著者
河田 照雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.119-125, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
37
被引用文献数
1

肥満や生活習慣病の予防・改善のための基礎および応用への基盤研究を行った。肥満の発症において重要な脂肪細胞の形成制御機構のマスターレギュレーターである核内受容体とそのリガンドに焦点を当て研究を進めた。その結果,内因性の核内受容体のリガンドを見出すとともに,その機能について明らかにした。また,肥満から発症するインスリン抵抗性の主要因である脂肪組織の炎症反応を食品成分で抑制することにより,それらの疾患が改善することを明らかにした。さらに,生体のエネルギー代謝制御に重要であることが明らかとなってきた脂肪組織で発現する褐色様脂肪細胞の発生抑制にも炎症反応が関与することを明らかにした。本稿では,肥満に関連する疾病と生体内成分および食品由来成分の関連について脂肪細胞とエネルギー代謝の面から解説した。
著者
西村 桂一 前田 樹海 中村 きよみ
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.155-160, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

わが国の栄養学では,類似した数種の食品を野菜類や肉類などの「食品群」としてまとめて,食育や食事療法などに活用している。一方,中医営養学では,食べることにより体を温める食品を温性,冷やす食品を寒性とするなど,食品の体への作用を「食性」として分類している。これまでに「食品群」と「食性」との関連性を調べた研究はない。そこで,『食物性味表』(日本中医食糧学会編著)記載の291品を『日本食品標準成分表』の「食品群」で分類し,「食品群」と「食性」との関連性を調べた。その結果,調味料や香辛料類にからだを温める「食性」を持つ物が多いこと,穀類や藻類などにからだを冷やす「食性」を持つ物が多いなど,いくつかの「食品群」と「食性」とのあいだに統計学的に有意な関連がみられた。これらの情報は今後,食品による健康作りへの活用が期待される。
著者
満田 久輝 安本 教傳 岩見 公和
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.210-214, 1966-09-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
249 373 4

Antioxidative activity of aromatic amino acids and indole compounds for the autoxidation of linoleic acid was found to correlate in some extent with the highest occupied molecular orbital energy which represents the electron donor property of respective molecule. 5-Hydroxytryptophan, one of the best electron donor among the compounds tested, was the most effective antioxidant. However, antioxidative activity of some indole compounds could not be interpreted simply by their highest molecular orbital energies.Neither the chelating action for the possible metal traces nor the accelerated decomposition of hydroperoxide produced during the course of the reaction explained these actions of indoles. Tryptophan, while preventing the autoxidation of linoleic acid, underwent the ring cleavage at the position of between C2 and C3 or hydroxylation at C5 to yield formylkynurenine, kynurenine, 3-hydroxykynurenine, 5-hydroxytryptophan, 5-hydroxyindoleacetic acid, etc. Following mechanisms which were compatible with the experimental results were proposed for the antioxidative action of indoles; indole donates an electron from its π-pool to linoleic acid radical or peroxy radical produced during the autoxidation of linoleic acid to form a loose charge transfer complex through a “local” interaction; an electron transfer occurs within the complex, which brings cleavage of indole rings and an inhibition of autoxidation.
著者
吉田 企世子 森 敏 長谷川 和久 西沢 直子 熊沢 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.115-121, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

有機質肥料 (OF) で栽培した露地トマト (品種サターン) と無機質肥料 (IF) で栽培したトマトの食味を比較するため官能検査を行なった結果, 各年ごとに傾向は必ずしも同じではなかった。1) 1980年度は, 3および5果房ともIF区よりOF区のほうが顕著に優れていると評価された。2) 81年度は, 3果房はOF区が優れていたが, 1および6果房ではあまり差がなかった。3) 82年度は, 3果房は明らかにOF区が優れていたが1,2,4~7および8果房には差がなかった。4) 各年とも3果房のOF区が優れていたが, これは養分吸収との関係で検討を要する。5) 色については, 官能検査で有意差が示された試料が, 必ずしも, 色調測定の結果示された傾向とは一致しなかった。
著者
平坂 勝也
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.291-297, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
42

寝たきり・不動状態による筋萎縮 (廃用性筋萎縮) は多くの寝たきり患者を生み出し, 深刻な社会問題となっている。しかしながら, リハビリテーション以外に有効な対処法は確立されていない。一般的に, 廃用性筋萎縮は, タンパク質合成の減少とタンパク質分解の亢進によって特徴づけられる。我々は宇宙フライトやベッドレストに暴露した骨格筋のマイクロアレイの結果から, 廃用性筋萎縮の重要な原因酵素がユビキチンリガーゼ (ユビキチン依存性タンパク質分解経路の律速酵素) であることを発見した。したがって, ユビキチンリガーゼの活性を抑制することが筋萎縮予防の鍵となりうる。本総説では萎縮筋で見られるタンパク質分解機構と筋萎縮予防のための栄養学的なアプローチに関する知見を紹介したい。筋萎縮に関与する経路の分子機構の理解は, 新しい治療法のアプローチの開発のために重要であると考える。
著者
森 強士 西川 泰 高田 曜子 樫内 賀子 石原 伸浩
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.197-203, 2001-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

ブラジルで民間療法として用いられているインスリーナは, 糖尿病や高血圧症に効果があるといわれている。そこでインスリーナの抗糖尿病作用を評価するための試験を行った。in vitro の試験として, マルターゼ, α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の阻害能を調べ, in vivo の試験として, 自然発症糖尿病マウスに対する連続摂取での作用と正常ラットおよびストレプトゾトシン (STZ) 誘発糖尿病ラットに対する血糖値上昇への影響を調べた。その結果, インスリーナはマルターゼおよびα-グルコシダーゼに阻害活性を示した。また, 4週間連続摂取後の自然発症糖尿病マウスの随時血糖値を有意 (p<0.001) に低下させた。正常ラットおよびSTZラットの糖負荷後の血糖値への影響は, 正常ラットショ糖負荷後30分値で有意 (p<0.01) に血糖上昇を抑制し, STZラットショ糖負荷後60分値で有意 (p<0.05) に抑制した。これらの結果から, インスリーナ葉は糖尿病の予防に有効であることが予想された。
著者
笠原 賀代子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.171-175, 1978-04-10 (Released:2010-03-01)
参考文献数
3

大徳寺納豆の全香気成分, カルボニル成分, 酸性成分および塩基性成分につきGC-MS, IR分析およびtRによる同定を行なった。カルボニル成分としてアセトアルデヒド, イソブチルアルデヒド, イソバレルアルデヒド, フルフラール, 5-メチルフルフラール, ベンズアルデヒド, フェニルアセトアルデヒドの7成分, アルコール成分としてフルフリルアルコールを, 酸性成分として酢酸, プロピオン酸, イソ酪酸, n-酪酸, イソバレリアン酸, イソカプロン酸, n-カプロン酸, フェニル酢酸の8成分の計16成分を同定した。さらにトリメチルピラジン, テトラメチルピラジン, テトラハイドロピリジン, ピリジンおよび2-フリルメチルケトンの5成分を推定した。以上のうち大徳寺納豆の主要ピーク成分はイソバレルアルデヒド, フェニルアセトアルデヒド (ヒヤシンスの香り), フルフラールおよびフルフリルアルコールであり, これらの4成分に加えて微小ピークではあるがベンズアルデヒド (梅の花の香気成分) が大徳寺納豆香気の重要因子とみなされる。
著者
中島 健一朗
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.105-110, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ヒトを含め動物が生きていくうえで, 食欲は最も重要な本能の1つである。脳は食欲調節の中心的な役割を担い, その破綻は過食や食欲不振を引き起こす。これは最終的に肥満やサルコペニアにつながるため, 食欲をコントロールしつつ適切な食物 (栄養素) を摂ることが, 健康維持および未病状態の改善に非常に重要となる。食欲の特徴は全身のエネルギーを一定に保つ摂食 (恒常性の摂食) と食の美味しさを追求する摂食 (嗜好性の摂食) に分類できる点である。また, これらの性質は食物の機能という点から見ると, 脳が栄養, 感覚, 機能性成分を感知し, 評価・選択して摂取する仕組みと言える。近年, 脳内の摂食調節の複雑なネットワークが次々に明らかになってきたが, 本項では代表的な仕組みと今後の課題を紹介する。
著者
小田 裕昭
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.331-342, 2023 (Released:2023-12-22)
参考文献数
71

栄養学は主に「何をどれだけ食べるか」について研究を行ってきた。一方, 栄養が充足される以前から人間の知恵として「規則正しい食生活は健康に秘訣だ」と考えられてきた。体のすべての細胞がその時計システムを備えており, 時計遺伝子による生物時計の制御機構が明らかとなった。さらに体内時計が食事により同調を受けることがわかり, 食事のタイミングは, 多くの代謝リズムを制御している。そして, 不規則な食生活をすると, 脂質代謝異常を誘発して, 肥満やメタボリックシンドロームなどに結びつくことがわかった。食事のタイミングによって形成される体内時計は個人の「体質」である。概日リズムをはじめとするさまざまな生体リズムの総体をリズモーム (rhythmome) としてとらえると, 健康を維持するため個人化対応した栄養学 (「プレシジョン栄養学」) の基盤データとしてとらえることが可能になる。時間栄養学を考えることにより, メタボリックシンドロームや生活習慣病, ロコモティブシンドロームを予防することが期待できる。
著者
芳賀 めぐみ 坂田 隆
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.213-220, 2007-08-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

食塩摂取量推定法として全尿採取による尿中ナトリウム排泄量の推定法がある。この方法の大前提は正確な24時間尿量の把握である。そこで, 3-5歳児の蓄尿方法の検討および24時間尿量の推定を試みた。宮城県内の3歳から5歳の健常幼児を対象に早朝尿の採取と24時間尿の採取とを2003年と2005年に計4回実施した。分析対象は, 4回の蓄尿方法において採尿記録により, 取りこぼしがなかったと判断された対象者242名 (52.8%) のうち, 著しく体調を崩していた児および基礎データの欠損があった児5名を除いた237名とした。性別と測定回を要因とした2元の分散分析を行ったところ, 早朝尿, 24時間尿, 身長あたりの尿量等のすべての項目について, 交互作用も性の効果も有意ではなかった。いずれも2003年の値よりも2005年の値のほうが有意に大であった。24時間尿量の変動係数は, 2003年調査では42%, 2005年調査では35%であった。24時間尿量と早朝尿量との相関係数は, 2003年調査ではr=0.54, 2005年調査ではr=0.60で, ともに有意な相関はあったが, 相関係数は必ずしも高くなかった。2005年度の調査において得られた24時間尿量を目的変数として体重, 身長, 体表面積および除脂肪体重との間には有意な相関は認められたが, いずれも相関係数はr=0.26であった。今回対象とした3-5歳児の尿量は, 早朝尿量165 (mL/日), 24時間尿量533 (mL/日), 身長あたりの尿量518 (mL/m) と考えてよい。
著者
岩田 久敬 小林 邦彦 中谷 哲郎 林田 卓也 泉 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.172-175, 1958 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8

1. 小麦胚芽は生でも炒つたものでも, 還元型グルタチオン (G) 約100mg%と, 総G約250mg%を含んでいた。これを37℃で16日間貯えた場合に生胚芽では還元型G 40%以上を損失したが, 炒つたものでは少く, 20%以下を損失するに過ぎなかつた。これを更に30℃で80日間貯えた場合にGの損失は多かつた。然し炒つたものでは常に損失がやや少かつた。2. 小麦胚芽の炒つたものを約2年間室温に貯えた場合の損失は, 還元型Gは約93%で, 総Gは約68%であつた。3. 米胚芽は還元型G 40mg%, 全G 150mg%余を含んでいた。大麦胚芽は前者を20mg%, 後者を40mg%位含んでいた。そして貯蔵中の還元型Gの損失は大麦胚芽の方が少かつたが, 総Gの損失は両胚芽共に少かつた。4. 小麦粉のGは強力粉・普通粉・新鮮粉・未漂白粉に多くて, 還元型G約7mg%, 総G約30mg%であつた。その他の粉は前者3mg%, 後者20mg%位であつたが, 多くの場合に貯蔵した粉はこの値をほぼ最低値として保つていた。5. 一般に還元型Gは貯蔵中に速かに減少し, 総Gは減少がおくれ, 小麦粉の場合には数ヵ月間不変のこともあつた。
著者
小林 義典 長谷川 亮平 五十川 みさき
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.265-271, 2008 (Released:2009-01-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

新潟の伝統野菜“かきのもと”は,食用菊Chrysanthemum morifolium Ramat. forma esculentum Makinoの一種である。本研究では,食用菊の消化管運動および消化吸収に及ぼす影響を検討することを目的とした。食用菊“かきのもと”花弁の熱水抽出物を油脂・ショ糖混合溶液に10 w/v%添加し,マウスに経口投与したところ,消化管内容物の胃滞留時間の短縮,消化管移行の亢進,トリグリセライドの吸収抑制および血糖値上昇の抑制が認められた。次に,ラット小腸由来α-グルコシダーゼへの影響を検討したところ,食用菊花弁熱水抽出物は強い阻害活性を示し,スクラーゼ,マルターゼに対する50%阻害濃度は,それぞれ34.6,20.0 mg/mLであった。また,ヒトにおける50 gショ糖負荷試験(11名)において,食用菊“かきのもと”凍結乾燥粉末10 w/v%添加したショ糖溶液では,負荷後15分および30分での血糖値上昇の抑制,および負荷後から60分までの血糖値変化量の曲線下面積(ΔAUC)の積分値の減少を認めた。以上の結果から,食用菊“かきのもと”が血糖値上昇抑制作用を有する機能性食品素材として有望であることが示唆された。
著者
餅 康樹 角田 伸代 柴 祥子 村木 悦子 加園 恵三
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.69-77, 2010 (Released:2010-06-02)
参考文献数
27
被引用文献数
1

魚油のウェイトリバウンドに及ぼす影響について検討を行った。KK-Ayマウスを用い, 増量期・減量期・リバウンド期を再現した。脂質源として牛脂 (B食) または魚油 (F食) を含有した2種の高脂肪食を作成した。増量期はすべてB食を与え, B食で減量しB食でリバウンドした群をB-B群, 同様にB-F群, F-B群, F-F群およびB食をアドリブにて全期間摂取させた群 (Control群) を設けた。リバウンド後の体重は, B-B, F-B群に比べ, B-F, F-F群でそれぞれ減少した。肝臓重量および肝臓中脂質量は, Control群と比べ, B-B, F-B群では増加したが, B-F, F-F群では減少した。またB-B, F-B群と比べ, B-F, F-F群では肝臓のSREBP-1c, FAS mRNA量が低下し, PPAR-α, HSL mRNA量およびMTPタンパク質量が増加した。以上より, リバウンド期の魚油摂取は, 体重増加と肝臓への脂肪蓄積を抑制することが示唆された。肝臓での脂肪蓄積抑制の機序として, 肝臓での脂肪酸合成の抑制, 脂肪分解や脂肪酸酸化の亢進および肝臓からのリポタンパク質分泌の正常化が関与すると推察された。
著者
印南 敏 手塚 朋通
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.14-16, 1966-05-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
2

こんにゃくマソナソが腸内細菌によって分解をうけ, 単糖類となり, その一部が腸管から吸収されてシロネズミの成長に寄与しているが, 実際にどの程度成長に貢献しているのか, つまりこんにゃくマンナソの生体内利用度を知る目的で実験を行なった。すなわち, 飼料中の米でんぷんの半量をこんにゃく粉および寒天で置き換えてpair feeding法により飼育し { (終体重一消化管の重量) 一初体重} を真の体重増加量 (成長量) と考え, この値から生体内利用率を算出した。すなわち, 寒天群の成長量を0, でんぷん群のそれを100とすると, こんにゃく群のそれは44.7, つまり米でんぷん群の示す成長量の約45%の成長を示したことになる。換言すれば, 今回の実験条件ではこんにゃく粉炭水化物の約45%がシロネズミの真の成長のために利用されたといえる。
著者
山下 かなへ
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.155-163, 2009 (Released:2009-10-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

ゴマとビタミンEは, ともに老化抑制効果をもつ物質として古くから認識されてきた。ところが, ゴマに含まれるビタミンEの98%は, ビタミンE活性の低いγ-トコフェロール (γ-Toc) である。筆者らは, ゴマとしてγ-Tocを摂取するとγ-Toc単独摂取では認められない高い生体内γ-Toc濃度を観察した。そして, ゴマの特徴的成分であるゴマリグナンがビタミンEの主要代謝物であるカルボキシエチルヒドロキシクロマン (CEHC) への分解を阻害することを認めた。この作用はゴマリグナンに特異な作用で, 他のリグナン物質, たとえばflaxseedやエゾ松に含まれるリグナン物質では認められなかった。また, 筆者らは, トコトリエノールが血漿や肝臓に比べ, 皮膚や脂肪組織に特に多量に貯留することを認め, ゴマリグナンがこれら組織のトコトリエノール濃度を増加させることを見出した。そして, ヘアレスマウスに紫外線を照射した実験で, 皮膚に貯留したトコトリエノールが紫外線照射による皮膚障害を軽減させる可能性を認めた。
著者
寺本 哲子 沖 直子 草野 崇一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-21, 2005-02-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

マテ (Ilex paraguariensis) 葉は, 南米で古くから茶として飲まれてきたが, 糖代謝についての報告はない。我々は, 種々の食用植物について二糖類分解酵素阻害活性を指標としたスクリーニングを行ったところ, マテ葉熱水抽出物 (マテHE) に顕著な糖質分解阻害作用のあることを見出した。マルトース, スクロース, デンプンを基質とした場合, それぞれのIC50値は0.11, 0.49, 0.60mg/mLであった。また, 正常ラットへの経口糖負荷試験の結果, 血糖上昇抑制作用を示した。これらのことから, マテには糖質分解酵素阻害に基づく, 糖質消化吸収阻害作用のあることが示唆された。
著者
三橋 俊彦 檀原 宏
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.320-322, 1967 (Released:2010-02-22)
参考文献数
2

これまで5回行なわれた中共の核実験による, 牛乳の放射性ヨウ素 (I-131) の汚染濃度を, 爆発の翌日から毎日測定した。その結果,1) 中共の核実験により, 我国の牛乳に放射性ヨウ素が, 極めて明りょうに, かつ速やかに現われた。2) その濃度, 最高値の現われる時間は, 核実験の規模などで異なるが, 第1回目で千葉の牛乳では最高400pCi/lが記録され, 汚染は1カ月ほど続いた。3) 第2回以降には, あまり大きな濃度が検出されず, 7~10日間で汚染は消失した。
著者
竹林 純 鈴木 一平 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.15-20, 2023 (Released:2023-02-22)
参考文献数
13

2015年から熱量とたんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の栄養成分表示が加工食品に義務付けられている。栄養成分表示値は, 食品表示基準で定められた分析方法 (表示分析法) による分析値を原則とするが, 日本食品標準成分表 (成分表) の収載値等の合理的根拠に基づいた計算値も認められている。消費者が栄養成分表示を比較して自らに適した食品を選択できるように, 計算値は, 表示分析法による分析値と可能な限り近しい値であることが望ましい。成分表2020年版 (八訂) では, 成分表2015年版 (七訂) から熱量計算方法が変更され, 複数の項目が併記されている栄養成分も多い。そこで本稿では, 表示分析法と成分表2020の分析方法を比較し, 成分表2020を栄養成分表示に用いる場合の適切な参照方法について考察した。
著者
細谷 憲政 飯豊 紀子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.83-86, 1969-03-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
12

白ネズミを用いXy投与の影響を, 体重の増加, 生殖状況, 肝XDH活性について観察した。1. 含飼中Xyを10%以上に投与すると下痢を起こすが, 毎週5%ずつXyの含存を増大して20%にし, さらに20% Xy飼料を用いて4カ月飼育しても白ネズミの体重増加曲線は無添加群とほとんど差異がみられなかった。2. 白ネズミにXyを増大して投与するとある許容量限界で下痢症状を呈するが, 速やかに適応し, さらに肝細胞質のXDH (NAD) 活性も誘導される。3. 交配時ならびに妊娠時にXyに適応させても出産に影響はみられず, また仔白ネズミの発育にも影響はみられなかった。また仔白ネズミの食べ始めた日よりXy含有飼料にて発育した場合には親白ネズミと同様のXyによる適応現象が観察された。