著者
村中 厚哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.246-249, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
6

現在では1600万以上の種類の有機化合物が知られている。有機化合物のうち,エタノールやジエチルエーテル,酢酸などは無色透明であるが,β-カロテンやフェノールフタレインなどは色がついている。本稿では,身近な色をもつ有機化合物を紹介しながら,大学で学ぶ「光の吸収と放出」や「π共役」,「分子軌道」の考え方を説明し,なぜ有機化合物の中に色がついているものと色がついていないものがあるのか,について説明する。
著者
下井 守
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.282-285, 2006-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8

酸素は無色透明の分子であるが,液体状態では薄い青い色を示す。また酸素は偶数の電子を持っているにもかかわらず磁石に引き寄せられる常磁性という性質をもつ。この酸素の特異的な性質は,ルイスの電子対や原子価結合法では説明ができないが,分子軌道法と分子間の相互作用により説明される。
著者
長谷川 修一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.488-491, 2014-10-20 (Released:2017-06-16)

世界で唯一,楽器として利用されている岩石は,香川県からで産出されるサヌカイト(讃岐岩)であろう。サヌカイトは約1350万年前に特異な瀬戸内火山活動によって地表に噴出した溶岩が冷却してできた火山岩である。マグマから急冷したにもかかわらず,火山岩によく見られる発泡による空隙がほとんどない緻密な岩石である。サヌカイトが金属音を出すのは,非常に緻密でP波伝播速度が約6,000m/sと大きいため,動弾性係数が他の岩石と比較して著しく大きいことによる。
著者
江沢 洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.724-730, 1993-11-20 (Released:2017-07-13)

だれが原子をみたか。その歴史的考察は前に書いたので, 今回は「だれが原子や分子の内部をみたか」に勝手にプランを変えた。学校物理は原子核の発見を話題にするくせに原子が含む電子数をみた研究はとりあげない。そこから始めてド・ブロイ理論を自己流に述べ, これが意外とよく原子内部の量子力学をみていることを主張。アルカリ金属原子の価電子を主量子数数十まで励起すると, そこでは電子の軌道運動がみえるという実験を紹介する。いや, ただの軌道ではなくて量子力学が染みついている。プランでは電子の量子飛躍をみる実験, 分子をなしている原子核の波束をみる方法など, 盛り沢山だった。量子力学をみる時代が始まっていることを伝えたかった。
著者
辰巳 敬
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.378-381, 1999-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

有機溶媒・有機溶剤は麻酔作用や皮膚・粘膜刺激性などの急性毒性も問題であるが, 繰り返し長期にわたって使用されることが多く, 神経系, 肝臓, 腎臓, 血液などに障害を与える慢性毒性に注意する必要がある。有機溶媒の毒性については, 第1種から第3種までに分類され, 発ガン物質であるベンゼンは別に特定化学物質に指定されている。有機溶剤については蒸気圧と許容濃度の比の大きいもの程危険性が高い。今後, 毒性の低い有機溶媒への転換や, 脱有機溶媒化の技術が重要となってくる。
著者
松村 吉信
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.288-291, 2005-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5
被引用文献数
2

銀や銅元素などの金属元素は,金属固体,金属イオン,金属錯体など様々な形態をとり,それぞれ特徴的な性質を示し,工業的に幅広く利用されている。近年,清潔志向ブームや微生物危害を軽減する目的で抗菌剤の需要が増えている。特に,銀や銅イオンの安全性の高さから抗菌性素材としての利用が注目されている。本講座では金属イオン,特に銀イオンや銅イオンに着目し,その抗菌性および抗菌メカニズムについての最近の知見を紹介する。また,抗菌剤利用による問題点である抗菌剤耐性菌の知見についても同時に紹介する。
著者
島本 整
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.348-349, 2016-07-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

柿は日本人にとって典型的な秋の味覚の1つである。また,渋柿を原材料とする「柿渋」の利用が古くから日本文化に根付いており,染料,塗料,民間薬などのほかに日本酒の醸造にも用いられてきた。渋柿の渋みの成分であるポリフェノールの一種のカキタンニンが,このような柿渋の様々な効果をもたらしていると考えられている。近年ではノロウイルスなど様々なウイルスの不活化にも効果があることが報告されている。本稿では,渋柿の渋抜きのメカニズムなど,カキタンニンの化学を中心に述べる。
著者
栗山 常吉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.528-531, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
1

1906年にドイツでハーバーとボッシュがアンモニアの合成に成功した。この方法は,水と石炭と空気からパンを作る方法とも言われ,窒素の化学肥料の誕生により農作物の収穫量は飛躍的に増加し世界を飢餓から救ったと言われている。工業的には,1913年にドイツで生産が開始されているが,アンモニア合成に関しては,100年以上経った今でもハーバー・ボッシュの技術が,そのまま生かされている。
著者
村田 滋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.368-370, 2013
参考文献数
8
著者
寺田 晃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.757-759, 1960-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

α-オキシ-β-メチルアミノ-P-オキシエチルベンゼンをばれいしょから分離したチロジナーゼで酸化すると,アドレノクロムが生成することを認めた。またその酸素吸収過程を測定した結果,時間とともに直線的に3原子の酸素を吸収することがわかった。ゆえにこの場合は,チロジンのチロジナーゼによる酸化と同様な機構で反応が進むと結論した。
著者
相見 則郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.103-105, 2000-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
著者
嶋澤 るみ子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.148-150, 2005-03-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

水銀は有史以前に発見され,人類に利用されてきた元素の一つである。また,常温では液体であるにもかかわらず,鉄,金,銀,スズなどとともに金属とされてきた。現在でも温度計などの材料として欠かせない物質である。水銀は,人類とどのようにかかわってきたのか,化学の発展にどのような役割を果たしてきたのか,唯一の液体金属単体というユ二ークな存在である水銀の歴史の一端について紹介する。
著者
池田 龍一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.212-215, 2016-05-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
4

近年,固体でも液体でもない両者の中間的状態が存在することが明らかにされ,その特異な挙動が注目を浴びている。この状態においては,従来の固相,液相の概念からは予想できなかった物性が新たに見出されている。その新たな可能性に興味がもたれ,その応用研究も含めて種々の方面からの研究が行われ,データが蓄積されている。本論文では,種々の中間状態の概略を紹介し,それらの相互の関係について整理し解説する。
著者
大井 隆夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.126-129, 2013-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8

通常の化学において,我々は特に同位体を意識することはないが,理工学の広い分野で,ある"元素"ではなく,ある元素の特定の"同位体"が必要とされる場合がある。純粋あるいは一定濃度以上の同位体が必要な場合,我々はそれを"濃縮"あるいは他の同位体から"分離"する必要がある。同位体の化学的性質は互いによく似ているため,化学物質や元素の単離や精製の場合と異なり,同位体の分離濃縮にはそれなりの工夫が必要である。目的とする同位体とその必要とされる量や濃度,さらに分離濃縮のためのコスト等により,様々な方法が考案され稼働している。
著者
谷川 実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.584-587, 2018-12-20 (Released:2019-12-01)
参考文献数
3

「酵素」という単語は一昔前に比べて健康食品の売り場や新聞広告,テレビのコマーシャルなど私たちの日常で見かけることがとても多くなった。この酵素は実は,私たちの体の中や様々な生物の体の中で起こる生体化学反応を担っている。そして,ヒトの体の中では数千種もの酵素が存在しており,私たちが生きていくうえで重要な化学反応を体内で行っている。酵素は生体触媒とよばれ,無機触媒とは異なり常温下など穏やかな環境でも触媒として働く非常に便利なタンパク質である。
著者
佐分利 正彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.222-225, 1986-06-20 (Released:2017-09-15)

我々の右手と左手のように, 同じように見えて実際には重ね合わせることができない一対の鏡像異性体は, その名の示すように"異性体"の一分類であり, 区別することができる。しかし, 鏡像異性体の左右を化学的に区別するには, 別の鏡像異性体の助けが必要である。このように書くといかにも難しい事柄のようであるが, 実際には化合物の匂(にお)いをかぎ比べ, あるいは味をなめ比べて鏡像異性体はちがうものであることを確かめることができる。例えば, ι-メントールやι-カルボンは, 生活の中でもよく用いられるミントの香気をもつ化合物であるが, その鏡像異性体の匂いは, 我々の知っているもののそれとはかなりちがう。本稿では, "鏡像体はちがうものである"ことを"身をもって"確かめるための具体例のいくつかを示した。

14 0 0 0 OA 無機物質の色

著者
田中 勝久
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.194-197, 2017-04-20 (Released:2017-10-01)
参考文献数
3

無機物質に見られる様々な色は,可視域の特定の波長の光と無機物質との相互作用の結果として現れるものであり,光の吸収と発光が本質的に無機物質の色の違いにかかわる。また,散乱や反射といった現象は色の見え方に影響を及ぼす。光の干渉が独特の色調をもたらす場合もある。無機物質における光吸収や発光の起源として重要なものは,遷移金属イオンのd軌道が関与する電子遷移,結晶におけるバンド間遷移などである。また,金属光沢は光の反射に基づく現象であり,金属中の自由電子がその起源となる。本稿では具体的な例を挙げながら,無機物質における光の振舞いと色との関係を解説する。
著者
山口 悟 村上 寛樹 須藤 駿
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.350-353, 2016-07-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
26

シアニド架橋鉄錯体は高校化学の教科書や資料集,大学入試でも取り扱われるほど重要であるが,それらの名称の記述がなかったり,曖昧に扱われていたりするのが現状である。本報では文献調査と実験から,高校で学習する鉄イオン“Fe2+”と“Fe3+”から構成されるシアニド架橋鉄錯体の関係を明らかにした。