著者
浅沼 信治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.10, 2010

1.農薬の使用と中毒発症の現状<BR>1)農薬使用状況の推移<BR> わが国で農薬が本格的に使用されるようになったのは、第二次世界大戦後である。戦後、農薬は農作物の生産性向上、労力の軽減など農業には重要な資材としての役割を果たしてきた。生産量の推移をみると、戦後30年の間に急増し、1974年に過去最高の75万トンに達し、その後は暫時減少し、90年代後半からは60年代の水準(30万トン台)になっている。殺虫剤の使用が最も多いが、兼業化など人手不足による省力化のため、除草剤の使用も多くなっている。<BR>2)急性中毒および障害<BR> かつてはホリドールやテップなどの毒性の強い農薬による中毒が多かったが、1971年に強毒性農薬が禁止になり、中毒事故は減少した。しかし、その後パラコート系除草剤による死亡事故(主として自殺)が相次いだ。1976年にパラコート系除草剤のうちグラモキソンが製造中止になり、代わってプリグリックスLが使われるようになり、死亡事故はやや減少した。<BR> 農村病院を受診した者の統計からみると、急性中毒と皮膚障害が多い。「健康カレンダーによる調査」によると、4人に1人が中毒症状の経験がある。<BR><BR>2.農薬使用の問題点<BR>1)2006年5月の「ポジティブリスト制度」の施行による問題点<BR> 「ポジティブリスト制」は、基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度である。以前の「ネガティブリスト制」は、農薬の残留基準値がない場合、規制の対象にならなかったが、新制度により一律基準0.01ppmが適用、規制される。消費者にとっては残留農薬の減少など好ましいことではあるが、生産者にとってはドリフトなど問題が多い。これは農薬の登録制度にも問題がある。<BR>2)ネオニコチノイド系農薬の使用<BR> 最近、有機リン農薬に代わって新農薬「ネオニコチノイド」(新しいニコチン様物質)が大量に、しかも広範囲に使用されている。今、ミツバチが忽然と姿を消す怪奇現象が多発し、その原因の究明が急がれているが、ネオニコチノイド系の農薬もその一つに挙げられている。<BR>3)農薬の表示についての問題点<BR> 日本では、「農薬」と表現されているように危険なイメージは少ない。 農薬には、その中毒を防止する観点から「毒物・危険」の表示が必要である。アメリカはドラム缶に「ドクロマークとPOIZON」表示がされている。フィリピンでは、その毒性により分類し、農薬のビンの下に幅広のテープを貼ったように色を付けている。色分けされ、一見してこれがどのランクの毒性を持つ農薬なのかが分かる。しかも毒性の強い農薬は、一般の店では販売されていない。日本は赤地に白文字で「毒物」、白地に赤文字で「劇物」と小さく書かれているだけである。<BR>4)農薬による皮膚炎<BR> 農薬による中毒・皮膚炎などにはその種類により特徴があり、注意する点も多い。とくに石灰硫黄合剤による皮膚傷害は深刻である。中毒を防ぐためにマスクの使用や、通気性がよく防水性のある防除衣の使用などについても考えてみたい。
著者
北原 保雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.2, 2008

(1)「問題な日本語」の氾濫<BR>(2)日本語ブーム<BR>『明鏡国語辞典』『問題な日本語』『明鏡ことわざ成句使い方辞典』『KY式日本語』<BR>(3)日本語の「乱れ」の原因<BR> どんな時に、日本語が乱れていると思うか<BR>若者や子供の会話を聞いて 1716人<BR>テレビを見て 1710<BR>飲食店などで対応されて 881<BR>ネットを見て 131<BR>雑誌や漫画を読んで 68<BR>新聞を読んで 48<BR>最大の原因は?<BR>テレビ 1080人<BR>活字離れ 441<BR>家庭のしつけ 403<BR>タレント 255<BR>学校教育 125<BR>チェーン店のマニュアル 121<BR>(4)「問題な日本語」と思われている言葉遣い<BR>すぐに直してもらいたいと思う言葉遣いは?<BR>・私ってすごく忘れっぽい人じゃないですか 1055人<BR>・千円からお預かりします 1040<BR>・わたし的にはOKです 1036<BR>・コーヒーのほうお持ちしました 781<BR>・ご注文は以上でよろしかったでしょうか 654<BR>・全然いい 616<BR>・おタバコはご遠慮させていただきます 360<BR>・記念品を受付でいただいてください 340<BR>・コーヒーで大丈夫ですか 276<BR>・ご住所書いてもらっていいですか 243<BR>・歌わさせていただきます 181<BR>・これってどうよ 178<BR>・ご負担いただくようなかたちになっています 176<BR>・一緒にやろうよ、みたいな話だった 176<BR>・すごいおいしい 148<BR> 朝日新聞2005年12月10日(土)<BR>(5)「問題な日本語」追加<BR>・患者様 ・お陰様をもちまして ・お名前をいただけますか<BR>(6)KY語の流行<BR> IT KD GOT BM DD JK 3M MMK FFK GHQ<BR>(7)日本語力向上の必要性 日本語能力検定の動き<BR>(8)今どきの子供の名<BR>「人名用漢字」の改定<BR>(9)ことわざ成句の誤用<BR>1病膏肓(こうもう)に入る(こうこう)<BR>2怒り心頭に達する(発する)<BR>3熱にうなされる(浮かされる)<BR>4目鼻が利く(目端)<BR>5手も口も出ない(足)<BR>6顔を突っ込む(首)<BR>7耳を合わせる(揃える)<BR>8顔に火が付く(から火が出る)<BR>9腹が煮えくりかえる(腸)<BR>10毒を盛って毒を制す(以て)
著者
長谷川 浩一 林 真人 川口 健司 田代 晴彦 森川 篤憲 岡野 宏 川上 恵基 村田 哲也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.29, 2007 (Released:2007-12-01)

(症例)患者はインドネシア国籍の29歳男性で、平成19年1月17日に頭痛を主訴に当院外来を受診。頭部単純CTで左側頭葉に低吸収域を呈する脳病変を認めた。しかしながら不法滞在者であると判明し、それ以上の精査治療は母国で行うべきと初診医が判断し、即時の帰国を勧めた。しかしながら、症状は徐々に悪化し発熱と意識障害をきたしたため、1月21日に当院救急外来を受診し内科入院となった。入院時、口腔内カンジダ症を認め、抗HIV抗体が陽性であった。髄液検査では異常を認めなかったが、AIDSによる脳トキソプラズマ症が最も疑われ、ST合剤とクリンダマイシンの投与を開始した。治療により解熱しCRPも9.0から0.5に低下したが、意識状態の改善はあまり認められず、到底旅客機で帰国できる状態ではなかった。2月1日に局所麻酔下で定位的に病変部位の生検術を施行し、病理組織にて脳トキソプラズマ症の確定診断が得られたため、2月8日に三重大学附属病院血液内科に転院した。その後、ピリメサミンを用いた積極的な治療により旅客機で帰国できる状態にまで回復した。 (当院での対応)不法滞在のため保険には未加入で、治療費は自費のため金銭的な援助をインドネシア大使館にも相談したが、予算がないため金銭的な援助は不可能との返事であった。また、当院はAIDS拠点病院に指定されていないため、県内のAIDS拠点2病院への転院も考慮したが困難であった。三重大学附属病院のみHIV感染により何らかの合併症を発症している事が確認されていれば、何とか受け入れ可能であるが、少なくとも脳の生検でAIDS以外の脳病変を否定する事が前提条件であった。HIVに対する手術器具の消毒法もHCV等と同じであるが、HIV感染患者の手術は当院では初めてであり手術室等からの反対もあったが、転院のためには他に手段はなく、当院でやむなく生検術を施行した。 (考察)不法滞在患者でなく金銭的に問題なければ、大学病院以外のAIDS拠点病院への転院も可能であったと思われるが、研究機関でもある大学病院しか受け入れは許可してもらえなかった。鈴鹿市は外国人の割合が高いので、不法滞在の外国人も多いと予想されるが、これは全国的な問題と考えられる。不法滞在者であるからといって人道的に治療を拒否する事はできず、行わなければならない。その様な場合、どこからか金銭的な援助を得て、なんとか治療を行える方法はないのであろうか。また、外来受診の翌日に名古屋の入国管理局から連絡があり、すぐに帰国させる様に伝えたが、手続き上少なくとも1週間以上かかり、結局その間に症状が悪化し帰国できなくなってしまった。不法滞在ではあるが、この様な緊急事態の場合、入国管理局はもっと早く帰国の手続きをとる事はできないのであろうか。この患者は治療により帰国できる状態にまで回復したが、回復しなかった場合は二度と自国の土を踏む事はできなかったと考えられた。
著者
高田 真寸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.48, 2008

1:JA茨城みなみ管内の概要<BR>時はさかのぼって平成元年8月1日。県内3番目の広域合併JAとして、組合員の多様化するニ-ズに応えるため、5つの市町村単位JAが広域合併し「JA茨城みなみ」は誕生しました。<BR>管内は、県最南端(首都圏40km)に位置し、豊かな水と緑があふれ、住宅地や商業地、田園地帯が混住する地域です。利根川や小貝川の水源に恵まれ、県内有数の米の産地としても知られています。<BR>交通網は、管内を南北に走る「国道6号線」を軸に、「常磐自動車道」の谷和原インタ-をはじめ、取手駅の「JR常磐線・営団地下鉄千代田線・関東鉄道常総線」を拠点に、都心や県内への玄関口になっています。<BR>また平成17年8月に「首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス」が開業し、管内2カ所に駅が設置され、守谷駅から秋葉原駅間が32分(快速)で結ばれました。新たな交通として、利便さがさらに増しています。<BR>組合員数は、平成20年1月末現在9462人(正組合員6674人:准組合員2788人)。都市近郊農業や地産池消、食農教育などを積極的に進め、次世代に「農」を伝えるために担い手の育成や支援に取り組んでいます。<BR>2:助け合い組織の設立<BR>地域で高齢化が進む中、JA茨城みなみ女性部(部員:平成20年1月末現在870人)は立ち上がりました。地域農業を守り、農業基盤を存続させていく上で、高齢者や女性の担っている役割は、とても大きなものがあるからです。<BR>このようなことから、高齢者が生活しやすい環境を整備し、生きがいのある生活が送れるよう平成10年5月、助け合い組織「いなほ会」が発足しました。<BR>介護保険制度の導入が2年後に迫り、高齢者福祉制度がスタートします。しかしながら、問題がすべて解決されたわけではありません。むしろ、制度の外枠では「心の介護(話し相手・ミニデイサービスなど)」ささいで身近な生活の支援が必要だと考えました。<BR>3:「いなほ会」のこれまでと今後<BR>設立当初は、組織への理解と協力を呼びかけるため、JA関係組織や組合員に対し、PRを強化してきました。地域の老人ホームを訪れ、施設でのボランティア活動などと共に、数々の介護研修会を開き、目標としていたミニデイサービスの立ち上げに全力を尽くしました。<BR>努力の甲斐もあり翌年6月、谷和原地区をモデル地区に、おおむね65歳以上のお年寄りを対象に、初のミニデイサービスを開くことができました。しかしながら初回の参加者は12人。決して満足な内容だとはいえない、規模もかなり小さいものでした。<BR>その後、反省会や企画会議、外部研修などを進め、毎月1回1会場で実施していたミニデイサービスは、現在、毎月3会場で開くまでに大きく成長しました。高まる利用会員の声に応えることができたのも、女性部の熱い想いと、行動力、なんといっても仲間の「輪」の賜物です。<BR>今では、約150人ものお年寄りが、この日を楽しみに待っていてくれます。お世話をする協力会員は100人(内ホームヘルパー50人)を超えました。送迎から始まり、血圧測定などの健康チェック、手芸や作品作り、ゲームや体操の実施など、月ごとに思考を凝らした充実した内容です。お昼には、同加工部会が心を込めて作る、季節感あふれるお弁当も大好評です<BR>ここまで定着すると、部員からも色々な発想や可能性について、活発な意見が寄せられるようになりました。ここ最近の傾向は、型にはまらない柔軟さを大切にしています。お年寄りの「これがしたい」というような自主的な意見を取り入れ、自分たちから行動してもらいます。普段の生活の中では、自分から楽しみを見出すという力も大切なことだからです。<BR>女性部の活動の拠点のひとつに「活き粋きセンター」があります。センターでは、これまでの活動をふまえ、お年寄りが自主的に気軽に立ち寄れ、お茶を飲みながら楽しく交流することのできる「ふれあいの場」のようなものを作ろうと計画が進んでいます。きっと笑顔の絶えない素敵な憩いになることでしょう。<BR>これからも「ありがとう」の5文字を心の励みに、「人が元気」「組織が元気」「地域が元気」となる助け合いの輪を広げていきます。まずは、自分たちができることから取り掛かり、少しずつ協力しながら、夢は大きく!<BR>
著者
米丸 亮 カラガン 徳代 黒石 正子 荒幡 篤 宮崎 聡 山本 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.220, 2009

新幹線運転士の停止位置ミスが睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)に起因したことが判明したことを契機に,我が国においても社会的問題が次々と明らかとなり,SAS が注目されるようになった。本研究では職場作業の安全管理上SAS に関心の高い某事業場の従業員183名に対してアプノモニターにてスクリーニングを実施した。事業場の産業医の指示にて実施したアプノモニターのデータを,当院の医療連携室を経由して生理検査室にて分析した。被検者183名中アプノモニターによる無呼吸/低呼吸指数(Apnea/Hypopnea Index : AHI)が5以上15未満を示す要指導者が28名(15%)存在した。AHIが40以上を示す者はいなかったが,15以上40未満を示す者が18名(10%)認められ,当院においてPolysomunography(PSG)検査を実施した。PSG によるAHI が10以上の者が10人認められ,SAS と診断された。SAS の有病率は5.5%(10/183)であった。また,AHI が20を超える者5名については,CPAP を導入した。至適CPAP 圧はマニュアルタイトレーションにより決定し,平均7.9cmH2O であった。CPAP 導入によりAHI は平均27.8から平均3.7に低下し,AHI の減少率は87%であった。CPAP導入患者については,定期的外来管理を継続しており,日中帯での眠気を認めていない。必要に応じ在宅での状況をメモリーチップに記憶させ,当院にてその後AHI の経過観察に利用している。事業場の健康管理センターと地域連携を構築し,症状が乏しい従業員に対して効率の良いSASの診断,CPAP 治療の導入により,地域の健康増進に貢献できると考えられた。
著者
田中 直樹 小辻 俊通 大倉 実紗 小西 敏生
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.299, 2007

〈はじめに〉当院は病床数460床の地域中核病院であり、平成17年に臨床工学部門であるCE部が設立された。現在、臨床工学技士8名でME機器管理業務、血液浄化業務、循環器業務などを行っている。医療技術の進歩に伴い各種ME機器が導入され、業務拡大を求められるなか、効率的に業務を行うため、臨床工学技士業務支援システム(以下CE Office)を作成したので報告する。〈方法〉CE Officeは、データベースソフト「File Maker Pro」で作成し、サーバーとして「FileMaker Server 7」を設置した。クライアントは各部門に設置し、院内LAN上で接続し、どこからでも情報が閲覧、書き込みができる環境にした。また、各クライアントごとにアカウントとパスワードを設定し、セキュリティーを強化した。機能としては、掲示板として、メッセージ(申し送り)、勤務表、待機表の作成。ME機器管理では、バーコードを使った貸し出し返却システムや、機器管理台帳、メンテナンス計画。血液浄化では、透析記録用紙やサマリーの発行、検討会の資料作成。循環器では、心臓カテーテル検査、PCI、QCA、IVUSデータ管理や、物品管理などがある。又、メッセージを必ず見るように、掲示板を初期画面とし、そこから各部門のデータベースにアクセスできるようにした。〈結果〉院内LANを使用することにより、どこからでもアクセスでき、効率的に業務が行うことができた。掲示板を使用することで伝達が確実かつスムーズに行うことができた。ME機器管理では、貸し出し返却システムにバーコードを使用することで、容易に作業が行うことができ、誤記入がなくなり、データの信頼性が向上した。血液浄化では、患者データを透析記録用紙に反映することにより、転記ミスや記載漏れを少なくすることができた。循環器では、患者個別でデータをリアルタイム入力することができた。また、過去のデータ検索が容易になり、医師に迅速な情報提供がおこなえた。〈まとめ〉データベースを自作することにより、低コストでシステムを構築することができ、施設に即した情報だけを管理することができるので、効率的に業務を行うことができた。また、必要に応じてシステムを変更することができ、今後の業務改善につながると考えられる。
著者
太田 祐介 長橋 究 小島 康裕 上原 博和
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.530-534, 2021 (Released:2021-03-13)
参考文献数
6

72歳,女性。大動脈弁狭窄症による心不全のため大動脈弁置換術を予定していたが,血小板減少を認めヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型と診断された。手術の延期が考慮されたが,循環動態が不安定であったため予定通り大動脈弁置換術を施行した。 手術開始時にアルガトロバンを4μg/kg/minで持続静注を開始し,人工心肺開始時にメシル酸ナファモスタットを30mg/hで開始した。活性化凝固時間の推移を確認しながらアルガトロバンの投与量を調節した。大動脈遮断解除後,アルガトロバンの投与を終了し,大動脈遮断解除の1時間後に人工心肺を終了した。止血に難渋し人工心肺終了から7時間後に手術を終了した。手術時間12時間21分,人工心肺時間3時間10分,出血量3444mL,輸血量6400mLであった。 本症例は,過去の症例報告と比較してアルガトロバンの投与量は少なかったが,人工心肺終了後の出血量を減らすことはできなかった。
著者
夏川 周介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.877-884, 2005-03-30

&nbsp;The 53rd General Assembly of the Japanese Association of Rural Medicine was opened in the city of Akita on October 7 for two days under the presidency of Dr. Hiromichi Ohbuchi, director of the Yamamoto Kumiai General Hospital placed under the wings of the Akita Prefectural Federation of Agricultural Cooperatives for Health and Welfare. This congress, held for the first time in 12 years in Akita, signified the fifth there in the annals of the Association. The management of this congress, carefully planned and filled with simplicity and friendliness, proved heart-warming and impressive.<BR>&nbsp;The main presentations to the congress were as follows:<BR>&nbsp;Acting as congress president, Dr. Ohbuchi spoke in his speech of 72 years of hard struggles through which his hospital had gone under the title of &ldquo;Progress of the Yamamoto Kumiai General Hospital and Community Health care in the Future.&rdquo;<BR>&nbsp;Dr. Masato Hayashi, President of the Association, presented a special lecture under the title of &ldquo;Measures to Deal with Lifestyle-related Diseases in the Rural Setting in the Future.&rdquo;<BR>&nbsp;Speaking in commemoration of the congress, Norishiro Terada, governor of Akita Prefecture, gave a lecture under the title of &ldquo;Security and Peace of Minds-Giving Thought to Future Community Medicine in Akita Prefecture.&rdquo;<BR>&nbsp;In a lecture opened to the public, Dr. Yoshio Gyoten, a prominent commentator, dwelled on &ldquo;How Medical Care Should Respond to the Rural Communities' Bipolarization.&rdquo;<BR>&nbsp;The scientific session featured the presentation of 322 subjects, including 202 orally, 118 by poster and two by video, suggesting that the oral presentations were nearly as twice as poster presentations. This might be so because the method of presentation was restricted to power point.<BR>&nbsp;Despite the fact that the congress was held soon after the local area had heavily suffered from a typhoon, the venue halls were filled with enthusiasm and the presentations were quite productive. My most heart-felt thanks go to related officials of the Akita Prefectural Federation of Agricultural Cooperatives for Health and Welfare as well as Dr. Ohbuchi and his colleagues for their immaculate preparation and management.<BR>&nbsp;The next general assembly will be held in Karuizawa, Nagano Prefecture. With Na gano hosting it for the first time in 20 years, we do look forward to the participation of as many Association members as possible.
著者
常山 聡 日下 起理子 田村 裕恵 小松 良一 久保田 芳正 櫻井 宏治 赤羽 弘充 高橋 昌宏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.268, 2006 (Released:2006-11-06)

<緒言>乳腺粘液癌は、腫瘍性上皮細胞から細胞外へ分泌された粘液巣を特徴とする特殊型の浸潤性乳癌である。発生頻度は全乳癌の1_から_4%であり、比較的まれな腫瘍である。また、予後については他の組織型に比して良好である。今回我々は、17症例の粘液癌における予後因子について、他の組織型との比較を行なった。<対象と方法>1995年から2004年に当院外科にて手術が施行され組織学的に乳腺粘液癌と確認された17症例を対象とした。また、比較対象として2002年_から_2004年の期間に当院で手術施行され、組織学的診断において粘液癌を含む特殊型を除いた166症例を使用した。これらの症例について、予後因子としてのエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PgR)、p53、Her2/nueとの比較を行なった。<結果>ERにおける陽性率は、粘液癌では17症例中16件が陽性であり94%であった。また他の組織型では、120症例中84件で陽性率は70%であった。 ERは乳癌における予後因子として有用とされており、悪性度と負の相関を示すとされている。今回の結果における粘液癌のER陽性率は、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でER陰性の症例1例は、肺転移をおこしていた。 PgRについては、粘液癌で13例が陽性で陽性率76%、他の組織型では120症例中陽性68例で陽性率51%であった。 PgRも乳癌における予後因子として有用であり、ER同様に悪性度と負の相関を示している。今回の結果における粘液癌のPgR陽性率も、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、肺転移をおこした粘液癌については、PgRも陰性であった。 p53については、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では126症例中45件が陽性で陽性率36%であった。 p53については、ER・PgRとは反対に悪性度と正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のp53陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。 Her2/nueについては、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では146症例中30例が陽性で陽性率21%であった。 Her2/nueは、p53同様にER・PgRとは反対に正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のHer2/nue陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でHer2/nue陽性の症例1例は、ER・PgRともに陰性で肺転移をおこしていた症例であった。<考察>乳腺粘液癌は他の組織型に比較して、予後は良好であるとされている。また今回検討した予後因子からも良好であることが示されている。また、粘液癌17症例中現在までに転移が確認されている1例については、ER・PgRともに陰性、Her2/nue陽性と今回検討した3つの予後因子が、悪性度の高い可能性を示している。乳腺粘液癌においては、予後因子で悪性度が高い可能性を示している場合、将来の転移の可能性も考慮し、経過を観察していく必要があると考えられる。今後、再発の有無を含めた術後経過と予後因子の関係についても更なる検討をしていく必要があると考えられる。
著者
堤 徳正 川又 光子 秋月 浩光
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.472-480, 2017

ある施設から他病院へ常勤職員として感染管理認定看護師(Certified Nurse in Infection Control,以下CNIC)を派遣することは,日本では一般的でない。今回,大学病院から市中病院へCNICを2 年間常勤派遣する事業を実施したので,それに対する受け入れ側病院職員の評価を調査した。派遣先の全職員624名に無記名自記式質問紙を配布し,回収できた423回答(67.8%)のうち,CNICが常勤職員として派遣されていることを知っていた297名からの回答を解析した。276回答(92.9%),194回答(65.3%),286回答(96.3%)および234回答(78.8%)が,それぞれ「病院にとって派遣が(少し)有益だった」,「派遣期間が(やや)短かった」,「感染管理が推進・改善されたと感じたことがあった」,および「派遣が業務に役立つことがあった」と述べていた.これに対し, 3回答(1.0%)および22回答(7.4%)が,それぞれ「業務に支障があった」「改善すべき点があった」と述べていた. 今回の事業は,受け入れ側病院の感染対策の向上に寄与することができたと考えるが,事業終了後も同レベルの感染対策が維持できるか,受け入れ側病院の状況を確認する予定である.
著者
服部 晃 田邊 直仁 岩田 文英 服部 麗波
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.637-649, 2015
被引用文献数
1

ターミナルは人生の最後の舞台とも言え, 主役の希望に沿って医療・福祉者は真摯な対応を求められる。患者や家族の希望を知ることが, 容易とは限らない。調査目的は, 2008年佐渡でのアンケート調査で, ターミナル告知が大きく許容されていると思われたことから, 広い地域で, 大規模に, 広い年齢層で, 性, 身分・職種の差を検討し, 佐渡調査で私たちが提案した, 本人, 家族の意向に沿った予想告知率を調べることであった。自由参加・無記名によるアンケート調査を行なった。質問の内容および回答選択肢は佐渡方式で, 年齢14~91歳, 女/男比1.9, 高校生, 看 (護) 学生, 医療・福祉 (医福) 職, (その他) 一般職に層化して特徴を調べた。告知は本人―, 家族―, 一般―告知を調べ, また, 本人と家族の意向に沿った予想告知率を算出し, これまでと比較した。 114病院中74病院から7,811の有効回答をえた。本人告知希望は76%, 一般告知は29%, 家族告知は35%であった。推移: 本人希望は徐々に増加し, 告知拒否は減少した。本人と家族との意向に沿った予想告知率は85%と最高。高校生, 看学生の認識の特徴, 若年者と高齢者は共通点とともに対蹠的所見も呈すること, 各種の年齢・性・職種差があった。それらの把握が応用面で重要と考えられた。最期の場所に関する中年女性の変貌, 職種による男女差が注目される。告知許容社会への移行があり経時的な調査が必要。ターミナルの悩みに正対し改善を計ることは, 社会や宗教にとっても重要であろう。
著者
青木 亮 谷川 浩隆 最上 祐二 柴田 俊一 狩野 修治 高梨 誠司 王子 嘉人
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.157, 2010

[目的]精神疾患を併存する患者が外傷を受傷した場合、精神症状の評価、治療、管理等の不安要素から、一般病棟での受け入れ困難となる症例が多い。精神疾患を罹患した外傷患者2例について、その問題点など検討して報告する。[症例]症例1:48歳女性。精神科で統合失調症と診断され治療を受けていた。自殺企図でアパートから飛び降り、腰椎破裂骨折による腰髄麻痺、骨盤骨折、両踵骨骨折、左橈骨下端骨折を受傷した。他院救急部に搬送されて手術を受けたが、リハビリ目的のため、受傷後3週で30km以上の遠隔地である当院へ転院となった。腰髄損傷による下肢麻痺があり、車椅子への移乗も不可能であった。当初は精神科病棟に入院したが精神症状は落ち着いていたため整形外科病棟に移り、リハビリを中心とする治療を継続した。症例2:55歳男性。アルコール依存症とうつ病で治療を受けていた。自宅アパートの階段より転落し、外傷性くも膜下出血、頚髄損傷を受傷し、他院救急部に搬送され頚椎の手術を受けた。受傷後2週で当院に転院となった。下肢麻痺のため座位保持も困難であり、上肢も手指運動は大きく障害されていた。一般病棟でリハビリを中心とした治療を継続した。[考察]整形外科的治療を要する外傷を負いながら、精神疾患のため一般病棟での受け入れ困難な症例がある。その原因は患者側というよりも治療側、すなわち受け入れ側の精神疾患に対する先入観であることも事実である。当院は精神科と整形外科のある総合病院であり、精神疾患を抱える外傷患者を積極的に治療してきた。このため精神疾患のある外傷患者が、遠隔地より紹介され入院してきている。本発表2症例のように後遺症を残すような麻痺が生じた場合、退院、在宅支援への移行などの問題を抱えることが多く、これらに対応できる医療体制の確立は急務である。
著者
高谷 寿子 粂井 美起 畑中 幸世 吉村 清美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.154, 2010

1 はじめに<BR> 両親から離れてNICUで過ごす児にとって両親の面会は親子関係を育む重要な場となる。両親は面会において様々な不安や戸惑い・緊張感を感じている。A病院NICUでは面会者の不安や緊張の緩和を目的に音楽を流している。面会中の両親にアンケート調査を行った結果、音楽は両親の不安や緊張を和らげ安心した状態で親子関係を築くことに繋がったのでここに報告する。<BR><BR>2 研究方法<BR>(1)期間:平成22年1月~3月<BR>(2)対象:NICUに面会に来た児の両親17名<BR>(3)方法:(1)面会時間毎にジャンルの違う曲を流す<BR> (2)アンケート調査<BR>(4)倫理的配慮:無記名回答、研究の目的、目的以外には使用しないことを書面にて説明、同意を得た。<BR><BR>3 結果<BR> NICUでは機械のアラーム音が気になると75%が答えており、癒しの音楽が流れていることに全員が気付いていた。音楽により「気分転換になった」が83%であり、内容は「音楽に気が向き不安・緊張が和らいだ」、「リラックスできた」、「明るい優しい気分になった」が挙げられた。音楽は授乳や抱っこの時に感じるが67%で、全員が癒しとなる音楽を継続して流してほしいと答えている。音楽の好感度順はヒーリング曲44%、クラシック曲33%でオルゴール曲、歌謡曲と続いた。<BR><BR>4 考察<BR> 様々な不安や戸惑い・緊張を抱えて両親はNICUの面会に来る。モニターやアラームなどの機械音が面会者の不安や緊張を高めたと考えられる。筒井らは「BGMは無意識的に情感を揺する力をもち、緊張・不安の緩和を図るものだ」<SUP>1)</SUP>と述べている。音楽は両親の不安や緊張を和らげ、その結果児との関わりを深めることに繋がった。NICUで音楽を流すことは面会中の両親が安心して児と触れ合い親子関係を築いていく上で効果的であったと言える。<BR><BR>5 まとめ<BR>(1)NICUで音楽を流すことは面会者にリラクゼーション効果をもたらし、ストレス軽減に有効である。<BR>(2)音楽はNICUの面会環境づくりに効果的である。<BR><BR>(引用文献)<BR>1)筒井末春:心の健康と音楽、看護展望、12、1987
著者
鈴木 了司 小津 茂弘 会田 忠次郎 武井 伸一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.491-495, 1973-03-01 (Released:2011-02-17)
参考文献数
5

埼玉県北西部の秩父市において, 1970年頃より水田皮膚炎が発生し, その臨床症状等からセルカリアの皮膚侵入によるものと考えられた。水田棲息の貝類に寄生のセルカリアの有無を検査したところ, ヒラマキモドキより, Schistosomatidaeに属すると考えられる岐尾セルカリアを見出し, 感染実験でも人体皮膚に侵入することが認められ, このセルカリアが水田皮膚炎の原因になっていることを明らかにした。このセルカリアは, Gigantobilharzia sturniaeに類似しており, 埼玉県では東部において, ヒメモノアラガイを中間宿主とする種類と北西部における本種と, 少なくとも2種の鳥類住血吸虫のセルカリアによる水田皮膚炎が存在している。
著者
山本 祐美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.299, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】 当病棟は、循環器・血液内科の急性期病棟であり、緊急の処置を要する患者が多い。特に循環器内科においては、昼夜を問わず緊急入院が多く多忙を極める。また入院患者も高齢化している。このような状況の中で、頻回なナースコールも多く看護師はどのような思いでいるのかを知る目的で調査を行った。その結果、頻回なナースコールに対し看護師は感情をコントロールし対応している事が分かったので報告する。 【研究】 期間:平成20年3月1日~21日 対象:病棟看護師23名(卒1~2年5名、3~5年5名、6~9年8名、10年以上6名) 看護体制:チームナーシング、受け持ち看護師制 【方法】 頻回なナースコールへの対応に対する思いをアンケート調査により明らかにする。 【結果】 アンケート回収率は100%であった。 (1)「1時間にナースコールが何回なると頻回だと感じますか?」3~4回12名(52.1%)5回以上10名(30.4%)2回1名(8.7%) (2)「頻回と感じる時間帯は?」深夜帯16名(69.5%)準夜帯7名(30.4%) (3)「頻回だと感じた時、仕事は忙しいですか?」忙しい12名(52.2%)とても忙しい6名(26.1%)少し忙しい4名(17.4%)忙しくない1名(8.7%) (4)「ナースコールを頻回に押してくる患者の気持ちが理解できましたか?」よくできた1名 (8.7%)できた9名(39.1%)少しできた12名(52.1%)できない1名(8.7%) (5)「頻回にナースコールが鳴ってもにこやかに対応できましたか?」よくできた3名(13.0%)できた12名(52.1%)少しできた7名(30.4%)できない1名(8.7%) (6)「イライラする感情がどのくらい持続しますか?」5分~10分16名(69.5%)1時間以上5名(21.7%)15分~30分2名(8.6%) (7)「イライラしている時の気持ちの切り替え方法は?」(自由記載)深呼吸をする3名、患者の立場に立って考える6名、その他、仕事と割り切る、楽しい事を考える、気持ちの切り替えができないなどであった。 (8)「患者に対する感情は?」(自由記載)何かあったのか?8名、イライラ4名、不安なのかな?、また?、ため息、一度に用件を言ってほしいなどであった。 (9)「患者の話をきちんと聞けましたか?」については、聞けた23名(100%) 【考察】 アンケート結果から、ナースコールが頻回と感じる時間帯が深夜帯という回答が最も多く、頻回と感じるナースコールの回数は1時間に3~4回であったが、深夜帯はCCU への緊急入院や重症患者の頻回な観察にもかかわらず、頻回のナースコールにも自分なりの工夫で感情をコントロールして看護を行っていると考えられる。さらに、夜勤での身体的疲労に加え精神的緊張も重なるため少数意見ではあるが、イライラする感情が1時間以上持続する看護師や、気持ちの切り替えができない看護師もいた。忙しい中では当然の事だと考えるが、患者の立場を考えると、今後もいかに忙しい状況の中でも思いやりを持ってよりよい看護を実践してくかが今後の課題であると考える。また、頻回なコールの内容を検討し、対策をしていくことも重要である。 【まとめ】 (1)頻回なナースコールに対し看護師は、感情をコントロールし対応している事が明確になった。 (2)ナースコールが頻回と感じる時間帯は深夜帯であった。
著者
赤羽 優夏 丸山 麻希 小林 修司 小松 俊雄 唐澤 忠宏 小松 修 矢澤 正信 井上 憲昭
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.310, 2008 (Released:2009-02-04)

<はじめに> 亜鉛は必須微量金属のひとつであり、その欠乏症として味覚・臭覚障害が広く知られているが、この他に褥瘡等の皮膚障害、成長発育障害などにも関与している。これまでの測定方法は原子吸光法が主流であり、その特殊性から、入院患者の一般検査項目に入れられることは少なかった。しかし自動分析用試薬が開発され、当院内においても簡便に測定することが可能となった。今回、入院患者の褥瘡発生と亜鉛濃度との関連性について検討したので報告する。 <対象> 当院に入院中の寝たきり患者33名を対象とした。このうち、褥瘡のある患者(以下、褥瘡(+))は18名(年齢47~109歳 平均83.5歳 男10名 女8名)、褥瘡のない患者(以下、褥瘡(-))は15名(年齢57~102歳 平均86.7歳 男4名 女11名)であった。比較対照として、非寝たきり患者16名(年齢60~89歳 平均79.1歳 男9名 女7名)についても調査した。 <方法> 1.栄養摂取状況の調査 2.血清中亜鉛、総蛋白、アルブミンの測定 測定機器:日立7170S形自動分析装置 使用試薬:アキュラスオートZn(シノテスト社) 自動分析用試薬「生研」 TP (Biuret法) (デンカ生研) エクディアXL‘栄研’ALB-BCG (栄研化学) <結果> 血清亜鉛平均値は褥瘡(+)患者47.0μg/dl、褥瘡(-)患者55.8μg/dlで、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間に有意差(t検定)を認めた。総蛋白平均値は褥瘡(+)患者6.21g/dl、褥瘡(-)患者5.97g/dlで、有意差は認めなかった。アルブミン平均値は褥瘡(+)患者2.99g/dl、褥瘡(-)患者平均3.22g/dlで、有意差は認めなかった。なお非寝たきり患者の平均値は、亜鉛61.0μg/dl、総蛋白6.89g/dl、アルブミン3.78g/dlであった。 <考察> 今回、血清亜鉛、総蛋白、アルブミンのうち、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間において有意差が観察されたのは、血清亜鉛のみであった。また、褥瘡(+)患者の亜鉛平均値は基準値(65~110μg/dl)を大きく下回っていた。以上のことから、寝たきり患者においては、血清亜鉛濃度を測定することにより褥瘡発生を予測できる可能性があると考えられた。 褥瘡の予防において栄養状態の良否は大きく影響する。通常、栄養状態を評価する検査項目として総蛋白、アルブミン値が利用されているが、本研究結果によれば両者の値から褥瘡の発生を予測することは困難であると考えられた。 亜鉛濃度が院内で簡便・迅速に測定できるようになったことで、亜鉛の褥瘡マーカーとしての有用性が今後高まっていくであろうと思われる。
著者
鈴木 久史
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.217, 2009

〈はじめに〉肺癌は国内における癌死亡原因の第1位であり,肺癌による死亡数は依然増加傾向にある。肺癌の根治治療には手術が不可欠であるが,肺癌は症状が出現してからの受診では診断時に進行癌であることが多く,手術不可能例も少なくない。当院では2年前に呼吸器外科を開設し,肺癌手術が行える体制を整えた。今回我々は,呼吸器外科開設以来,当院で行った肺癌切除症例を見直し,どのような経緯で切除可能肺癌が発見されたかについて検討した。<br>〈対象と方法〉呼吸器外科が開設された2007年4月より現在までの2年間で行われた肺癌手術症例42例を対象とし,受診経緯を中心に症例の比較検討を行った。<br>〈結果〉肺癌切除症例数は,男性33人,女性9人の計42人。平均年齢は男性71.1歳,女性63.4歳であった。受診経緯については,健診発見が18例(42.9%),他疾患フォロー中の発見が13例(31.0%),有症状受診が9例(21.4%),その他2例(4.7%)であった。他疾患フォロー中の症例については,一般消化器外科,泌尿器科,内科,脳外科,眼科など多方面からの紹介で発見された。発見時の腫瘍の大きさは各群で有意な差はなかったが,病理病期に関しては健診発見群で早期の割合が多かった。一方,有症状受診群では早期症例は少ない傾向にあった。<br>〈考察〉切除可能な肺癌症例を発見するためには,症状の出ないうちに早期発見することが重要であるが,今回の結果より健診の役割が高いことが改めて示された。さらに他疾患フォロー中に発見される例も多いため,呼吸器科以外で胸部異常影を確認した場合は,呼吸器科への速やかなコンサルテーションが望まれる。そのためにも各科間でスムーズな情報交換ができる院内環境も重要であると考えられた。
著者
塩田 明雄 松井 則明 藤澤 忠光 後藤 秀比古 小松 昭善 吹野 陽一 寺田 恵子 高柳 直巳 鹿島 信一 佐々木 和子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.193, 2005

【目的】当院では、診療報酬請求をより適正に行なうため各種対策を行なってきた。具体的には、請求漏れと保険査定減対策、当月分未請求レセ・月遅れ請求レセ管理対策である。<BR>【方法】(1).診療報酬請求漏れ対策は平成15年から医事入院係各自がそれぞれ各請求担当分野の請求漏れをあらためて検証した。<BR>(2).平成16年からは医事外来係まで拡大し、請求診療科ごとに同じように請求漏れを検証した。<BR>(3).(1)(2)の方法、結果はいずれも各自・各グループからパワーポイント資料を使った発表会を行い医事職員全員に周知した。<BR>(4).保険査定減対策は、査定事前対策として医師による請求時のレセプトチェック、対策委員会での再請求審査、委員会作成の医師用簡易レセプトチェックリスト周知などである。これら委員会の情報は院内情報システムで閲覧できる。<BR>また、医事知識を得る上でも病棟カンファレンスにも参加した。<BR>(5).当月保留レセ・月遅れ請求レセ管理対策も新たに開始した。<BR>【結果】請求漏れ対策では入院関係がH15年、H16年の検証テーマ数はそれぞれ13題、外来の検証テーマ数は16年12題である、テーマは豊富である。<BR> 保険査定減対策はH15年、H16年年間平均比較で保険査定率平均(1か月)で0.43%から0.30%に、保険査定金額では同様に5,543千円/月から3,953千円/月に減少した。<BR> 当月未請求レセ・月遅れ請求レセ管理対策では月毎に多少の凸凹はあるものの件数、点数共に減少傾向である。<BR>【考察】請求漏れ対策については、テーマが豊富であるということは漏れがないとはいえない。しかし職員がその請求漏れを掌握しつつあることは確かである。保険査定減対策は大幅に減少している。顕著な成果がでてきた。返戻レセまたは月遅れレセの早期提出も以前より停滞が減少した。管理が行き届いた成果と考える。<BR>【まとめ】診療報酬請求の適正化対策は、どの対策も結果は良好であった。今後も引き続き適正請求を積極的に展開したい。<BR>