of interest.By type of pesticide, the number of cases is 3 for fenitrothion, 1 for DDVP, 1 for vamidothion, 2 for malathion, 1 for trichlorfon, 1 for cyanophos, 1 for phenthoate, carbaryl, and edifenphos, 1 for leptophos, 1 for ortho-dichloro-benzene and dichlorvos, 1 for fenthion anal carbamates, 2 for methomyl, 2 for nicotine sulfate, I for calcium polysulfide, 1 for blasticidin S, 1 eye injury for paraquat and chloropicrin, and 11 for paraquat.One grave factor today is a sharp rise in the prevalence of poisoning with paraquat, which in most cases is used for suicide. Of late, there have also appeared cases in which death eventually results from the spraying of paraquat.
著者
新開 省二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.826-829, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
15
著者
山下 一也 飯島 献一 白澤 明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.90-94, 1996-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
23

A型行動様式と血圧について1年間のfollow upをし, 性格の変化と血圧との関係を検討した。A型行動パターンスクリーニングテストのスコアの変化率と収縮期血圧, 拡張期血圧の変化率はともに有意の相関を示した (p<0.05)。1年間の比較において, A型行動パターンスクリーニングテストB2型よりA2型に変化した群では収縮期血圧, 拡張期血圧ともに有意に増加したが (p<0.001), B2型のままで変化のない群では収縮期血圧, 拡張期血圧ともに有意な変化はみられなかった。性格の変化と血圧とは関連が認められ, 健康管理に行動様式の面からの取り組みも必要と思われる。
著者
萩尾 慎二 黒佐 義郎 小島 秀治 相澤 充 青山 広道 前原 秀二 三宅 諭彦 藤田 浩二 多川 理沙 佐藤 智哉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.256, 2005 (Released:2005-11-22)

高齢の大腿骨頸部骨折患者が入院時に熱発を呈することをしばしば経験する。また大腿骨頸部骨折患者の主な合併症として肺炎や尿路感染症が挙げられる。今回、入院時に採取した尿の細菌培養を行ない熱発と尿路感染(腎盂腎炎)との関係を調査した。【方法】大腿骨頸部骨折患者を入院時熱発群(術前最高体温38.0以上)と非熱発群に分け年齢、性別、入院時血液検査(白血球数、CRP、好中球%)、尿沈渣による白血球数、尿培養結果、入院時胸部レントゲン像による肺炎の有無、術後最高体温との関連を調査した。【結果】調査数15症例(平均82歳、男性1例、女性14例)のうち術前38.0度以上の熱発が見られたのは4例(全て女性、平均78.8歳)だった。熱発群ではCRPが平均3.5と上昇していた(非熱発群は平均1.6)。血液検査の白血球数、尿沈渣による白血球数、胸部レントゲン写真による肺炎像の有無、術後最高体温については非熱発群との差を認めなかった。尿培養では熱発群2例(50%)、非熱発群4例(36.4%)で陽性であり計7例中大腸菌が3例で検出された。【考察】大腿骨頸部骨折患者は大多数が高齢者であり、複数の合併症を有することが多い。入院後患者が熱発したとき、その原因として(1)骨折自体による熱発 (2)肺炎 (3)腎盂腎炎などが考えられる。受傷後、臥位が続けば肺炎、腎盂腎炎を併発するリスクは高くなると予想されるが、今回の調査では入院時検査において発熱群と非発熱群との差を認めなかった。その理由として(1)感染症の併発の有無を問わず骨折自体による熱発が多くの症例でみられる (2)入院後早期に手術が施行(平均手術待機日数1.5日)され、その際に使用される抗生剤により感染症が治癒したと考えた。尿培養では一般的に言われているように大腸菌が検出されることが多かった。我々の施設では術後抗生剤としてセファメジンα(セファゾリンナトリウム:第一世代セフェム)を使用しているが、今回の調査中に培養で検出された6菌種のうちセファメジンに感受性がなかったのは1菌種のみであった。 熱発がないにも関わらず尿培養陽性だった例(無症候性細菌尿)が多くみられたことより、熱発時に細菌尿を認めたからといって熱源の探索を怠ると他の原因の見落としにつながる危険性が十分にあると思われた。
著者
瀧原 博史 植野 卓也 城甲 啓治 城嶋 和孝 酒徳 治三郎 中山 純
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.924-927, 1989-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

膀胱尿道異物は, 小郡第一総合病院泌尿器科において, 過去7年間に3例 (泌尿器科外来総受診患者の0.1%) 経験され, 2例が外来にて内視鏡下に経尿道的に摘出され, 1例は入院のうえ, 観血的に摘出された。患者はすべて男性で, 年令は24才, 42才, 56才であった。2例は尿道異物で, 1例は膀胱異物であった。異物の種類は, 電気コード, ボールペン, ビニールキャップであった。侵入経路は3例とも経尿道的で, 2例が自慰によるもので, 1例が就寝中に他人により挿入されたものであった。1例は尿道鏡下生検用鉗子にて摘出, 2例目は膀胱高位切開術にて摘出, 3例目は膀胱鏡下, 異物鉗子を用いて摘出した。本邦における本症の治療法の検討から, 明らかに以前の観血的治療が減り, 内視鏡を中心とした非観血的治療法が中心となっていくことが示唆された。
著者
若林 剛
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.13, 2009 (Released:2010-03-19)

地域医療崩壊という言葉がマスメディアに頻繁に取り上 げられるようになったのは,2006年頃からであろうか。 私は2005年の秋に慶應義塾大学外科の講師から岩手 医科大学外科の教授になるために,岩手県盛岡市に赴任した。 岩手県は人口10万人あたりの医師数が179.1人で全国 8番目の少なさであるが,1平方キロあたりの医師数は北海道に 次ぎ全国で2番目の少なさである。赴任後に最初に気づいた ことは盛岡市内の開業医の多さであり,街を歩くと1ブ ロック毎に何らかの科の開業医を見つける。次に県内の関 連病院を視察し知ったことは,盛岡市内から車で平均2時 間位かかる人口過疎地に地域中核病院が点在しており,麻 酔常勤医がいない病院や外科常勤医が3人未満の病院が存 在することであった。2004年に導入された初期臨床研修制 度の負の効果として,若い医師の偏在が挙げられる。つま り,地方から都会へ,大学病院から市中病院へ,つらい診 療科から楽な診療科へと若い医師が流れた。幸い岩手医科 大学外科にはこの4年間で31名の若い医師が加わったが, 若い医師に魅力を提示できない多くの地方大学の診療科で は教室員は減少している。以下に私見を述べる。過疎地に は雇用が無いから人口が減り,医師が子息を学ばせたい進 学校がなく,過疎地中核病院勤務への心理的抵抗が生ず る。若い医師の偏在により,地方大学のつらい診療科は過 疎地の病院から大学へ医師を引き上げざるを得なく,忙し くなった地域中核病院勤務医はいわゆる「立ち去り型サボ タージュ」により開業を選択する。この負の連鎖を断ち切 るためには,早急に3つを提言する。1)初期臨床研修医 募集数と医学部卒業生の数を同程度にし,都道府県人口あ たり必要な初期研修医数を決め,初期臨床研修マッチング に過度な競争と地域偏在をなくす,2)医師は公共性が高 い職業であり,ある程度は行政が介入し開業への制限と各 診療科医師数の調整を行う,3)医療費抑制政策の撤回に より,地域医療崩壊の現場にインセンティブを与える診療 報酬を設定する。本質的には,地域医療の崩壊は地域社会 の崩壊と同義である。地域社会に産業の活性化と雇用の確 保を行えば,大都市への人口集中は防げるので地域社会の 教育や医療も充実できるはずである。
著者
二塚 信
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.938-949, 1998-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

近年農業の機械化は急速に進展し, 水田, 畑作ともに乗用化, 多機能化, 多条化がはかられている. 本研究班では主として水田9機種, 畑作13機種の乗用型農業機械の騒音及び手腕系振動, 座席振動についてISO等国際標準に基づく測定法によって測定した. その結果, 乗用機械の実稼動時の騒音は少なからず日本産業衛生学会の許容基準を上回り, 聴覚障害のリスクが高いことが判明した. 手腕系振動は乗用型農業機械では振動レベルは低いが, 携帯型摘茶機などは高値を示した. 他方, 座席振動は現行の操作時間ではISOの許容曝露限界を上回るケースは例外的であるが, 長期的な健康影響を考慮するとき, 疲労・能率減退限界2時間を下回る機種が少なくなく, 機械の工学的改善が必要だと思われた. 作業者の健康影響については, 乗用型農業機械の長期間操作者では高周波帯域の聴力低下が明らかで, 臨床的に騒音性難聴と診断され得る症例がみられた.今後農業経営規模の拡大, あるいは法人・会社組織化による農業機械のオペレータの専属化の進行は必至だと思われる. 本学会として, 農業機械の騒音及び振動の測定及び評価を組織的・体系的に行なう必要があり, 本研究班として健康障害予防の観点から今後の医学的, 衛生工学的対策の提言を試みた.

1 0 0 0 OA 農薬中毒の4例

著者
前川 謙一 加川 憲作 松野 康成 冨田 恵子 毛利 泰実 畠山 啓朗 勝村 直樹 山藤 正広 河村 修 端山 和雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.52-55, 1997-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

去2年間に当院を受診した農薬中毒の4例について報告した。症例はパラコート2例, スミチオン2例で, それぞれ生存1例, 死亡1例で死因はともに呼吸不全であった。パラコートの生存例は死亡例より多くの量を服毒していたが, 嘔吐が強いため, 実際の吸収量は少なく, また超急性期に胃洗浄, 人工透析, 血液吸着が行われたため救命し得たと考えられた。またスミチオンの死亡例は来院時, 原因物質が不明であり, 人工透析および血液吸着導入までの時間を要し, 呼吸不全を招来したことが死亡原因と考えられた。したがって, 原因物質の如何にかかわらず, 農薬中毒に対しては, 早期より人工透析および血液吸着を含めた集中治療を実施することが予後の改善につながると考えられた。
著者
居村 剛 坂東 玲芳 和田 泰男 福島 泰 Ryozo HAYAI 松浦 一 井上 博之 蔭山 哲夫 武田 美雄 市原 照由 加藤 和則
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-54, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

農業アレルギーの調査研究の一つの対象として, しいたけ栽培者を選び, その胞子による過敏性肺炎の3例を発見報告した, これらの3症例には, しいたけ胞子アレルゲンに対する血清沈降抗体がみられ, ことに, その1例において, しいたけ胞子および, 抽出アレルゲンによる誘発反応を試み, 陽性所見を得た. しいたけ農家群には, 高い自覚的呼吸器症状がみられるが, その原因は単一でなく, アレルギー機序は, その一部の原因であろうと考えられ1る. しいたけ胞子抽出アレルゲンの皮内反応陽性率は低く, そのアレルゲン性は高くないと考えられ, この疾患には, アレルギー素因が大きい要素を占める.この他, Mushroom worker's lung等との関連や, きのこ胞子類によるアレルギー疾患との関係も論じた.
著者
永美 大志 大谷津 恭之 加藤 絹枝 前島 文夫 西垣 良夫 夏川 周介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.44-49, 2010-05-30 (Released:2010-06-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

石灰硫黄合剤は,春先に果樹の殺虫,殺菌に使用される農薬である。製剤は,強アルカリであり,しばしば難治性のアルカリ腐食を本態とする深達性の潰瘍を引き起こす。 我々も2007年に50代男性の症例を経験した。患者は,3月上旬,防水性の防護具を着用せず庭木に本剤を散布し,ズボンなどへの付着にかまわず,そのまま作業を続行した。夕方より皮膚付着部の疼痛が惹起し,翌朝になっても継続したため受診した。初診時,両下腿後面に白色潰瘍を伴う3度の熱傷を認めた。第6病日デブリードマン術を施行したが,潰瘍は真皮層から脂肪層に及んでいた。人工真皮で被覆して肉芽形成を促した後,第20病日に植皮術を施行した。経過は順調で,約1か月で退院となった。 わが国において2000年代に入ってからほぼ毎年,本剤による化学熱傷の症例が報告されており,他の研究報告を見ても,この熱傷の発生数がなかなか減少していないことが伺われた。 この熱傷を防止するには,(1) 防水性の防護具で全身を覆うようにすること,(2) 万一本剤が身体に付着した場合は,迅速に洗浄すること,の2点が肝要である。障害防止のためのさらなる啓発活動が必要と考え,啓発パンフレットを作成した。
著者
朱宮 哲明 山田 千夏 和嶋 真由 伊藤 美香利 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.291-294, 2016-07-31 (Released:2016-09-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食物アレルギー児に給食を提供する病院では誤食防止対策が求められている。これまで当院栄養科では,アレルゲンを除去した料理(アレルゲン除去食)を専用区域において担当調理師が調理し,その料理内容を食札に明記することにより誤食防止に努めてきた。平成26年1月~12月の1年間に,当院に入院した食物アレルギー児258例にアレルゲン除去食を提供したが,アレルゲンを含有する料理の誤配膳が3件発生し,内2件で患児の誤食があった。誤配膳が発生した原因として,アレルゲン除去食とアレルゲンを含む料理が同色の食器に盛り付けられていたことが考えられた。対策として誤食防止対策を改定し,アレルゲン除去食の食器とお膳を全て黄色に統一して他の料理と明確に区別した。さらに,アレルゲン除去食専用の棚を設け,配膳前の最終確認には調理担当者2人によるダブルチェックを義務づけた。今後も誤食防止対策の改良に努めていきたい。
著者
加藤 あい 宮田 明子 守屋 由香
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.145, 2006

<b><はじめに></b><BR> 産褥期における子宮の復古および悪露の変化は著しくかつ重要であるため、産褥期における注意深い観察と復古促進に向けたケアが必要となる。<BR> 経腟分娩後の子宮復古状態については基準化され、看護を行う上でのアセスメントの指針ともなっている。しかし、帝王切開後の子宮復古に関しては一般に経腟分娩より遅いと言われているが、明らかなデータとして発表されているものはない。そこで、経腟分娩と帝王切開の子宮復古状態を比較し、帝王切開術後のアセスメントの基準を明らかにすることを目的とし検討した。<BR><b><研究方法></b><BR> 経腟分娩者30名、帝王切開分娩者21名。正期産かつ単胎とし、帝王切開分娩者に関しては、緊急帝王切開や合併症がない者とした。産褥0日より退院日までの子宮底長と硬度および、悪露量を測定した。妊娠・分娩経過、分娩週数、妊娠・分娩歴、Hb値、胎盤の大きさ・重さ、児体重、使用薬剤名・投与量、排泄状況、離床時期などについてフェイスシートを用い情報収集した。<BR><b><結果および考察></b><br> 子宮底長の経日的変化に関して、産褥1日を除いては、帝王切開の方が経膣分娩の子宮底長に比べて高い。これは子宮に手術操作が加わることや、安静の期間が長いこと、授乳開始の遅れが影響していると考えられる。<BR>悪露量の経日的変化において、産褥1・3・4日で帝王切開より経腟分娩のほうが有意に悪露量が多く、産褥5日は経腟分娩の悪露量が多い傾向にあり、産褥2・6日は、帝王切開の悪露量が多い傾向であった。産褥1日は経腟分娩では、授乳の開始や安静の制限がされていないことが関連していると考えられる。産褥2日に帝王切開の悪露量が多い傾向であったのは、歩行開始となることが関連していると考えられる。<BR> 帝王切開の場合、経腟分娩と比べて子宮底長は高く経過していくが悪露量は経腟分娩が多い量で推移することが多かった。一般的には、子宮底長が高いと悪露量が多く子宮収縮が悪いと判断するが、帝王切開の場合は子宮底長が高いことと、悪露量の多さには関連がなく、子宮底長と悪露量では子宮収縮状態を判断することはできない。<BR>【まとめ】<BR> 経腟分娩と帝王切開における産褥期の子宮底長の経日的変化をみた結果、帝王切開分娩の方が、経腟分娩よりも子宮底長が高く推移することが明らかとなった。しかし、帝王切開の子宮底長が高く推移しても、経腟分娩に比べ悪露量は少なく、子宮収縮が不良という指標にはならない。<BR>産褥期の子宮復古に影響を及ぼすといわれる因子についての今回の研究では有意差はでなかった。今後は、産褥期の吸啜回数や時間など、本研究項目に取り上げなかった因子の影響も含め、検討すべきである。
著者
吉崎 浩一 野瀬 弘之 鈴木 優司 近藤 則央 前田 淳一 堀井 修 飯井 サト子 牧村 士郎 寺井 継男 東 弘志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.630-637, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

上部消化管造影検査で高濃度バリウムを使用するにあたっての前調査として, バリウム飲用による副作用及びその服用感がバリウム濃度及びその性状によりどのように変化するかアンケート調査を行い検討した。副作用は, バリウム濃度上昇に伴い増加したが, 何れも一過性のものであり, 医療機関で治療を要した例はなかった。さらに, 便秘群と通常群に分けて検討したが, 便秘群では通常群より低い濃度で副作用の割合が増え, 排泄状況に関しても便の硬化や排泄の遅延などが認められた。バリウム便の排泄は, 基本的には普段の排便状況と一致し, 濃度増加による影響をあまり受けないものと思われた。下剤の有無による排便状況の調査では, 下剤の服用が必ずしも良好な排泄につながっておらず, 今後下剤を服用するタイミングや水分摂取等に関する検討が必要であると思われた。バリウムの飲み易さは, バリウムを選択する際の要素の一つと考えられるため, その服用感に関して調査したが, 濃度の差よりその性状に起因することが明らかになった。これらの結果より高濃度バリウムを使用するに当たり, 副作用出現を抑制するためには特に便秘群において適切な指導をする必要があると思われた。