著者
脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.321-328, 1999-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
35

Cholestanol resembles cholesterol, but its significance has remained unclear because of its low concentration in the body. However, in cerebrotendinous xanthomatosis, a genetic disorder of cholesterol metabolism, deposition of cholestanol produces several pathological conditions such as tendon xanthomas, cerebellar ataxia, pyramidal signs, cataracts and dementia. We have been investigating this disease for 23 years from the viewpoint of biochemical diagnosis. We established a procedure for quantification of cholestanol by HPLC, and also an assay method for sterol 27-hydroxylase. We also found several mutations of the CYP 27 gene in 10 CTX families. Furthermore, we established experimental animals with CTX by feeding then a cholestanol diet, and produced corneal dystrophy and gallstones in mice, and apoptosis of cerebellar neuronal cells from rats. CTX can be treated with chenodeoxycholic acid, which reduces the cholestanol concentration in serum. These findings suggest that cholestanol has a toxic effect. It will be necessary to determine the cholestanol content of food for the treatment of CTX patients and to prevent the clinical manifestations produced by cholestanol administration.
著者
豊田 正武 伊藤 誉志男 一色 賢司 大西 和夫 加藤 丈夫 神蔵 美枝子 白石 美子 原田 行雄 深澤 喜延 横山 剛 米田 孟弘 平山 佳伸 山本 芳子 藤井 正美 慶田 雅洋
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.489-497, 1983 (Released:2009-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

1) 1982年11月上旬~中旬に, 厚生省の食品添加物1日摂取量調査方式 (マーケットバスケット方式) に従い, 各種食品を, 東京で大手スーパーより, 東京, 大阪で中堅スーパーより, 仙台, 和歌山, 北九州で中小スーパーより, 札幌, 山梨, 長野, 島根で地元小売店より購入し, 1人1日喫食量に相当する試料量を採取し, 8食品群ごとに集め, 各種食品添加物含量を分析し, 1日摂取量を求めた。2) 48品目の各種食品添加物の10機関の平均1日総摂取量は119.8mgであり, 個々の食品添加物の平均1日摂取量は, プロピレングリコール43mg, ソルビン酸36.3mg, 硝酸35.5mg, 安息香酸1.44mg, グリチルリチン酸1.39mg, サッカリンナトリウム0.91mg, プロピオン酸0.60mg, パラオキシ安息香酸エステル類0.23mg, デヒドロ酢酸0.19mg, 合成着色料0.096mg, 亜硫酸0.073mg, BHT0.023mg, 亜硝酸0.018mg, BHA0.001mgであった。3) 各種食品添加物の1日摂取量のADIに対する割合は, 天然由来も含む硝酸以外0~3%の範囲内にあり, 購入先の規模別では, 地元小売店の食品で保存料, 甘味料が多く, 中堅スーパーでは添加物含量が若干低い傾向が見られた。
著者
山路 加津代 長野 正信 丸山 征郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.89-93, 2001-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

くろずは鹿児島県に伝わる独特の製法による米酢であり, 健康食品として長期間用いられてきた。本研究においてわれわれはくろずのDPPHラジカル消去活性と, ヒトLDLにおける抗酸化作用について検討した。われわれはくろずがDPPHラジカルを直接消去することを明らかにし, また, 銅イオン惹起LDL酸化反応を濃度依存的に抑制することを明らかにした。これらの結果ば, くろずの摂取が生体内酸化を抑制し, 動脈硬化の発症を抑制しうることを示唆していると考えられる。
著者
須田 正巳
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.331-336, 1977-12-05 (Released:2009-11-16)
参考文献数
9
著者
梶本 五郎 嘉ノ海 有紀 川上 英之 濱谷 美穂 前田 裕一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.291-295, 1992 (Released:2010-02-22)
参考文献数
10
被引用文献数
4 6

油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解および油脂の熱酸化に及ぼす各種の抗酸化剤の作用, ならびにアスコルビルパルミテート (As. P) との併用による効果について検討した。1) 使用した抗酸化剤の内では, TBHQが最も油脂中のTocの熱分解を防止し, ついで, セサモール, オイゲノールの順で, ケルセチンおよびBHAは効果少なく, フラボンやβ-カロチンは防止効果が認められなかった。2) TBHQは添加量を増すにしたがい, Tocの熱分解防止効果は高められた。3) Tocの熱分解防止効果の高いTBHQやセサモールは, 油脂の熱酸化も抑制したが, β-カロチンおよびフラボン添加では油脂の熱酸化を促進した。4) BHA, セサモールおよびケルセチンのそれぞれの単独添加の場合ょりもAs. Pの併用によりTocの熱分解防止効果は高められた。5) Tocの熱分解防止効果のないフラボンでは, As. Pとの併用によりTocの熱分解防止効果が現れた。一方, β-カロチンにはAs. Pの併用による効果は認められなかった。
著者
吉田 企世子 森 敏 長谷川 和久 西沢 直子 熊沢 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-127, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

有機質肥料で肥培された露地トマト (品種サターン) の水分, 還元糖, 有機酸およびビタミンCなどの含有量について無機質肥料で肥培されたものとの比較において検討した。1) 1980年度は, OF区のほうが水分含量が少なく, 還元糖が多く, 糖酸比が10以上であった。また, ビタミンC含量が多かった。2) 1981年度は, OF区は水分が少なく, 有機酸およびビタミンC含量が多かったが, 還元糖はあまり差がみられかった。3) 1982年度は, 3果房は80年度と同じ傾向であったが, 他の果房では傾向が一貫していなかった。4) 果房が上位に進むにつれて, 全体的に水分は減少し, ビタミンCは増加し, 還元糖は増加する傾向がみられた。また有機酸の変動が激しかった。5) IF区は果房から果房への成分変動が大きく, 不安定な動きがみられたが, OF区は比較的安定な動きを示した。
著者
岸本 正実 幣 憲一郎 田中 真理子 和田 啓子 福田 美由紀 姫野 雅子 桑原 晶子 小川 蓉子 木戸 詔子 稲垣 暢也 田中 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.253-258, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
4

肥満は通常body mass index (BMI) によって判定されるが, 本来肥満は脂肪細胞過多である。そこで本研究では生活習慣病患者166名を対象に, BMIとbioimpedance analysis (BIA) 法による体組成の関係を検討した。BMIは体脂肪量と, 相関係数0.914と強く相関したが, 除脂肪量とは相関係数0.434と中等度にとどまり, BMIと除脂肪量の相関係数は, BMI≧25 kg/m2群ではBMI<25 kg/m2群より低かった。BMIによる肥満 (≧25 kg/m2) と, 体脂肪率による肥満 (男性≧20%, 女性≧30%) の関係は, 後者の判定に対して前者の特異度は高いが, 感度は低く, BMI25 kg/m2以上では, ほぼ確実に体脂肪率による肥満が存在するが, 25 kg/m2未満でもその存在を否定できない。栄養アセスメントにおいて, BMIに加えて体組成評価の併用が必要であり, また感度・特異度などによる解析を考慮すべきである。
著者
山田 哲雄 村松 成司 高橋 徹三
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-46, 1993-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
32

本研究は, 運動時の汗および尿中Na, K排泄量の一過性の変動に及ぼす運動強度の影響について, 安静実験を対照として運動時および運動後9時間にわたり, 腎機能, 血中ホルモンなどとの関連を考え合わせて検討することを目的とした。健康な成人男子5名を被験者とし, 第1日目を調整日, 第2日日を対照実験日 (以後, 対照日と略), 第3日目を最大酸素摂取量の60% (60% VO2mx) を目標強度とした中等度の強度の運動負荷実験日, 第4日目を80% VO2maxを目標強度とした激運動負荷実験日 (以後おのおの中等度の運動日, 激運動日と略) とする実験を実施した。おもな結果は, 以下のとおりであった。1) 運動時の心拍数および% VO2maxは, ともに中等度の運動日に比べ激運動日で有意に高値を示した。2) 血中乳酸, 血漿レニン活性 (PRA), 血清アルドステロン (Ald) は, いずれも運動直後で激運動日>中等度の運動日>対照日の順に高値で, 3実験日の間にはいずれも有意差がみられた。3) 運動時の体重減少量は, 激運動日>中等度の運動日>対照日の順に高値で, 3実験日の間にはいずれも有意差がみられた。4) 運動時の汗中Na, K排泄量は, ともに激運動日>中等度の運動日>対照日の順に有意に高値または高値傾向を示した。5) 尿量, 尿中Na排泄量は, 運動時では対照日に比べ激運動日で有意に低値を示した。一方, 尿中K排泄量は, 運動時では対照日に比べ激運動日で有意に低値を示したが, 回復期では対照日に比べ中等度の運動日で有意に高値を示した。6) (汗+尿) 中Na排泄量は, 運動時では激運動日>中等度の運動日>対照日の順に有意に高値または高値傾向を示した。運動時, 回復期の合計では3実験日の間に有意な差を示さなかった。一方, (汗+尿) 中K排泄量は, 運動時では両運動日で対照日に比べ有意に高値を示した。運動時, 回復期の合計では, 中等度の運動日で対照日に比べ有意に高値を示した。以上のことから, 本実験条件下では, 中等度以上の強度の運動時には一過性に, (1) Na, Kの体外への損失が高まること, (2) Naの損失は汗中Na排泄量が高まるほど大であること, (3) Kの損失は激運動日では必ずしも高まらないこと, (4) 激運動日では相対的にKよりもNaの損失が大であること, また, 運動後9時間までの時点では, (1) Naの体外への損失は激運動日で個人差が大きいものの両運動日ともに対照日に比べ明らかではないこと, (2) Kの体外への損失は中等度の運動日で高まること, (3) NaとKの身体全体としての相対的な排泄比率については両運動日と対照日との間に差がみられないこと, がおのおの示唆された。
著者
藤井 彩乃 渡邉 佑奈 太田 淳子 桑原 晶子 宮脇 尚志 田中 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-17, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
13

近年, 肥満者が増加傾向にあり深刻な問題となっているが, 食事による減量の実践のためには対象者が主体的に食習慣・食行動の問題点を理解し, 実行することが必要である。また肥満解消のためには知識を提供するだけではなく, 管理栄養士など専門の知識や技術を持った者が, 対象者の現段階の正しい変容ステージを見極め, それぞれのステージに合わせた支援をすることが求められている。そこで人間ドック受診者を対象に食品の摂取頻度状況等を横断的に調査し, 食品摂取行動に影響を及ぼす因子の検討を共分散構造分析 (SEM) にて行った。結果, BMI 25.0 kg/m2以上群 (肥満群) においては, 食事改善の意識はあるが実行に移せていない可能性が考えられた。さらに食品摂取行動に対して, 健康面より嗜好が大きく摂取頻度に影響していることが推察され, 効果的な栄養指導を行うためには食行動を規定する食習慣, 特に嗜好を考慮することの必要性が示された。
著者
雪野 繼代 田中 邦明 丸山 功 小西 史子 熊谷 多妙子 羽田 尚彦 林 雅弘
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.331-337, 2002-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

工業パイロットスケールで大量培養したドコサヘキサエン酸 (DHA) 富化 Chlorella vulgais CK22株の脂質特性を分析した。純度92.9%のDHAを培養液に添加・培養し, DHA富化 C. vulgaris CK22の細胞成分を調べたところ, DHA添加量と関係し, クロロフィル含量は減少傾向を示したが, 総脂肪酸およびDHA含量はいずれも増加した。しかもDHAの取り込み増加による脂質過酸化の進行はなかった。また, 細胞内に取り込まれたDHAは中性脂質 (NL) のみならず, 糖脂質 (GL) およびリン脂質 (PL) においても認められた。さらにDHA富化 C. vulgaris CK22株の6カ月間にわたる脂質安定性をみたところ, 保存中DHAの若干の減少はあったものの, 過酸化物価の上昇はなかった。
著者
佐藤 明恵 中嶋 洋子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.25-33, 2013 (Released:2013-02-22)
参考文献数
36

Znの不足がラード食(LD)と魚油食(FD)の嗜好性に及ぼす影響を調べた。4週齢のオスFischer344系ラットを1群16匹ずつの4群に分け,それぞれ-ZnLD,-ZnFD,+ZnLD,+ZnFDの飼料で3週間飼育後,各群6匹ずつを解剖した。残りの-Zn群のラットには-ZnLDと-ZnFDを,+Zn群のラットには+ZnLDと+ZnFDの飼料を同時に与えて3週間選択摂取させた後解剖した。-Zn群は+Zn群に比べて血漿Zn濃度,飼料摂取量,体重は有意に低く,血漿・肝臓脂質濃度も-Zn群が有意に低かった。+Zn群のラットは両群ともn-6/n-3がほぼ3となるようにLDとFDを選択摂取したが,-Zn群のn-6/n-3はLD群で1.9,FD群で6.6となった。したがって,+Zn群は一定のn-6/n-3で必須脂肪酸を摂取する能力を有しているが,Znが不足するとこの能力が消失すると推察された。
著者
堀 由美子 村社 知美 福村 基徳 鳥居塚 和生 伊田 喜光
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2008 (Released:2009-02-28)
参考文献数
21
被引用文献数
7 16

水腫, 脚気, 解毒の改善に用いられるアズキ (生薬名: 赤小豆, セキショウズ) 煮汁の成分を明らかにする目的でアズキ熱水抽出物の成分研究を行った。その結果, フラボノイドならびにその配糖体13種を単離し, 構造を明らかにした。次いでアズキ熱水抽出物およびこれから得られたフラボノイド誘導体についてDPPH法によるラジカル消去活性を測定した。その結果, いずれも代表的な抗酸化物質であるBHAに匹敵する強い抗酸化作用を示した。
著者
芳野 恭士 岸 由紀乃 金高 隆 古賀 邦正
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.221-227, 2012 (Released:2012-10-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

サラシア属植物の一種であるSalacia reticulataの葉と幹の水抽出物について,そのマウスI型アレルギー抑制作用を検討した。S. reticulataの葉および幹の水抽出物を,200もしくは400 mg/kg体重の投与量でマウスに経口投与した場合,マウスI型アレルギーを有意に抑制した。I型アレルギーマウスにおける腹壁中のインターリューキン-4やインターリューキン-10,さらには免疫グロブリンEの濃度の上昇もまた,これらの抽出物の投与により抑制された。S. reticulataの葉水抽出物中の有効成分の一部として(-)-エピカテキン,また,その幹水抽出物中の有効成分として,マンギフェリンが考えられる。したがって,S. reticulataの葉と幹は,I型アレルギーを予防するのに適した食品素材であると考えられる。
著者
西岡 奈保 田中 紀子 平野 直美 中村 満
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.9-15, 2013 (Released:2013-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
1

長期トレーニングを行う高齢者の身体機能の変化について調べ,身体機能と栄養摂取,咀嚼力,包括的QOLとの関連性を検討した。膝伸展力や平衡機能及び歩行能力,複合動作能力は初期値とトレーニングによる変化量との間に有意な負の相関関係があり,トレーニングの効果は身体機能の初期値が低い者ほど大きいことがわかった。歩行能力,複合動作能力や咀嚼力はエネルギー摂取量と有意に関連し,これらの機能が高い者ほどエネルギーを多く摂取していた。また,SF-8による精神的サマリースコア(MCS)はBMIと有意な正の相関関係にあり,栄養状態が良好な者ほど精神的QOLは高いことが示された。以上より,高齢者の継続的なトレーニングは特に身体機能が低い者ほど効果的であり,介護予防として有効であることが示された。また身体機能や咀嚼力が良好な者ほど栄養摂取量は高く,栄養状態が良好であると精神的QOLも高いことが示唆された。
著者
田中 紀子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.175-180, 1982-06-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

正常時にはほとんど利用されないとされる尿素がたん白欠乏時にどのように利用されるか, そしてそのとき, 腸内細菌がどのように関与するかを低たん白食としてカゼイン食で飼育したラットについで検討し次の結果をえた。1) ラットを低たん白食で2週間以上飼育すれば小腸内ウレアーゼ活性の増加により多量の尿素をアンモニアに分解する能力を有する傾向のあることがわかった。2)15N尿素を投与すると投与後2時間目より48時間目に至るまで標準たん白食飼育ラット (対照) に比べ低たん白食飼育ラットの血漿たん白に尿素由来の15Nの高い取り込みが有意に見られ, たん白欠乏時には尿素が体たん白合成に利用されることが示唆された。また血漿たん白構成アミノ酸に取り込まれた15Nは低たん白食飼育ラットで著明に高かった。各アミノ酸の中で最も取り込みが高かったのはNEAAで次にEAA, Lysであった。3)15N尿素投与後1時間目の門脈血血漿遊離のLys, EAA, NEAAに15Nの高い取り込みが低たん白食飼育ラットで見られた。このアミノ酸への15Nの高い取り込みは抗生物質投与により強く抑制されたことから, 尿素からアミノ酸への合成には腸内細菌が大きく関与しでいると思われる。4) 以上のことから単胃動物のラットについてたん白欠乏時には多くの尿素がアンモニアに分解され, それは腸管から吸収される一方, 一部のアンモニアは腸内細菌によりアミノ酸に合成され肝臓に運ばれ, いずれも体内でたん白質に合成される経路のあることが示唆された。おわりに終始ご懇篤なご指導, ご鞭撻を賜わりました兵庫医科大学吉村寿人名誉教授ならびに堀清記教授に厚くお礼申しあげます。
著者
檀原 宏 三橋 俊彦 野崎 博
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:00215376)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.503-505, 1964

牛体内の柔組織間におけるCs-137の汚染濃度の分布を調べる目的で, 正常に飼養されている18ヵ月齢の牡牛を屠殺し, 各臓器, および筋肉についてK, Cs-137の含量を測定した。同時に, 数種の臓器ではCa, Sr-90の測定をも行なった。その結果, Sr-90は第1胃, 腎および大腸部に若干検出されたのみであった。Cs-137は, すべての臓器にも見出され, 2-15CUの間におさまり, 高くはないが決して0とはいえなかった。各組織間のCUの分布には, 一定の傾向が見出せなかった。