著者
藤城 宏昭 益満 ゆかり 鈴木 政義 岡本 伸江 河合 初代 榊原 由美子 鈴木 宏 宮下 智子 天野 博子 渡邉 純子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.378, 2006

<b><はじめに></b> 現在当院には、平成14年6月に設置されたStar Office(NEC製)と呼ばれるグループソフトウエアがある。しかし、現在に至っても多くの職員が使用方法を知らず、その機能も認知されていない。メールや掲示板、ファイル保存機能等を使いこなせば日常業務や情報伝達に非常に役立つツールである。そこでStar Office機能を全職員に周知し活用促進していく為にいくつかの検討をした。以下にその取り組みと考察を述べる。<BR><b><方法></b> 全職員を対象に取り組んでいくのは難しい為、今回はまず事務職員を対象に活用促進を徹底していくこととした。現状把握の為、事務職員にStar Officeの基本機能15項目についてアンケートを実施した。その操作が「できる」なら1点とし、全機能操作ができれば15点満点とした。5点までを初級、10点までを中級、11点以上を上級者として集計したところ54%と半数以上の事務職員が初級・中級者であった。また、過去のメールの送受信状況を調査したところメールを毎日確認し、受信したメールをその日に開封した事務職員は全体の41%と半数以下であった。<BR> 以上のことを踏まえ、上級者を100%にすると言う目標値をたて、アンケートに書かれたコメントを参考に重要要因を3点にしぼった。(1)「使い方を調べる分かりやすいマニュアルが無い」、(2)「機械に対する苦手意識がある」、(3)「機能や便利さが周知されていない。また身近に質問できる人もいない」これらの問題点についてそれぞれ対応策を考え実施した。(1)については、自分達で必要最小限の機能に限定したマニュアルを作成した。初心者が見ても分かりやすいようにワンステップごとに実際の操作画面を取り込み、コメントを添えた。これをカラー印刷し各部署に一冊配布した。またStar Officeの掲示板に保存し、必要時に誰でも見られるようにした。(2)_についてはゲーム感覚で機械に慣れ親しんでもらう為、メール機能を利用した伝言ゲームと言う形で実施した。事務職員をいくつかのグループに分け、提示した「お題」を基に一人が1行のあいうえお作文を作り、次の職員にメールを転送してもらった。苦手意識も薄れ楽しく操作してもらう事ができた。(3)については、作成したマニュアルを基にメンバーが講師となり勉強会を開催した。あわせて啓蒙活動も行った。特に初級レベルの職員は、非常によく理解できたと好評であった。<BR><b><結果></b> (1)から(3)の取り組みが一通り終了した後に再度15項目のアンケートを実施したところ、上級者は46%から71%と25%も上昇した。結果、目標値の上級者を100%にすることはできなかったものの、初級・中級者のStar Officeに対する機能操作の理解が得られた。またメールを毎日確認し、受信したメールをその日に開封している事務職員の数は41%から70%と約30%も上昇した。このことから情報の伝達手段としてメールを活用することが定着してきた。<BR><b><考察とまとめ></b> 3つの取り組みがそれぞれ効果的に働き、目標である「Star Officeの機能を周知し活用促進していく」事の第一歩を踏み出すことができた。この成功を踏まえ、今後は医師も含め全職員へ徹底周知していくと言う目標へ向けて継続的に活動をして行きたい。また定期的にマニュアルの更新、勉強会の開催もおこなって行きたいと考えている。
著者
木村 幸恵
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.269, 2008

幼児が主体的に吸入に臨むための工夫人形を用いたプレパレーションを導入して木村幸恵・上岡めぐみ・吉宮倫子・川平民子〈緒言〉当病棟では喘息、肺炎などで吸入療法を必要とする患児が入院することが多い。しかし吸入を嫌がり、怖がって逃げようとする患児が多くみられる。保護者には吸入の方法・効果を説明していたが、患児には具体的に説明していなかったので吸入を怖がっていたのではないかと考えた。プレパレ-ションにより患児がこれから行う処置をその子なりに理解し、主体的に臨む行動がみられたとの報告があった。幼児には言語的説明で行うことより、年齢や発達段階に応じて視覚的、或いは体験を通したプレパレ-ションが有効であるといわれている。そこで当病棟でも幼児を対象とし、人形を用いた吸入のプレパレ-ションを行い、その子なりに吸入という治療を理解し、主体的に吸入に取り組めるよう援助しようと考えた。プレパレ-ションを行い、患児の吸入への取り組みを観察し、プレパレーションの効果を検証したので報告する。〈方法〉入院中の吸入療法を必要とする3~6歳の患児を対象に実施。プレパレーション実施方法1)場所:病室 2)ツール:ばい菌シール付きキワニスドール(キワニスドールはプレパレーション前に患児に自由に絵を描いてもらう)3)実施時期:入院して2回目の吸入時 4)実施時間:6分 5)プレパレーション実施にあたり、説明手順を作成し、実施中の言葉、時間を統一するようメンバーで練習を10回行った。プレパレーション実施前(付き添う親に吸入方法を説明し患児には説明していない)と実施中と実施後の患児の吸入への取り組みを独自の指標のチェックリストを用いて観察し、その行動を分析する。〈結果〉1.対象の属性A:3歳10ヶ月 男児吸入暦ありB:3歳 男児吸入暦ありC:3歳11ヶ月 女児吸入暦なしD:4歳4ヶ月 男児吸入暦なし2.疾患:肺炎2名、気管支喘息2名Cは1回目の吸入時、嫌がり泣いていたが、プレパレーション後実施できた。また、プレパレーション後、吸入の必要性を全員に質問したところその子なりの理解した言葉が聞かれ、必要性を理解できていた。B、Cは人形にも吸入を行い人形に「コンコンなくなるけえね。」「早く帰ろうね。」などと話しかけていた。プレパレーション後、全員嫌がることなく吸入を実施することができ、自分から吸入の電源を入れたり、吸入器を持ったり、「吸入する。」との言葉が聞かれ主体的に実施できた。人形を用いたごっこ遊びのプレパレーションを行い、患児は吸入を遊び感覚で日常的なものととらえることができた。遊び感覚で吸入を行い、主体的に取り組むことができた。またB、Cはプレパレーション後も、人形を使用しばい菌を剥がし「バイバイキーン!」と言って遊んだり、人形に吸入をしたりして何回も遊んでいた。Dもばい菌シールをつけたり剥いだりして遊んでいた。吸入後も、人形を用いて繰り返しごっこ遊びをすることで理解を深めていくことができた。
著者
広岡 佑三郎 鈴木 彰 浅沼 信治 黒沢 和雄 阿部 栄四郎 佐々木 喜一郎 桜井 賢彦 河西 朗 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.198-202, 1984

sallmonella typhimuruin TA98, TA100, TA 1535, TA1537で有機リン系殺菌剤, ジフェニルエーテル系除草剤およびPCNBについて変異原性試験を行なった。<BR>有機リン系殺菌剤ではエスセブン, デス, シュアサイドにそれぞれ変異原性が認められた。また, ジフェニルエーテル系除草剤, MOニップ, X-52およびPCNBにも同様に変異原性が認められた。
著者
丑山 奈津枝 丸山 やよい 松崎 吟子 宮崎 恭子 小林 聖子 永井 秀子 林 卓也 秋月 章
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.120, 2009

【はじめに】切迫早産妊婦の一般的な治療方法として安静があげられる.当病院では,切迫早産で入院した妊婦の清潔ケアは医師の指示のもと,安静が保てるようにストレッチャー上で臥床した体位でシャンプーを実施している.しかし,ストレッチャー上でのシャンプーの患者のとらえ方,また子宮収縮などの危険性の有無は明らかでない.本研究の目的は,ストレッチャーシャンプー時の子宮収縮の有無と,妊婦の状態を知ることである.<BR>【対象及び方法】 1.分娩監視装置を用いて,ストレッチャーシャンプー前・中の子宮収縮状態と胎児の心拍数の変化を見た.2.ストレッチャーシャンプー終了後,シャンプー方法に関して,5段階の間隔尺度を用いて切迫早産妊婦に聞き取り調査を行った.調査内容は,肩の張り感,背中の張り感,上腹部の張り感,下腹部の張り感,腰の痛み,臀部の痛み,足のつり感,爽快感,疲労感,緊張感,不安感,頭皮のかゆみ,頭皮のべたつきの13項目であり,またその他の要望(1週間のシャンプー希望回数,お湯の温度,シャンプー時間)の聞き取り調査をした.統計学的検討にはχ2検定を用い,危険率5%以下を有意とした.<BR>【結果】分娩監視装置による, ストレッチャーシャンプー前,シャンプー中の結果は子宮収縮状態・胎児心拍数異常はともに有意差はなかった.ストレッチャーシャンプー時の妊婦の症状に対する聞き取り調査結果は,妊娠週数と症状の出現に関連性は無く,症状を訴えた妊婦は,症状がなかった妊婦より平均年齢が高かった.<BR>【考察】 今回の研究で当病院でのストレッチャーシャンプーの方法は,安全性においておおむね問題はないと確認できた.妊婦の満足度も比較的高く,清潔面の援助を充実させることは切迫早産妊婦のストレス軽減につながる.今後も妊婦の状態や希望にあった看護をさらに提供する必要があると考える.
著者
桐田 久美子 岡崎 寿子 八代 利香 宮内 信治 Gerald T. Shirley
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.610-617, 2007-03-30
参考文献数
14

本研究では,臨床現場における看護師間のコミュニケーションの向上に寄与することを目的に,臨床現場における外来語・略語・隠語 (用語) の使用状況と,看護師の認識を明らかにし,困難な状況をもたらした用語を一冊の用語集として作成した。A県内の6つの病院の看護師計1,000名を対象に,独自に作成した自己記入式質問紙を用いたアンケート調査を行なった。また,特に意味が理解できず困難な状況をもたらした163の用語を抽出し,用語集にまとめた。回答者748名の97%が用語を使用するとし,理解できなった用語に遭遇した経験がある者は81.6%であった。そのうち,用語の使用により問題が発生したと回答した者は9.1%であり,「相手に伝わらなかった」,「処置が遅れた」等が理由としてあげられた。用語の必要性について「とても必要」,「必要」と回答した者は合わせて44.5%であった。理解困難な用語として回答数が多かったものは,「ステる」,「タキる」等であった。簡潔で素早く相手に伝えられる用語の使用は,看護業務を遂行する際に大きな役割を担っている一方で,医療事故の発生の危険性が内在していることが示された。また,生命に関わる重要な臨床現場で働く専門職者として,看護師一人一人が用語の正確な意味を理解し,適切に使用していくことの重要性が示唆された。
著者
鷺 真琴 永井 幹子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.210, 2005 (Released:2005-11-22)

【はじめに】 悪性腫瘍の臭気コントロールにおいて、現在までにいくつかの科学的・物理的方法で消臭効果が得られていることが分かっている。しかし頭頚部・膀胱の癌は再発・再燃を繰り返し、皮膚表面に露出するケースが少なくない。今回2つの事例で一時的に消臭効果はみられても、自壊しはじめた腫瘍と強くなる臭いに対して、薬剤やケアを試みた事例を紹介する。【目的】腫瘍臭における臭気コントロール【患者紹介】<事例1>患者 膀胱腫瘍 膀胱腫瘍浸潤に伴う膣・直腸瘻経過 腹部から腰部にかけての疼痛があったため、MSコンチン内服にて疼痛コントロールを行っていた。陰部(大陰唇)腫瘍から膿様滲出液と出血があった。膿様滲出液は便や帯下と混入することにより悪臭を伴った。<事例2>患者 左上顎腫瘍経過 平成12年より左上顎癌を発症し、左上顎洞開洞術・動注・放射線療法施行し、外来にてフォローしていた。しかし平成16年腫瘍への感染あり、左眼下部より膿汁流出、涙丘部より腫瘍が突出・増大し悪臭を伴った。看護問題事例1 腫瘍と排液の混入に伴う悪臭事例2 腫瘍増大・腐敗に伴う悪臭【看護の実際】病室に消臭剤設置腫瘍部にゲンタシン軟膏塗布事例1:対処療法 出血時硝酸銀焼灼 陰部洗浄・オムツ交換事例2:薬剤使用による対応とケア(1)ダラシンTゲル(2)フラジール軟膏+マクロゴール【実際と効果】 事例1では硝酸銀焼灼による止血によって血液の酸化臭が一時的に消失した。しかし、膿様滲出液や便・帯下が常時排泄されていたため、悪臭が消えることはなかった。 事例2においては(1)剤ではゲル状であったため、腫瘍部には不適切であった。(2)剤では臭気コントロールが行なえ一時退院が出来たが、再入院時には腫瘍の腐敗が進み消臭効果が減退していた。【考察】 腫瘍の増大に伴う腫瘍臭に対し対処的に関わったが、結果として長期的な効果が得られなかった。臭気についての分析が不十分であり、また患者自身も臭気に対して無頓着であったこと、腫瘍により臭覚が麻痺していたことで、快・不快が不明であった。今回は家族と看護師の臭覚で消臭効果を判断したが、臭気の程度については尺度を用いて評価すべきだった。【おわりに】 患者の最期を不快な感情を持たずに迎えるようにするには、臭気の分析と管理、適切な看護介入について見当が必要である。
著者
山井 麻衣子 寺田 優 大野 公子 千葉 一美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.43, 2007

はじめに〉消化管手術後の腸管運動促進はイレウス予防に重要である。当科では初回排ガスが72~96時間と遅延傾向にある。私達は、ガム咀嚼が術後の腸管運動促進に効果があることを知り、当科の消化管手術後の患者にも検討が可能ではないかと考えこの研究に取り組んだ。(研究方法)目的:ガム咀嚼が消化管手術後患者の腸管運動促進に有効か明らかにする期間:平成18年8月1日~12月31日対象:誤飲する危険がない、理解力のある消化管手術を受けた患者方法:術前にガムを噛むことに対して説明・同意を得られた患者で、術後1日目より水分開始まで、1日3回5分以上ガムを噛んでもらい、初回排ガス・排便時知らせてもらう。その後アンケート調査。〈結果〉症例数13例のうち5例は調査途中での中断となった。8例の平均時間は76.8時間。アンケートでは咀嚼の回数、時間、味、共に適当で、爽快感が得られたと回答があった。他に、初めてガムを噛んだ、食事変わりになって時間の意識が出来て良かったなどの意見が寄せられた。(考察)現段階では、症例数も少なく、効果的か判断するには至らなかった。しかし、アンケートの中で、爽快感を得た人が87.5%いた。これはガム咀嚼による神経活動によるものと考える。石山は、「咀嚼を行うことで感覚入力し脳を刺激すると、一時的に交感神経を亢進させるが、運動を休止させると、自律神経の相反支配により副交感神経が優位に作用する。」と述べている。その結果、ガム咀嚼後は精神的にもリラックス状態になる。アンケートの中で爽快感を得た人が87.5%となったのはこのことからと考える。味についてはミント味レモン味で行ったがレモン味の方が好まれる傾向にあった。一般的には柑橘系の香りには、リラクゼーション効果があると言われている。一回の咀嚼時間はもともとガムを噛む習慣のある人には苦痛はなかったが、初めて噛む人・痛み・嘔気のある人には苦痛だったようだ。今回の取り組み以降、消化管手術後の腸管運動促進の援助にガムを取り入れているが、好みの味で苦痛のない範囲で行っている。術後の禁飲食の続く中、認知症のある患者には食事代わりで時間の意識が出来て良いなどの意見も聞かれた。術後は痛みの為に口腔内の清潔・離床も、ときには後回しになりがちである。咀嚼運動による唾液分泌は、口腔内の乾燥・感染予防にも繋がったと思われる。今回、ガム咀嚼を取り入れることで、ギャッチアップがスムーズに進む手ごたえがあった。これは早期離床への援助効果があったと考えられる。(まとめ)1.ガム咀嚼は排ガス促進に明らかな効果は認められなかった。2.ガム咀嚼は爽快感が得られる。3.早期離床への援助効果があった。(おわり)今回の研究では症例数も少なく、ガム咀嚼が腸管運動促進に効果があるかを判断できるまでに至らなかった。しかし、方法、対象などを検討し、今後も追跡していこうと思う。
著者
鷹津 久登
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.16, 2011

<B>〈背景〉</B>脳血管障害や虚血性心疾患などの心血管疾患(cardiovascular disease ; CVD)の発症には,生活習慣に関連する様々な危険因子が強く関連することが知られている。高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙が4大危険因子とされ,これらの治療が重要視され,また昨今は腹部肥満を特徴とするメタボリック症候群への介入が強く叫ばれている。一方,我が国のCVD 特に虚血性心疾患の発症は欧米より数段低く,その理由の1つとして我が国では魚食をふんだんにするため,これらに由来する不飽和脂肪酸の摂取が良い影響をもたらしているのではないかとされている。加えて,魚食を好むわれわれ日本人の中でも魚食の特に多い住民群ではそうでない群に比較して動脈硬化性疾患の発症が有意に低いことが近年の疫学調査で明らかにされつつある。<BR><B>〈目的〉</B>さて,われわれの診療フィールドの一部である岐阜県の農山村に目を移したとき,はたしてその食習慣や,血液中の不飽和脂肪酸濃度の実情がどのようであるかを明らかにすれば,食の面から農山村住民にアプローチする端緒になると考え以下の検討を行った。<BR><B>〈方法〉</B>対象として岐阜県関市上之保地区の住民の協力を得ることとした。この地域は濃尾平野の北端に存在する関市に最近編入された山間部にあり,住民人口は2,100人程度,農業,林業が中心であり,高齢化率も36%を超えている地域である(調査を行った2008年の統計)。また,「海なし県」の岐阜県の中でも歴史的に海からの食料の流通が少ないため,魚食習慣もあまり多くないことが予想された。そこで毎年行われる住民検診の際に,住民の協力を得て食習慣に関する簡単なアンケートと一般血液検査の際に血清中の脂肪酸分画の測定をさせていただくこととした。文書と口頭にて検査内容を説明し文書にて検査の同意を得られた男性118名,女性189名の計307名が対象で,年齢は平均64.3±13.2歳であった。食習慣のアンケートについては対面式の聞き取り調査を行ない,脂肪酸分画の測定は株式会社BML に依頼した。魚食に関連する不飽和脂肪酸の目安としてEPA/AA 比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)を求め,これらをJELIS 研究(Japan EPA lipid intervention study)で求められた全国平均値,および岐阜市平均値と比較検討した。<BR><B>〈結果と考案〉</B>週のうち魚食をする頻度を尋ねたところ2日と答えた人が最も多く,平均2.0日,肉食は平均2.3日であった。また,魚食による不飽和脂肪酸を反映するとされるEPA/AA 比は平均で0.42±0.23と全国平均0.61±0.20,岐阜市平均0.48±0.30に比べて低値であった。また,年齢別のEPA/AA 比は男性では70歳代,女性では80歳代が高く50歳代の方が低い傾向にあった。岐阜県内での脳血管疾患標準化死亡比をみると当地での男性の比が高く魚食の少なさが関与している可能性も否定できない結果であった。<BR><B>〈結論〉</B>海から遠く位置する農山村では魚食の頻度が低いと考えられ,これは血清中の不飽和脂肪酸の分析からも裏付けられた。いくつかの疫学からEPA は動脈硬化性疾患の予防効果が示されており,特にこのような集団ではその効用が期待できる。今後は特に若い世代への魚食の促進とともに必要に応じたサプリメントなどの摂取が推奨されると考えられた。
著者
永井 豪
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.11, 2011

岐阜県の県紙,岐阜新聞で長年,記者として県内各地を歩いてきた。「地域医療」に正面から取り組んだ体験はないが,地域と地域医療は切り離せない。地方新聞の一記者のささやかな体験にすぎないが,取材で出会った「地域医療」を振り返ってみた。<BR> 直近の地方勤務は下呂。名泉と下呂膏で名高い下呂温泉に太平洋戦争末期,旧陸軍傷病兵のための医療施設ができ,これを母体に戦後,県立に移管された下呂温泉病院は,一時は温泉を活用した独自の療法でも話題を呼んだ。自治体病院はどこも大概は経営難であることは承知していたが,ちょうど地方独立行政法人に移行する直前のころで,合併により市立となった金山病院とともに,老朽化した施設の整備改修が迫られる中,現場の医師や看護師らが懸命に日々の仕事をこなしていた。地域住民にとって,さまざまな健康や病気に対する不安に応え,診療や治療を受けられる総合病院はかけがえのない存在だったが,診療科も医師数も減り,患者だけでなく医師や職員が腹ごしらえをする食堂も閉鎖された。診る側も,診られる側もいらだちや漠然とした不安は募る一方のようだった。もう2年がたって,事態はもっと深刻化しているのではないかと危惧している。<BR> 出張先のJR 下呂駅構内で倒れ,心肺停止となった男性を,たまたま通りかかった18歳の娘さんが機敏な対応で救命した。この娘さんは高山の看護学校を卒業して下呂温泉病院に就職する直前の「看護師の卵」で,実習で学んだ通りの救命措置が役立った。大きな病院も,こうした一人一人の働く人の知恵と力と勇気によって成り立っているのだろう。<BR> 地域の「あかひげ先生」に贈られるノバルティス地域医療賞がかつてチバ地域医療賞といわれていたころ,美濃加茂の開業医,黒岩翠さんの受賞式を取材した。今から15年前,原因不明の川崎病の500症例を経験,診断,治療,後遺症予防に好成績を上げ,表彰を受けた黒岩さんは「医は仁術と思って励んできた」と話しておられた。5年前に86歳で他界されたが,その診療姿勢は患者と症状をよく診るという,医の原点ともいうべきもの。平成の大合併で今は恵那市所管となった国保上矢作病院の大島紀玖夫名誉所長も故郷の先年,同じ賞を受けている。「無医村の悲劇をなくしたい一心で」「病気を診るのではなく,人を診るのが医師」など,受賞に際し,語られた言葉は一つ一つ印象的だ。<BR> 岐阜,愛知県境に位置する笠松町の松波総合病院を,木曽川に雄姿を映す現在の病棟ができた1988年に取材した。まるでホテルのロビーのような広大なエントランスホールは,大規模災害時を想定し,ここでトリアージができることをも想定したものだ。分厚い堆積層の軟弱地盤を考慮した地震に強い耐震構造で,ハード,ソフトの両面において,県境にかかわらず,このビルが見える限りの広い地域の住民の健康と安心を平時も災害時も確保できる地域医療の拠点病院であろうとした志は高い。近くヘリポートを備えた施設も増築されるという。今後は医療の質をより高め,地域の信頼に応えてほしい。<BR> 最後に,これはそもそもの話だが,今は地域がさまざまな病気に苦しんでいるといってもいい。地域が元気でなければ,地域医療もよって立つ基盤を失ってしまう。長年,地域を取材してきた記者として,地域とともに歩む地域医療であってほしいと願っている。
著者
筆谷 拓 伊藤 良剛 吉川 秋利 大竹 正一郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.68-72, 2009-07-30 (Released:2009-09-18)
参考文献数
7

〔目的〕2005年にメタボリックシンドロームの診断基準が公表され,その一つに内臓脂肪蓄積がある。その評価の手段としてウエスト周囲径の測定が用いられているが,CTでは腹腔内脂肪の面積が測定できる。被曝低減のためのCTでの撮影条件を検討した。〔方法〕臍レベルの腹部模擬ファントムを作成した。管電流を10から250mAまで,10mA間隔で設定し,ファントムを撮影した。各撮影の模擬脂肪の面積を測定した。各撮影の模擬脂肪のCT値の平均値と標準偏差値を測定した。〔結果〕脂肪面積は100mA以上で一定であった。CT値の平均値は100mA以上で一定であった。〔結論〕腹部内臓脂肪面積測定は,100mAの管電流で可能である。通常の臨床診断時の250mAと比較すると,60%の被曝低減が可能である。
著者
須田 秀俊 横山 孝子 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.103, 2010

<緒言>若月俊一により確立された八千穂村の全村健康管理事業は、50年を経過している。その始まりを調査するなかで、これは戦前からの農村保健運動の成果をとりいれた経過が明らかになったので報告する。 <結果および考察>農村医学会が発足する以前の戦時下すでに、岩手県をはじめとして産業組合が組織をあげて農村保健運動を推進していた。この実行組織として全国協同組合保健協会では、病院建設、国民健康保険代行、保健婦養成の3点に重点をおき、病院建設は岩手県、保健婦養成は島根県や山形県をモデルに進めていた。佐久病院設立においても、そのモデルは岩手県の広域医療組合であった。そのほか、労働科学研究所の農村労働調査所の成果や、当時開設された農村保健館の事業、そして恩賜財団母子愛育会による愛育村の保健婦活動の成果をとりいれていた。そして対住民の現場においては、保健婦業務支援の保健補導員を下部組織におき、産業組合病院が保健指導を支援することを理想としていた。これは、戦後昭和30年代に若月俊一が、八千穂村をフィールドとした全村健康管理活動につながる前史である。 このほか、各地の産業組合病院では、症例研究会が開催されており、栃木県の足利病院や、秋田県の平鹿病院では特に盛んであった。また無医村対策として、保健婦を町村ごとに作られた、国民健康保険組合におくことを目的に保健婦養成に力を入れていた。 しかし昭和18年に、それまで国策の健民運動にそった農村保健運動は、治安維持法違反による指導幹部逮捕により活動停止状態となり、終戦を迎えた。戦時下における保健協会の指導幹部は黒川泰一 高橋新太郎 小宮山新一の3人であった。 昭和30年代に八千穂村の全村健康管理がはじまったころは、各地で数多くの同様な取り組みがなされていた。しかし現在も継続されているのは、八千穂村(現佐久穂町)と沢内村(現西和賀町)ほか数例しかない。農村医学の性質を見出すには、農村保健運動から現在に至る普遍性とは何かの検討が必要である。
著者
関口 芳恵 坂本 由美子 宮本 和典
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.271, 2010

<はじめに> 当院は病床数900床、職員数1200名の総合病院である。2003年のオーダリング開始時に、イントラネットのホームページ(以下HP)が開設され、診療録端末にて閲覧が可能な環境にある。臨床検査部も2003年6月よりHPを開設し、2週間毎の定期更新を行っている。<BR><方法> 今回HPのアクセス状況を確認し、どのような情報が必要とされ閲覧されているか解析を行った。<BR><結果> 2003年開設当初は、月平均のアクセス数が、140件/月であった。職員向け検査部見学ツアーを開始した2006年から2008年にかけて200件/月になり、2008年以降は院内端末起動時に表示されるグループボード内からHPへのアクセスが容易になったことと、新人看護師や研修医に向けた研修会で案内を行ったことで、認知度が高まり、500件/月に伸びた。月別に見ると、年度切り替えの4月が最も多かった。項目別に見ると、トピックス(項目情報・採血管の選択・所要時間など)、オーダリングマニュアル、検査部写真館(トップページに載せている写真履歴)、検査部の旅(各部署の紹介)、採血マニュアル、感染マーカー動向調査などが、アクセス数が多かった。<BR><まとめ> アクセス件数を見ると、基礎的な情報から新着情報までニーズは多様であった。アクセスが容易になったこと、研修会などでの案内、2週間毎の定期更新を続けることで、利用者が多くなったものと推測する。当院は職員数が多く、情報の伝達が難しいところもあるので、手軽に必要な情報を收集できる環境は、業務の効率化において重要であると思われる。閉鎖的に思われがちな検査部を身近に感じていただき、チーム医療を円滑にするため、各個人が臨床検査に対する情報を有効活用できるよう、今後も情報発信を続けていきたい。
著者
檀 瑠 影 松崎 淳 井関 治 和
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.88, 2008

蛸壺型心筋症は脳出血や外科侵襲のような強いストレスが心臓に加わることによりまれに発症する。心筋基底部以外の壁運動が極度に低下し左室拡大を伴うためあたかも蛸壺のようにみえる。心不全の急性期を乗り超えれば通常一週間から数週間で左室壁運度の改善を認める。今回蛸壺型心筋症2例を経験したので報告する。症例1: 84才女性、既往歴:高血圧・高脂血症。2007年12月12日に自宅で倒れ救急車搬送来院した。頭部CTにて右後頭皮質に小さな出血巣が認められ、心電図にてV1-2 ST上昇・陰性T波および心筋逸脱酵素上昇を認めたため急性心筋梗塞が疑われ循環器入院となった。心エコー上では心室基部収縮以外左心室は動かず、たこつぼ様運動ようにみえるため蛸壺型心筋症・心不全と診断された。入院後利尿・降圧などの対症治療を行い、入院1日目より心筋逸脱酵素は徐々に下降し、入院5日目より心エコー上、心室壁運動は改善した。入院3週間後 頭部CTにて右後頭部の出血巣は認められなくなった。その後ADLをUPするため他院へ転院した。症例2: 68才女性、既往歴:2007年10月に大腸癌手術、高血圧15年。2008年1月10日、呼吸苦が生じ当院外来受診した。血液検査上では、WBC 18100/μl AST 43 IU/l CK 286 IU/l トロポニンT1.9 ng/ ml、胸部Xpでは右胸側には少量胸水を認めた。ECG上では、全誘導ST上昇。心エコー上では蛸壺様な心室壁運動、緊急心カテーテルを施行し冠状動脈に有意な狭窄を認めず、蛸壺心筋症・心不全と診断された。入院後、心不全に対して利尿剤などの対症治療を行い、心機能を改善しつつあったが、入院1週間後施行した心エコーでは左心室心尖部に新たに心内血栓を認めたため、ワーファリンの内服を開始。入院3週間後、心エコー上では心内血栓消失し心壁運度も改善した。蛸壺型心筋症は男性より高齢女性に多く(男女比 1:7)、原因は精神的ストレスは一番多く30-40%、心臓以外疾患25-30%、肉体ストレス 10-15%、事故などの外傷 10-15%に発生することが多いと報告されている。息苦しい、全身だるい、持続胸痛などとの主訴。心電図上のST上昇および陰性T波、血液検査上心筋逸脱酵素の上昇などの急性心筋梗塞様変化が認められるが、冠動脈には狭窄や閉塞などの異常は認めない。心室心尖部を中心とする広汎なバルーン状拡張と心室基底部の過収縮はよく見るパターンである。不整脈による突然死、ショック死、心破裂死の症例が存在するが、心室収縮、心電図、心筋逸脱酵素などの所見はすみやかな正常化、再発はまれで、予後は良好な疾患である。
著者
佐藤 弘子 菊地 幸代 久保田 妙子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.755-761, 2003

当院における従来の感染対策マニュアルの活用状況を調査, 分析することで, 感染対策新マニュアルの作成を行った。それをもとに職員勉強会を実施, 感染対策への職員の意識づけを目的とした。<BR>感染防止対策は医療の急速な発展, 高度化に伴い, 日々変化している。当院では早期より感染対策マニュアルを作成, 修正が行われてきたが, 活用されない現状があった。そこで, 従来のマニュアルの活用状況をアンケート調査 (n=447) し, マニュアルが活用されない原因を分析した。従来のマニュアルは, 古い, 分厚い, 読みづらいと不評であったが44.7%の人が活用していた。55.3%の活用していない人は, 見てもわからない, 必要時上司, 同僚に聞くと答えている。これらの分析結果をふまえ, 約6か月間を費やし, 理解しやすく, 活用しやすい新マニュアルを作成した。職員全員に1冊ずつ手渡し, 新マニュアルをもとに職員勉強会を実施した。新マニュアルの紹介, 院内感染の定義, ユニバーサルプレコーションについて, 手洗いの仕方, 手袋, マスクのつけ方の実技を行い知識の確認を行った。パネルディスカッション形式で行われた勉強会は出席者が多く, 感染対策への関心の高さを感じた。この勉強会を行ったことで職員の感染対策に対する意識を高めることができた。また, 新マニュアルを学ぶことにより全てのスタッフに院内感染防止の重要性を理解してもらうよい機会となった。
著者
成田 沙織 北嶋 清子 三熊 敬子 太田 幸一 赤塚 悦子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.175, 2005 (Released:2005-11-22)

【はじめに】当科では、発熱患者に対し解熱方法としてまず手技の比較的簡単な腋窩クーリングを実施する事が多いが、意識障害で体動が激しい患者には無効なことが多い。今回医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリング用具を考案し、結果を得られたので報告する。【研究目的】1.医療廃棄物をリサイクルし、腋窩クーリング用具(以下クーリン君)を作成する。2.作成したクーリン君で、有効な腋窩クーリング効果が得られる。【研究方法】1.研究期間平成17年1月10日から平成17年4月25日 2.研究方法使用済み経管栄養点滴セット(以下点滴セット)を洗浄乾燥後、EOGガス滅菌にて滅菌処理し、その中にCMC製剤(パルプ剤)を注入。シーラーで4cm間隔と2cm間隔に閉塞し切断し、市販されているクーリング製品との冷却効果を比較検討。4cmと2cmの各集団とで冷却時間が長いほうを箱にいれ冷凍し作成。洗濯ネットにいれ患者の腋窩へ使用。使用後は洗濯ネットより取り出し洗浄し再度冷凍。ネットは洗濯、乾燥の後、再度使用する。【結果】クーリン君内容物の長さと市販用品との比較では、市販のクーリング剤は急激な温度変化に対しクーリン君では緩徐な温度変化であった。更に2cmの方が4cmより緩徐であった。体温と冷却効果については、市販製品の場合開始時温度は低いが冷却時間の持続性は図れず、クーリン君では120分後の場合でも冷却効果が期待できる。【考察】今回考案したクーリン君は医療廃棄物を利用しているが経管栄養用で血液汚染が無くEOG滅菌処理を加え、パルプ材のCMC製剤を使用している為人体に安全である。CMC製剤は熱伝導に優れ、また点滴セットを細かくすることで密着性・変形性から冷却時間が長く多少の体動にもずれにくい利点がある。クーリン君は0℃以上を保つことからそのまま使用でき、市販のものと同等の作用時間があり、凍傷の徴候もみられなかったことに繋がったと考えられる。【結論】1.医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリングを考案した。2.点滴セットにCMC製剤を入れて2cmの方が冷却時間が長かった。3.内容物を2cmにすることで用意に形が変形し腋窩の深部に固定できた。4.クーリン君はそのまま使用でき市販のクーリング製品と同等の作用時間があった。5.クーリン君の程よい冷却効果は、リラクゼーション効果にもなる。
著者
中村 和行 久保田 敏行 万塩 裕之 土井 裕一 荒川 麻紀子 米山 英二 吉田 浩 祢冝田 和正 勝見 章男 岡田 密恵 佐伯 悟三 八田 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.19-28, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

安城更生病院 (以下, 当院) では, 2012年2月より麻薬管理の効率的な運用を目的として, 薬剤師が手術室に短時間出向して麻薬の受払い (払出し, 回収) を行なっている。さらに, 手術患者の麻薬受払いが一括して可能となったため, 麻薬管理を補助するための管理簿 (以下, 補助簿) を電子化して運用している。今回我々は, 当院にて構築した体制 (以下, 新管理法) による麻薬の受払い状況, 業務時間を調査し, 薬剤師介入の評価を行なった。結果, 1か月間に手術室で取り扱われた麻薬処方せん (n=647) の内, 払出し84.7% (548/647), 回収99.8% (646/647) あわせて92.3%を新管理法により運用することができた。さらに, 麻薬補助簿を電子化したことによって, 電子化前後で払出時間は53.3±9.6分から39.6±6.3分,回収時間が66.8±16.1分から41.1±13.5分とどちらも有意に短縮した (p<0.01)。新管理法の導入により, 多くの人を介した煩雑な運用は簡素化された。加えて, 麻薬補助簿電子化による効果を含めた効率的な運用が確認できた。また, 比較的短時間 (80.8±18.4分) の薬剤師介入によって, 手術室で取り扱った麻薬処方せん92.3%を新管理法により運用できることが示唆された。以上より, 薬剤師が手術室に常駐しなくても短時間介入することで病院全体の麻薬管理は効率的に運用可能であると考えられる。
著者
小森 佑美 笹井 由利子 須原 伸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.178, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。【研究方法】1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。【研究結果および考察】眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。【結論】高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
著者
岡本 歩 武山 直治 大沼 俊和 小林 加代子 上木 美智子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.255, 2006

<b>〈緒言〉</B>検診効果を高めるためには、検診及び精検受診率の向上を図り、検診及び精検機関の精度を一定以上に維持する必要がある。そのためには地域の関係機関が連携し取り組む必要がある。旧高山市住民の胃がん検診は、H11より当検診センターで実施しているが、胃がん発見率が徐々に低下傾向にあった。そこで関係機関に胃がん検診検討会への参加を呼びかけ、共にこの地域における胃がん検診の現状を分析したので報告する。<BR><b>〈検討会開催方法〉</B>内容:(1)飛騨地域胃がん登録状況(2)検診と精度管理方法、(3)検診実績、(4)検診・精検受診勧奨の方法、(5)X線写真による症例説明を、各機関が発表し意見交換した。参加機関:飛騨地域保健所、高山市保健センター。精検医療機関(市内のT病院、開業医、当院)。<BR><b>〈結果〉</B>1.胃がん登録状況の分析:表1、2より飛騨地域の胃がん罹患率は全国とほぼ同じであるが、死亡率はやや高く近年上昇している。有効な検診に向けて取り組む必要がある。<BR>2.検診結果の分析:要精検率は年々低下し、消化器集検全国集計(H15)の10.8%と比較しても低い。また胃がん発見率はH14より低下傾向で全国集計の0.15%を下回っていた(表3)。この要因の一つに、初回受診率が低いことが考えられた。検診対象者の拡大に向けて申し込み方法の検討や啓蒙活動が必要である。<BR>3.精検精度の分析:(1)精検方法はほとんどが胃カメラであったがUGIの実施もあった(図1)。精検としてUGIを実施してよいか討論した。その結果、精検の場合は検診よりきれいな写真を撮る必要があるとの意見が出された。この意見を反映し、市で配布する「胃精密検査実施医療機関一覧」は、きちんと精検を行える機関であるか検討する方向性が出された。(2)精検機関の割合は開業医が半数、残り半数が当院とT病院であった(図2)。また胃がん発見割合は、当院が半数以上、開業医3割、T病院1割以下であった(図3)。精検実施数に比例した胃がん発見数が求められ、役割を果たすために、精度を高める努力が必要である。数値より分析することで問題が明確化し方向性を見出すことができた。今回の検討会により、関係機関が胃がん検診の現状を認識し問題点を共有することができた。この会を継続し、有効な胃がん検診の実施に向けて取り組みたい。
著者
四戸 隆基 佐藤 正夫 馬場 岳士 角田 恒
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1, 2007

【目的】高齢者大腿骨近位部骨折において医療費高騰の要因とされる「社会的入院」の実態を知る.【対象】2003~2005年に加療した60歳以上の大腿骨近位部骨折症例のうち解析可能であった75例(男24,女51例)を対象とした.年齢は平均81.2歳(60~97歳).骨折型の内訳は頚部骨折39例,転子部骨折36例.治療法は保存治療1例,人工骨頭置換29例,骨接合(頚部骨折)11例,骨接合(compression hip screw,以下CHS)21例,骨接合(ネイルタイプ)13例.在院日数は平均57.3日(15~163日).【方法】主治医より本人,家族に退院勧告した日以降の入院日数を「社会的入院日数」と定義し,社会的入院日数が2週間を越える「長期群」(46例),2週間以内の「標準群」(29例)に群別し各項目を比較した.【結果】1)年齢:長期群81.7歳(60~97歳),標準群83.4歳(64~94歳).有意な差は認めず.2)歩行能力:当施設のGrade分類を用い歩行能力をGrade1からGrade4までの4段階に分けた.退院時の歩行能力は,長期群でGrade1が21例(45.7%),Grade2が11例(23.9%),Grade3が14例(30.4%).標準群でGrade1が11例(37.9%)Grade2が4例(13.8%)Grade3が13例(44.9%),Grade4が1例(3.4%).長期群で退院時歩行能力が高い傾向にあった.3)治療:長期群は人工骨頭15例(32.6%),CHS15例(32.6%),ネイル9例(19.6%),骨接合(内側)7例(15.2%),標準群は人工骨頭14例(48.3%),CHS7例(24.1%),ネイル4例(13.8%),骨接合(内側)3例(10.3%),保存治療1例(3.4%)で治療されていた.治療による差は明らかでなかった.3)退院後の生活環境:長期群で,退院後自宅生活者35例(76.1%),施設入所11例(23.9%).標準群で自宅16例(55.2%),施設13例(44.8%).長期群で自宅退院が多かった.4)社会的入院日数と在院日数:社会的入院日数と在院日数は有意な強い正の相関を示した.5)社会的入院の理由:長期群46例の退院できない主因は, 疼痛の残存と日常生活動作の不安が入院継続希望の理由である「本人の希望」が15例(32.6%), 経済的な理由や家族関係の問題を理由とした「家族の希望」が9例(19.6%), 手すり増設や段差解消等の「自宅整備のため」12例(26.1%),「施設の空き待ち」10例(21.7%).であった.中には,永久的な入院を家族が希望する例や,本人と家族の施設入所に対する意志の相違が著しく紛糾した症例もあった.【考察】当院においては,高齢者の大腿骨近位部骨折症例の在院日数は社会的入院により長期化していた.社会的入院の長期化の要因としては,実際の歩行能力や治療法,骨折型等の純粋な医学的問題よりも本人や家族の意識の問題や経済的事情,後方施設との連携の方がより重要であった.入院が長期化することは国民医療費の増大に繋がり,病床稼働率の低下に伴う病院経営の悪化や空床不足による地域医療への悪影響といった弊害をも生み出す.社会的入院長期化の改善のため医療スタッフが適切な治療や効果的なリハビリ等の「狭義の医療」に力を注ぐのは当然だが,ソーシャルワーカーと本人および家族との相互理解を深め後方施設との風通しを良くするなど「広義の医療」を実践するべく大きな視野を持つ事が望ましい.また経済的な問題も決して少なくない.介護保険の適用や診療報酬の問題など行政の対応に依存する部分については,現場の状況を最もよく知る我々が声を発信し理解を求めていくことが必要であると改めて認識した.
著者
富山 大輔 梅原 拓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.15-23, 2020 (Released:2020-07-16)
参考文献数
22

本研究の目的は,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者の日常生活活動(Activities of daily living:以下,ADL)変化に影響する因子を明らかにすることである。対象は,2017年12月から2018年6月の間に訪問リハを6か月間利用した者とし,疾患による除外基準は設定しなかった。調査時期は,調査開始時と6か月後とし,基本情報,握力,Bedside Mobility Scale(以下,BMS),Functional Independence Measure(以下,FIM)を調査した。握力,BMS,FIMについては変化量(6か月後-調査開始時)を算出し,FIM変化量に影響する因子を検討した。対象者は35名であった(平均年齢77.4±10.4歳,女性21名)。重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,発症からの期間,握力変化量,BMS変化量が影響因子として抽出された。標準偏回帰係数は,発症からの期間で-0.331,握力変化量で0.353,BMS変化量で0.320であった。自由度調整済み決定係数は0.392であった。訪問リハ利用6か月後のADL向上には,発症後早期からの介入,握力の改善,ベッド周囲動作能力の改善が重要であることが示唆された。