著者
小森 佑美 笹井 由利子 須原 伸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.178, 2008

【はじめに】<BR>現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。<BR>【研究方法】<BR>1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。<BR>【研究結果および考察】<BR>眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。<BR>【結論】<BR>高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
著者
本宮 真 渡辺 直也 紺野 拓也 安井 啓悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.52-57, 2018 (Released:2018-06-23)
参考文献数
14

北海道における労働災害(労災)の現状は,致死的な災害の対策により死亡者数は減少傾向にあるが,一方で非致死的な労災事故対策は不十分とされている。北海道十勝管内における非致死的な労災外傷の状況を明らかにするため,十勝管内で唯一3次救命センターを備えた総合病院である当院の整形外科における労災外傷の現状を調査し,多数回手術症例に関して検討した。2013年11月~2016年7月までの整形外科受診患者のうち,労災保険を利用して加療を行なった全患者を対象とし,年齢・性別・職業・受傷機転・受傷部位(上肢・下肢・脊柱)・疾患名・手術回数を調査した。全労災症例数は818件あり,平均年齢は47歳(16~82歳)であった。受傷部位は上肢482件,下肢273件,脊柱123件と上肢の外傷が最多であった。371件に手術が施行されており,3回以上の手術を要した重度症例は37件(上肢28,下肢11)であった。職業は1次産業が19件,2次産業は14件で,受傷原因は農工業機械による巻き込まれが19件であった。多数回手術例は,上肢複合組織損傷例または軟部欠損を伴う重度下肢外傷例のいずれかであった。重度上下肢外傷は軟部組織損傷を伴うため,複数回の手術を含む長期の加療が必要となる。今後より詳細に労災外傷の状況を検討し労災外傷の発生予防策を検討するとともに,積極的な治療による後遺症の軽減,および職業復帰支援を計画していく予定である。
著者
山田 雅子 勝山 奈々美 中川 映里 花村 真梨子 諸星 浩美 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.448, 2011

(緒言)近年、身体拘束を廃止しようと医療機関では拘束廃止の取り組みが増加してきている。抑制には紐で縛る抑制「フィジカルロック」、薬物による抑制「ドラッグロック」、言葉による抑制「スピーチロック」があることを知った。私たちは「動かないで!」等の言葉を、言葉による抑制であるという意識なく患者に使用していることに気付いた。そこで、医療現場で勤務する看護師を対象に言葉による抑制「スピーチロック」について意識調査を行った。(方法)看護師174名に独自で作成したアンケート用紙を用いて実施した。1)看護師の背景、2)スピーチロックの認知度、3)例題の言葉に対する認識の程度、等5項目に対し記入を求めた。(結果) スピーチロックを「知っている」と回答した者は26.6%であった。言い方の変化としてスピーチロックと認識されるのは「ちょっと待って!!」が43.2%であることに対し、「ちょっとお待ちください」が1.9%と、差がみられた。スピーチロックと捉える言葉を「毎日聞く」と回答した者は50%を占めた。(考察)言葉は目に見えないもので、抑制であるという定義づけが難しく、他の身体抑制よりも看護師の認識が薄い。そのため不必要な抑制は行わないように心がけていても、言葉で相手を抑制している現状があることを知った。同じ意味でも言葉を変えるだけで抑制に対しての感じ方も変わってくることがわかり、接遇とスピーチロックは関係が深く、接遇の改善でスピーチロックを減らすことができると考える。看護は人と人とのつながりであり、良い接遇は不必要な抑制を減らし、良い看護につながると、多くの看護師が感じていた。看護の現場ではスピーチロックという言葉に対する認識は薄いが、スピーチロックにならないための対策を考えていく必要がある。
著者
上田 厚 青山 公治 藤田 委由 上田 忠子 萬田 芙美 松下 敏夫 野村 茂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-66, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

菊栽培従事者の男子47%, 女子62%に, 作業に関連した鼻, 呼吸器症状および皮膚症状がみられた。前者は選花作業時'後者は農薬散布時に自覚されることが多いようであった。菊および農薬に対するパッチテスト, プリげクテスト'血清免疫グロブリン値測定, 鼻汁検査などにより, 前者の症状は即時型, 後者は遅延型アレルギーの関与が示唆された。また, これらのアレルギー学的検査所見の有無と, 菊および農薬の暴露量には若干の関連が認められた。アレルギー所見は, 菊の品種別では, 大芳花に最も高率で'ついでステッフマン, 金盃, 寒山陽などであったが'主として大輸株に即時型'小菊株に遅延型の症状が集積している傾向を認めた。しかしながら, 各品種と検査所見との関連をφ係数で検討すると'アレルギー学的検査所見との関連のとくに著しい品種は検出されなかった。また'皮膚症状については, パッチテスト成績などよりみて, 菊よりもむしろ農薬の関与が強いと思われる成績が得られた。このように, 菊栽培従事者の多くは, 作業に伴い菊や農薬の慢性的な暴露を受け, それに感作された状態にあることが確かめられた。さらに, それらによるアレルギー症状は, その他の作業環境における種々のallergenに様々に修飾されて発現するものであることが示唆された。
著者
山崎 良子 五十嵐 久美子 小川 真理子 池田 真由美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.169, 2007

〈緒言〉 平成17年10月の新築移転に際し病棟が泌尿器科・循環器内科・血液内科・血管外科の4科で再編成された。看護部では固定チームナーシングが導入され看護を実践している。A病棟ではAチームを泌尿器科、Bチームを残りの3科でチーム編成した。近年、ドックや検診等で前立腺PSAの検査導入により前立腺生検(以後、P生検と略す)を行う対象が増え2泊3日の短期入院が増加した。また、AMIの緊急入院や心臓カテーテル検査(以後、心カテと略す)入院、血液内科の連日の検査や化学療法、輸血療法、血管外科の2泊3日の検査入院と1日平均6~7人の入院がある。病室単位でチームを分けている為、退院患者を待って入院をいれている。A・Bチームに関係なく入院が入る為、1部屋にA・B両方の看護師が出入りすることは常であり固定チームナーシングが機能していない状況である。そこで、看護スタッフがお互いのチームの特徴を知り、チーム間の応援・協力体制を充実させることで、日々の看護業務を円滑にし患者へより良い看護が提供できるように、当病棟における応援体制について研究したのでここに報告する。〈方法〉 1、対象 A病棟看護スタッフ22~24人2、期間 平成18年7月~平成19年2月3、方法 _丸1_各科チェックリストの作成 _丸2_チェックリストについてアンケート調査・分析・活用_丸3_応援マニュアルの修正〈結果〉チーム編成にあたり看護問題の共通性からPPC方式では患者グループ分けができず、病室単位でグループを分けた。しかし、4科の特殊性が強く1部屋にそれぞれの患者が入るとそれぞれのチームの看護師が入り看護してきた。その為、患者はどちらの看護師に頼んだらよいかわからず、頼んでも反対チームの看護師だと最後まで責任もって行えないことがあり1部屋1チームで看護できないかと考えた。その為に循環器・泌尿器科・血液内科・血管外科4科の特徴を知るように各科のチェックリストを作成した。(90項目)作成後、チェックリストについてのアンケート調査を行った。その結果、ただ、項目があってもわからない。チェックリストとしては技術的にも内容的にも細かすぎる、などの意見が聞かれた。そこで、5東では応援体制に何が必要かを考え応援体制に必要なラインを決め行った。1・各科のチェックリストから最低限経験または知ってほしい項目をあげる。2・チームで声をかけあい経験できるようにしていく。その結果、チェック項目を18に絞り、経験できるように日々の業務の中に取り入れた。また、経験前にシュミレーションすることでチェック項目が受け入れられるのではないかと考え、それぞれのチーム会でAチームには心臓カテーテル検査入院についてBチームには前立腺生検入院についてのオリエンテーションを行った。この前後にアンケート調査を行った。オリエンテーション前より後の方が出来ない、聞きながら出来る、のわりあいが減り、出来るが増えている。その為、日勤のスタッフでA/Bチームを問わず入院を取る事ができるようになり、退院まで一貫して看る事ができるようになった。
著者
佐藤 栄子 細金 佳子 佐藤 加代美 尾見 朝子 片桐 善陽
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.88, 2007

_I_ はじめに 当病棟は脳血管疾患などにより、片麻痺、四肢麻痺の患者が多数を占めている。上肢に麻痺がある場合、手掌部が屈曲、拘縮により湿潤し不潔になりやすく悪臭を伴いやすい。そこで、消臭、除湿、空気清浄化に効果があり、安全、安価で洗って再利用できるという利点を持つ木炭を用いて、消臭効果を試みた。_II_ 研究目的:木炭パックを使用することにより、麻痺側手掌の不快臭が軽減でき、有効性を知る。_III_ 研究方法1 対象患者 手指拘縮の患者男性2名 女性1名2 調査方法調査期間 平成19年2月18日~2月24日麻痺側の手掌内に木炭パックを握らない状態で入浴当日の入浴前後、入浴後の3日間を6段階臭気強度表示法を用いて職員5人が測定し平均値を出す。次に木炭パックを使用した状態で同様に調査を行う。_IV_ 結果A氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.2であった。入浴直後は1.4、木炭パックを使用してから1、2日目は徐々に減り3日目は0までいった。B氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値0.4であった。入浴直後は0に減ったが、木炭パックを使用してから3日間ともに数値の変化が少なく、3日目は0.4となった。C氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.6であった。入浴直後は0.2、木炭パックを使用してから1日目が0まで低下。しかし2日目は4.2と増加し、3日目には1.6となった。_V_ 考察今回、木炭を使用して、手掌内の不快臭を消臭できるかと研究を試みた。対象となった患者は全員、週2回の入浴のみであり、手掌内が汚れていない限り手洗いは行っていない。また、見た目の変化も少ないことから臭気における対策ができていなかった。入浴前の不快臭は強く、入浴により不快臭が減少し、時間、日数が経過とともに不快臭の数値が上昇するものと考えていた。結果、3人の対象患者の手掌内の不快臭の消臭効果は木炭パック使用前に比べて数値的に効果があったといえる。A氏B氏共に使用後の数値はほぼ無臭に近い少数点での平均値を出すことが出来た。C氏は研究途中の2日目に木炭パックが手掌内から外れていたため、数値がその日だけ異常に上昇していたことが予測できる。外れていると効果がないということであり、例え短時間でも外れていた場面で数値は上昇し、その後装着した翌日には数値は減少した。このことから、木炭パックの消臭効果は高いといえる。しかし、麻痺側の手掌内に木炭パックを装着するということは容易に出来ることではなく、今後は握らせ方の工夫が必要である。今回は臭いを6段階臭気強度表示法を使用し平均値を出すという方法で行ったため、臭覚の個人差は少なかった。木炭の消臭効果により数値的変動は少なく、おおむね不快臭は軽減できる結果が出た。 _VI_ 結論木炭には消臭の効果があり、その効果は麻痺手の不快臭の軽減にも有効である。麻痺側手掌だけではなく棟内のさまざまな臭いの消臭に木炭を活用することで、良い療養環境を提供していきたい。
著者
永美 大志 西垣 良夫 矢島 伸樹 浅沼 信治 臼田 誠 広澤 三和子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.2, 2005

<はじめに><BR> 農薬中毒(障害)において、パラコート剤による中毒は、死亡率、死亡数の高さから重要な位置を占める。演者らは、本学会の農薬中毒臨床例特別研究班として、1998-2003年度の調査を担当し、調査の概要を報告してきた(西垣ら 2002、2005)。ここでは、自殺企図によるパラコート中毒について考察する。<BR><方法><BR> 本学会が行なってきた農薬中毒(障害)臨床例調査の1998-2003年度分の中で、自殺企図でパラコート製剤を服毒した症例71例について、製剤、性、年令階級、服毒量などと転帰との関係について検討した。<BR><結果><BR>1.製剤別の転帰<BR> パラコート製剤は、1960年代に販売され始めたが、その中毒による死亡の多さに鑑み、1986年に24%製剤(主な商品名;グラモキソン、以下「高濃度製剤」)の販売が自粛され、5%パラコート+7%ジクワット製剤(主な商品名;プリグロックスL、マイゼット、以下「低濃度製剤」)が販売されるようになった。高濃度製剤の販売自粛から10年以上経過した、1998-2003年の調査でも高濃度製剤を用いた自殺症例はあり、8例全てが死亡した。一方、低濃度製剤による症例は48例あり39例(81%)が死亡した。また、尿定性、血中濃度の測定などからパラコートの服毒であることは明らかであるが製剤名が不明であった15症例も全て死亡した。<BR>2.性別の転帰<BR> 性別では、症例数で、男31例、女39例であり、死亡数(率)は、男25例(81%)、女36例(92%)であった。<BR>3.年令階級別の転帰 症例を、20-49才、50-69才、70-89才の3群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、17/21(81%)、23/27(85%)、22/23(96%)であり、比較的若い群でも死亡率が高かった。4.服毒量と転帰<BR> 高濃度製剤、製剤名不明の症例については、上記のとおり死亡例のみである。低濃度製剤については、20mL以下、50mL以下、50mLを超える量を服毒した群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、4/9(44%)、2/4(50%)、22/23(96%)であり、数十mLの服毒であっても、半数近くが死亡し、50mLを超える群ではほとんどが死亡した。<BR>5.尿定性と転帰<BR> 尿定性の判定結果を、陰性、陽性、強陽性に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、1/2、12/17、24/27であり、陽性で71%が、強陽性では89%が死亡した。<BR>6.血清中パラコート濃度<BR> Proudfood(1979)が提案した、50%生存曲線との比較を行なったところ、おおむね、死亡例は曲線の上に、生存例は曲線の下に位置した。<BR><まとめ><BR> パラコート中毒の転帰を予測する因子としては、服毒量、服毒からの時間と血清中濃度などが考えられた。<BR><謝辞><BR> 本調査にご協力いただいた、全国の医療施設の方々に、深謝いたします。<BR><文献><BR>西垣良夫 他(2002).日農医誌 51:95-104 <BR>西垣良夫 他(2005).日農医誌 (投稿中) <BR>Proudfood AT et al.(1979) Lancet 1979;ii:330-332
著者
三浦 篤史 青木 芙美 桃井 宏樹 柳沢 国道 大井 敬子 大橋 正明 竹内 玲子 小林 由美子 佐々木 由美 大倉 輝明 跡部 治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.719-725, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
6

佐久総合病院では,筋弛緩薬,カリウム製剤などはハイリスク薬として扱われているが,インスリンは事故防止のために標準化された対策がなされていない。今回我々は,多職種に渡ったチームを構成し医療改善運動を行なった。チームでは薬剤師が中心となり,Quality Control (QC) 手法を利用してインスリン投与の過誤を防止するための対策に取り組んだ。その結果,インスリン取り扱いに関するヒヤリ・ハットは減少した。薬剤に関したヒヤリ・ハット事例は多く,薬剤師のリスクマネジメントに果たす役割は大きいと考えられる。今後,薬剤師は積極的にリスクマネジメントに関わり,医薬品が関与する医療事故を未然に防止することが望まれる。そのことからも,QC手法を活用し,医療改善運動に取り組むことは効果的な活動と考えられた。
著者
石田 智子 大石 博美 八子 圭子 小黒 弘美 佐藤 ちよ子 山本 卓 殷 煕安
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.147, 2005

【はじめに】<BR>2004年10月23日17時56分中越地震発生。当日医師1名、看護師4名、臨床工学士2名で外来患者29名(内護送9名)の二部透析中だった。地震発生当日から依頼透析を経て透析再開に至るまでの4日間の経過をまとめたので、ここに報告する。<BR>【経過】<BR>地震当日<BR>17時56分震度6弱の地震発生。度重なる余震があり3回目の余震時配管の破損により水の供給が停止、水漏れがセンター内に広がる。この様な状況の中で、医師より指示があり返血を開始する。<BR>18時11分、5回目の余震で天井からも水が漏れる。更に蛍光灯が次々に落下したため返血から離脱へ指示が変更になる。<BR>18時30分離脱完了後センター床には、割れた蛍光灯が散乱、足首まで水がきており、入り口の防火扉も閉まっている状況の中歩ける人は当院から100メートル程離れた避難場所へ誘導、車椅子の人は、エレベーター使用不可の為スタッフ2-3人で1階まで移動した。<BR>19時20分全員の避難が完了、患者の状態を確認し抜針する。<BR>19時40分患者の帰宅開始。帰宅できない患者を病院玄関ホールへ移動。交通手段のない患者に対し、スタッフが道路状況を確認しながら車で送迎。22時過ぎ最後の患者を家人が迎えに来て、全員の帰宅が完了。<BR>10月24日(地震発生後1日目)復旧作業開始したが、給水管の破損のため透析再開不可能にて10月25,26日の両日他施設に、依頼することになる。<BR>その為患者に電話連絡し依頼透析を行なうことになった旨を伝え、場所と時間、交通手段の確認を行なう。他施設に持っていく書類、ダイアライザー、回路等の準備も平行して行なった。<BR>また連絡の取れない患者に向け、当院で透析が出来ない為連絡してほしいと放送局に依頼。<BR>10月25,26日(地震発生後2・3日目)2施設にそれぞれ1日約30名ずつ透析を依頼、その際に看護師4名がそれぞれの施設に付き添うこととした。当院に残ったスタッフは患者連絡や復旧作業、病棟透析にあたった。<BR>【反省、問題点】<BR>地震発生時医師がセンターにいた為指示、判断がすぐ伝わり速やかに行動する事が出来た。しかし、医師不在時に誰がどのように指示し、連絡行動をしていくのか考えていく必要があると思う。その他、返血する際の優先順位・交通手段のない患者の帰宅方法も検討課題としてあげられる。<BR>院内の被害状況については、透析センターが渡り廊下を挟み病棟とは違う棟にあるため、地震直後病院側、透析スタッフ双方お互いの被害状況を把握しきれなかった。全館放送等情報の伝達手段の検討が必要とされる。<BR>患者に連絡を取るさい、避難場所が分からず苦労したが、今後行政やメディアの活用について事前に情報を得て有効利用できる方法を考えていかなければならない。依頼透析に関しては、受け入れ先の情報を確認した上での準備が必要だと思われる。30名という多人数の依頼だった為双方共に混乱し大変ではあったが、患者にとっては顔なじみのスタッフがいることから安心感を得られたようだった。しかし、移動に片道1時間から1時間30分かかり患者負担が大きかったと思われる。<BR>【まとめ】<BR>今回の経験を通して、災害時の問題点や課題を基に災害対策マニュアルを検討中である。今後様々な災害を想定したマニュアルも作成していきたい。
著者
岡林 義弘 清水 武 安藤 芳之 西田 正方 北村 純 太田 正隆 佐々木 俊哉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.927-932, 1990

最近の高令化に伴い, 大腸癌の増加が謂われており, われわれは農村地域における大腸癌の実態を知るため調査を行なった。<BR>昭和48年より15年間の大腸癌症例は, 338例で性差はなく, 60才代がもっとも多く, 次いで70才代と60才以上の患者が62%を占めた。<BR>部位に関しては, 直腸が140例41%ともっとも多く次いでS状結腸であった。切除率は94.3%, 治癒切除は68.3%に可能で, 治療切除例の累積5年生存率は77%, 10年生存65.9%であった。<BR>大腸早期癌は24例と小数で, ほとんどが進行癌であり, 糞便潜血スクリーニング検査による大腸癌集検もようやく普及の段階になり, 今後は検診数を増して早期発見, 治療に努めねばならない。このほかpm癌, 腸閉塞をきたした癌などについても検討を加えた。
著者
有馬 聡一郎 佐川 京子 北川 千佳子 河村 加代子 藤原 拓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.168, 2010

<はじめに>MSWとして様々な疾患を抱える患者と関わる中で、医療費の支払いに苦慮している患者への対応を行う場面は多い。中でも近年外来化学療法を受けている患者からの相談が増加しており、この要因としては、DPC導入に伴う化学療法の「入院治療」から「外来治療」へのシフトが考えられる。この度「治療と生活」を両立することが困難になり、主治医に治療中止を申し出た患者が来談した一事例を報告する。<患者情報>60歳男性 膵臓がんを罹患。仕事もできなくなり約10万円の傷病手当で生活。月約7万円の治療費と通院費が生活を圧迫し、食事の回数を減らすなど日常生活も破綻している状況。親族の援助も得られず自暴自棄となる。幸い治療は奏功しがんの進行は抑えられているが、治療を断念する旨主治医に申し出る。<関わりと経過>患者の情報収集を行い、後日面談。直接生活暦や世帯状況、収入や生活費について細かく情報を得ることで、多角的視点から生活実態を把握。これにより以前福祉事務所へ相談に行きながらも断念した「生活保護」の申請が可能であることを確認。MSWより福祉事務所へ治療を断念するまでの経緯について詳細な情報を提供し患者にも生活保護申請を進言した。その申請も受理され、生活保護は決定した。治療費の不安が軽減した患者は表情も良く、当院への通院治療を続けている。<考察>経済的事情で「治療と生活」の両立が困難な患者は、非常に厳しい選択を迫られる場面がある。生きるために必要であるはずの治療が生活を破綻に導くのは本末転倒である。このたびの事例で適切なタイミングでのMSWの介入が治療継続に繋がることがわかった。<おわりに> 病気や障害を抱える患者はそれだけでも相当なストレスを被り、またそれに伴い社会的な不安や負担も増大する。MSWはそれに対応し、療養上の負担を軽減できるよう、また治療に専念してもらえるようなアプローチが求められる。
著者
斉藤 匡昭 宮川 孝子 佐々木 こず恵 山崎 とみ子 高橋 明美 小野 文徳 秋山 博実 小野地 章一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.331, 2007

〈緒言〉<BR>平成19年4月よりがん対策基本法が施行され、がん疼痛における対策が明文化された。当院では、平成18年7月に緩和ケアチームが発足した。それに伴い、薬剤科でも、緩和ケアにおける取り組みを行ってきた。当院は平成19年1月にがん診療連携拠点病院に指定された。<BR>これまでの当院の緩和ケアチームの活動と緩和ケアにおける薬剤科の取り組みについて報告する。<BR>〈概要〉<BR>1)緩和ケアチームの業務は、依頼された患者の緩和ケア実施計画書の作成と主治医への助言・協力、退院後の緩和ケア体制の調整、月2回の病棟回診およびチームカンファレンスである。 構成員はチーム本体が医師2名、薬剤師2名、看護師4名。チーム活動に協力する支援ナースが病棟看護師12名と外来看護師1名となっている。<BR>2)薬剤科での取り組みは全職員対象の緩和ケア勉強会では薬剤師が今まで2回に渡って講演を行った。<BR> 月に1度、支援ナース単独の勉強会では薬剤師が薬剤について解説している。勉強会後に補足が必要な場合は院内LANで資料を配布している。平成19年4月に疼痛治療マニュアルを作成し各病棟に配布した。また医師が携帯出来るような縮小版も作成した。原案は薬剤科で検討した。その他、オピオイドの薬物動態表や換算表をポケット携帯版にしてチームメンバーに配布した。<BR>〈症例〉<BR>主病名は胃がん、すい臓がん。<BR>心窩部痛にて近医を受診し胃カメラ検査を受けたところ精査が必要と言われ、総合病院を紹介され、胃がん、膵がん、癌性腹膜炎、肝転移と診断され予後は1~2ヶ月と告知された。その後、本人が希望して当院を受診、疼痛緩和を目的に入院となった。<BR>痛みへの不安と告知による精神的な落ち込みが強いためチームでは在宅へ向けた精神的ケアと十分な鎮痛を緩和ケアの目標とした。<BR>疼痛は腹部が著名であった。依頼時はデュロテップパッチ2.5mgを貼付されていたが鎮痛不十分で、モルヒネ筋注によるレスキューをしばしば使用、他、嘔気を伴っていた。そこで、チームではデュロテップパッチの5mgへの増量と嘔気予防としてノバミンの内服、レスキューとしてオプソ内服液の使用を助言した。<BR> その後、疼痛コントロールは良好となり、嘔気も消失した。入院当初は「家に帰ることは考えられない」と話していたが、徐々に精神的動揺も減り、年末年始には自宅に外泊も可能となった。<BR>〈今後の課題〉<BR>緩和ケアチームとしては、主治医との連携を強化し、医師会、薬剤師会等に働きかけ、在宅緩和ケアに向けた地域医療連携体制を構築できるよう努めていきたい。<BR>薬剤科としては、病棟薬剤師とチーム薬剤師間で患者情報の共有を図り、連携の強化や医師の処方に積極的に支援できるよう個々のレベルを上げていきたいと思う。<BR>
著者
渡辺 隆行 大城 貞次 守田 昌美 八木 敦子 今井 厚 寺島 茂 高野 靖悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.104, 2009

〈はじめに〉わが国のHelicobacter pylori(以下H. ピロ<BR>リ)感染者は推定5,000万人とも言われている。H. ピロリ<BR>は胃炎や胃十二指腸潰瘍の主な原因として,さらに胃癌と<BR>の関わりも注目されている。当院では2005年よりH. ピロ<BR>リ感染診断と除菌判定法の検査として尿素呼気試験,2008<BR>年4月より尿中H. ピロリ抗体検査を行っている。尿素呼<BR>気試験は非侵襲的,簡便で感度,特異度ともに高く,尿素<BR>呼気試験陰性の場合は除菌成功の信頼性は高い。<BR>〈目的〉H. ピロリ検査の現状を把握し,スクリーニング<BR>検査として人間ドックに新規検査項目としての導入効果が<BR>あるか検討した。<BR>〈方法〉2008年2月から2009年1月までの1年間における<BR>尿素呼気試験440件の陽性率,年代別検査依頼数と陽性<BR>率,尿中H. ピロリ抗体の陽性率と尿素呼気試験陽性患者<BR>の除菌治療後の除菌成功率について検討した。<BR>〈結果〉尿素呼気試験陽性率は27%であった。年代別検査<BR>依頼数と陽性率を比較すると,30代では42件で38%,40代<BR>では66件で23%,50代では105件で23%,60代では151件で<BR>26%,70代では58件で33%,80代以上では14件で29%で<BR>あった。尿中H. ピロリ抗体の陽性率は58%であった。陽<BR>性患者の除菌治療後の除菌成功率は85%であった。<BR>〈考察〉尿素呼気試験陽性患者の除菌治療後の除菌失敗率<BR>は15%であった。薬剤耐性菌の存在も確認されたとの報告<BR>もあり,1回の除菌だけでは効果がない場合も考えられ<BR>る。尿素呼気試験と尿中H. ピロリ抗体との陽性率の比較<BR>では,尿素呼気試験の陽性率が低くなったことからも,今<BR>後,人間ドックのスクリーニング検査としては,検体採取<BR>が容易で迅速に結果報告が可能な尿中H. ピロリ抗体を行<BR>い,除菌後は尿素呼気試験でH. ピロリの有無を評価する<BR>方法を提案していきたい。<BR>
著者
谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.370, 2007

新型インフルエンザによるパンデミックは、20世紀に入って以降、1918-19年、1957-58年、1968-69年と3回が記録されており、それぞれ、スペインインフルエンザ(原因ウイルスはA/H1N1亜型)、アジアインフルエンザ(A/H2N2亜型)、香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)と呼ばれているが、その後、2005年現在までパンデミックの発生はみられていない。インフルエンザに関する科学的知見が蓄積されるにつれ、再びパンデミックがおこることが懸念され、1993年にはドイツでの第7回ヨーロッパインフルエンザ会議、また1995年に米国でのパンデミックインフルエンザ会議での報告をはじめとして、多くの専門家から「人の世界において流行する新型インフルエンザウイルスが早ければ数年のうちに出現する」との警告が出されていた。世界保健機関(WHO)は、1999年4月に、Influenza pandemic preparedness plan. The role of WHO and guidelines for national or regional planning. Geneva, Switzerland, April 1999を発表し、各国でPandemic Planを策定することを勧告し、2005年5月には、WHO global influenza preparedness plan. The role of WHO and recommendations for national measures before and during pandemics.(グローバルインフルエンザ事前対策計画)を発表してその具体的な方針を示したことから、世界各国のパンデミックプランの策定は促進された。そして、近年の鳥インフルエンザのヒトへの感染事例の多発を受けて、現在世界では、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスがヒト世界に侵入してパンデミックを起こすのではないかという目前の脅威に対して莫大な予算をかけて準備を進めており、本邦においても、2007年度末に新型インフルエンザ専門家会議が、サーベイランス、公衆衛生対策、ワクチン及び抗ウイルス薬、医療、情報提供・共有の5つの部門別に設置され、2007年3月にそれぞれのガイドラインとしてまとめられた。もちろん、この背景にはこれまでの歴史的な背景からH5N1亜型のような高病原性の鳥インフルエンザウイルスはヒト世界には侵入しないのではないかと議論も理解した上で、これが近い未来にパンデミックを起こさなかったとしても、他の亜型による発生の危険性は依然として存在する。また、これに対して準備を進めることは、大地震、ハリケーン、津波などの自然災害、バイオテロなどの人為災害、すべての健康危機から国民を守ることにつながるという国家戦略としての危機管理の考え方がある。ここでは、歴史的なLesson Learnedや世界の対応状況をもとに、パンデミック対策の戦略を考えてみたい。
著者
澁谷 直美 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.352, 2007

〈緒言〉高齢者の骨密度増加に及ぼす因子について3年前の本学会で報告した。つまり、運動習慣を増やした群において、1年後に骨密度が増加しており、食生活においてカルシウム摂取を増した群では、骨密度の低下が少なかった。今回は例数を増やし、また経過観察期間を2年後とし、高齢者の骨密度増加に関わる要因を再検討した。〈対象〉JA高岡、JAいなば、JA氷見市の協力を得て、承諾が得られた転倒予防教室等に参加した60歳以上の男女で、平成13年度から平成18年度の5年間の測定期間のうち、2年後の測定値が得られた者。〈方法〉超音波を用い、骨量を踵骨にて測定(US法、アキレス)。SOS値(皮質骨測定値)とBUA値(海綿骨測定値、以下BUAとする)のうち、今回はBUA値を用い、現病歴・既往歴、身体活動量の変化や食事内容の変化による2年後のBUA変化率を比較検討した。〈結果・考察〉対象者数は、男56名(平均年齢75.1歳)、女236名(平均年齢73.5歳)である。そのうち増加者は男21名37.7%、女89名37.7%であった。2年後の平均BUA変化率は男-1.77%、女-1.46%で男女とも骨密度が減少していたが、男の方がより減少していた。<BR>胃や腸の手術歴がある者は、男性7名、女性9名で、平均BUA変化率は男性-5.77%、女性-3.88%であった。関節リウマチや腰痛・膝痛等の整形外科的疾患の既往のある者は、男性9名、女性46名で、平均BUA変化率は男性-3.96%、女性-2.07%であった。脳出血や脳梗塞の既往のある者は女性4名で平均BUA変化率は、-8.02%であった。胃や腸の手術歴は骨吸収を悪くするため骨密度が低下したと考えられる。また、整形外科的疾患や脳血管疾患は、運動による刺激が少なくなるため骨密度が低下したと考えられる。今までより身体活動を増やしたと答えた者は、女性25名で、平均BUA変化率は+1.33%で増加していた。運動の種類で、布団上での体操や屋内での軽度の身体活動を増やした者等を除き、より活動的な散歩やペタンクなどの屋外での活動を増やした者は12名で、平均BUA変化率は+4.48%であった。高齢者でも運動を増やすこと、特に屋外での運動を増やすことで、骨密度が増加すると考えられた。今までより身体活動量が減った者は、女性では11名で、平均BUA変化率は-2.65%であった。食事に注意した者は女性で22名であった。平均BUA変化率は2.48%で骨密度は増加していた。牛乳やヨーグルトを食べるようにした者の他に、ひじきや小魚を粉にして食べたなど食べ方に工夫をした者がいた。〈まとめ〉2年間に、運動を積極的にとりいれたり、カルシウムをより多くとること等、生活習慣を変えることにより、高齢者においても骨密度が増加すると考えられた。
著者
土屋 千恵 郷道 順子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.262, 2007

〈緒言〉核家族化、少子化が進む現代社会において、父親の育児参加の必要性が論じられている。国単位での調査、報告が進む中、高度経済成長時代の親役割分業制から、父親も育児参加はしているもののまだまだ母親の負担が大きい。当院でも妊娠中、分娩、産後と父親への関わりを持っているが、母親と比べ、児の誕生と共に親としての役割を果たしていくのは難しいと感じた。そこで、妊娠後期に父親、母親となる為に、何を考え、どう行動しているのか現状を知り、私たち産科スタッフがどう関われば親を育む一助となれるのか検討したのでここに報告する。<BR>〈対象及び方法〉当院産婦人科に通う妊娠30週以降の妊婦とその夫41組(帰省分娩を除く)にアンケートを配布、回収した。分析では先行研究と研究者が育児参加に影響を及ぼすと考えた「子どもの数」、「夫自身の父親の育児協力」を因子として、質問したそれぞれの項目とχ2検定、一元配置分散分析を行った。<BR>〈結果〉本研究において育児参加に影響を及ぼすと考えた因子、子どもの数、夫自身の父親の育児協力についてのそれぞれの項目とχ<SUP>2</SUP>検定(p<0.05)を行ったが、帰宅時間以外での関係性はみられなかった。また、子どもがうまれたらどのような育児協力をしようと思っているかの項目と家族構成、夫自身の父親の育児協力、赤ちゃんの面倒をみた事があるかどうかの因子で一元配置分散分析を行ったが、こちらも関係性はみられなかった。<BR> 対象者は核家族が7割を占め、すでに子どもを有している夫婦が半数であった。子どもがおらず、赤ちゃんの面倒をみた事がある夫は約20%だった。夫自身の父親が育児に協力的だと思っていた夫は48%いた。妻の妊娠を肯定的に受け止め、胎児の成長を喜び、妊娠に関して肯定的な感情が多かったが、母親学級や助産師外来の夫の参加は2割に満たなかった。育児参加について、赤ちゃんが生まれたら「おむつ交換」「沐浴」「抱っこ、あやす」など高い割合で手伝おう、手伝いたいと思っていることがわかった。妻に夫に希望する育児行動を質問したところ、ほぼ同じ項目であった。育児行動に優先順位をつけてもらうと夫は「おむつ交換」などの直接的な育児行動が順位として高く、妻は直接的な育児行動のほかに「精神的なねぎらい」の順位が高かった。<BR>〈考察〉赤ちゃんの接触体験や自分自身の父親の育児協力、夫婦が有している子どもの数が育児参加に影響を及ぼすという結果は得られなかった。アンケートの結果から多くの夫は妊娠、胎児に関心を持ち、肯定的な感情を抱いており、育児に参加しようという気持ちも持っている。その気持ちが実際の育児行動につながるように、妊娠中から多くの夫が母親学級や助産師外来に参加できるような取り組みが必要と感じた。また、妻は夫が考えている以上に精神的なねぎらいを求めており、直接的な育児行動だけではない、共に親として子を育て、共に助け、支えあう存在としての夫を求めていると考えられる。
著者
西山 邦隆 沢田 幸正 細川 可興 臼谷 三郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.181-186, 1978

In application of organophosphorus pesticides (800-fold dilution of Sumithion and 1500-fold dilution of Diazinon) for the control of disease and insect damages to apples, the amount of exposure to the pesticides, blood levels of the pesticides, and liver function tests of the workers engaging in the application work were observed. Its summary was as follows;<BR>1. The concentration of pesticides inhaled by each worker engaging in the fixed piping joint control was calculated as 0.030&plusmn;0.042mg/m<SUP>3</SUP> (mean&plusmn;S. E.).<BR>2 Analysis of the correlation between the inhaled amounts of pesticides and the air velocity disclosed that was a statistically significant positive correlation between the two parameters. Therefore, it will be necessary for the workers engaging in the application of pesticides to amply consider the factor of wind in actual application.<BR>3. Both the serum levels of organophosphorus pesticides and the urinary excretion of p-nitro-m-crezol measured were low.<BR>4. In view of the above-mentioned current amounts of exposure to pesticides, no acute effects of the pesticides were manifest on the liver function tests.<BR>5. However, because the fixed piping joint control system employs the lance application (hand application), the applicator is more liable to be exosed to large amounts of pesticides, the exposure amount being 2.7 times that of speed sprayer (SS) operator.<BR>6. It is not rare that women and the aged engage in the fixed piping joint control; therefore, it is necessary to educate ample care in the protection of workers from exposure to pesticides.
著者
鳥谷部 邦明 高木 幹郎 村田 哲也 濱田 正行
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.59, 2009

〈諸言〉サルモネラ菌は細菌性胃腸炎の主な原因菌である<BR>が,臨床症状が他の細菌性胃腸炎より激しいことが多く,<BR>急性腎不全の合併も稀ではないとされている。今回我々は<BR>急性腎不全を合併したサルモネラ胃腸炎の1例を経験した<BR>ので報告する。<BR>〈症例〉58歳男性。飲食店で昼食にエビ天丼を食べた数時<BR>間後より下痢,嘔吐が出現し,翌日には吃逆も出現した。<BR>1日に20回以上の下痢,嘔吐を繰り返し,ほとんど食事,<BR>水分も摂れない日が続いた。それから4日後に衰弱してい<BR>るのを家人が発見し,近医から当院へ紹介となった。受診<BR>時,バイタルサインに大きな異常は認めないものの,口腔<BR>内・皮膚の乾燥,頸静脈の虚脱,四肢の冷感を認め,脱水<BR>が疑われた。血液検査では血液濃縮,異常な高窒素血症,<BR>代謝性アシドーシス,CPK 高値を認めた。腹部エコーで<BR>は腎萎縮や水腎症は認めず,尿検査では腎前性が疑われた<BR>ため,感染性胃腸炎に伴う腎前性急性腎不全の診断で入院<BR>となった。入院後,初期輸液にて尿量の反応を認めたた<BR>め,輸液を続行し高窒素血症の改善を認めた。また便培養<BR>より非チフス性のサルモネラ菌O―9群が検出され,下痢<BR>が非常に激しかったため,FOM の内服を行った。下痢が<BR>改善した後に経口摂取を開始し,第24病日に輸液を終了し<BR>て第26病日に退院となった。退院後の経過は良好でBUN,<BR>Cr 値は正常値まで回復した。<BR>〈結語〉サルモネラ胃腸炎により腎前性急性腎不全をきた<BR>した原因は主に脱水と考えられ,補液によって腎不全は著<BR>しく改善した。高度の腎不全であっても腎前性の場合は経<BR>過に注意しつつ十分な補液を施行することが重要と考えら<BR>れた。<BR>
著者
疋田 善平
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.401, 2009

〈すじがき〉私は母からは供養して人助けを,父からは三<BR>方よしを仕込まれ,国立京都病院で予防に勝る治療なし,<BR>と,イメージ療法を学びました。<BR>高知の僻地で住民参加のPPC 医療から,満足死を提唱<BR>し,全村病院構想からケア完備集落構想・在宅ホスピスへ<BR>と前進するも,施設死が70%を超える様になり,この70%<BR>をどう考えたらよいのか? 誰もが住み慣れた地域の自宅<BR>で自分らしく暮らしたいが,ケアが必要になった時,ケア<BR>を求めて施設に入るが,ケアは人に必要なので,施設には<BR>無くても良いから〔住まい〕と〔ケア〕を分離して,ケア<BR>を宅配すれば,入所による損失…地域を・家族を・自分を<BR>…等々を失うことなく自宅で終われるでしょう。<BR>ところが,日本には古来,物より心・人の道を大切にす<BR>る素晴らしい文化があり,ケア,即ち人をお世話するの<BR>は,ひとを思いやる心が基本にあるのです。然し,戦後,<BR>育児方法や核家族化など,アメリカナイズされ,自己中心<BR>的で金権至上の市場原理主義から,競争社会へと社会環境<BR>が変化し,家族の絆が薄くなり,相互扶助力の低下に加<BR>え,結晶的能力の低下,等々が思いやる心が無くなり<BR>秋葉原事件などが起ったのではと思う。(日米育児差・2<BR>~3の成績を示す)<BR>〈まとめ〉前回は満足死した方々は家族の絆が強く,宗教<BR>心があり,仕事熱中人etc でしたから,老人の願望である<BR>家庭円満,子供に迷惑をかけない,延命医療お断り,出来<BR>たら自宅で終わりたいでしたから,自分の願望をバネに家<BR>族の絆をと申しましたが,今回は家族の絆を強くする,家<BR>族を思いやる心を,お隣さんにも,いや,他人様にも同じ<BR>気持ちで毎日を暮らせば,それは必ず自分に返ってきま<BR>す。そうすると自分もうれしく心豊になり感謝して旅立て<BR>ますよ。<BR>
著者
熊田 克幸 桑原 清人 柴田 由美 白川 舞 堀田 宏 近澤 豊
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.322, 2008

〈緒言〉近年、オーダリングシステムや電子カルテシステムの導入によってコンピュータ端末がより身近な存在となり、院内ネットワークを利用することで医薬品情報をはじめ様々な情報を共有することが可能になった。しかし、最新の情報を提供するためには、医薬品情報の頻回にわたる更新、膨大な労力と時間、コストの問題からも難しい状況にある。 その配信方法においても医療従事者が必要とする際にはいつでも最新情報を見慣れた形式で閲覧できるシステムを構築し運用することは非常に有用であると思われる。そこで、今回市販データベースソフトウエアのMicrosoft Access 2003を用い、オーダリングシステム端末上で利用可能な院内電子医薬品集とそれにリンクした添付文書参照システムの構築と運用について検討を試みたので報告する。<BR>〈方法〉1.医薬品集の機能・項目の検討<BR>簡便な操作性、必要最小限な機能、シンプルな表示とし薬品検索は医薬品の商品名または一般名の一部を入力することで可能にした。 検索薬品表示後にはワンクリックで情報の印刷や同効薬品の表示および各製薬会社から提供される医薬品添付文書のPDFファイルを表示する。<BR>2.利用可能な端末の検討<BR>医事ネットワーク上のデスクトップ端末103台(オーダリング端末62台、レセプト端末28台、看護システム端末7台、事務用端末6台)。OSはすべてMicrosoft Windows XP Professional SP2である。<BR>3.利用端末における更新方法の検討<BR>各端末における更新は、メンテナンスフリーにするために端末起動時または24時間毎に操作の必要なしで自動に更新されたファイルをダウンロードしサーバーと同期する。<BR>4.医薬品情報の更新・チェック機能の検討<BR>情報更新はサーバー上で随時行い、医薬品添付文書のPDFファイルは、各製薬会社の提供または医薬品医療機器情報提供ホームページよりダウンロードしサーバー上のファイルを更新する。添付文書改訂情報はインフォコム社の医薬品データベースDICSを利用し更新をチェックする。<BR>〈結果〉日常業務の中で検索したい医薬品情報は医薬品集に掲載されている薬品の効能・効果や用法・用量であることが多い為、その内容を短時間で検索し充分理解できることが重要である。また、その内容では不十分な際、より根拠に基づく詳細情報である添付文書の参照が出来るように、電子医薬品集は紙媒体の医薬品集をデータベース化した基本の医薬品情報と医薬品添付文書PDFファイルの2段階とした。また、薬効分類は実務に使用できる分類がないため、当院で細分化し同効薬品の検索および表示に利用した。<BR> 医薬品情報の更新や添付文書の改訂は不定期に案内があるうえ、随時行う必要があり平成19年度は当院採用1,362品目のうち815品目の添付文書改訂があったがチェック機能により更新時期を容易に把握することができた。また、各端末はサーバー上のファイルを参照するのではなく任意にファイルをダウンロードして使用できるため、常時ネットワークに接続していないモバイル端末でも使用可能であり、複数の端末での同時使用やメンテナンス中にも制約を受けることなく使用できる。今後、電子医薬品集の需要も高まることが予想され、電子医薬品集の機能向上を図ることが重要である。