著者
奥田 輝雄 川北 兵蔵 林 右市
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.473-476, 1963

現行の学校給食用普通パン, ぶどう入, ピーナッツ入黒糖入パンの試験焼を行ない, 次の結果をえた。<BR>(1) パン1個の重量は各種類とも焼上り4時間後が最低値を示すが, 個体間の重量差ははなはだ大きかった。したがって, 少なくとも20個以上の平均値を基礎としなければパンの重量を論ずることはできない。この重量の偏りの主因は生地自働分割機の精度にあり, その改善がのぞまれる。またこれらの点から一食分重量は普通パン (2個取コッペパン) は126g, 黒糖入は130g, ピーナッツ入, ぶどう入は各々140gが妥当と思われる。<BR>(2) 副原料として用いたぶどう, ピーナッツ量は製品から摘出した各乾物量にぶどうの場合1, 7を, ピーナ7ツの場合1.1を乗ずることによってほぼその使用量を推定できる。<BR>(3) パン中のビタミンB<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>の最低標準値はビタミンB<SUB>1</SUB>では0.3mg%, B<SUB>2</SUB>では0.2mg%となり, 脂肪量は原料小麦粉に対し3%の配合率のときは製品中少なくとも3.3%となることを認めた。
著者
小切間 美保 西野 幸典 角田 隆巳 鈴木 裕子 今木 雅英 西村 公雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-87, 2001-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

鉄剤を緑茶で服用しても影響はないとする報告がある。しかし, これらの報告は年齢, 栄養素摂取状況などを十分に考慮した検討ではない。そこでわれわれは, 18-24歳の若年女性のべ50名の対象者を, 無作為にミネラルウォーターのみ服用 (Control 群), 市販緑茶飲料のみ服用 (Tea群), 鉄剤をミネラルウォーターで服用 (Fe群), 鉄剤を市販緑茶飲料で服用 (Fe+Tea群) の4群に分け鉄剤吸収実験を行った。また, 実験前2週間の食事調査も行った。鉄剤にはクエン酸第一鉄ナトリウム製剤 (鉄として100mg相当量) を, 緑茶ば市販の缶入り飲料を用いた。鉄吸収の指標として血清中の鉄 (Fe), 総鉄結合能 (TIBC), 不飽和鉄結合能 (UIBC), フェリチンの測定を行った。実験により, Fe群どFe+Tea群の間には有意な差はなかったが, これら2群は他の2群より血清鉄濃度は有意に上昇し, 血清不飽和鉄結合能は有意に低下した。これらの結果から, 若年女性においてクエン酸第一鉄ナトリウム製剤を市販緑茶飲料で服用しても鉄吸収が阻害されることはないと考えられた。
著者
長沢 太郎 両木 岱造 工藤 力
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.387-390, 1966-01-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
47

牛乳および人乳からRöse-Gottlieb変法によりリン脂質を抽出し, TLCにより各成分を分離した。各々の成分を試薬に対する発色, Rf値および赤外線吸収スペクトルから同定し, 比色法により定量した。リン脂質中の各成分の組成は人乳ではLPC: 2.52, Sph: 25.08, PC: 46.96およびCep: 25.44, 牛乳ではLPC: 5.51Sph: 17.94, PC: 27.77およびCep: 48.77 (いずれもモル%) であった。
著者
梶本 五郎 村上 智嘉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.209-218, 1999-08-10
参考文献数
49
被引用文献数
12 11

緑茶, 麦茶を含めいわゆる健康茶として市販されている15種について, これらの熱水抽出物量, 抽出物の抗酸化性およびバナバ茶中の抗酸化成分をTLCとHPLCの組み合わせで検索を試みた。<br>1) 熱水抽出量の最も多いものはローズヒップ茶で, ついで, キダチアロエ茶, 麦茶, ギムネマ茶, 緑茶, 甘茶の順であった。抽出量の少ないものは, ハブ茶, バナバ茶, 柿の葉茶であった。<br>2) ランシマット法による油脂の酸化に対する防止効果は, イチョウ茶, ルイボス茶, 緑茶などで高く, ついで, ヨモギ茶, 麦茶, バナバ茶, 甘茶, 柿の葉茶, びわ茶の順であった。一方, キダチァロエ茶, ローズヒップ茶では抗酸化性は認められなかった。<br>3) 緑茶, 麦茶, イチョウ茶, バナバ茶およびびわ茶は, いずれも添加量が増すにしたがい油脂の酸化防止効果は高くなった。しかしながら, 柿の葉茶やびわ茶は0.1%添加濃度以下では防止効果はみられなかった。<br>4) DPPHラジカル消去能は, 緑茶, バナバ茶ともに認められたが, バナバ茶は緑茶に比べてやや弱いものであった。<br>5) 緑茶, バナバ茶にスーパーオキシド消去能が認められた。消去能は緑茶で高く, バナバ茶でやや低い。<br>6) バナバ茶中に没食子酸, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの存在とプロトカテキュ酸, アピゲニン, ルテオリン, シリンガ酸, バニリン酸, <i>t</i>-シナミン酸などの存在が推測された。<br>7) バナバ茶中には没食子酸が最も多く含まれ, ついで, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの順であった。これらのうち, ゲンチシン酸が最も抗酸化活性が高く, ついで, 没食子酸レゾルシノール, カテコールの順で, ルテオリン, ケルセチンにも認められた。
著者
前野 正久 両木 岱造 工藤 力
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.401-406, 1964-01-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ニュージーランド, オーストラリア, スェーデン, アメリカで生産された15試料のバターオイルの乳脂肪について主な化学試験を行ない, 脂肪酸組成をガスクロマトグラブィーにより分析し, 日本のバターから得た乳脂肪と比較した。酸価, 不ケン化物の量は国別, 季節別の差はない。融点は国別の差はなく季節的に冬季の試料が夏季の試料より1.0~1.5℃高い値を示した。ケン化価, 沃素価は国別の差よりも同じ国の季節による差の方が大きく, 冬季にはケン化価が高い値を示し, 沃素価は減少する。夏季にはこの逆の傾向を示した。脂肪酸組成は日本, アメリカの夏季試料ではステアリン酸, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸が多く, 低級脂肪酸は減少する。冬季にはミリスチン酸, パルミチン酸, 低級脂肪酸が増加し, ステアリン酸, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸が減少する。日本の試料は酪酸含量は外国の試料と大きな差はないが酪酸からラウリン酸までの脂肪酸量は外国のものより低く, リノール酸, リノレン酸は外国の試料とほぼ同じ量を含んでいる。オーストラリアの試料はアメリカ, 日本の試料と同じ傾向にあった。ニュージーランドの試料は夏季でもオレイン酸が少なく, 低級脂肪酸が多く他の国の夏季試料と組成が異なっている。スエーデンの試料はアメリカ, 日本の冬季の試料よりパルミチン酸含量が多く, ステアリン酸, オレイン酸が少なく, 低級脂肪酸およびミリストオレイン酸, パルミトオレイン酸の量が多い。
著者
和田 せつ 鈴木 久子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.283-286, 1959-11-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
4

The authors reported previously that thiamine decomposing, thermostable factor was isolated from peanut seed coat and that this was found as tannin which was contained in materials.In this paper we determined the tannin contents of various daily-used foods, and demonstrated that the tannin in foods caused the decrease in thiamine content during heat treatment. Further studies showed that precipitate was produced in solution of thiamine and tannin mixture when hydrogen ion concentration was brought at higher pH than 5. And two spots of thiamine and tannin was detected when the precipitate was run by paper electrophoresis.
著者
永井 成美 亀田 菜央子 小橋 理代 西田 美奈子 堀川 千賀 江川 香 吉村 麻紀子 北川 義徳 阿部 圭一 木曽 良信 坂根 直樹 小谷 和彦 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.257-264, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22

L-カルニチンがヒトの空腹感に及ぼす影響を明らかにするために, 若年健常女性12名 (21.3±0.3歳) を対象として, L-カルニチン300mgを含有するフォーミュラ食と通常のフォーミュラ食を用いた二重盲検プラセボ対照試験による検証を行った (ウォッシュアウト : 1週間)。前夜からの絶食の後, フォーミュラ食を朝食として摂取させ, 食前および食後6時間まで満腹感スコア (ビジュアルアナログスケールズ ; VASs), 唾液コルチゾール, 血清カルニチン濃度, 血糖値, および心拍変動パワースペクトル解析を用いた自律神経活動指標を経時的に測定した。実験結果から, L-カルニチン摂取により主観的空腹感が軽減される可能性があること, および, 空腹感の軽減には血清総カルニチン濃度が関連していることが示唆された。さらに, 唾液コルチゾールはL-カルニチン摂取30分後, 2時間後には低値を示したが, 空腹感軽減との明確な関連は明らかではなかった。
著者
支倉 さつき 林田 紀代子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.353-357, 1963

実際の糠床基質の熟成および質的向上に関して次の事項を認めた。<BR>1. 脱脂大豆混入は糠床の蛋白質強化の上からも味覚の上からも効果的であった。<BR>2. プロテアーゼ添加は糠床の熟成を促進し, 脱脂大豆の添加と相俟って糠床を質的に向上させることができた。<BR>3. プロテアーゼと共に乳酸菌製剤の添加は, 糠床の熟成促進およびにおいの点から, もっとも効果的であることを認めた。
著者
津田 はるみ 門倉 芳枝 道 喜美代
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.90-93, 1958

1. 疏菜中のビタミンCは爺ではじめの水温が低いと沸騰水に投じて茄でたものに比し概してビタミンCの損失が多い。芽キャベツ, さやえんどうでもその傾向が見られるが春菊に顕著に見られる。<BR>2. 今回行つた疏菜の中, 春菊, さやえんどう, 芽キャベツはビタミンC酸化酵素の存在が見られた。春菊中のビタミンCを酸化する酵素はカテコラーゼとアスコルビン酸酸化酵素の混合と思われる。一般に酵素作用の強い疏菜に調理中のビタミンCの損失が多いことを認めた。<BR>3. 春菊の不活性酵素液においても或程度ビタミンCの酸化作用が認められた。これは酵素調製中に春菊中のフェノール物質がカテコラーゼで酸化され生成したキノン様物質がピタミンC酸化作用をすると考えられる。<BR>4. 春菊を茄でる時に食塩を添加すると茹身のビタミンCの損失を少くする。ビタミンC酸化酵素に食塩添加の影響を試験した所, 1M濃度ではビタミンC損失を抑制するが, それ以下の濃度では殆んど影響は見られなかつた。
著者
渕上 倫子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.294-298, 1983 (Released:2010-03-25)
参考文献数
13
被引用文献数
11 6

酸性溶液中でペクチン質を加熱したとき, メチルエステルを含むベクチンと含まないペクチン酸の分解の差異を検討した結果, 次のような知見を得た。1) ペクチンはpH4で最も分解しにくく, pH5以上で急速にトランスエリミネーションにより分解する。pH1~3では加水分解による分解が認められた。2) ベクチン酸はpH5以上では加熱による分解を起こしにくく, pH4以下で加水分解により分解し, その速度はpHが下がるほど早い。また, メチルエステル化したベクチンと比較した場合, ベクチン酸のほうが分解速度が早い。これは非解離のカルボキシル基の分子内接触反応が影響しているためであると思われる。3) 酸不溶性ペクチン酸もそれをメチルエステル化したものに比べて速かに分解した。酸可溶性ペクチン酸は酸性溶液中で酸不溶性ペクチン酸より速やかに分解した。4) ペクチンを98℃30分加熱すると, pH2~5ではメチル基の脱離は起こらず, pH5.5でけん化が起きるようになり, pH7では約70%のけん化が認められた。pH1.2でも約28%メチル基の脱離が起こった。
著者
小沢 昭夫 青木 滋 鈴木 香都子 杉本 昌明 藤田 孝夫 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.561-567, 1984 (Released:2009-11-16)
参考文献数
26
被引用文献数
7 8

水産物の体内におけるタウリンの分布を知る目的で, 10種の魚介類につき, 組織別にタウリン含量を分析した。 あわせて, トロール船が各地の漁場で漁獲した各種魚介類の筋肉部について分析し, つぎの結果を得た。1) クロマグロおよびマサバの普通肉には低含量であるのに対し, マガレイおよびスケトウダラの普通肉にはかなり多く, また, いずれの魚類においても血合肉には多量に含まれていた。2) 魚類の臓器における分布状態は魚種により若干異なってはいるが, 全般的に見て, 心臓, 脾臓に多く, 鰓に少ない傾向にあった。3) スルメイカ, マダコ, ハマグリおよびナンキョクオキアミには全体にかなり高含量であり, とくに卵巣に多いのが目立った。4) トロール船にて漁獲した魚類筋肉部の分析結果はアカウオ, キレンコダイ, メヌケおよびシマメヌケに多かった。
著者
江崎 治 窄野 昌信 三宅 吉博 三戸 夏子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.69-83, 2005-04-10
参考文献数
83
被引用文献数
2 2

日本人の食事摂取基準 (2005年版) のコレステロールに関する基本的考え方を解説した。至適コレステロール摂取量は, 疾病の罹患率, 死亡率が低くなるように, 今までの大規模観察研究や介入研究の報告を基に, 日本人のコレステロール摂取量を考慮して設定されるべきである。食事性コレステロール摂取量は血中コレステロール値に一般的には大きな影響を与えないが, 個人差があり, 欧米人に比べ, 肥満が少なく, 飽和脂肪酸摂取量の少ない日本人では, 食事性コレステロールによる血中コレステロール値の影響が欧米人に比べ, 大きい可能性がある。日本人も欧米人と同様, 血中総コレステロール値が高くても, 低くても死亡率は増加する。血中総コレステロール高値による死亡率増加はLDL-コレステロール値増加によって生じる動脈硬化が主因と考えられるが, 血中総コレステロール低値による死亡率増加は, 基盤にある消耗性疾患 (がん, 呼吸器疾患, 貧血, 感染症等) が原因と考えられる。観察研究では, 食事性コレステロール摂取量と総死亡率, 虚血性心疾患発症率, 脳卒中発症率との関連は認められていない。しかし, 日本人高齢者の糖尿病罹患率はこの5年間で増加しているため, 今後血中コレステロール値が増加すると, 糖尿病等の動脈硬化性疾患の危険因子をもった人では, 動脈硬化性疾患が増加する可能性が高い。また, 食事性コレステロール摂取量は肺がん, 消化器がん (膵臓がんや大腸/直腸がん) と正の関連を示す報告がある。以上の結果から, 多量のコレステロール摂取は好ましくなく, 成人ではコンステロール摂取量の上限値設定が必要と考えられた。
著者
鈴木 正成 小柳 達男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.171-174, 1968 (Released:2009-11-16)
参考文献数
18

体重380g前後の雄ラットを1週間絶食させて各脂肪組織の組織重量, 脂質含量および副睾丸脂肪組織と腎周囲脂肪組織の脂肪酸組成におよぼす影響を検討し, つぎのような結果を得た。1週間の絶食で体重は平均65g減少した。 脂肪組織の減少は皮下および腎周囲脂肪組織でとくに著しく, 副睾丸脂肪組織がそれについだ。しかし, 腸間膜, 大網膜および肩甲骨間脂肪組織は有意の減少を示さなかった。各脂肪組織の脂質含量は1週間の絶食で減少したが, 皮下および腎周囲脂肪組織で著しい減少が認められ, ついで副睾丸脂肪組織で著しかった。しかし, 腸間膜, 大綱膜および肩甲骨間脂肪組織では明らかな減少は示されなかった。また, 副睾丸脂肪組織の減少は脂質の減少によるが, 脂質以外の組織成分の増加がみられる点で他の脂肪組織と異なった変動を示した。また, 副睾丸脂肪組織の脂質脂肪酸組成は絶食の影響を受けなかったが, 絶食による変動がより大きかった腎周囲脂肪組織で, オレイン酸が高度の有意性をもって増加するのが認められた。以上のような結果から, 絶食時における各脂肪組織の脂質代謝に差異があることが明らかにされた。
著者
山田 真里子 平野 敬子 吉田 勉
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.261-266, 1978 (Released:2010-03-01)
参考文献数
15

モヤシを市販次亜塩素酸ナトリウム液 (アンチホルミン液) に浸漬した場合の, ビタミンC含量の変化を調べた。その結果, アンチホルミン液処理により, モヤシ中の総ビタミンCは, 未処理とくらべ実験室処理では85% (5~120分浸漬の平均), 工場処理では76%に減少した。この減少のおもな原因は, 浸漬液中へのビタミンCの溶出と考えられる。また, 工場処理では, 水洗中にモヤシの機械的攪拌が行なわれるために, 実験室処理にくらべその溶出量も多くなったと思われる。1/500アンチホルミン液は, モヤシ中のビタミンCに対して酸化剤として作用し, モヤシ中の還元型ビタミンCを酸化型ビタミンCに変化させるが, この液のもつ高いpHの影響によるビタミンCの分解はあまり起こらないと推察された。
著者
喜多村 尚 小原 郁夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-85, 2010 (Released:2010-06-02)
参考文献数
31
被引用文献数
3 5

唾液分泌と月経周期との相互関係については明らかにはなっておらず, さらに, 月経周期各期における唾液成分の日内変動に関する報告はない。本研究では, ヒトの月経周期による唾液分泌量および唾液成分の変化に着目し, 月経周期におけるこれらの日内変動について検討した。11名の健常女子大生の唾液採取を9時から20時まで1時間おきに12回行った。このとき採取した唾液を用いて, 唾液分泌量, 唾液タンパク質分泌量, 唾液アミラーゼ活性および唾液pHの日内変動を測定した。唾液分泌量はすべての周期で, さらに唾液タンパク質は卵胞期および黄体期のみで, 午前, 午後, 夕方にかけて上昇する日内変動がみられたのに対し, 唾液アミラーゼ活性および唾液pHは日内変動が観察されなかった。月経周期別においては, 唾液分泌量および唾液アミラーゼ活性は黄体期で有意に高い値となったが, 唾液タンパク質および唾液pHは黄体期で有意に低い値となった。これらのことから, 唾液分泌および成分の日内変動があることが観察され, また月経周期によってこれらが変動することが示唆された。
著者
金本 郁男 井上 裕 金澤 ひかる 内田 万裕 中塚 康雄 山本 幸利 中西 由季子 佐々木 一 金子 明里咲 村田 勇
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.133-140, 2020

<p>2種類の低糖質パンを摂取した時の食後血糖推移を食パンおよび全粒粉パンと比較するとともに, セカンドミール効果および糖質の消化性を評価するために試験を行った。健常成人11名 (男性2名, 女性9名) を対象者とした。摂取する熱量を統一した食パン (糖質38.6 g) , 全粒粉パン (糖質36 g) , マイルド低糖質パン (糖質8.5 g, 高たんぱく) , スーパー低糖質パン (糖質3.4 g, 高たんぱく高脂質) のいずれかを朝食に摂取し, 昼食にカレーライスを摂取する4通りの試験を行い, 食後血糖を経時的に測定した。糖質の消化性はGlucose Releasing Rate法で測定した。その結果, マイルド低糖質パン, およびスーパー低糖質パン摂取後の血糖値は低値を示したが, セカンドミール効果は認められなかった。本研究で用いた2種類の低糖質パンのうち, 消化性, 食後血糖, 満腹度の観点からマイルド低糖質パンの方が優れていると考えられた。</p>
著者
高瀬 幸子 森本 絢美 志村 二三夫 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.309-317, 1975-10-15 (Released:2009-11-16)
参考文献数
10

比較的生活環境の類似している女子大生343名の対象について, 不定愁訴と食生活との関連ならびにそれらをとりまく諸要因との関連を観察した。1) よく眠れない者, あるいは睡眠時間の短い者, 長い者, 夢を多くみる者に愁訴数が多かった。また, 現在の生活に満足していない者, 生きることに対し退屈感をもつ者に愁訴数が多かった。 喫煙者や鎮静剤などを常用する者にも愁訴数は多かった。2) 欠食回数の多い者, 夕食時刻の一定でない者, さらに, 食事の不規則な者に愁訴数が多かった。 しかしながら, 目的があって欠食している者には, そのような傾向は比較的みられなかった。3) 食事摂取の規則性とこれに関連する睡眠, 生活状態, 居住条件などとの相互関連について考察した。 これらの諸要因は, 食事の不規則性との関連を示しながら不定愁訴の発現とも関連していた。以上の結果から, 目的意識をもって規則的な日常生活ならびに食生活をおくるものには愁訴は少なかった。
著者
友竹 浩之 安富 和子 富口 由紀子 山下 紗也加 郡 俊之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.207-213, 2020
被引用文献数
2

<p>約2カ月間の健康増進教室参加者28名 (75±5歳 女性) の咀嚼能力, 握力, 食意識などを教室前後で比較し, 咀嚼, 栄養, 運動の指導の有効性について調べた。教室前後の調査項目は, 体重, 上腕周囲長, 下腿周囲長, 握力, 咀嚼能力 (チューインガム・グミゼリーを使用) , 食意識調査 (質問紙) , 栄養状態評価 (質問紙) とした。教室はテーマにそって, 講義と実習を行った (第2回「噛むことの大切さ」, 第3回「低栄養を予防する食べ方」, 第4回「運動の大切さと筋肉を鍛えるコツ」) 。教室実施期間中は, 咀嚼および栄養強化食品として高野豆腐を参加者全員に提供し, 摂取状況や噛むことの意識を毎日記録してもらった。参加者の教室前後の咀嚼能力を比較した結果, 有意に高くなっていた (チューインガム判定<i>p</i>=0.004, グミゼリー判定<i>p</i>=0.009) 。握力 (<i>p</i>=0.049) , 上腕周囲長 (<i>p</i>=0.012) も有意に増加していた。咀嚼の意識についての得点は, 教室前と比較して有意に高かった (<i>p</i>=0.016) 。</p>