- 著者
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矢野 勝正
- 出版者
- 京都大学防災研究所
- 雑誌
- 京都大学防災研究所年報 = Disaster Prevention Research Institute Annuals (ISSN:0386412X)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.3-9, 1965-03-01
本年は6月に新潟地震, 7月に北陸山陰水害, 9月に台風20号災害などが発生した。北陸山陰水害は7月7, 8日に北陸4県(新潟・富山・石川・福井県)に発生し, 公共土木施設のみの被害額として, 新潟県60.0億円, 富山県10・0億円・石川県14・0億円・福井県20。0億円合計104.0億円にのぼっている。また7月18, 19日にかけて島根県に集中豪雨が来襲して公共土木施設の被害額は60.0億円におよんだ。いずれも連続雨量にして200~300mm程度のもので, 特に激甚災害という程のものではなかったが, 改修工事のおくれている中小河川にかなりの被害がおきていることが注目すべき大きな特徴であった。すなわち新潟県の信濃川水系の刈谷田川, 五十嵐川・破間川, 石川県の津幡川, 島根県の斐伊川水系の赤川などの中小河川が被災している。島根県では松江市の西部地区(赤川水系)に各所に山崩れを発生し100人におよぶ人命を一瞬にしてうしなっているのもこの災害についての注目すべき問題の一つである。以下今次水害の気象概況, 出水ならびに被害状況などについての概略を説明し, ついで学術上の興味ある研究課題を考察し, 今後の防災対策上の研究資料を提供しようとするものである。著者は石川, 福井, 島根の3県の被災河川現場を視察する機会をえたが, 再三にわたって出水破堤した新潟県の刈谷田川は見ていないが全般的に共通して問題となることは, 先にも述べたように, 中小河川が被災してしかもいずれもが水系全体としての治水計画との関連において今後の処置について十分検討する必要があることを痛感した。このことについては後に個々の問題について, 斐伊川の改修計画, 河北潟の干拓計画, 九頭竜川の治水計画などと関連して説明していきたいと思うThe concentrated heavy rain fall attacked to San-in district on 7-8 th, July, 1964 andalso to Hokuriku district on 18-19 th, July, 1964 succesively. As the banks of many riverswere destroyed and inundated to the farms and towns, so the transportat on and communicationplants were stopped in these districts. Especially in Shimane prefecture, one hundred humanlives were unexpectedly lost. The total amount of rain fall were recorded to 20O~~300 mmand the total damages of the public work structures were counted about 20.0 billion yen.In this paper, the author discussed mainly about the necessity of the comprehensiveprogram of the river planning and management, taking the examples as the case of R. Hii, R. Kuzuryii and Kahoku-Gata.